この記事の科学的根拠
この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的証拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性を含むリストです。
- 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」: この記事における重症度分類、治療方針、薬物療法に関する指針は、厚生労働省が発行した公式な医療基準に基づいています。1
- 厚生労働省「罹患後症状のマネジメント」: 罹患後症状(Long COVID)の定義、症状、管理アプローチに関する指針は、厚生労働省の公式文書に基づいています。2
- 厚生労働省研究班による住民調査: 日本の一般住民における後遺症の具体的な有症状率やワクチン接種によるリスク低減効果に関する記述は、八尾市・札幌市で行われた大規模調査の結果を引用しています。4
- 世界保健機関(WHO): 罹患後症状の国際的な定義や一般的な症状分類は、世界保健機関(WHO)の基準に基づいています。89
- 全国コロナ後遺症患者と家族の会: 後遺症患者が直面する社会的な課題やその声に関する記述は、当事者団体の活動と国への要望に基づいています。19
要点まとめ
- 2025年現在、新型コロナの主流な初期症状は「激しい喉の痛み」「咳」「発熱」であり、かつての味覚・嗅覚障害は減少しています。
- 急性期を過ぎても、倦怠感、呼吸困難、集中力低下(ブレインフォグ)など、多様な後遺症(Long COVID)が日本の成人の1割以上で報告されており、社会生活に深刻な影響を与えています。
- 後遺症に対する特効薬はなく、治療は症状を和らげる対症療法やリハビリが中心ですが、国や自治体による職場復帰支援などのサポートも存在します。
- ワクチン接種は後遺症のリスクを低下させる可能性が報告されています。不安な症状があれば、一人で抱え込まず、かかりつけ医や専門の相談窓口に相談することが重要です。
2025年現在の新型コロナ:主な初期症状と変化
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状は、オミクロン株以降の変異株の出現により大きく変化しました。現在、最も顕著な症状は激しい喉の痛み、発熱、咳であり、かつて特徴的とされた味覚・嗅覚障害は初期症状としては稀になっています。20
主流変異株(NB.1.8.1等)の症状トップ5
日本の臨床現場からの報告によると、現在の主流株では以下の症状が多く見られます。67
- 激しい喉の痛み: 「カミソリで喉を剃られるような」と表現されるほどの強い痛みが特徴です。あるクリニックの調査では、陽性者の72.2%がこの症状を訴えています。710
- 咳・痰: 喉の痛みと同率の72.2%で報告される主要な呼吸器症状です。7
- 38度以上の発熱: 陽性者の66.7%に見られ、依然として重要な指標です。7
- 鼻水・鼻づまり: 約44.4%の患者に見られる一般的な風邪様症状です。7
- 全身の倦怠感: 発熱や筋肉痛に伴って現れることが多いです。
かつての代表的症状(味覚・嗅覚障害)の減少
オミクロン株流行前は約40%の患者に報告されていましたが、現在では初期症状として味覚・嗅覚障害を訴える患者は0%という報告もあり、その頻度は著しく低下しています。7 ただし、後遺症として遷延するケースは依然として存在します。3
風邪やインフルエンザとの見分け方
症状のみでの完全な鑑別は困難ですが、いくつかの傾向があります。確定診断には検査が不可欠です。
症状 | 新型コロナウイルス(2025年現在) | インフルエンザ | 一般的な風邪 |
---|---|---|---|
発症 | 比較的急速 | 突然 | ゆるやか |
発熱 | 37.5℃以上が多いが、高熱は稀な場合も | 38℃以上の高熱が突然出る | 微熱が多い |
喉の痛み | 非常に強いことが多い | 強いこともある | 軽度~中等度 |
咳 | 乾いた咳から始まることが多い | 強い咳が出ることがある | 軽度 |
全身倦怠感 | 強い場合がある | 非常に強い | 軽い |
筋肉・関節痛 | よく見られる | 強い | 稀 |
いつ医療機関を受診すべきか?緊急性の高いサイン
多くの場合は軽症で自宅療養が可能ですが、重症化の兆候を見逃さないことが重要です。
自宅療養で対応できる場合
症状が軽い場合は、厚生労働省の推奨に従い、発症後5日間が経過し、かつ症状軽快後24時間が経過するまでは外出を控え、自宅での休養、水分補給、市販薬での対症療法が基本となります。12
緊急受診が必要な症状(救急車を呼ぶべきサイン)
以下の症状が見られる場合は、直ちに医療機関に連絡するか、救急車の要請を検討してください。これは国際的な基準とも一致しています。113
- 呼吸困難、息切れ
- 持続する胸の痛みや圧迫感
- 意識が朦朧とする、新しい混乱
- 顔色や唇、爪が青白い、または灰色になる
- 呼びかけても起きられない、または起きていられない
【重要】新型コロナ罹患後症状(Long COVID)のすべて
罹患後症状、通称「Long COVID」は、日本においても深刻な健康問題となっています。
罹患後症状(Long COVID)とは?
世界保健機関(WHO)および厚生労働省は、罹患後症状を「COVID-19の発症から3ヶ月経った時点にもみられ、少なくとも2ヶ月以上持続し、他の疾患による症状として説明がつかないもの」と定義しています。29
日本における罹患率と実態
厚生労働省研究班による日本の入院患者を対象とした調査では、診断から12ヶ月後においても約30%の方に何らかの後遺症が認められました。3 また、八尾市・札幌市の住民調査では、オミクロン株流行期の後遺症有症状率はアルファ・デルタ期より低いものの、成人で12~17%に達することが示されています。4 さらに、東京都が実施した都民1万人アンケート調査では、後遺症によって日常生活に支障があると回答した人が約85%に上るなど、その影響の大きさが浮き彫りになっています。14
最も一般的な後遺症の症状
日本国内の複数の調査から、特に報告の多い症状は以下の通りです。
順位 | 症状 | 有症状率の例(調査による) | 主な情報源 |
---|---|---|---|
1 | 疲労感・倦怠感 | 13% (12ヶ月後) | 厚労省研究班3 |
2 | 呼吸困難(息切れ) | 9% (12ヶ月後) | 厚労省研究班3 |
3 | 筋力低下 | 8% (12ヶ月後) | 厚労省研究班3 |
4 | 集中力低下(ブレインフォグ) | 8% (12ヶ月後) | 厚労省研究班3 |
5 | 睡眠障害 | 7% (12ヶ月後) | 厚労省研究班3 |
6 | 記憶障害 | 7% (12ヶ月後) | 厚労省研究班3 |
7 | 咳 | 5% (12ヶ月後) | 厚労省研究班3 |
8 | 脱毛 | 5% (12ヶ月後) | 厚労省研究班3 |
9 | 頭痛 | 5% (12ヶ月後) | 厚労省研究班3 |
10 | 味覚・嗅覚障害 | 5% (12ヶ月後) | 厚労省研究班3 |
注: 上記は厚生労働省研究班の入院患者調査3に基づく一例。症状の頻度は調査対象や時期により異なる。
治療とマネジメント
現時点で罹患後症状に対する確立された特異的な治療法はなく、対症療法(症状を和らげる治療)やリハビリテーションが中心となります。2 厚生労働省の「罹患後症状のマネジメント」の手引きでは、まずかかりつけ医等に相談し、必要に応じて各症状の専門医と連携して治療を進める、多職種連携によるケアが推奨されています。2
社会生活への影響と支援
後遺症は、仕事や学業など、日常生活に深刻な影響を及ぼすことがあります。
- 職場復帰と就労支援: 厚生労働省は、後遺症に悩む労働者と事業主双方のためのリーフレットを作成し、時短勤務やテレワークの活用など、無理のない職場復帰への配慮を求めています。1718
- 学生への配慮: 埼玉県教育委員会などは、後遺症のある児童生徒が無理なく学校生活を送れるよう、学校側への相談を促す通知を出しています。16
- 患者会の声: 「全国コロナ後遺症患者と家族の会」は、医療体制の拡充や経済的支援、福祉サービスの適用などを国に要望しており、後遺症が社会全体で取り組むべき課題であることを示しています。19
よくある質問
Q1: 症状が出たら何日自宅待機すべきですか?
A1: 2023年5月以降、法律に基づく一律の外出自粛要請はありません。しかし、厚生労働省は、発症日を0日目として5日間は外出を控えること、かつ症状軽快から24時間経過するまでは様子を見ることが推奨されるとしています。12
Q2: ワクチンを接種していても後遺症になりますか?
Q3: どこの医療機関に相談すればよいですか?
A3: まずは、ご自身の症状に応じてかかりつけ医や地域の医療機関に相談することが第一歩です。例えば、咳が続けば内科・呼吸器内科、嗅覚障害なら耳鼻咽喉科などです。必要に応じて、後遺症に対応している専門外来を紹介されることもあります。各自治体のウェブサイトでも相談窓口の案内があります。21
結論
2025年現在、新型コロナウイルスの症状は変化し、特に「激しい喉の痛み」が特徴となっています。さらに、急性期を乗り越えた後も、多くの人々が倦怠感や集中力低下といった「後遺症(Long COVID)」に苦しんでおり、その影響は健康面だけでなく社会生活にも及んでいます。風邪と似た症状であっても自己判断せず、不安な場合は医療機関に相談し、適切な検査を受けることが重要です。特に後遺症が疑われる場合は、一人で抱え込まず、かかりつけ医や専門の相談窓口を活用し、利用できる社会的支援について情報を得ることが、回復への大切な一歩となります。東邦大学教授であり日本感染症学会の元理事長である舘田一博氏のような専門家も、最新の知見に基づいた治療法の研究を続けています。22
参考文献
- 厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第10.1版. 2024. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/001248424.pdf
- 厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント 第3.1版. 2025. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001422904.pdf
- 厚生労働科学研究費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)「COVID-19における後遺症の実態解明と病態生理解明に向けた基盤研究」. 令和4年度 総括・分担研究報告書. 2023. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/001159406.pdf
- 厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症の罹患後症状に関する実態調査(令和4年度)結果報告. 2024. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001285610.pdf
- 国立健康危機管理研究機構. 新型コロナウイルス感染症サーベイランス月報. 2025. Available from: https://id-info.jihs.go.jp/diseases/sa/covid-19/060/covid19-surveillance-report.html
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- ひまわり医院. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状について【2025年最新】. [インターネット]. 2025 [引用日: 2025年7月18日]. Available from: https://soujinkai.or.jp/himawariNaiHifu/covid19-symptoms/
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- Fast Doctor. コロナの症状で喉が痛いのはなぜ?風邪やインフルエンザとの違いや対処法を解説. [インターネット]. 2025 [引用日: 2025年7月18日]. Available from: https://fastdoctor.jp/columns/sore-throat-covid19
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- 東京都. 新型コロナウイルス感染症後遺症の実態調査(都民1万人アンケート調査結果). 2024. Available from: https://www.corona-kouisyou.metro.tokyo.lg.jp/about/data/
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- 埼玉県. 県立学校における新型コロナ後遺症への対応について. 2023. Available from: https://www.pref.saitama.lg.jp/e2201/coronavirus/index.html
- 厚生労働省 鳥取労働局. 新型コロナウイルス感染症の罹患後症状に悩む方の治療と仕事の両立支援について. 2023. Available from: https://jsite.mhlw.go.jp/tottori-roudoukyoku/newpage_01910.html
- 厚生労働省. 新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け). Available from: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html
- 全国コロナ後遺症患者と家族の会. 規約・活動内容. [インターネット]. 2024 [引用日: 2025年7月18日]. Available from: https://sites.google.com/view/family20231111
- Fast Doctor. 新型コロナの症状は変異株でどう違う?アルファ・デルタ・オミクロン株など. [インターネット]. 2025 [引用日: 2025年7月18日]. Available from: https://fastdoctor.jp/columns/covid19-symptoms-variant-strain
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- 舘田一博, 大毛宏喜, 石井誠. 感染症最新の治療 2025ー2027. 東京: 南江堂; 2025.
- Gandhi RT, et al. 2025 Clinical Practice Guideline Update by the Infectious Diseases Society of America on the Treatment and Management of COVID-19: Vilobelimab. Clin Infect Dis. 2025;ciaf235. doi:10.1093/cid/ciaf235. PMID: 40402009. Available from: https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciaf235/8140642