この記事の科学的根拠
この記事は、下記に挙げる最高品質の医学的エビデンスにのみ基づいて作成されています。本文中で提示される医学的ガイダンスは、以下にリストされた実際の情報源と直接的に関連しています。
- 日本腎臓学会 (JSN): 本記事における日本の基準に基づく治療目標(血圧、貧血など)や食事療法に関する指針は、日本腎臓学会が発行した「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」に基づいています3。
- KDIGO (Kidney Disease: Improving Global Outcomes): SGLT2阻害薬やフィネレノンなどの最新治療やリスク評価に関する国際的な推奨事項は、国際的組織KDIGOが発行した「KDIGO 2024 CKD Guideline」に基づいています4。
- 日本透析医学会 (JSDT): CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の管理目標に関する日本の基準は、日本透析医学会の診療ガイドラインに基づいています5。
- 厚生労働省 (MHLW): 日本におけるCKD対策の社会的背景や国の目標に関する記述は、厚生労働省の公式報告書に基づいています6。
要点まとめ
- 慢性腎臓病(CKD)は日本の成人約2000万人が罹患する国民病であり、心血管疾患が最も生命を脅かす合併症です。
- 血圧管理は極めて重要で、日本のガイドライン(JSN)と国際ガイドライン(KDIGO)では目標値に違いがあり、個別化された治療が求められます。
- 腎性貧血による倦怠感や息切れは、腎臓でのホルモン産生低下が原因であり、適切なヘモグロビン値を目標とした治療が必要です。
- 骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)は、骨を脆弱にし血管の石灰化を招く複雑な病態で、リン、カルシウム、PTHの管理が鍵となります。
- 食事療法(減塩、カリウム・タンパク質制限)と、SGLT2阻害薬やフィネレノンなどの最新治療薬は、合併症の進行を遅らせる上で中心的な役割を果たします。
CKD合併症を正しく理解し予防するための整理ガイド
「慢性腎臓病(CKD)は合併症が怖い」「心臓や血管、貧血、骨のことまで言われて何から気をつければよいか分からない」と不安になっている方も多いのではないでしょうか。血圧や検査値の数字だけを見ても、自分の体で何が起きているのかイメージしづらく、「この先、透析や心臓病になってしまうのでは」と将来を悲観してしまうこともあります。さらに、JSNやKDIGOなど専門用語だらけのガイドラインを目にすると、「専門家向けの話で、自分には関係ない」と感じてしまうかもしれません。まずはその不安を言語化し、「どの合併症に、どう向き合えばよいのか」を一つずつ整理していきましょう。
この記事で解説されているように、CKDでは心血管疾患、腎性貧血、骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)といった全身の合併症が密接に絡み合っています。この小さな解説ボックスでは、それらの合併症を「なぜ起こるのか」「どこまでコントロールを目指すのか」「日常生活で何を意識すべきか」という観点からコンパクトに整理します。より広い文脈で腎臓病全体を俯瞰したい場合は、腎臓や尿路の病気の種類、検査、治療選択肢までを体系的にまとめた腎臓と尿路の病気 完全ガイドをあわせて読むことで、ご自身の位置づけや今後の見通しをより立体的に理解しやすくなります。この記事と組み合わせて読むことで、「どの合併症に、どのタイミングで備えるべきか」が一段と明確になるはずです。
CKDで合併症が起こる根本には、「腎臓のフィルター機能の低下」と「ホルモンバランスの乱れ」があります。老廃物や余分な水分が十分に排泄できなくなると、体内の水分量と塩分量が増え、血圧が上昇し、心臓に大きな負担がかかります(腎心連関)。さらに、腎臓で作られるエリスロポエチンが不足すると腎性貧血が進行し、心臓は少ない酸素を全身に届けるために余分な仕事を強いられます。また、リンの排泄低下とビタミンD活性化障害からカルシウム・PTHのバランスが崩れ、骨が脆くなると同時に血管が石灰化しやすくなるという、CKD-MBD特有の悪循環も生じます。こうしたメカニズムを腎臓専門医の視点から体系的に解説しているのが、CKD対策の総合ガイドですので、「自分のステージではどの合併症が特に問題になりやすいのか」を整理する際に役立ちます。
合併症対策の第一歩は、「血圧と心血管リスクの徹底管理」です。本文で紹介されているように、日本腎臓学会(JSN)は糖尿病や蛋白尿を伴うCKDでは130/80mmHg未満、それ以外では140/90mmHg未満(高齢者ではまず150/90mmHg未満)という目標を示し、KDIGOは忍容できる範囲で収縮期血圧120mmHg未満を推奨しています。これらは一見バラバラに見えますが、「個々の患者さんの年齢や合併症に合わせて目標を調整する」ための幅として理解するとよいでしょう。近年は、SGLT2阻害薬やフィネレノンなど、腎臓と心臓を同時に守る新しい治療薬が登場し、血圧やタンパク尿のコントロール戦略も大きく変わってきました。こうした薬物療法の選択肢と役割を整理した腎不全治療薬の解説記事と合わせて読むことで、「どの薬が自分の合併症リスク低減に寄与しているのか」がイメージしやすくなります。
次の重要な柱が、「腎性貧血と骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)への早期介入」です。腎性貧血では、ヘモグロビン値をJSNが示す10〜13g/dLの安全域に保つことが目標であり、過剰な是正はかえって心血管イベントを増やす可能性があるため注意が必要です。エリスロポエチン製剤やHIF-PH阻害薬などの治療薬を、鉄代謝の評価とあわせてバランスよく用いることで、息切れや倦怠感を軽減しつつ心臓への負担も抑えることができます。また、CKD-MBDではリン・カルシウム・PTHの推移を追いながら、JSDTが提案する管理目標とKDIGOの「トレンド重視」の考え方を組み合わせて、過不足のない治療強度を見極めることが大切です。腎不全治療の中で造血薬の役割や使い方のポイントを詳しく知りたい場合は、腎性貧血治療に焦点を当てた造血薬(ESA製剤など)の記事が参考になります。
こうした薬物療法と並行して、合併症の進行を遅らせるためには「早い段階からの自己管理」が不可欠です。特に、減塩・適正たんぱく・カリウムやリンの過剰を避けるといった食事療法は、血圧やCKD-MBDの悪化を抑えるうえで基盤となります。まだ症状が乏しい初期の段階から生活習慣を整えておくことで、将来の心血管イベントや透析導入のリスクを大きく減らせる可能性があります。初期~中等度の段階で何に気をつけるべきかを整理した初期の腎不全(慢性腎臓病)の総合解説や、ステージ3に焦点を当てたCKDステージ3の治療ガイドを読むと、「今の自分に合った生活の優先順位」が見えやすくなるでしょう。
CKDの合併症は確かに多岐にわたりますが、それぞれのメカニズムと管理目標を理解し、一つずつ丁寧に対策していけば、「何もかもが不安」という状態から抜け出すことができます。血圧、貧血、骨・ミネラル代謝という三本柱を意識しながら、主治医や医療チームと相談し、自分に合った目標値と治療方針を確認していきましょう。今日できる小さな一歩(血圧手帳をつける、検査結果をノートにまとめる、食事の塩分を意識するなど)を積み重ねることで、合併症と上手につき合いながら、生活の質を守る道が必ず開けてきます。焦らず、一歩ずつ、ご自身のペースで取り組んでいきましょう。
腎機能が低下すると、なぜ全身に問題が起こるのか?
腎臓は単なる「尿を作る臓器」ではありません。主に3つの重要な役割を担っています。(1)体内の老廃物を濾過して尿として排泄するフィルター機能、(2)体内の水分量や電解質(ナトリウム、カリウムなど)のバランスを調整する機能、そして(3)血圧を調整し、赤血球の産生を促し、骨を健康に保つためのホルモン(レニン、エリスロポエチン、活性型ビタミンD)を産生する機能です。CKDによって腎機能が低下すると、これらの機能がすべて損なわれます。結果として、老廃物が体内に蓄積し(尿毒症)、体液が過剰になり(むくみ、高血圧)、貧血が進行し、骨がもろくなるという、全身にわたるドミノ効果が発生するのです7。
【最重要】心血管疾患:生命を脅かす最大の合併症
CKD患者さんにとって、最も注意すべき合併症は心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)です。実際、CKD患者さんは腎機能が正常な人と比較して心血管疾患のリスクが約3倍高いというデータもあります8。
「腎心連関」とは?腎臓と心臓の密接な関係
「腎心連関」とは、腎臓と心臓が互いに密接に影響を及ぼし合う状態を指す医学用語です。腎機能が悪化すると、複数のメカニズムを通じて心臓に過剰な負担がかかります。具体的には、水分や塩分の排泄が滞ることで血液量が増加し、血圧が上昇します。また、腎性貧血は心臓がより多くの血液を送り出そうとするため、心臓の仕事を増やします。さらに、尿毒症性物質(体内に溜まった毒素)が心筋に直接的なダメージを与えることも知られています8。
管理目標:血圧をどこまで下げるべきか?【JSN vs KDIGO】
高血圧はCKDを進行させ、心血管疾患のリスクを高める最大の要因の一つです。そのため、厳格な血圧管理が不可欠ですが、その目標値は国内外のガイドラインで若干異なります。この違いを理解することは、ご自身の治療方針を医師と相談する上で非常に重要です。
名古屋大学大学院医学系研究科の丸山彰一教授910や小杉智規准教授11らが策定に関わった日本腎臓学会(JSN)の「CKD診療ガイドライン2023」では、糖尿病やタンパク尿がある患者さんでは130/80 mmHg未満、それ以外の患者さんでは140/90 mmHg未満を目標としています。特に、日本の高齢化社会を反映し、75歳以上の高齢者ではまず150/90 mmHg未満を目指し、忍容性があればさらに低い値を目指すという、より慎重なアプローチを推奨しています3。
一方、ブリティッシュコロンビア大学のAdeera Levin教授12が共同議長を務める国際的な「KDIGO 2024 CKD Guideline」では、患者が耐えられるのであれば収縮期血圧(上の血圧)を120 mmHg未満にすることを推奨しており、より積極的な降圧治療を重視しています4。
この違いは、対象となった研究集団(アジア人対多民族)の違いや、腎臓・心臓保護効果を最大化する利益と、高齢者における過度な降圧による危険性とのバランスをどう考えるかという、各国の医療事情の違いを反映している可能性があります。
| ガイドライン | 対象患者 | 目標血圧 (mmHg) |
|---|---|---|
| 日本腎臓学会 (JSN) | 糖尿病合併 または タンパク尿陽性 | < 130/80 |
| 上記以外 / 75歳以上 | < 140/90 / < 150/90 (初期目標) | |
| KDIGO (国際) | 全CKD患者 | 収縮期血圧 < 120 (忍容性があれば) |
腎性貧血:倦怠感や息切れの知られざる原因
「一晩ぐっすり眠ったはずなのに、全く疲れが取れない」「少し階段を上っただけで動悸や息切れがする」。このような症状に心当たりはありませんか?それは「腎性貧血」が原因かもしれません13。
なぜ貧血になるのか?エリスロポエチン産生低下のメカニズム
腎性貧血の主な原因は、腎臓が赤血球の産生を促すホルモン「エリスロポエチン(EPO)」を十分に作れなくなることです。EPOは骨髄に働きかけ、血液の主成分である赤血球の産生を指示する重要な役割を担っています。腎機能が低下すると、このEPOの産生が減少し、結果として赤血球が不足し、貧血状態に陥るのです13。
治療目標:ヘモグロビン値はどの範囲を目指すか?
腎性貧血の治療目標は、ヘモグロビン(Hb)値を完全に正常化することではなく、安全な範囲内に維持することです。日本腎臓学会のガイドラインでは、ヘモグロビン値を10〜13 g/dLの範囲に保つことを目標としており、13 g/dLを超える値を目指すべきではないとしています3。治療法としては、従来からのEPO製剤の注射に加え、近年ではHIF-PH阻害薬という新しいタイプの経口治療薬も登場し、治療の選択肢が広がっています。
骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD):骨がもろくなり、血管が石灰化する
CKD-MBD(Chronic Kidney Disease-Mineral and Bone Disorder)は、CKDが進行するにつれて現れる複雑な合併症です。骨がもろくなるだけでなく、本来はしなやかであるべき血管が硬くなる「血管石灰化」を引き起こし、心血管疾患のリスクを著しく高めます。
複雑なメカニズム:リン・カルシウム・ビタミンD・PTHの乱れ
この複雑な病態は、リン、カルシウム、ビタミンD、そして副甲状腺ホルモン(PTH)という4つの要素のバランスが崩れることで生じます。
- 腎機能が低下すると、リンの排泄能力が落ち、血液中のリン濃度が上昇します。
- 同時に、腎臓でのビタミンDの活性化が妨げられます。
- 活性型ビタミンDが不足すると、腸管からのカルシウム吸収が低下し、血液中のカルシウム濃度が下がります。
- 低カルシウム血症に反応して、首にある副甲状腺がPTHを過剰に分泌します。
- 過剰なPTHは、血中カルシウム濃度を補うために骨からカルシウムを溶かし出し、骨を脆弱にします。
- 高リン血症とPTHの作用が、血管壁にカルシウムとリンが沈着する「血管石灰化」を促進し、動脈硬化を悪化させます514。
管理目標値の国際比較【JSDT vs KDIGO】
CKD-MBDの管理においても、日本の専門学会と国際的な組織ではアプローチに違いが見られます。
日本透析医学会(JSDT)のガイドラインでは、日本の透析患者を対象とした大規模研究の予後データに基づき、非常に厳格な数値目標を設定しています。具体的には、血清リン濃度を3.5〜6.0 mg/dL、補正カルシウム濃度を8.4〜10.0 mg/dL、intact PTH(PTHの指標)を60〜240 pg/mLの範囲に管理することを推奨しています5。
一方、KDIGOのガイドラインは、より柔軟なアプローチを提唱しています。特定の数値目標に固執するのではなく、各指標を「正常範囲に向ける」ことを目指し、個々の数値よりもその「推移(トレンド)」を重視するよう推奨しています14。これは、世界中の多様な患者背景を考慮した、よりグローバルで柔軟な視点と言えるでしょう。
| 指標 | 日本透析医学会 (JSDT) | KDIGO (国際) |
|---|---|---|
| 血清リン (mg/dL) | 3.5 – 6.0 | 「正常範囲に向ける」こと、 および「推移」を重視 |
| 補正カルシウム (mg/dL) | 8.4 – 10.0 | |
| intact PTH (pg/mL) | 60 – 240 |
【実践編】合併症の進行を遅らせるための自己管理
CKDの治療において、薬物療法と並行して自己管理、特に食事療法が極めて重要な柱となります。
食事療法:JSNガイドラインに基づく具体的なコツ
日本の食文化を踏まえた具体的な工夫が、治療の成否を分けます。日本腎臓学会のガイドラインに基づき、以下の3点が中心となります315。
- 減塩: 高血圧やむくみを管理するための基本です。味噌汁、漬物、醤油など、伝統的な和食には塩分が多く含まれがちです。出汁の旨味を活かしたり、酢や生姜、しそやゆずといった香味野菜や香辛料を上手に使ったりすることで、薄味でも美味しく食べられます。
- カリウム制限: 腎機能が低下すると高カリウム血症になりやすく、不整脈の原因となるため注意が必要です。芋類、かぼちゃ、ほうれん草、バナナなど、日本でよく食されるカリウムの多い野菜や果物は摂取量に注意が必要です。野菜は細かく切ってから茹でこぼしたり、水にさらしたりすることで、カリウムの量を減らすことができます15。
- タンパク質制限: 腎臓への負担を軽減するため、病期に応じてタンパク質の摂取量を調整します。ただし、過度な制限は栄養失調を招くため、必ず医師や管理栄養士の指導のもとで行う必要があります。
最新の治療薬トレンド:腎臓と心臓を守る新しい選択肢
近年、CKDの治療は飛躍的な進歩を遂げています。特に、SGLT2阻害薬とフィネレノンという2種類の新しい薬剤は、CKD治療に革命をもたらしました。
SGLT2阻害薬: もともとは糖尿病治療薬として開発されましたが、腎臓の糸球体(血液を濾過する部分)にかかる過剰な圧力を軽減する作用があることが判明しました。これにより、腎機能の低下を抑制し、心不全による入院を減らすなど、顕著な腎保護・心保護効果が示されています。KDIGO 2024ガイドラインでは、糖尿病の有無にかかわらず、特定の条件を満たすCKD患者への使用が強く推奨されています4。
フィネレノン: 非ステロイド性のミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)という新しいタイプの薬剤です。腎臓の炎症や線維化(組織が硬くなること)を抑制する効果があり、特に糖尿病性腎臓病患者において、腎機能低下と心血管イベントのリスクを減少させることが、FIDELIO-DKDやFIGARO-DKDといった大規模臨床試験で証明されています16。
よくある質問
透析はいつから必要になりますか?
透析の開始時期は、eGFR(推算糸球体濾過量)の値だけで決まるわけではありません。一般的にeGFRが15未満に低下し、かつ尿毒症の症状(吐き気、食欲不振、倦怠感など)、コントロール不能な体液貯留(重度のむくみ)、高カリウム血症などが現れた場合に検討されます。これは患者さんご自身の生活の質や全身状態を考慮し、医師と十分に話し合って決定されるべき重要な判断です17。
腎臓に良い食べ物、悪い食べ物は何ですか?
絶対的に「良い」または「悪い」食品というものは存在しません。重要なのは、ご自身の病期や血液検査の結果に合わせて食事を調整することです。一般原則は減塩ですが、病期が進行するにつれて、タンパク質、カリウム、リンの制限が必要になる場合があります。例えば、健康な人には良いとされるカリウム豊富な果物や野菜も、CKD患者さんにとっては危険な場合があります。個別の食事指導については、必ず主治医や管理栄養士にご相談ください15。
薬を飲み続けることの副作用が心配です。
どのような薬にも副作用の可能性はありますが、血圧や他の合併症を管理することの利益は、多くの場合、その危険性をはるかに上回ります。医師は副作用のリスクを最小限に抑えながら最大の効果が得られるよう、定期的に検査を行い、必要に応じて薬の種類や量を調整します。自己判断で薬を中断することは、病状を急激に悪化させる可能性があるため、絶対に避けてください。不安な点があれば、遠慮なく医師や薬剤師に相談することが大切です。
結論
慢性腎臓病(CKD)とその合併症との付き合いは、確かに長く複雑な道のりかもしれません。しかし、本記事で解説したように、科学的根拠に基づいた正しい知識を身につけ、食事療法や服薬といった自己管理を積極的に行い、医療チームと緊密に連携することで、病気の進行を遅らせ、様々な合併症を良好に管理し、生活の質を維持することは十分に可能です。特に、かかりつけ医と腎臓専門医が連携する「病診連携」18は、日本のCKD対策において重要な鍵となります。希望を持って、主治医と共に一歩一歩、治療の道を歩んでいきましょう。
免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。
参考文献
- 日本腎臓学会. CKDの推計患者数が2000万人に. m3.com. 2024. [インターネット]. [引用日: 2025年7月18日]. Available from: https://www.m3.com/clinical/news/1229752
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- 日本腎臓学会. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023. [インターネット]. 東京: 東京医学社; 2023 [引用日: 2025年7月18日]. Available from: https://jsn.or.jp/data/gl2023_ckd_ch02.pdf
- Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) CKD Work Group. KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease. Kidney Int. 2024;105(4S):S117-S314. doi: 10.1016/j.kint.2023.10.018. Available from: https://kdigo.org/wp-content/uploads/2024/03/KDIGO-2024-CKD-Guideline.pdf
- 日本透析医学会. 慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン. 2012. [インターネット]. [引用日: 2025年7月18日]. Available from: https://www.jsdt.or.jp/tools/file/download.cgi/1036/Clinical+Practice+Guideline+for+the+Management+of+CKD-MBD.pdf
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