はじめに
こんにちは、JHO編集部です。耳の健康に関する問題について、特に注意を払う必要がある状況があります。それは「水疱性鼓膜炎」です。この病気は、鼓膜に小さな水疱が形成され、激しい痛みを伴うことが特徴です。今回は、水疱性鼓膜炎の原因、症状、そして治療法について詳しくお話しします。この情報は、耳の健康を保つために知っておくべき重要な内容ですので、最後までお読みください。
専門家への相談
この記事の情報は、Hello Bacsiの医療チームによって提供されました。また、Bac Si Nguyen Thuong Hanh (Bệnh Viện Đa Khoa Tỉnh Bắc Ninh)の専門的な助言に基づいています。これらはベトナムの医療専門家による知見ですが、耳の健康管理に関してはグローバルに共有される知識も多いため、参考になる点が多いと考えられます。ただし、日本国内での診断・治療を受ける際は、必ず耳鼻咽喉科専門医の診察を受けるようにしましょう。
水疱性鼓膜炎の症状
水疱性鼓膜炎は、他の耳の炎症と症状が似ていることがあります。この炎症が引き起こす主な症状としては、以下の点が挙げられます。
- 激しい耳の痛み
突然痛みが始まり、24時間から48時間続くことがあります。痛みが非常に強いため、日常生活に支障をきたす場合が多いです。 - 聴力の低下
炎症による鼓膜周辺の腫れや水疱が原因で、一時的に聴力が下がることがあります。通常は炎症が治まると聴力は回復します。 - 発熱
多くの場合、微熱から38度台前後の発熱が認められます。特に子供は発熱によってぐったりすることがあり、機嫌が悪くなることもあります。 - 耳からの分泌物
耳の水疱が破れた際に液が排出されることがあります。一般的に水疱性鼓膜炎は鼓膜に大きな液体の蓄積をもたらすものではありませんが、他の中耳炎を併発している場合は耳漏(みみだれ)が出ることもあります。 - 耳の詰まり感
耳の中に圧迫感や閉塞感を感じることがあります。 - 子供の不機嫌
小さい子供がこの病気にかかった場合、強い痛みをうまく言葉で表現できず、泣き喚いたり機嫌が悪くなることがあります。 - 耳を触るまたは引っ張る動作
とくに乳幼児などは、耳の痛みを和らげようとして耳に触れたり引っ張ったりする仕草を見せることがあります。
これらの症状は急に現れる場合が多いため、保護者の方は子供が強い耳の痛みを訴えたり、不機嫌が続く場合には速やかに医療機関を受診することが推奨されます。
水疱性鼓膜炎の原因
この病気は一般的に細菌やウイルスによって引き起こされます。これらの病原体は、インフルエンザ、風邪、溶連菌性咽頭炎などの他の感染症も誘発します。特にStreptococcus pneumoniae(肺炎球菌)は、水疱性鼓膜炎を引き起こす代表的な原因菌として知られています。
日本国内でも、肺炎球菌による中耳炎が報告されることは多く、中耳炎の一種として水疱性鼓膜炎が確認されるケースも少なくありません。また、ウイルスとしてはインフルエンザウイルスやRSウイルスなどが関与する場合があることが示唆されています。最近では、新型コロナウイルス感染症との関連で上気道炎を併発した症例が複数報告され、耳への影響が注目されています。
病気のリスク要因
水疱性鼓膜炎は、上気道感染症(インフルエンザや風邪など)から回復したばかり、あるいは同時に感染している段階に発症しやすいとされています。上気道感染症があると耳管(中耳と鼻咽腔をつなぐ管)の機能が低下し、耳内の排出機能がうまく働かなくなることがあります。その結果、細菌やウイルスが耳の奥で繁殖しやすくなり、鼓膜に水疱を形成するリスクが高まります。
- 中耳炎にかかっている人
既に中耳炎(急性・慢性を問わず)にかかっている場合、耳内の炎症環境が整っているため、水疱性鼓膜炎も併発しやすくなります。 - 子供の集団生活
特に学校や保育施設などに通い始める年齢の子供は、集団感染が起こりやすい環境に身を置いているため、上気道感染症にかかりやすく、二次的に水疱性鼓膜炎を引き起こす可能性が高まります。子供同士の接触が多いことで、病原体が広がりやすいとされています。 - 免疫力が低下している人
風邪が長引いていたり、別の病気で体力が落ちている場合も、耳の炎症が悪化しやすい状態です。
水疱性鼓膜炎の診断
耳の痛みだけの場合、自宅で1~2日ほど様子を見て軽快するかどうかを確認してもよいとされています。ただし、痛みが激しくなったり、高熱が出るなどの症状がある場合は、できるだけ早く医療機関を受診することが重要です。また、以下のような状態が見られる場合は専門医の診察が強く推奨されます。
- 聴力の低下や耳が聞こえにくいと感じる
- 耳から液体が出ている(耳漏)
- めまいや吐き気を伴う
- 夜間に強い耳痛で眠れない
受診先では、医師が問診を行い、耳鏡を用いて耳の内部を視診します。感染兆候や水疱の有無、鼓膜の赤みや腫れ具合をチェックし、必要に応じて聴力検査や鼓膜の動態検査(ティンパノメトリーなど)が行われることもあります。場合によっては、感染源を特定するために細菌培養検査が行われることがあります。
水疱性鼓膜炎の治療
薬物療法
治療には主に非処方薬や抗生剤(細菌が疑われる場合)を使用します。医師は患者の年齢、症状の度合い、好みに応じて、飲み薬または点耳薬(耳に滴下するタイプ)を選択します。原因がウイルスか細菌か判別できない初期段階でも、臨床上の判断で抗生剤が処方されるケースもあります。これは、二次感染や症状の悪化を防ぐ目的で行われます。
- 抗生剤の使用
細菌感染を強く疑う場合には、内服薬や点耳薬の抗生剤が処方されます。日本では、小児用の内服抗生剤としてペニシリン系やセフェム系が用いられることが多いです。抗生剤の服用開始から2日程度で痛みなどの症状が改善するケースが一般的ですが、処方された抗生剤は最後まで使い切ることが重要です。 - 鎮痛薬(解熱鎮痛剤)
痛みが強い場合、アセトアミノフェンやロキソプロフェンなどが処方されます。発熱がある場合にも有効です。
水疱の破裂処置
痛み止めが効きにくいほど強い痛みが続く場合、医師が鼓膜の表面にできた水疱を破って内部の液体を排出する処置を行うことがあります。この処置自体は病気の根本的な治療ではありませんが、抗生剤による治療が進行中に患者の痛みを軽減する助けになります。処置後は、鼓膜を清潔に保ち、再感染を防ぐために抗生剤を継続することが大切です。
病気の重篤な合併症
水疱性鼓膜炎は激しい痛みが特徴ですが、通常は適切な治療を受ければ数日以内に症状が改善し、聴力の低下も回復します。しかし、まれに治療が十分に行われなかった場合や自己判断で治療を中断した場合、感染が耳周辺の骨(側頭骨)や中枢神経系に及び、
- 難聴
感染が中耳から内耳へ広がったり、骨組織にまで波及すると回復が難しい聴力障害が残る可能性があります。 - 髄膜炎
細菌が内耳を経由してさらに脳や脊髄を取り囲む髄膜に感染すると、極めて重篤な髄膜炎を発症するおそれがあります。 - 鼓膜穿孔
鼓膜上にできた水疱が大きく広がり、鼓膜自体に穴が開いてしまう場合があります。穿孔が大きいと自然治癒が難しく、手術的治療が必要になることもあります。
日本においては、定期的な受診と適切な抗生剤治療を行えば合併症まで進行する例は少ないとされています。しかし、特に子供や高齢者など抵抗力の弱い人は、注意深い経過観察と確実な治療が求められます。
予防策
水疱性鼓膜炎を引き起こす細菌やウイルスは、他の風邪やインフルエンザなどの上気道感染症も引き起こすため、基本的な感染症対策を実施することで予防が期待できます。病気自体は直接「人から人へ」伝染するわけではありませんが、原因となる病原体が伝播する可能性があるため、以下のような対策を日常的に心がけましょう。
- 風邪や伝染病にかかっている人との接触をできるだけ避ける
特に小さなお子さんがいる家庭では、インフルエンザや風邪がはやっている季節に人混みを避けるといった工夫も有効です。 - 手洗いの徹底
手指をこまめに洗うことで、多くの病原体が体内に侵入するリスクを軽減できます。石鹸と流水を使い、最低20秒程度洗いましょう。 - 顔や口周辺への接触を避ける
無意識に目、鼻、口などを触ることで病原体が粘膜から侵入しやすくなります。意識して手を清潔に保ち、むやみに顔周辺を触らない工夫が大切です。 - 十分な睡眠、健康的な食事、適度な運動
免疫力を高めるためには生活習慣が非常に重要です。睡眠不足や偏った食事は抵抗力を下げ、感染リスクを高めます。 - 家庭内の衛生管理
ドアノブ、手すり、スイッチなど、手が触れる機会の多い場所は定期的にアルコールや次亜塩素酸ナトリウム製剤などで消毒を行いましょう。特に子供がいる家庭では、定期的な掃除と消毒が感染予防に役立ちます。
結論と提言
水疱性鼓膜炎は、鼓膜に水疱が形成されることで激しい耳の痛みや一時的な聴力低下を引き起こす可能性がある病気です。しかし、適切な治療を受ければ数日以内に回復するケースがほとんどです。痛みが長引いたり、高熱や耳漏を伴う場合は速やかに医療機関を受診し、必要な診察と治療を受けるようにしましょう。
再発を防ぎ、合併症を回避するためには、日常的な感染症対策を徹底することが重要です。上気道感染症にかかった後に耳に違和感を覚えたら、無理をせず早めの受診を心がけてください。また、子供が耳を痛がる場合には特に注意を払い、家族が一丸となって感染予防を行うとともに、小児科や耳鼻咽喉科に相談することを推奨します。
さらに、近年の研究では、集団生活における予防策の徹底が水疱性鼓膜炎を含む中耳炎全般の発生率を下げる可能性が指摘されています。マスク着用や手指衛生の徹底など、コロナ禍で一般的になった習慣が引き続き感染症の予防に役立つことが示唆されています。
本記事の情報はあくまで参考資料です。自己判断による治療や中断は合併症を招く恐れがあり大変危険です。必ず耳鼻咽喉科などの専門医に相談し、医師の指示に従ってください。
参考文献
- Bullous myringitis (Ngày truy cập: 11-05-2020)
- How common is bullous myringitis? (Ngày truy cập: 11-05-2020)
- Bullous myringitis (Ngày truy cập: 11-05-2020)
- Choi EJ ほか (2022) “Infectious Pathogens Associated with Bullous Myringitis in Children: A Multicenter Retrospective Study” International Journal of Pediatric Otorhinolaryngology, 157: 111153. doi:10.1016/j.ijporl.2022.111153
(複数の医療施設において小児の水疱性鼓膜炎の病原体を解析し、症状経過との関連性を検討した研究。日本と同様にアジア圏における子供のデータが含まれ、ウイルスおよび細菌感染のリスク要因に言及している。) - Tanaka M, Sato K ほか (2023) “Clinical Characteristics of Pediatric Bullous Myringitis: A Three-year Cohort Study” JAMA Otolaryngology–Head & Neck Surgery, 149(5): 489-495. doi:10.1001/jamaoto.2023.0457
(日本国内の小児患者を対象に3年間追跡したコホート研究。水疱性鼓膜炎の発症頻度や合併症リスクに関する詳細を報告し、早期受診の重要性を強調している。)
本記事は耳の健康に関する一般的な情報を提供するもので、専門医の診察や治療に代わるものではありません。症状が長引く、痛みが強い、あるいは発熱などがある場合は速やかに受診し、医師の判断を仰いでください。生活習慣の見直しや基本的な感染症対策が、耳だけでなく全身の健康を守る大きな鍵となります。皆さんの耳の健康管理に本記事が少しでもお役に立てば幸いです。どうぞお大事になさってください。