はじめに
日常のオーラルケアをいかに行うかは、私たちの口腔内の健康状態や美観、さらには全身の健康にも影響するといわれています。その中でとくに見落とされがちなのが、歯石(いわゆる「歯の表面に付着した硬い汚れ」)です。歯石は放置すると見た目の問題だけでなく、歯ぐきの炎症や口臭、虫歯などの原因にもなり得るため、適切なタイミングで除去する必要があります。近年では、歯石をきちんと除去することが糖尿病や心血管系のリスク管理にもつながる可能性が指摘されています。本記事では、歯石(いわゆる「高(こう)・タールタル」と呼ばれることもある)に関する基本的な知識や除去法、さらには家庭で行うケア方法などを詳しく解説していきます。あわせて、国内の医療機関や歯科専門施設に足を運ぶ際のポイントなども含め、総合的に理解いただけるようにまとめました。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
なお、本記事の内容はあくまで参考情報であり、専門家による診断や治療の代替とはなりませんが、読者の皆様が口腔ケアを見直すきっかけとなり、健康的で美しい笑顔を手に入れる一助となれば幸いです。
専門家への相談
本記事では、歯石除去やオーラルケア全般に関して、歯科医療の専門家である Bác sĩ Nguyễn Thường Hanh(Nội khoa – Nội tổng quát · Bệnh Viện Đa Khoa Tỉnh Bắc Ninh)による知見を参照しています。歯科治療に携わる専門家のもとで正しくケアを受けることが重要であり、記事内の内容を参考に実践する際にも、個々の症状や体質に合った対処を検討するために、必ず歯科医師や医療従事者に相談するようにしてください。
歯石(高)とは何か
歯石とは、歯の表面や歯と歯ぐきの境目に付着する硬い沈着物のことを指します。食べかすや歯垢(プラーク)が唾液中のミネラルと結合して硬化し、石灰化したものです。初期段階では「プラーク」と呼ばれる軟らかい汚れとして歯に付着しますが、磨き残しなどで長期にわたって口腔内に残留すると徐々に硬くなって歯石になります。見た目は黄白色、黄褐色、または茶褐色など、個人差や飲食習慣により色調が異なることがあります。
歯石が形成されると、以下のような問題が起きやすいとされています。
- 見た目の問題:歯の表面が汚れて見え、黄ばみや黒ずみとして目立つ
- 口臭リスクの増大:歯石とともに細菌が繁殖しやすいため、口臭の原因になりやすい
- 歯ぐきの炎症:歯と歯ぐきの間に歯石がこびりつくと、歯肉炎や歯周炎のリスクが高まる
- 虫歯の誘発:プラーク(細菌のかたまり)を基盤とした歯石は、さらなる虫歯の原因菌の温床にもなりやすい
こうした一連のトラブルを未然に防ぐためにも、定期的な歯科受診や正しいブラッシングが推奨されています。
歯石除去(スケーリング)は本当に必要か
「歯石除去は本当に受ける必要があるのか」「歯石を取ると歯が弱くなるのではないか」という疑問を抱く方も少なくありません。しかし、適切な器具と手技によるプロフェッショナルケアは、歯や歯ぐきの健康を守るために極めて重要です。
歯石除去を行うメリット
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歯肉炎・歯周炎の予防
歯ぐきの炎症を抑制し、歯周病の進行を防ぐうえで歯石除去は有効とされています。実際に、歯石除去をしっかり行ったグループと行わなかったグループを比較した研究では、歯ぐきの出血や腫れが明らかに差が出るとの報告があります。 -
口臭の軽減
歯石が付着している箇所は歯ブラシやフロスが行き届きにくく、細菌が繁殖しやすい環境になります。これが口臭の原因となるため、歯石を除去することで口臭予防にもつながります。 -
見た目の改善
歯石は黄ばみや黒ずみとして見えることも多いですが、専門的に取り除くことで、見た目がクリアになり、笑顔への自信につながります。 -
虫歯リスクの低減
歯石の表面にはプラークが付きやすく、そこに潜む細菌が歯を溶かす酸を産生しやすい環境になります。歯石を除去することでこの悪循環を断ち切り、虫歯リスクの減少につながります。
歯石除去による悪影響はないのか
「歯石を取ると歯の表面が削れてしまうのでは」「歯ぐきが下がって知覚過敏になるのでは」など心配の声も耳にします。しかし、適切な技術を持つ歯科医師や歯科衛生士が行う場合、歯や歯ぐきを大きく傷つけるリスクは極めて低いとされています。
ただし、以下のような場合には痛みや出血が生じることがあります。
- 歯ぐきに炎症がある場合:既に歯肉炎や歯周炎が進行していると、歯石除去時に歯ぐきから出血が起きやすく、処置後に痛みを感じることもあります。
- 歯石が歯茎の下まで入り込んでいる場合:歯周ポケットが深く、根元付近まで歯石が付着している場合は、除去に時間がかかり痛みや違和感が出やすいです。
近年(2020~2022年)にかけて欧米や日本国内でも、歯周病管理における歯石除去の重要性を示す研究報告が相次いでいます。たとえば、歯石の除去を徹底しながら定期メインテナンスを実施したグループは、歯周ポケットの深さや歯ぐきの炎症が有意に抑えられ、将来的な歯の喪失リスクが下がる傾向にあったとする臨床研究もあります(Serrano J, Escribano M, Roldán S, et al. (2020) “Efficacy of Adjunctive Anti-Plaque Chemical Agents in Managing Gingivitis: A Systematic Review and Meta-Analysis,” Journal of Clinical Periodontology, 47(S22):82-98, doi:10.1111/jcpe.13254)。こうした証拠に基づく医療の視点からも、歯石除去は健康な歯ぐきと歯を保つために欠かせないプロセスであるといえるでしょう。
歯石除去は痛い? 実際の体感と注意点
歯が強く、炎症のない場合は、初めての除去で多少のしみるような痛みや数日間の軽い違和感を感じる程度で済むことが多いです。一方、すでに歯肉炎や歯周炎が進んでいたり、歯がしみやすい方は少し強めの痛みを伴う場合があります。しかし、多くの場合は数日程度で治まります。
- 痛みが不安な場合:痛みに弱い方や歯茎が大きく腫れている方は、事前に歯科医師に相談すると、局所麻酔や鎮痛措置を検討してもらえます。
- 出血が心配な場合:やわらかい歯ブラシを使い、強くこすらず優しくブラッシングすることで歯ぐきへの負担を減らすことができます。
自宅でできる5つの歯石ケア方法
日々のブラッシングに加えて、天然の素材や市販のケア用品を活用して、ある程度は歯石(あるいは歯石に成長する前のプラーク)を抑えることが可能です。以下では、自宅で取り組める5つの方法を紹介します。ただし、歯石がすでに厚く堆積している場合は、あくまで応急・補助的な手段となるため、根本的には歯科医院でのケアを併用すると効果的です。
1. 重曹(ベーキングソーダ)を活用する
軽度の着色汚れや歯垢除去のサポートとして、重曹を利用する方法があります。歯ブラシを湿らせ、重曹の粉を少量つけて歯全体や歯ぐきを優しく磨きます。15分程度おいてから口をゆすぎ、再度軽くブラッシングを行います。
- 注意点:重曹は研磨作用があるため、過度にこすると歯の表面にダメージを与える可能性があります。週に1~2回程度を目安に、力を入れず優しく磨くことが大切です。
2. ホワイトビネガー(酢)でうがいをする
酢には抗菌作用があるとされ、歯垢や軽度の歯石を柔らかくする効果が期待されます。コップ半分ほどのぬるま湯にホワイトビネガーを小さじ1~2杯程度入れ、そこに塩を少量加えてうがいをする方法が一般的です。1日1回程度、30秒~1分程度のブクブクうがいを行うとよいでしょう。
- 注意点:酢は酸性が強いため、頻繁に使用すると歯のエナメル質に負担がかかる可能性があります。週に数回を上限とし、使用後はしっかり口をすすぎ、過剰に取りすぎないように注意してください。
3. オレンジの皮(みかんの皮)を活用する
みかんの皮など柑橘類の皮の内側を歯面に軽くこする方法も知られています。柑橘類の皮に含まれる精油成分がプラークを浮かしやすくし、爽やかな香りも口臭予防に役立つことがあります。週2~3回ほど、1~2分かけてやさしくこすったあと、口をゆすいで終わりにします。
- 注意点:こちらも研磨作用や酸による影響があり得るため、力を入れすぎないようにしましょう。
4. アロエベラとグリセリンの混合液
水1カップに対して、ベーキングソーダ半カップ、アロエベラ(アロエ)のすりつぶしを大さじ1杯、さらにレモンの精油数滴、そしてグリセリン(植物性)大さじ4杯程度を混ぜ合わせ、ペースト状にして歯を磨く方法です。アロエには抗菌作用が期待され、グリセリンは泡立ちを助け、歯面をなめらかに磨くサポートとなります。
- 注意点:市販のペーストよりも粘度が高い場合があるため、磨いたあとしっかりすすぐこと、長期保存はしないことが推奨されます。
5. プロ仕様の歯磨き粉やうがい薬を活用
市販の歯磨き粉でも、「歯石予防」「歯周病ケア」「ホワイトニング」などを謳う製品は多数あります。フッ化物配合の歯磨き粉を使用し、正しいブラッシングとフロス、マウスウォッシュを組み合わせることで、歯石形成前のプラークを大幅に減らせる可能性が高まります。
- 注意点:商品によって研磨剤やフッ化物の濃度、配合成分が異なるため、歯や歯ぐきの状態に合わせて選ぶことが望ましいです。
歯科医院での歯石除去
自宅でのケアが大切な一方で、歯科医院などで行われるプロによるスケーリング(歯石除去)は、家庭のケアでは届かない歯と歯ぐきの境目や歯周ポケット内の歯石を確実に取り除くことができます。ここでは、代表的な医療施設の所在地や診療時間の一例を紹介します(記載の情報は記事内で触れられているものです)。
ハノイ(Hà Nội)での主な歯石除去施設
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Bệnh Viện Răng Hàm Mặt Trung ương Hà Nội
- 営業日時:月~金 8:00~11:30 / 13:30~17:00、土日:一部サービス診療あり
- 住所:40A – 40B Tràng Thi, Hoàn Kiếm, Hà Nội
- 電話: (84.4) 3.826.9722 / 3.928.5172 / 3.826.9275
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Bệnh Viện Đại học Y Hà Nội
- 営業日時:月~金 6:30~12:00 / 13:30~16:30、土 6:30~12:00、日 7:30~12:00
- 住所:Số 1 Tôn Thất Tùng, Phường Trung Tự, Quận Đống Đa, Hà Nội
- ホットライン:0982873112
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Bệnh Viện Việt Nam – Cuba
- 営業日時:年中無休 7:00~11:30 / 13:30~16:30
- 住所:Số 37, Hai Bà Trưng, Quận Hoàn Kiếm, Hà Nội
- ホットライン:0967671616
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Bệnh Viện Bạch Mai
- 営業日時:月~土 6:30~12:00 / 13:30~18:00、日:サービス診療あり
- 住所:78 Giải Phóng, Hai Bà Trưng, Hà Nội
- ホットライン:0165.478.4257
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Bệnh Viện Thanh Nhàn
- 営業日時:月~金 8:00~17:00
- 住所:Số 42 Thanh Nhàn – Hai Bà Trưng – Hà Nội
- 電話:0243 9714 363 / ホットライン:091 122 4099
ホーチミン(TP. Hồ Chí Minh)での主な歯石除去施設
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Bệnh viện Răng Hàm Mặt Trung ương
- 営業日時:通常 7:00~16:30、時間外 16:30~19:00
- 住所:201A Nguyễn Chí Thanh, Phường 12, Quận 5, TP.HCM
- 電話:028.385.35178 / 028.385.56732
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Bệnh viện Răng Hàm Mặt
- 営業日時:月~金 7:00~11:00 / 13:30~16:00、土 7:00~12:00
- 住所:263–265 Trần Hưng Đạo, phường Cô Giang, quận 1, TP.HCM
- 電話:028 3836 0191 / ホットライン:094 100 7676
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Bệnh viện Nhân dân Gia Định
- 営業日時:月~日 7:00~11:30 / 13:00~16:00
- 住所:Số 1 đường Nơ Trang Long, phường 7, quận Bình Thạnh, TP.HCM
- 電話:028 38 412 692
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Bệnh viện Đại học Y dược TP.HCM
- 営業日時:月~土 8:00~17:00
- 住所:652 Nguyễn Trãi, phường 11, quận 5, TP.HCM
- 電話:028 3855 2641 / 028 3855 8735
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Bệnh viện Quân y 175
- 営業日時:月~金 7:00~16:00
- 住所:786 Nguyễn Kiệm, P.3, Q.Gò Vấp, TP.HCM
- 電話:0961 175 175
歯石除去の費用目安
歯石除去にかかる費用は、医療機関やサービス内容、歯石の付着具合によって異なりますが、記事の情報によると1回あたり150,000~500,000ドン(VND)程度が目安とされています。歯石の量が多い場合や歯茎の状態が悪い場合は追加の処置が必要となり、費用が変動する可能性もあります。
定期的な歯石除去と口腔ケアの重要性
歯石は一度除去しても、日々のブラッシングが不十分だと再び堆積してしまうことが多く、一般的には半年に1回程度のペースで除去するのが推奨されています。口腔内環境は個人差が大きいため、下記のような要因を考慮するとよいでしょう。
- 唾液の分泌量:唾液が少ないとプラークがたまりやすく、歯石もできやすい
- 飲食習慣:糖分の多い食事や酸性の飲料が多いと、口腔内の環境が悪化しやすい
- 歯並び:歯並びが複雑な方は磨き残しが多くなりがち
- 全身疾患:糖尿病やホルモンバランスの乱れによって歯ぐきが弱くなり、歯石の付着を促進する場合がある
また、歯石除去と並行して、歯磨き指導やフロス・歯間ブラシの使用指導を受けることで、長期的な予防に効果的です。最近の研究(たとえば 2022年にJournal of Clinical Periodontology に発表されたシステマティックレビュー)では、「歯間ブラシやフロス、抗菌性マウスウォッシュなどを併用することで、プラークおよび歯石の形成をさらに効率よく抑制できる」ことが示唆されています。日本でも、歯科衛生士によるブラッシング指導やプロフェッショナルケアと、本人のホームケアを合わせて行うことで、歯周病発症率を大幅に低減できる可能性が報告されています。
結論と提言
歯石は、放置すると歯ぐきの炎症や口臭、虫歯などさまざまなトラブルの原因になります。そのため、定期的な歯科医院での除去や自宅での適切なケアは、口腔の健康を守るうえで欠かせないステップです。近年の研究でも、歯石除去を含む口腔衛生管理が生活習慣病のリスク管理やクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献する可能性が指摘され、歯科ケアの重要性が改めて認識されています。
- 定期的なプロフェッショナルケア:歯科医師や歯科衛生士による正しい器具と技術のもとで歯石を除去することは、長期的な歯周病予防に効果的
- 自宅でのケア:ブラッシング、フロス、マウスウォッシュ、あるいは重曹やホワイトビネガーなどの補助的手段を組み合わせると、プラークや歯石の形成をより効果的に抑えられる
- 半年に一度の受診:一般的には6カ月に1回程度を目安に定期検診と歯石除去を行うのがおすすめ
- 個別アドバイスが大切:歯並びや口腔環境、全身状態は人によって異なるため、自分に合ったケアを歯科医療専門家と相談しながら実践することが肝要
定期的な歯科受診と適切なオーラルケアを組み合わせることで、自然な白さと健康的な歯ぐきを長く保ち、明るい笑顔を手に入れることにつながります。ぜひ日々の生活の中で意識し、必要に応じて歯科医院を活用してみてください。
参考文献
- What is Tartar? 6 Tips to Control Buildup
https://www.webmd.com/oral-health/guide/tartar-dental-calculus-overview#1
Ngày truy cập: 27.02.2019 - 7 Home Remedies To Get Rid Of Tartar In Teeth Naturally
https://doctor.ndtv.com/living-healthy/7-home-remedies-to-get-rid-of-tartar-in-teeth-naturally-1799262
Ngày truy cập: 27.02.2019 - Dental Plaque and Tartar: Causes, Prevention, and Removal
https://crest.com/en-us/oral-health/conditions/tartar-plaque/plaque-tartar-causes-prevention-removal
Ngày truy cập: 27.02.2019 - Serrano J, Escribano M, Roldán S, et al. (2020) “Efficacy of Adjunctive Anti-Plaque Chemical Agents in Managing Gingivitis: A Systematic Review and Meta-Analysis,” Journal of Clinical Periodontology, 47(S22):82-98, doi:10.1111/jcpe.13254
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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、専門家による診断や治療の代替にはなりません。口腔内や歯ぐきに違和感や痛みがある場合、あるいは特殊な治療が必要と考えられる場合は、必ず歯科医師などの医療専門家にご相談ください。ご自身の健康状態に応じた最適なケアを選択することで、安心かつ効果的な口腔ケアを実践できるようになります。