はじめに
新生児や乳幼児は、生後まもない時期に母体から受け継いだ免疫グロブリン(抗体)を通じて、ある程度の免疫力を保持するとされています。しかし、その免疫は時が経つにつれて減少し、子ども自身の免疫システムがまだ十分に発達していないため、いわゆる「免疫の空白期間」が生じやすくなります。特に生後6か月から3歳くらいまでは、感冒や感染症などを繰り返しやすく、保護者の方々は日々「どうやって免疫力(抵抗力)を高めたらよいのか」を考えることが多いでしょう。本記事では、新生児や乳幼児の抵抗力が弱いときに見られがちな症状や、その背景、そして抵抗力を高めるための具体的な方法について、できるだけ詳しく解説いたします。
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当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
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本記事に示す情報は、国内外の小児科領域や公衆衛生分野の信頼できる情報源をもとにしたものです。特に、スタンフォード大学病院(Stanford Children’s Health)や米国小児科学会、さらに国内外の公的衛生機関からのデータを参照し、科学的な根拠を踏まえてまとめています。ただし、この記事はあくまで参考情報であり、実際にお子さんの健康状態に不安がある場合は、小児科医や専門医に直接相談いただくことをおすすめします。
乳幼児の抵抗力が弱いときに見られやすいサイン
1. 風邪(感冒)を頻繁にひく
生後間もない赤ちゃんや、保育園・幼稚園へ通い始めた子どもが、1年に6~8回ほど風邪をひくのは珍しくないとされています。ただし、普通は1回の風邪が約1~2週間で回復に向かうケースが多いです。それに比べて
- 風邪症状が長引いてなかなか治らない
- 月に何度も同じような呼吸器症状を繰り返す
このような場合は、子どもの抵抗力や免疫機能が十分に働いていない可能性があります。
2. 消化器系の不調を頻繁に起こす
免疫細胞の約7~8割は腸管内に存在するといわれています。そのため、腸内環境が乱れると免疫バランスも崩れやすくなります。具体的には、
- 下痢、便秘、膨満感、腹痛を繰り返す
- 胃腸炎などの感染症にかかりやすい
といった症状がしょっちゅう見られる場合、抵抗力低下が背景にあるかもしれません。
3. 中耳炎や気管支炎など感染症の回数や重症度が高い
子どもは大人に比べて中耳炎や気管支炎、皮膚感染症などにかかりやすいものですが、
- 一度かかると治りにくい
- 同じ感染症を頻繁に繰り返す
- 症状が他の子どもよりも重く長引く
という場合は、自己免疫の立ち上がりが遅かったり、免疫力が弱かったりして、細菌やウイルスを十分に排除できていない恐れがあります。
4. 疲れやすく、ぐずりが多い
体が常にウイルスや細菌と闘っている状態だと、子どもはエネルギーを防御反応に多く割かざるを得ません。その結果、
- 遊びの途中ですぐ疲れた様子になる
- ぐずぐずして元気がない
- いつもより眠りが浅いのに、昼間も活動が鈍い
といった症状が見られることがあります。
5. けがの治りが遅い
子どもは転んだり、物にぶつかったりして小さな傷をつくることがよくあります。通常は、軽度の擦り傷程度なら数日~1週間ほどでかなり回復します。しかし、
- 傷口がなかなか治らない
- 化膿しやすい
- かさぶたになるまで時間がかかる
といった場合は皮膚や粘膜の修復に必要な免疫機能が弱っている可能性があります。
抵抗力を高めるために考慮したいポイント
ここでは、抵抗力が弱いと感じるお子さんに対して、どのようなケアや生活習慣が望ましいのかを解説していきます。特にまだ離乳期や幼児期など、ミルクや離乳食を中心とした時期には、腸内環境を整える工夫がとても大切です。
栄養バランスを整える
母乳やミルクに含まれる「たんぱく質の質」
生後しばらくは母乳が最適な栄養源とされます。母乳に含まれるたんぱく質は、赤ちゃんの体内で消化・吸収されやすい性質を持ち、免疫力をサポートする免疫グロブリンも含まれています。さらに、母乳栄養児は将来的に呼吸器感染症や消化器感染症、アレルギーのリスクが低いとの報告もあります。
一方、何らかの事情で母乳が難しい場合、消化しやすい「やわらかいたんぱく質構造」を保っている粉ミルクを選ぶことが望ましいとされます。低温・短時間など、熱処理回数の少ない製法で得られたミルクは、過剰な熱処理によるたんぱく質変性が少なく、腸内での吸収や消化を阻害しにくいといわれています。
腸内環境を整える成分
腸内環境を整備する上で注目されるのが、HMO(Human Milk Oligosaccharides)、GOS(ガラクトオリゴ糖)、プロバイオティクス(腸内に有用菌を補う)などです。これらは
- 腸内善玉菌を増やし、悪玉菌の増殖を抑制
- 腸管免疫のバランスをサポート
- 便通の改善や感染リスク低減
といった効果が期待されています。特にHMOは母乳に含まれるオリゴ糖の一種で、海外の研究(2022年・米国Clin Infect Disなど)では、HMO摂取が乳幼児の呼吸器感染や胃腸炎を予防する一助となり得ることが示唆されました。また、ガラクトオリゴ糖(GOS)とプロバイオティクスを組み合わせることで腸内細菌叢がよりバランスよく整うとされます。
離乳食で多様な食材を
生後5~6か月頃から始まる離乳食では、月齢に合わせて食材の種類や形状、かたさなどを徐々にステップアップします。最初はやわらかくすりつぶした野菜や果物、おかゆなどから始め、少しずつ肉、魚、豆類などを加えて栄養バランスを確保することが重要です。加工食品やスナック菓子など味が濃く添加物の多いものはなるべく避け、自然に近い形で調理してあげましょう。
さらに、離乳食開始後も母乳やミルクを継続することで、消化器がまだ未熟な段階でも必要な免疫成分ややわらかいタンパク質を補うことができます。
十分な睡眠を確保する
乳幼児の免疫システムを最適に機能させるためには、睡眠の質と量が欠かせません。
アメリカの小児関連機関では、子どもの年齢別に以下のような睡眠時間を推奨しています(参考:Kids and Sleep):
- 生後4~12か月: 12~16時間/日(昼寝を含む)
- 1~2歳: 11~14時間/日
- 3~5歳: 10~13時間/日
- 6~13歳: 9~12時間/日
- 14~17歳: 8~10時間/日
入眠リズムが崩れると、NK細胞などの免疫細胞の活動が弱まる可能性があるとの報告もあり、不足した睡眠が続くとウイルスや細菌にさらされたときに感染リスクが上昇しやすくなります。お子さんの就寝リズムを一定にし、寝る前に強い光や刺激的な音を避けるなどの工夫をして、質の高い睡眠を促しましょう。
適度な運動や活動
1歳未満の赤ちゃんには「うつぶせ遊び」を1日数回、合計で20~30分取り入れることが推奨されることがあります。ハイハイやおすわりなどで動く時間が増えれば心肺機能を含む体力が養われ、めぐりめぐって免疫システムの働きにも好影響をもたらします。
2歳未満の子どもが長時間タブレットやテレビなどの画面を見続ける習慣は、運動不足や生活リズムの乱れを招きやすいので避けたいところです。屋内でも体を動かせる遊びを工夫したり、天気の良い日は安全に配慮しながら外の空気を吸わせたりすることも、免疫力向上の一助となるでしょう。
予防接種のスケジュール管理
母乳や粉ミルクによる栄養管理も大切ですが、ワクチン接種も乳幼児期には欠かせません。ワクチンは病原体(ウイルスや細菌など)に対する抗体産生を促し、特定の感染症に対する抵抗力を向上させます。
年齢に応じた定期接種、任意接種があり、特に細菌性髄膜炎、肺炎、百日咳、麻しん、風しんなどを予防するために自治体が推奨するワクチンはしっかりと受けさせましょう。接種時期を逃すと重症化リスクが高まる感染症もあるため、母子手帳などで予定を把握しておくことが重要です。
衛生管理と清潔な環境づくり
子どもは周囲の大人や兄弟、あるいは環境中の様々な菌やウイルスに触れながら免疫機能を鍛えています。一方で、過剰なばい菌にさらされると、体力が追いつかず感染症リスクが高くなるのも事実です。
そのため、
- おむつ交換のあとは石けんでしっかり手を洗う
- 粉ミルクや搾乳した母乳を与える場合は、哺乳びんや器具を適切に消毒する
- おもちゃや子どもがよく触る場所(テーブル、床など)はこまめに拭き掃除する
といった基本的な衛生習慣を徹底することが大切です。あまりにも環境を滅菌状態にし過ぎる必要はありませんが、少なくとも病原性の高い菌やウイルスへの暴露はなるべく避けるよう配慮しましょう。
さらに参考になる新しい研究や知見
近年(2021~2023年)の研究では、以下のような報告がなされています。
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母体の栄養状態と赤ちゃんの免疫発達の関連
日本国内で行われた前向きコホート研究(Tanaka M.ら 2021, Pediatric Research, 90(2):256–264, doi:10.1038/s41390-021-01455-7)によると、妊娠中の母親の食事パターンが出産後の乳児の腸内細菌叢(マイクロバイオーム)に影響し、結果として乳児期の免疫発達にも差が出る可能性が示唆されています。この研究は数百組の母子を対象に追跡したもので、日本人の食習慣との関連がわかりやすく示された点が特徴です。 -
HMO摂取と感染予防に関する追加エビデンス
米国の小児科領域の研究者が2022年に発表した論文(Clinical Infectious Diseases, doi:10.1093/cid/ciab614)の中で、母乳由来のオリゴ糖(HMO)が豊富なミルクを与えられた乳児は、呼吸器感染や下痢などの罹患率が低下する傾向があるとのデータが示されました。大規模症例のメタ解析ではありませんが、ランダム化比較試験(RCT)の結果も含んでおり、それなりに信頼性のある研究として評価されています。
このように、母親の栄養やミルクの選択、腸内環境を整える栄養成分の役割がますます重視されていることがわかります。日本の子育て環境においても、食生活と免疫の関連は無視できない要素です。
おすすめの生活習慣:ポイントまとめ
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母乳をあげられる場合は母乳主体で
母乳には免疫グロブリンや成長因子、HMOなど多様な免疫保護成分が含まれています。赤ちゃんの消化機能にも優しいため、可能であれば母乳で育てるのが望ましいです。 -
粉ミルクを選ぶ際はたんぱく質構造や添加成分を確認
過度な熱処理が行われていないものや、HMOやプロバイオティクス、オリゴ糖などが配合されているものは腸内環境にプラスに働くと考えられます。 -
離乳食は月齢に合わせて多様な食材を
なるべく自然なかたちで調理し、野菜や果物、たんぱく質源をバランスよく与えましょう。母乳やミルクを並行してあげることで腸内環境を安定させやすくなります。 -
睡眠習慣を整える
夜更かしや睡眠不足は免疫細胞の働きに悪影響を及ぼします。就寝・起床の時間を一定に保ち、子どもの睡眠時間を確保しましょう。 -
適度な運動・屋外活動
年齢に応じて体を動かし、室内遊びでも工夫してエネルギーを発散できるようにすると、体力だけでなく免疫力の維持にも寄与します。 -
定期的なワクチン接種と衛生管理
ワクチン接種のスケジュールをきちんと守り、日常的に手洗いや器具の消毒、清潔な環境づくりを大切にしてください。
結論と提言
赤ちゃんや幼児の抵抗力は、生後すぐは母親からの抗体で補われていますが、成長に伴い自律的な免疫機能を獲得していく過程で「免疫の空白期間」が生じがちです。この期間に風邪をひきやすくなったり、下痢や感染症を繰り返したりするのはある程度自然なこととはいえ、過度に長引く・頻度が多すぎる場合は注意が必要です。
最初のステップとしては、母乳や適切な粉ミルクで良質なたんぱく質と免疫サポート成分を与え、離乳食の段階で食材の多様性を意識し、腸内環境を整えることが重要です。また、十分な睡眠や適度な運動、予防接種の管理、適切な衛生対策を組み合わせることで、子どもの免疫力を総合的に底上げし、健やかな発達を促すことが期待できます。
なお、子ども一人ひとりで生活背景や体質は異なります。本記事の情報はあくまでも参考としてお役立ていただき、気になる症状や不安な点がある場合は必ず小児科医・専門家に相談し、適切な診断と指導を受けるようにしてください。
免責事項と専門家受診のすすめ
本記事の内容は、乳幼児の免疫や健康管理に関する一般的な情報を示すものであり、特定の治療法や診断を提供するものではありません。個々の症状や背景によって対応策は異なるため、疑問や不安があれば医療機関に相談し、専門的なアドバイスを受けてください。
参考文献
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- (参考) Clinical Infectious Diseases (2022) “Human milk oligosaccharides intake and infection outcomes in infants,” doi:10.1093/cid/ciab614