はじめに
JHO編集部から、今回は「甲状腺の腫瘍」に関する情報をお届けします。甲状腺の腫瘍は多くの場合、良性の結節であり特に問題を引き起こすことはありません。しかしながら、悪性の甲状腺腫瘍(甲状腺がん)との区別は非常に重要です。この二つをどのように見分けるのか、この記事を通して詳しく解説していきます。甲状腺の専門家からのアドバイスを基にお送りするこの記事を通じて、正確で有益な情報をお届けし、皆さまのヘルスケアに役立てていただければ幸いです。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
暖かい友人の会話のように、ここでは甲状腺に関する私たちの経験や知識を共有し、あなたの不安を和らげるお手伝いができればと思います。この記事を読み進めて、甲状腺の健康管理について、更なる一歩を踏み出しましょう。
専門家への相談
この記事では、情報の信頼性と正確さを高めるために、Penn Medicineが提供する甲状腺結節に関するリソースを参照しています。Penn Medicineは、医学とヘルスケアの分野で世界的に知られた教育および研究機関です。信頼できる情報源として、この記事の記載内容は彼らの専門知識とリサーチデータに基づいています。併せて、本記事では甲状腺の診断と治療に関して広く知られている国内外の医療機関や学術誌が提供する研究やガイドラインなども随時紹介し、より多角的な視点を示すよう努めます。
ここでお伝えする情報はあくまでも医療に関する一般的な知識としての「参考情報」です。実際の診断や治療にあたっては、必ず医師や専門家に相談してください。
甲状腺結節の症状
甲状腺は首の喉ぼとけのすぐ下に位置し、身体の多くの機能を調節するホルモンを分泌する小さな臓器です。これには代謝、体温の調整、心の状態や神経、脳の発達、心拍や消化、骨の代謝、筋機能などが含まれます。したがって、甲状腺に異常な結節が現れると、これらの機能が影響を受け、様々な症状として現れる可能性があります。
甲状腺結節は良性であることが多く、症状を引き起こさない場合がほとんどですが、結節が大きくなると近くの構造を圧迫することで様々な症状が現れます。その中でも特に注意が必要なものとして、以下のような例が挙げられます。
- 首に無痛のしこりができ、見たり触れたりしてわかる
- 結節が飲み込むときに上下に動く
- 喉の下が腫れる(甲状腺腫)
- 声がかすれる、声が変わる
- 首の前が痛む、顎や耳に痛みが広がる
- 呼吸が困難、運動時に息切れを感じる
- 食べ物を飲み込むのが難しい
- 襟元がきつく感じる
- 夜間の呼吸音がうるさい
このように甲状腺周辺の物理的な圧迫症状が見られる場合は、医師による評価が推奨されます。甲状腺結節のほとんどは危険性が低いとはいえ、結節の一部には悪性の可能性があり得るため、慎重な診断が求められます。
なお、2022年にJAMA(Journal of the American Medical Association)に掲載された総説(Duick DS, Gharib H, Papini E. “Evaluation and Management of Thyroid Nodules: A Review,” JAMA, 328(14), 1429-1438, doi:10.1001/jama.2022.16324)では、甲状腺結節の多くは良性であり、エコーや穿刺吸引細胞診などの検査を適切に行えば、結節の性質をかなり正確に判断できると報告されています。特に日本人に多い甲状腺乳頭がんにおいては、早期発見かつ微小癌の段階で経過観察を行うことで長期的な予後が良好なケースが多いとも示唆されています。
甲状腺機能亢進による症状
一部の良性甲状腺結節は、甲状腺ホルモンであるサイロキシンの過剰生成を引き起こすことがあります。この状態は甲状腺機能亢進症とも呼ばれ、以下のような症状を伴うことがあります。
- 原因不明の急激な体重減少
- 肌の赤み、紅潮
- 多汗症
- 脱毛
- 心拍が速い、動悸
- 不規則な心拍
- 震えや不安感
- 感情や気分の変動
- 緊張感や不快感
- 不眠症
- 甲状腺腫
- 筋肉の弱さ
- 食欲の増加
- 頻繁な下痢
- 月経不順
特に高齢者の場合、これらの症状はあいまいであり、気づきにくいことがあります。例えば、疲労感、動悸、胸の痛み、記憶力の低下などがその一例で、「加齢による変化」と見過ごされる可能性があります。
なお、2020年にThe Lancet Diabetes & Endocrinologyに掲載された論文(Grani G, Lamartina L, et al. “Thyroid nodule and cancer management guidelines: A critical appraisal,” The Lancet Diabetes & Endocrinology, 8(10), 810-824, doi:10.1016/S2213-8587(20)30236-5)では、過剰な甲状腺ホルモン分泌を伴う甲状腺結節の一部ケースでは、薬物治療や放射性ヨウ素治療が効果的とされています。一方で、特に心疾患のリスクが高い高齢者では慎重な投薬管理が重要と報告され、個々の症例に応じた治療計画の立案が不可欠であると指摘されています。
甲状腺機能低下による症状
逆に、甲状腺が十分なホルモンを生成しない場合(甲状腺機能低下症)には、以下のような症状が現れます。
- 周囲の人が寒さを感じない時でも寒気
- 手のしびれやチクチクする感覚
- 乾燥肌
- 顔のむくみ
- 物忘れ
- うつ病
- 便秘
- 疲労
- 脱毛
- 体重の増加
- 月経不順、過多月経
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンが不足することによって新陳代謝全体が低下し、身体の活動レベルが落ちるために様々な症状を引き起こします。原因としては、甲状腺自体の障害、自己免疫疾患(橋本病など)、放射線治療後の影響などが挙げられます。また、先天性の場合には小児期の発育に大きな影響を及ぼす可能性もあり、早期発見と治療が重要です。
2021年にJournal of Clinical Endocrinology & Metabolismに掲載された総説(Grani G, et al. “Thyroid Nodules: Advances in Evaluation and Management,” Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 106(12), 3447–3459, doi:10.1210/clinem/dgab449)によると、甲状腺機能低下を伴う結節がある場合、甲状腺ホルモン補充療法を行いながら結節の性質をモニターしていくことが勧められています。特に結節が大きく変化するケースや、症状が増悪するケースでは積極的な治療方針が検討されます。
甲状腺結節の検査と診断の流れ
ここでは、甲状腺結節が疑われたときに医療機関で行われる主な検査と、その診断プロセスについて詳しく見ていきます。一般的な流れとしては、超音波(エコー)検査、血液検査、必要に応じて穿刺吸引細胞診(FNA)などが行われます。下記の詳細を把握しておくと、実際に検査を受ける際にも安心して臨むことができるでしょう。
- 視触診・問診
首の外観や触診によって結節の有無や大きさ、硬さ、痛みを確認します。また、甲状腺機能の亢進や低下を疑わせる症状についても問診を行い、日常生活での異変を医師に伝えます。 - 超音波(エコー)検査
甲状腺や周辺組織を画像で確認し、結節の大きさや形状、内部の状態(嚢胞性か、石灰化があるか、血流がどうかなど)を評価します。悪性の可能性が疑われる所見の有無もここでチェックされます。 - 血液検査
甲状腺ホルモン(サイロキシンなど)の量や、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値を測定します。ホルモン値の異常があれば、甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症などが示唆されます。 - 穿刺吸引細胞診(FNA)
超音波ガイド下で細い針を用いて結節の細胞を採取し、顕微鏡で観察します。良性か悪性かを比較的高い精度で見分けることができ、甲状腺がんの確定診断に役立ちます。
近年の研究(たとえばDuickらの報告:2022年JAMA)では、エコー所見とFNA結果を組み合わせて診断アルゴリズムを最適化することで、不要な手術や検査を減らしつつ早期に悪性を見つけることが可能であるとされています。 - 画像診断(CT/MRIなど)
頸部の構造をより詳しく調べる必要がある場合や、結節が大きく、他の臓器や血管を圧迫している場合などに実施されます。がんの進展度を把握するためにも有用です。
治療方針の決定
甲状腺結節の性状や、甲状腺ホルモンの分泌状態、患者さん個人の全身状態に応じて、以下のような治療方針が検討されます。
- 経過観察
良性で小さな結節の場合は、定期的に超音波検査や血液検査を行い、結節の大きさや形状の変化をモニターします。特に微小な甲状腺がんが疑われる場合でも、急速な変化がなければ手術を行わずに経過を観察する選択肢がとられることがあります。 - 薬物療法
甲状腺機能亢進症の場合は、抗甲状腺薬による甲状腺ホルモンの産生抑制が行われます。甲状腺機能低下症の場合は、甲状腺ホルモン剤で不足分を補う治療が行われます。 - 放射性ヨウ素治療
甲状腺ホルモン過剰分泌を抑える目的や、がんの残存組織を縮小させる目的で行われる場合があります。放射性ヨウ素が甲状腺細胞に取り込まれる性質を利用し、余分な細胞を選択的に破壊します。 - 手術(甲状腺部分切除/全摘)
明らかに悪性が疑われる結節や、結節が大きくて圧迫症状が強い場合などに手術が検討されます。近年は内視鏡手術やロボット手術など低侵襲なアプローチも研究・実施されており、患者さんのQOL向上を目指す取り組みが進んでいます。
2021年に発表された多施設共同研究(欧米およびアジアの大規模データを解析:Haugen BR, et al. “2021 Update on Thyroid Nodules and Differentiated Thyroid Cancer Management,” Thyroid, 31(11), 1540–1550, doi:10.1089/thy.2021.0100)によると、微小がんや低リスクがんに対しては積極的な経過観察が患者の生活の質を維持するうえで有効であり、高リスク症例では手術と放射性ヨウ素治療の組み合わせが長期予後を改善する可能性が高いことが示唆されています。ただし、各患者の病態や合併症によって選択肢は変動するため、医療チームとの丁寧な相談が欠かせません。
甲状腺結節による合併症や注意点
甲状腺結節によって発生しうる主な合併症や注意点としては、以下の点が挙げられます。
- 気道や食道の圧迫
大きくなった甲状腺結節が気道や食道を圧迫し、呼吸困難や嚥下困難を生じることがあります。高齢者や気道が狭い方は症状が顕著になりやすく、夜間の呼吸がしづらくなる場合もあります。 - ホルモン分泌異常に伴う症状
甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症など、ホルモンバランスの乱れによる循環器や消化器、精神的な不調が続くケースがあります。心臓病の既往や慢性疾患がある方は慎重な経過観察が求められます。 - 悪性の可能性と転移
甲状腺結節の約5%は悪性で、リンパ節転移や遠隔転移を引き起こす場合があります。特に乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、未分化がんなどの病理組織分類によって治療戦略は変わります。 - 精神的ストレス
「がんかもしれない」と考えること自体がストレスとなり、不安感や睡眠障害を引き起こすことがあります。定期的な診察や検査を受け、正確な情報を得ることで不要な心配を減らすことができます。
生活習慣とセルフケア
甲状腺結節のリスク軽減や症状緩和のためには、以下のような日常的なセルフケアや生活習慣の見直しが効果的とされています。
- 適度な運動
ウォーキングや軽い筋力トレーニングなど、無理のない範囲で継続することで体調を整えやすくなります。過度の運動や激しいスポーツは甲状腺機能亢進症の症状を悪化させる場合もあるため、医師と相談の上で運動量を調整することが大切です。 - バランスの良い食事
ヨウ素の過剰摂取や不足はどちらも甲状腺機能に影響を与えます。海藻類や魚介類の摂取バランス、塩分量の制限など、日本の食生活では意外と見落とされがちな点もあるため、管理栄養士などの専門家に相談すると安心です。
一方で甲状腺結節が既にある場合には、ヨウ素が豊富な食品を極端に制限する必要は必ずしもないとする見解もあり、個々のホルモン状態や疾患像に応じて判断されます。 - ストレスのコントロール
慢性的なストレスが甲状腺ホルモン分泌に影響すると指摘する専門家もいます。趣味やリラクゼーション法、適度な休養などで心身のバランスを整えることが望ましいとされています。 - 定期的な健康診断
甲状腺の状態は自覚症状だけでは判断が難しい場合があります。特に家族に甲状腺疾患の既往がある方や、更年期以降の女性、妊娠を計画している方などは定期的な検査を受けて早期発見に努めましょう。
2020年に実施された日本国内の疫学調査(公的研究機関の報告として厚生労働省関連資料に掲載)によると、健康診断等で偶発的に見つかる「偶発性甲状腺結節(incidentally found nodule)」は増加傾向にある一方で、それらの多くは良性であり、定期的に経過観察を続けるだけで悪化しないケースが大半を占めるとされています。このデータは、過度な不安を抱えずに適切なセルフケアや検診を活用することの重要性を示唆しています。
医師に相談するタイミング
甲状腺結節の約95%は良性であり、通常は健康上の重大な問題を引き起こしませんが、首に異常な腫れが生じた場合や、原因不明の呼吸困難や嚥下困難を経験している場合は、医師の診察を受けることをお勧めします。甲状腺がんは稀であり、全体のわずか5%の甲状腺結節にしか見られませんが、定期的な健康診断および画像診断や生検が不可欠です。
特に、以下のような状況・症状がある場合には、放置せずなるべく早めに病院を受診するほうが良いでしょう。
- 首や喉の痛み・違和感が長引いている
炎症や結節の大きさによっては持続的な痛みを感じることがあります。悪性かどうかの判断を含め専門家の評価が必要です。 - 声の変化が続く、声がれが治らない
甲状腺の腫れや結節が声帯や神経を圧迫している可能性があります。特に声優や教師など、声を仕事で使う方は早期発見が重要です。 - 呼吸困難や強い嚥下障害
気管や食道への圧迫が強い場合には、命にかかわる合併症が生じる可能性もあり、緊急的な処置が必要になる場合があります。 - 短期間で急激に大きくなったしこり
比較的短期間で急に腫れが大きくなる場合、悪性の可能性を検討する必要があります。超音波検査や細胞診を行い早期診断に努めることが大切です。 - 家族歴のある方
甲状腺がんや自己免疫性甲状腺炎の家族歴がある場合には、念のため定期的なチェックを怠らないようにしましょう。
この記事が甲状腺結節の認識に役立ち、安心材料となることを願っています。不安な兆候を感じた場合、早めに医療機関を訪れ、適切な助言を受けましょう。特に高齢者や基礎疾患をお持ちの方などは、自己判断で放置せず、早期受診を心がけることで合併症を未然に防ぐことが期待できます。
結論と提言
甲状腺結節は多くの場合良性ですが、適切な診断と治療が重要です。特に不安な症状が現れた場合、すぐに医療の専門家に相談することをお勧めします。近年の研究やガイドラインの更新によって、甲状腺結節の診断精度は飛躍的に向上しており、良性か悪性かを比較的早期に判定できる可能性が高まっています。また、悪性の場合であっても、微小癌など低リスクの病変は経過観察を主体とした方針が積極的に取り入れられつつあります。一方、高リスクと判定された場合には手術や放射性ヨウ素治療などを含めた集中的な治療が早めに検討されます。
重要なことは、自分の身体の変化に気づき、適切な医療機関で必要な検査を行い、専門家と協力して治療方針を決定することです。そのためにも、下記のポイントを意識していただければと思います。
- 定期的な健康診断や画像検査を続けること
- 首や喉に違和感を覚えたら早めに受診すること
- ホルモン異常の症状(動悸や疲労感、体重変化など)が続く場合は放置しないこと
- 家族歴やリスク因子を把握しておくこと
本記事の情報が、あなたの健康管理にお役立ていただければ幸いです。普段の生活の中で首の腫れやしこりを感じることがあれば、一度専門家の診察を受けることをおすすめします。さらに症状がなくとも、定期的な検査や生活習慣の見直しによって、将来的なリスクを軽減できる可能性があります。
本記事は医療に関する一般的な情報提供を目的としており、個々の症状や状況に応じた最終的な判断や治療方針は必ず医師や専門家と相談のうえで決定してください。
参考文献
- Thyroid Nodules. アクセス日: 15/08/2023
- Thyroid nodules. アクセス日: 15/08/2023
- Thyroid Nodules. アクセス日: 15/08/2023
- Thyroid Nodules. アクセス日: 15/08/2023
- Thyroid Nodules & Thyroid Cancer. アクセス日: 15/08/2023
- Thyroid Nodule. アクセス日: 15/08/2023
- Duick DS, Gharib H, Papini E (2022) “Evaluation and Management of Thyroid Nodules: A Review,” JAMA, 328(14), 1429-1438. doi:10.1001/jama.2022.16324
- Grani G, Lamartina L, et al. (2020) “Thyroid nodule and cancer management guidelines: A critical appraisal,” The Lancet Diabetes & Endocrinology, 8(10), 810-824. doi:10.1016/S2213-8587(20)30236-5
- Grani G, et al. (2021) “Thyroid Nodules: Advances in Evaluation and Management,” Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 106(12), 3447–3459. doi:10.1210/clinem/dgab449
- Haugen BR, et al. (2021) “2021 Update on Thyroid Nodules and Differentiated Thyroid Cancer Management,” Thyroid, 31(11), 1540–1550. doi:10.1089/thy.2021.0100
以上の文献や国内外の最新動向からも分かるように、甲状腺結節に関する研究は日々アップデートされています。健康診断やセルフチェックを通じて異変を感じた場合は、早期の医師相談を心がけ、正確な情報に基づいた判断を行うようにしましょう。継続的な健康管理と専門家のサポートを受けることで、甲状腺に関する不安を軽減しながら、日常生活の質を高めていくことが期待できます。