私たちの健康を脅かす感染症は、時に個人の問題にとどまらず、社会全体に大きな影響を及ぼすことがあります。特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行を経て、その予防と対策に関する正確な知識の重要性は、これまで以上に高まっています。この記事では、Japanese Health(JHO)編集委員会が、世界保健機関(WHO)や日本の厚生労働省などの公的機関、そして第一線の医学研究に基づき、感染症の基本的な定義から、その原因となる病原体の種類、主な感染経路、日常生活で実践できる効果的な予防方法、さらには日本の法律に基づいた対策の枠組みまでを、専門的な知見を交えて包括的に解説します。あなたとあなたの大切な家族の健康を守るため、信頼できる情報に基づいた知識を身につけましょう。
この記事の科学的根拠
本記事は、世界保健機関(WHO)や厚生労働省、日本の専門学会が公表しているガイドラインや統計、査読付き論文などの信頼できる情報に基づき、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が作成しました。
以下のリストには、実際に参照された主な情報源のみが含まれており、本文中で提示している医学的な指針や説明との直接的な関連性も簡潔に示しています。
- 世界保健機関(WHO): この記事における感染症の国際的な定義に関する指針は、WHOが発行した健康トピックに基づいています1。
- 厚生労働省(MHLW): 日本国内における感染症の定義、分類、予防策、および「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)に関する記述は、厚生労働省が公開する公式情報およびガイドラインに準拠しています23132223。
- 国立感染症研究所(NIID): 日本国内の感染症発生動向(IDWR)や、より詳細な病原体の情報に関する記述は、日本の感染症対策の中核を担う国立感染症研究所の公開データに基づいています272830。
- 日本感染症学会(JAID)および関連学術団体: ワクチン接種や治療に関する専門的な推奨事項は、日本感染症学会や日本小児感染症学会などが発行する最新の診療ガイドライン(例:JAID/JSC感染症治療ガイド)を情報源としています161821。
要点まとめ
- 感染症は、ウイルスや細菌などの「病原体」が体内に侵入し、増殖することによって引き起こされる病気です。
- 主な感染経路には「接触感染」「飛沫感染」「空気感染」があり、それぞれ対策が異なります。
- 「手洗い」「マスク着用・咳エチケット」「換気」は、日常生活における基本的かつ極めて効果的な予防策です。
- ワクチン接種は、個人の重症化を防ぐだけでなく、社会全体の流行を抑えるための最も重要な手段の一つです。
- 日本では「感染症法」に基づき、病気の危険性に応じて感染症が分類され、国や自治体が対策を講じています。
感染症の仕組みと予防の基本整理ガイド
「感染症」と一言で言っても、ウイルスや細菌、真菌、寄生虫など、目に見えない病原体の違いや、どのように体内へ入り込むのかまではなかなかイメージしづらいものです。しかも、新型コロナウイルス感染症の流行を経験したいま、「どこまで気をつければいいのか」「どの対策が本当に効果的なのか」と不安や戸惑いを感じるのは自然なことです。まずはその不安を否定せず、「仕組みを知れば、過度に怖がらずに正しく怖がることができる」と考えてみてください。この記事とあわせて学ぶことで、あなたと家族を守るための具体的な行動が、ぐっとイメージしやすくなります。
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感染症は、病原体が体内に侵入して増えることで起こる病気ですが、その背景には「どんな病原体か」「どの経路でうつるか」「どう予防できるか」といういくつかの軸があります。本記事で示されている基本的な定義や日本の感染症法に基づく分類は、これらの軸を整理するための土台です。より体系的に、代表的な症状や検査、治療、ワクチン、耐性菌の問題まで俯瞰したい場合は、感染症領域を総合的にまとめた感染症 完全ガイド|症状・検査・治療・予防・ワクチン・耐性菌もあわせて読むと、個々の疑問を全体像の中に位置づけやすくなります。まずは「全体像」と「基本の言葉」をそろえることが、過剰な不安を減らす第一歩です。
感染症が広がる仕組みを理解するうえで、本記事でも紹介されている「感染源」「感染経路」「感受性宿主」という三つの要素は、とても重要な考え方です。感染源となる人や動物、環境に病原体が存在し、その病原体が接触・飛沫・空気・食べ物や水・蚊などの媒介生物・母子などの経路を通って、免疫が十分でない人へ届くことで感染が成立します。とくに空気中を長時間漂う飛沫核による空気感染は、同じ空間にいるだけでうつる可能性があり、対策の難しさにつながります。空気感染がどのように起こり、どんな症状や予防策が重要なのかをさらに掘り下げたい場合は、空気感染の脅威:知っておくべき症状、感染経路、専門家推奨の最新予防策のすべてを参考にすると、「なぜ換気やマスクが強調されるのか」がより具体的に理解できるはずです。
実際の生活の中でまず取り組みたい「第一歩」は、日常的な予防策を、感染経路の知識と結びつけて習慣化することです。手洗いやアルコール手指衛生は接触感染のリスクを、マスクと咳エチケットは飛沫感染のリスクを、それぞれ確実に下げてくれます。また、発熱が出たときには「ただの風邪だから」と自己判断するのではなく、いつ、どこで、どのような場面で感染した可能性があるのかを振り返ることも大切です。ウイルス性の発熱がどのようにうつり、潜伏期間や症状の経過、回復後に注意すべき点がどこにあるのかを押さえておくと、自宅療養のときの判断材料になります。こうした視点を深めるには、ウイルス性発熱はうつる?感染経路、潜伏期間、症状回復後の注意点を専門家が徹底解説が、身近な発熱のケースを通して理解を助けてくれます。
次のステップとして、「どの感染症がどれくらい危険で、社会としてどのように管理されているのか」を知っておくことも重要です。本記事で触れられているように、日本の感染症法では、一類から五類、新型インフルエンザ等感染症などに分類し、報告義務や入院勧告、就業制限などの公衆衛生上の措置が定められています。これは単に「怖い病気のリスト」ではなく、限られた医療資源を守り、重い感染症の流行を最小限に抑えるための仕組みです。とくに、世界的な脅威となるウイルスがどのように位置づけられ、なぜ厳重な対策が必要とされるのかを理解しておくことは、ニュースや行政からの呼びかけを自分ごととして受け止めるうえで役立ちます。こうした観点をより詳しく学びたい場合は、科学的根拠に基づく危険なウイルス解説:日本の感染症法分類と世界的脅威のすべてが、法的な枠組みと世界的なリスクを結びつけて解説してくれます。
なお、「発熱や咳がなければ安心」「流行しているのはウイルスだけ」と考えてしまうと、重要なサインを見逃すおそれがあります。寄生虫感染症のように、症状がゆっくり進むものや、消化器症状・貧血・体重減少など、一見感染症と結びつきにくい形で現れるものもあるからです。また、感染症の種類によっては、自己判断で市販薬や抗菌薬を使い続けることで、かえって診断が遅れたり、薬剤耐性の問題を悪化させたりすることもあります。とくに成人の寄生虫感染症は、日本でも決して無視できないテーマであり、その症状や診断、治療を知っておくことは、感染症全体への理解を深める助けにもなります。気になる方は、成人の寄生虫感染症:日本の症状、診断、治療に関する包括的ガイドもあわせて確認しておくとよいでしょう。
感染症は目に見えない相手ですが、その正体と広がり方、そして予防と対策の枠組みを知ることで、「何をどこまで気をつければよいのか」が少しずつ具体的になっていきます。本記事で得た基本的な知識に、症状や経路ごとの詳しい情報や、日本の法律に基づく考え方を重ねることで、必要以上に恐れず、しかし油断もしないバランスの取れた行動が取れるようになります。今日からできる小さな予防習慣を一つずつ積み重ねながら、疑問が生じたときには、信頼できる情報源を手がかりに落ち着いて確認していきましょう。
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感染症とは?
感染症を正しく理解することは、効果的な予防の第一歩です。ここでは、国際的な定義と日本の公的機関による定義を合わせて見ていきましょう。
WHOと日本の厚生労働省による定義
世界保健機関(WHO)は、感染症を「ウイルス、細菌、寄生虫、真菌といった病原性微生物によって引き起こされる疾患」と定義しています。この定義は、これらの病気が人から人へ直接的または間接的に広がる可能性がある、その「伝染性」を強調しています1。
一方、日本の厚生労働省は、より具体的に「感染症(かんせんしょう)とは、病原体(ウイルスや細菌など)がからだの中に侵入して増えることで、熱やせき、下痢などの症状がでること」と説明しています3。ここで使われる「病原体(びょうげんたい)」や「体内に侵入し、増える」といった言葉は、日本の医療現場や公衆衛生の通知で広く使われており、私たちにとって馴染み深い表現です。
病気の原因となる「病原体」の種類
感染症を引き起こす「病原体」には、いくつかの種類があります。それぞれの特徴を知ることで、なぜ治療法や予防法が異なるのかを理解できます。
- 細菌(さいきん): 自身の力で増殖できる単細胞の生物です。大腸菌、黄色ブドウ球菌、結核菌などがこれにあたります4。
- ウイルス(ういるす): 細菌よりもはるかに小さく、自分だけでは増えることができません。人間の細胞など、他の生物の細胞に入り込んで増殖します。インフルエンザウイルス、コロナウイルス、ノロウイルスが代表例です4。
- 真菌(しんきん): カビや酵母の仲間で、皮膚や内臓に感染症を引き起こすことがあります。水虫の原因である白癬菌も真菌の一種です110。
- 寄生虫(きせいちゅう): 他の生物の体内に寄生して生きていく生物です。マラリア原虫やアニサキスなどが含まれます1。
- その他: まれではありますが、プリオンやリケッチアといった特殊な病原体も存在します911。
知っておきたい!細菌とウイルスの違い
多くの人が混同しがちなのが細菌とウイルスの違いです。この違いを理解することは、適切な治療法を選ぶ上で非常に重要です。例えば、「抗菌薬(抗生物質)」は細菌には効果がありますが、ウイルスには全く効きません9。風邪やインフルエンザの多くはウイルスが原因であるため、抗菌薬を服用しても効果がないのです。
| 特徴 | 細菌 (Saikin) | ウイルス (Uirusu) |
|---|---|---|
| 大きさ | 比較的大きい(マイクロメートル単位) | 非常に小さい(ナノメートル単位) |
| 構造 | 細胞構造を持つ | 細胞構造を持たない(遺伝子とタンパク質の殻) |
| 増殖方法 | 自己増殖が可能 | 他の生物の細胞に侵入して増殖 |
| 治療薬 | 抗菌薬(抗生物質) | 抗ウイルス薬 |
なぜ感染症は広がるのか?感染の仕組み
感染症がどのようにして広がるのか、そのメカニズムを理解することは、流行を防ぐための鍵となります。
感染が成立する3つの要素
感染症が成立するためには、日本の文部科学省の資料などでも示されている通り、以下の3つの要素が揃う必要があります8。
- 感染源(かんせんげん): 病原体を含む人、動物、あるいは土壌などの環境。
- 感染経路(かんせんけいろ): 病原体が感染源から他の人へ移動する道のり。
- 感受性宿主(かんじゅせいしゅくしゅ): 病原体に対する免疫がなく、感染しやすい状態にある人。
予防策の基本は、この3つの輪のいずれかを断ち切ることにあります。
主な感染経路
病原体が人から人へ広がる主な経路は以下の通りです。
- 接触感染(せっしょくかんせん): 病原体が付着した手で口や鼻を触ったり、汚染されたドアノブやスイッチに触れたりすることで感染します。インフルエンザ、ノロウイルス、とびひ(伝染性膿痂疹)などがこの経路で広がります6。
- 飛沫感染(ひまつかんせん): 感染者の咳、くしゃみ、会話などで飛び散るしぶき(飛沫)を、近くにいる人が吸い込むことで感染します。飛沫は通常1〜2メートルの範囲で落下します。インフルエンザ、風邪、新型コロナウイルス感染症などが代表です4。
- 空気感染(くうきかんせん): 飛沫の水分が蒸発してできた非常に小さな粒子(飛沫核)が、長時間空気中を漂い、それを遠くの人が吸い込むことで感染します。換気の悪い空間では特に危険性が高まります。結核、麻しん(はしか)、水痘(みずぼうそう)がこの経路で感染します4。
- 媒介物感染(ばいかいぶつかんせん): 病原体に汚染された食品(食中毒)、水(コレラ)、血液(ウイルス性肝炎)、あるいは蚊などの昆虫(マラリア、デング熱)を介して感染します6。
- 母子感染(ぼしかんせん): 妊娠中、出産時、あるいは授乳を通じて、母親から赤ちゃんへ病原体が伝わる経路です8。
科学で見る「三密」の重要性
新型コロナウイルス対策で広く知られるようになった「三密(さんみつ)」(密閉空間、密集場所、密接場面)を避けるという標語は、これらの感染経路の知識に科学的に裏打ちされています13。
- 密閉空間を避ける(換気): 「空気感染」のリスクを低減します。窓を開けて空気の流れを作ることで、空気中に漂う病原体の濃度を下げることができます。
- 密集場所・密接場面を避ける: 「飛沫感染」および「接触感染」のリスクを直接的に低減します。人と人との物理的な距離を保つことで、飛沫を吸い込んだり、感染者と接触したりする機会を減らします。
このように、科学的な根拠と結びつけて考えることで、公衆衛生上の推奨事項の重要性がより深く理解できます。
自分でできる!基本的な感染症の予防方法
感染症から身を守るために、私たち一人ひとりが日常生活で実践できる基本的な対策があります。これらはシンプルですが非常に効果的です。
基本の「き」:正しい手洗い
手洗いは、接触感染を防ぐ最も簡単で重要な方法です。厚生労働省や専門機関もその重要性を強調しています14。石鹸と流水で、指先、指の間、手首までを丁寧に洗うことが推奨されます。水が使えない場面では、アルコールを含んだ手指消毒液も有効です。
飛沫を防ぐ:マスク着用と咳エチケット
自分が感染している可能性を考え、周囲の人にうつさないための配慮が「咳エチケット」です。咳やくしゃみをする際は、ティッシュやハンカチ、あるいは服の袖で口と鼻を覆いましょう13。また、流行期や混雑した場所では、不織布マスクを正しく着用することが、飛沫の吸い込みと飛散の両方を防ぐのに役立ちます。
空気を入れ替える:効果的な換気の方法
特に空気感染のリスクがある病気に対して、換気は極めて重要です。定期的に窓やドアを二方向以上開けて、空気の流れを作ることが効果的とされています15。これにより、室内に滞留する可能性のある病原体の濃度を下げることができます。
ウイルスを家に持ち込まない:環境消毒
ドアノブ、照明のスイッチ、電話、キーボードなど、多くの人が頻繁に触れる場所(高頻度接触面)を定期的に清掃・消毒することも、接触感染のリスクを減らすのに役立ちます14。
生活習慣と免疫力:日々のコンディションを整える
十分な睡眠やバランスの良い食事、適度な運動、過度なストレスをため込まないことは、感染症を完全に防ぐものではありませんが、体の抵抗力を保つうえで大切な土台になります。とくに疲れがたまっているときや忙しい時期こそ、休息時間を意識的に確保し、「無理をしすぎない」ことが、結果として感染症全体のリスクを下げる助けになります。
医療による専門的な予防:ワクチンと検診
個人の努力に加え、医療による介入は感染症の制御に不可欠な役割を果たします。
最も効果的な予防法の一つ:ワクチン接種
ワクチン接種は、近代医学における最も偉大な成果の一つであり、多くの深刻な感染症を予防する最も効果的な手段です。ワクチンは、特定の病原体に対する免疫を体に作らせることで、感染そのものを防いだり、もし感染しても症状が重くなるのを防いだりします。日本小児感染症学会が発行する「免疫不全状態にある患者に対する予防接種ガイドライン2024」16や、日本環境感染学会による「医療関係者のためのワクチンガイドライン」17など、専門家向けの指針も整備されており、科学的根拠に基づいた接種が進められています。
早期発見の重要性
定期的な健康診断や検診は、自覚症状が現れる前に感染症を発見し、早期治療につなげるために重要です。例えば、結核などは、早期に発見すれば治療可能であり、他者への感染拡大を防ぐことにも繋がります2。
日本における感染症対策の要「感染症法」とは
日本における感染症対策は、個人の努力や医療機関の対応だけでなく、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」、通称「感染症法」という法律に基づいて体系的に行われています22。この法律は、感染症の危険性に応じて病気を分類し、それぞれに必要な対策を定めています。
法律に基づく感染症の分類
感染症法では、病原体の感染力や、かかった場合の症状の重さなどに基づき、感染症を主に5つの類型に分類しています。この分類を理解することで、なぜ特定の病気に対して厳しい入院勧告や就業制限といった措置が取られるのかが分かります。
| 類型 | 危険性のレベル | 代表的な疾患例 | 主な公衆衛生上の措置 |
|---|---|---|---|
| 一類感染症 | 極めて高い | エボラ出血熱、痘そう(天然痘)、ペスト | 原則入院(特定感染症指定医療機関)、厳格な防疫措置22 |
| 二類感染症 | 高い | 結核、急性灰白髄炎(ポリオ)、SARS、MERS | 状況に応じた入院勧告、公衆衛生上の措置22 |
| 三類感染症 | 特定の職業で集団発生のリスク | コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症 | 飲食物を取り扱う業務への就業制限22 |
| 四類感染症 | 動物や物を介して人に感染 | 狂犬病、マラリア、デング熱、A型・E型肝炎 | 動物の輸入規制、媒介する動物の駆除など22 |
| 五類感染症 | 発生動向の調査が必要 | インフルエンザ、麻しん、風しん、COVID-19(2023年5月以降) | 定点医療機関からの発生動向報告、情報提供1325 |
| 新型インフルエンザ等感染症 | 新規でパンデミックの可能性 | 新型インフルエンザ、COVID-19(初期) | 緊急事態宣言など、状況に応じた強力な対策12 |
この分類は、国立感染症研究所(NIID)が毎週発表する「感染症発生動向調査週報(IDWR)」などのサーベイランスデータと連動しており、日本全体の感染症の状況を監視し、流行を予測・制御するための基盤となっています27。
よくある質問
抗菌薬(抗生物質)は風邪(感冒)に効きますか?
いいえ、ほとんどの場合効きません。風邪の約90%はウイルスによって引き起こされます。抗菌薬は細菌を攻撃するための薬であり、ウイルスには効果がありません9。不必要に抗菌薬を使用することは、薬が効かなくなる「薬剤耐性(AMR)」菌を生み出す原因となるため、医師の診断に基づいた適切な使用が極めて重要です。
「飛沫感染」と「空気感染」の具体的な違いは何ですか?
主な違いは、病原体を含む粒子の大きさと、空気中を漂う時間です。飛沫感染の「飛沫」は水分を多く含んだ比較的大きな粒子(5マイクロメートル以上)で、重力によってすぐに(1〜2メートル以内に)落下します4。一方、空気感染の「飛沫核」は飛沫が乾燥した非常に小さな粒子(5マイクロメートル未満)で、軽く、長時間(数時間以上)空気中を漂い、遠くまで拡散する可能性があります。そのため、空気感染する病気(結核、麻しん、水痘)は、より厳重な換気対策や隔離措置が必要となります。
ワクチンを接種した後でも、その病気に感染することはありますか?
はい、可能性はゼロではありません。ワクチン接種後の感染は「ブレークスルー感染」と呼ばれます。しかし、ワクチン接種の主な目的は、感染を100%防ぐことだけでなく、もし感染した場合でも重症化したり、後遺症が残ったり、死亡したりする危険性を大幅に減らすことです。また、多くの人がワクチンを接種することで社会全体の免疫力が高まり、感染症の大きな流行を防ぐことができます(集団免疫)。日本感染症学会などの専門機関は、科学的根拠に基づきワクチン接種を強く推奨しています18。
発熱や咳が続くとき、どのタイミングで医療機関を受診すべきですか?
受診のタイミングは年齢や基礎疾患の有無によっても異なりますが、次のような場合には早めの受診や電話相談を検討すると安心です。
- 息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱などの強い症状があるとき
- 高齢者や基礎疾患(心臓・肺の病気、糖尿病など)がある人で、発熱や咳が続くとき
- 水分や食事がほとんどとれない、ぐったりしているなど、全身状態が明らかに悪いとき
- 数日経っても症状が良くならない、むしろ悪化していると感じるとき
迷う場合は、かかりつけ医や地域の医療相談窓口に電話で相談し、指示を受けてから受診すると安心です。自己判断で我慢しすぎず、「少し早めかな」と感じるくらいで相談することが重症化予防につながります。
日常生活で、どこまで感染対策を続ければよいのでしょうか?
すべての場面で厳格な対策を続ける必要はありませんが、次のような「基本の習慣」は、流行状況にかかわらず続けておくと安心です。
- 外出先から帰宅したときや食事前などのこまめな手洗い・手指消毒
- 咳やくしゃみが出るときのマスク着用や咳エチケット
- 人が集まる場所や換気の悪い空間では、可能な範囲で密集・密接を避ける工夫
- 体調が悪いときは無理をせず、休養を優先すること
マスクの着用やイベント参加など、個々の行動は、周囲の人の重症化リスク(高齢者や基礎疾患のある人がいるかどうか)や、そのときの流行状況を踏まえて柔軟に判断しましょう。
高齢者や基礎疾患のある人が特に気をつけるべきポイントはありますか?
高齢者や、心臓・肺の病気、糖尿病などの基礎疾患を持つ人は、感染症が重症化しやすいとされます。そのため、次のような点にいつも以上に注意することが勧められます。
- 季節性インフルエンザや肺炎球菌など、推奨されているワクチン接種を検討すること
- 普段から十分な栄養と睡眠をとり、体調の変化に早く気づけるようにすること
- 発熱や咳、息切れなどの症状が出た場合は、「様子を見る」だけでなく、早めにかかりつけ医に相談すること
- 同居家族や周囲の人にも、手洗いや咳エチケットなど基本的な感染対策を続けてもらうこと
本人だけでなく、家族や周囲の人が一緒に感染対策へ取り組むことで、安心して暮らせる環境を整えやすくなります。
結論
感染症は、目に見えない病原体によって引き起こされ、様々な経路で私たちの間に広がります。しかし、その仕組みを正しく理解し、科学的根拠に基づいた行動をとることで、その危険性を大幅に減らすことが可能です。「手洗い」や「咳エチケット」といった日々の基本的な習慣から、「ワクチン接種」という医療の力を借りた予防まで、私たち一人ひとりが責任ある行動をとることが、自分自身を守り、家族を守り、そして社会全体を感染症の脅威から守ることに繋がります。本記事が提供する情報が、皆様の健康な生活の一助となることを心より願っています。
免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。
参考文献
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- 感染症とは. 厚生労働省. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kansenshou-towa.html
- 感染症の基礎知識. 内閣感染症危機管理統括庁ホームページ. [インターネット]. [引用日: 2025年6月24日]. Available from: https://www.caicm.go.jp/knowledge/index.html
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