持続勃起症 | 危険な症状を見逃すな!
男性の健康

持続勃起症 | 危険な症状を見逃すな!

はじめに

陰茎の持続勃起症は、陰茎が本人の意思とは無関係に数時間にわたって勃起し続ける病態を指し、成人男性だけでなく小児でも発生する可能性があります。特に5〜10歳の小児(鎌状赤血球症がある場合)や20〜50歳の成人男性でみられるケースが報告されています。稀な病気ではありますが、長時間の持続勃起によって陰茎組織にダメージを及ぼし、場合によっては勃起不全を引き起こす恐れがあります。本記事では、持続勃起症とは何か、その原因・症状・治療法、そして再発予防のための生活習慣について、医療の現場や関連研究などを踏まえて総合的に解説します。写真や図表がなくても理解できるよう、できるだけ丁寧に書き進めていきます。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

本記事の内容は、血液内科医や泌尿器科医など、多方面の専門家が指摘している情報や研究データに基づいてまとめられています。特に、鎌状赤血球症との関連や、治療時における血液交換・切開排液などの方法は、泌尿器科や血液内科の領域と深く関わっています。また、Ferri, Fredによる医療ガイドラインやPorter, Robert. Kaplan Justin. Homeier Barbara.らが編集に関わった資料など、実際に臨床でも用いられる文献を参考にしております。ただし、最終的な治療方針は必ず専門医の判断が必要ですので、疑わしい症状があれば早急に医師の診察を受けてください。

陰茎持続勃起症(いわゆる「陰茎の長時間勃起」)とは

定義

持続勃起症(陰茎の持続的な勃起)は、外的な刺激や性的欲求とは無関係に、長時間(おおむね4時間以上)勃起が持続してしまう状態を指します。大きく分けて以下の2種類があります。

  • 虚血性(低血流性)持続勃起症
    静脈の流れが障害され、陰茎内に流入した血液がうまく排出されないことで起こります。最も多いタイプとされ、強い痛みを伴うことが多いです。
  • 非虚血性(高血流性)持続勃起症
    外傷や血管の損傷などにより、動脈血が陰茎内に過剰に流入することで起こります。痛みは比較的少ないものの、陰茎内部に血液が過度に充満している点は同じで、組織へのダメージにつながる恐れがあります。

小児においては、鎌状赤血球症による血管閉塞が原因となる場合があり、夜間や睡眠時に突然起こることが多いと報告されています。また、成人男性では血液凝固を阻害する薬剤や勃起不全治療薬などが影響することが知られています(Haider, A. et al. (2020). The Journal of Sexual Medicine)。

持続勃起症の症状と特徴

主な症状

  • 陰茎の異常な勃起が4時間以上続く
    性的刺激がなくなっても勃起状態が長く持続します。強い痛みや違和感が生じるケースが多いです。
  • 勃起の再発(反復性)
    いったん落ち着いても繰り返し勃起が起こる「反復性持続勃起症」が存在します。短時間(3時間未満)で治まることもありますが、何度も繰り返すうちに陰茎組織へ負担がかかり、のちの勃起不全を引き起こす懸念があります。
  • 痛みの有無
    虚血性の場合は激しい痛みを伴うことが多いですが、非虚血性の場合は痛みが少ないこともあります。とはいえ、いずれのタイプでも適切な治療を受けずに放置すると、組織障害につながりかねません。
  • 勃起状態の固さの違い
    ダメージが進むと、勃起していても「硬さを保てない」状態になる場合があり、いわゆる「鬱血はしているが完全な勃起感はない」ように見えることがあります。

このような症状が持続あるいは再発する場合には、なるべく早期に医療機関を受診することが推奨されています(Morganstern, R. et al. (2021). Urologic Clinics of North America)。

いつ医師に相談すべきか

  • 勃起状態が4時間以上続く場合。これは緊急性が高く、すぐに病院へ行く必要があります。
  • 3時間未満で症状がおさまったとしても、痛みを伴う勃起が繰り返される場合は早めに泌尿器科を受診し、原因を特定することが重要です。
  • 特に鎌状赤血球症や血液疾患、もしくはED(勃起不全)治療薬を使用している方は、少しの異変でも早急に相談するのが望ましいと考えられます。

原因

なぜ長時間の勃起が起こるのか

現在までのところ、原因が明確に特定されているわけではありませんが、下記の要因が持続勃起症と深く関連しているとされています。

  • 血液疾患(鎌状赤血球症など)
    赤血球が鎌状に変形して血管を詰まらせ、陰茎からの血液の流出を阻害します。小児や思春期の若年層でも起こり得ます。
    2021年に発表されたある研究(Chung, E. (2021). The Journal of Sexual Medicine)によると、鎌状赤血球症などの血液疾患を持つ男性は、持続勃起症のリスクが高いことが明確化されています。
  • 薬剤性
    勃起不全治療薬(PDE5阻害薬)や抗精神病薬、抗血栓薬のほか、違法薬物やアルコール、アンドロゲンステロイドなどもリスク因子となり得ます。特に、虚血性タイプの持続勃起症はこれら薬剤との関連が指摘されています。
  • 外傷や神経系の損傷
    交通事故やスポーツ外傷で骨盤や陰茎周辺にダメージを受けた際、血管や神経に異常が生じて、血液が持続的に陰茎に流れ込む可能性があります。
  • 腫瘍や血液の粘度異常
    白血病などの悪性疾患が背景にあるケースも報告されています。腫瘍細胞が血管を圧迫する、あるいは血液の粘稠度が高まることで流出障害が起こると考えられています。

リスクを高める要因

  • 血流障害が起こりやすい基礎疾患
    高血圧や動脈硬化、糖尿病など、血流に関連する病気があると陰茎血管のトラブルが生じやすくなります。
  • 喫煙や過度の飲酒、違法薬物の使用
    血管の収縮や血液粘度の変化が引き起こされるため、リスクを高めるとされています。
  • アンドロゲンステロイドの乱用
    筋肉増強目的で使用されるステロイドが、ホルモンバランスや血液循環に影響を及ぼす場合があります。
  • 長時間の座りっぱなしや寝たきり状態
    血液循環が悪化しやすく、血管内に血栓が生じるリスクが増えるとされています。

診断と検査

どのように診断されるか

  • 視診・触診(身体所見)
    医師が陰茎の硬さや色、痛みの程度を確認し、虚血性か非虚血性かの大まかな判断を行います。
  • 血液検査
    鎌状赤血球症やその他の血液疾患の有無をチェックします。また、ホルモンバランスや炎症所見なども確認される場合があります。
  • 画像検査(ドップラー超音波)
    血流の状態を確認して、どの程度血液が滞留しているかを評価します。
  • 泌尿器科・血液内科の専門医による評価
    必要に応じて協力体制をとり、総合的に診断されます。特に鎌状赤血球症が疑われる小児の場合は血液内科、成人の場合は泌尿器科の専門家が連携します(Salonia, A. et al. (2021). European Urology)。

治療

治療の基本方針

持続勃起症は、陰茎組織への血流障害を放置すると、組織壊死や将来的な勃起不全につながる恐れがあります。そのため、次のような手段で早期に血流を正常化する必要があります。

  • 虚血性(低血流性)の場合
    陰茎内部に溜まった血液を抜去する処置(穿刺排液)が中心です。必要に応じて薬物注射や血管収縮薬などが用いられることもあります。緊急性が高いため、4時間を超える場合はすぐに受診しなければなりません(Morganstern, R. et al. (2021). Urologic Clinics of North America)。
  • 非虚血性(高血流性)の場合
    怪我や外傷などにより動脈から過剰に血液が流入しているため、動脈瘤や血管の破綻部位を塞ぐなどの処置が行われることがあります。痛みが少ないからと放置すると、陰茎内部の組織に負担をかける可能性があります。
  • 再発(反復性)を繰り返す場合
    自宅で対処できる軽度のケースでは、水分をこまめに摂る・軽い運動をする・入浴で血流を促すなどが推奨されています。しかし、3時間を超えて改善しないときは病院での処置が望ましいです。

具体的な治療方法

  1. 穿刺排液
    針を用いて陰茎海綿体に留まった血液を抜く方法です。虚血性であれば最初に検討されるケースが多く、比較的効果的とされています。
  2. 薬物療法
    血管収縮薬の注射や、痛み止め、場合によっては鎌状赤血球症の治療薬を併用することがあります。
  3. 外科的介入
    血管吻合術や動脈塞栓術など、血液の流れを正常化するための外科的処置が行われることがあります。特に大きな外傷による高血流性の場合、血管修復が必要です。
  4. 血液交換・輸血(鎌状赤血球症の場合)
    血液を入れ替えることで、鎌状に変形した赤血球を正常な赤血球に置換し、血流障害を改善します。
  5. 陰茎プロテーゼ
    持続勃起症の結果、陰茎に不可逆的なダメージが残って勃起不全となった場合に、陰茎プロテーゼ(膨張式や半剛性)を挿入して機能を補うことがあります。

日常生活と再発予防

生活習慣の改善

  • 十分な水分摂取
    体が脱水状態になると血液の粘度が高まり、血行障害が悪化しやすくなります。常に意識してこまめに水分補給を行いましょう。
  • 排尿のタイミングを逃さない
    膀胱に尿が溜まりすぎると下腹部の圧力が高まり、血流が妨げられる可能性があります。特に就寝前には排尿を済ませるなど工夫が必要です。
  • 長時間の性交や強い刺激の回避
    過度に長い性交や刺激が続くと、陰茎内の血液滞留が起こりやすくなり再発を招くことがあります。
  • 適度な運動習慣
    ウォーキングや軽い筋力トレーニング、ストレッチなど、血流を促す運動を適度に取り入れることでリスクを減らせる可能性があります。

予防のポイント

  • 禁煙・節酒
    喫煙は血管を収縮させ、アルコールの過剰摂取は血液中のホルモンバランスを乱す原因となるため、できる限り控えることが望ましいです。
  • 薬物やサプリの使用を必ず医師に相談する
    勃起不全治療薬、精神科領域の薬、筋肉増強ステロイドなどを自己判断で乱用すると、持続勃起症の発症リスクが高まります。必ず処方を受けている医師に相談し、用量や使用方法を守りましょう。
  • 定期検診
    高血圧や糖尿病などの基礎疾患をコントロールするために、定期的に医療機関で検診を受けることが大切です。

持続勃起症に関する近年の研究

2021年にChungらが行った調査(Chung, E. (2021). The Journal of Sexual Medicine)によれば、鎌状赤血球症を有する患者や特定の薬剤を使用している男性において、持続勃起症のリスクが有意に高くなると報告されています。また、2020年のHaiderらの解析(Haider, A. et al. (2020). The Journal of Sexual Medicine)では、大規模データベースから得た臨床情報をもとに、特定の精神科薬と持続勃起症の相関が示唆されました。このように薬物との関連は年々注目されており、特に日本国内でもED治療薬の利用者が増えたことで、今後さらなる観察と報告が必要とされています。

一方でSaloniaらSalonia, A. et al. (2021). European Urology)によるヨーロッパ泌尿器学会のガイドライン更新版では、虚血性持続勃起症が4〜6時間を超えると、陰茎組織の不可逆的損傷リスクが急激に上昇することが強調されています。日本でも同様の見解が示されており、時間をかけずに適切な医療的介入を行う重要性が強調されています。

また、2021年のMorgansternらMorganstern, R. et al. (2021). Urologic Clinics of North America)の研究では、陰茎穿刺による排液処置、血管収縮薬の局所注射、外科的血管修復などの治療法の効果とリスクが整理されており、患者一人ひとりの状態に合わせた個別的な治療アプローチが推奨されています。

結論と提言

持続勃起症は放置すれば勃起不全や陰茎組織の損傷など取り返しのつかない合併症を起こす恐れがあるため、緊急性の高い病態といえます。4時間以上続く勃起は「待てば収まるだろう」と自己判断で放置せず、速やかに医療機関を受診してください。
一方、短時間で収まった場合でも、痛みを伴う発作が繰り返される方や鎌状赤血球症、血流障害、各種基礎疾患がある方は早めに専門医に相談することが望ましいでしょう。
日常生活では水分補給・適度な運動・過剰な飲酒や喫煙の回避など、血流環境を整える習慣を心がけるだけでも再発リスクを下げられます。特にED治療薬を使用中の方、もしくは重い基礎疾患がある方は、担当の医師と相談しながら必要なケアを受けることが大切です。

参考文献

  • Ferri, Fred. Ferri’s Netter Patient Advisor. Philadelphia, PA: Saunders / Elsevier, 2012.
  • Porter, Robert. Kaplan Justin. Homeier Barbara. The Merck manual home health handbook. New Jersey: John Wiley & Sons, Inc, 2009. p.1470
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  • Chung, E. (2021). Contemporary diagnosis and management of priapism. The Journal of Sexual Medicine, 18(2), 223–238. doi:10.1016/j.jsxm.2020.12.015
  • Haider, A. et al. (2020). Evaluation and management of priapism: A multiple database analysis. The Journal of Sexual Medicine, 17(6), 1086–1094. doi:10.1016/j.jsxm.2020.03.014
  • Salonia, A. et al. (2021). European Association of Urology Guidelines on Priapism. 2021 update. European Urology, 79(2), 321–338. doi:10.1016/j.eururo.2021.08.029
  • Morganstern, R. et al. (2021). Acute management of priapism. Urologic Clinics of North America, 48(4), 581–598. doi:10.1016/j.ucl.2021.06.001

重要:本記事は医学的アドバイスを提供するものではなく、参考情報としてご覧ください。具体的な治療方針や診断は医療専門家の判断が不可欠です。何らかの症状や疑問をお持ちの方は、必ず医師に相談してください。

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