流産後の妊娠:次に向けた心と体の準備、日本における最新ガイド
妊娠準備

流産後の妊娠:次に向けた心と体の準備、日本における最新ガイド

流産を経験することは、一人の女性とその伴侶が直面しうる、最も辛く困難な出来事の一つです。医学的には比較的一般的な事象と定義されるかもしれませんが、それが残す喪失感は計り知れず、個人的で、統計の数字では決して表現できません。告知を受けた瞬間、世界が崩れ落ちるように感じ、何ものにも代えがたい空虚感が残ります1。この時期に最も心に留めておくべきことは、あなたは決して一人ではないということです。深い悲しみ、怒り、そして罪悪感といった様々な感情が渦巻くのは、大きな喪失に対するごく自然な反応なのです3

本稿は、流産という痛みを乗り越え、再び親になることを望む方々のために、最新の医学的知見と専門家の助言を包括的にまとめたものです。身体的な回復の道のり、精神的な癒やしのプロセス、そして「いつ再び挑戦すべきか」という重要な問いに対する科学的根拠に基づいた答えを提示します。さらに、流産を繰り返す「不育症」という状態についても深く掘り下げ、日本国内における診断基準、検査、そして希望に満ちた治療法について解説します。この情報が、暗闇の中にいると感じている方々にとって、未来への道を照らす一筋の光となることを心から願っています。


この記事の科学的根拠

本記事は、参考文献として明示された質の高い医学的根拠にのみ基づいて作成されています。以下に、本記事で提示されている医学的指導の根拠となった主要な情報源とその関連性を示します。

  • 日本産科婦人科学会(JSOG)の見解: 次の妊娠までの期間に関する推奨は、日本産科婦人科学会が公表している情報に基づいています。同学会は、流産から次の妊娠までの期間が短くても、その後の流産率が上昇するわけではないとの見解を示しています24
  • 国際的な医学研究(The BMJ掲載論文など): 流産後6ヶ月以内に妊娠した方が、その後の妊娠成績が良好である可能性を示唆する記述は、2010年に権威ある医学雑誌「The BMJ」に掲載された大規模研究などの科学的根拠に基づいています4
  • 不育症管理に関する提言2021: 日本における不育症(反復流産)の定義、診断基準、検査項目に関する記述は、厚生労働省の研究班などによる「不育症管理に関する提言2021」に準拠しています8
  • 厚生労働省および関連機関の統計データ: 日本における母体年齢別の流産率に関するデータは、厚生労働省や関連学会が公表している統計に基づいています10

要点まとめ

  • 流産は決して稀なことではなく、妊娠と診断されたケースの15~20%で起こり得ます5。初期流産の主な原因は胎児の偶発的な染色体異常であり、母親の行動が原因であることはほとんどありません7
  • かつては流産後3~6ヶ月の待機が推奨されていましたが、現代の科学的根拠は、身体的・精神的に準備ができていれば、早期(6ヶ月以内)に妊娠を試みても安全であり、むしろ良好な結果に繋がる可能性を示しています424
  • 次の妊娠に備えるためには、葉酸の摂取、禁煙・禁酒、バランスの取れた食事といった身体的な準備と共に、不安を乗り越えるための精神的なケア(パートナーとの対話、専門家への相談など)が極めて重要です3
  • 流産を2回以上繰り返す場合は「不育症」と定義され、原因を特定するための系統的な検査が推奨されます。原因が特定されれば有効な治療法が存在する場合があり、たとえ原因不明であっても、次回の妊娠で成功する確率は依然として高いです828

第I部:喪失との対峙 – 流産の理解と初期の回復過程

1.1. 流産:ありふれているが、痛みを伴う経験

流産を経験することは、女性とそのパートナーが直面しうる最も辛い体験の一つです。医学的には比較的一般的な出来事とされても、それが残す喪失感は極めて深く、個人的なものであり、統計数字では決して測れません。告知を受けた瞬間、世界が崩れ落ち、埋めがたい空虚感が残ります1。この時期に最も重要なことは、あなたが一人ではないと知ることです。深い悲しみから怒り、罪悪感に至るまで、感情が乱れるのは、大きな喪失に対するごく自然な反応です3

医学的に、流産(自然流産)は妊娠24週未満で妊娠が終了することと定義されます4。これは一般的な妊娠合併症であり、臨床的に診断された妊娠の約15%から20%が流産に終わると推定されています5。女性が妊娠に気づく前の超早期の流産を含めると、この数字は50%にも上る可能性があります5

妊娠初期(最初の12週間)における流産のほとんどは、胎児の染色体異常が原因です7。これらの異常は、受精後の細胞分裂の過程で偶然に発生するもので、大部分は母親の制御の及ばない事柄です。この事実を理解することは、心理的な重荷を軽減するための重要な一歩です。多くの女性は「自分が何か悪いことをしたのではないか?」と自問し、自らを責める傾向があります2。しかし、ほとんどの場合、母親のいかなる行動も初期流産を引き起こしたり、防いだりすることはできなかったのです。

日本においても、他の先進国と同様に、母体の年齢は流産率に顕著な影響を与える要因です。母体の年齢が上がるにつれて卵子の質は低下し、結果として胚の染色体異常の危険性が高まります。この関連性を認識することは、さらなる不安を煽るためではなく、自責の念から生物学的な事実の理解へと焦点を移すための現実的な背景を提供します。

表1:日本における母体年齢別の推定流産率

母体の年齢 推定流産率 データ出典
26–30歳 20%未満 9
31–35歳 約20% 9
36–40歳 20% – 35.1% 9
41歳 42.3% 10
42歳 46.5% 10
43歳 55.2% 10
44歳 58.1% 10
45歳 64.6% 10

注:データは日本産科婦人科学会および厚生労働省の報告書から集計。データ収集方法や研究対象集団により、率は変動する可能性があります。

上記のデータは、35歳を過ぎると流産率が著しく上昇し、40歳以降は急激に増加するという明確な傾向を示しています。これらの数字を目の当たりにすることは、個人的な痛みを伴う体験を、理解可能な生物学的現象として捉え直す助けとなり、特に次の妊娠時期を検討する上で重要な基盤となります。

1.2. 流産直後:身体的ケアと注意点

流産後の身体的な回復には、忍耐と丁寧なケアが必要です。あなたの体は大きな変化を経験したばかりであり、癒えるための時間を与えることが最優先です。東洋の伝統医学では、流産(小産)は「小さなお産」と見なされ、その身体への影響は実際の出産(大産)に決して劣らないとされています12。したがって、休息と医療上の指示の遵守が極めて重要です。

流産の処置には、自然排出を待つ待機的管理、薬物療法、あるいは外科的処置(子宮内容除去術)など、様々な方法があります13。いずれの方法であっても、体が正常な状態に戻るには一定の時間が必要です。以下に典型的な身体的回復の道筋を示します。

  • 第1週:絶対安静の時期
    これは体が回復を開始し、合併症を防ぐための最も重要な期間です。仕事や家事は可能な限り制限し、休息を最優先してください12。特に手術を受けた場合、子宮が傷ついている可能性があり、治癒には時間が必要です。この時期に無理をすると炎症を引き起こし、将来の妊娠に影響を及ぼす子宮内癒着などの長期的な合併症に繋がる可能性があります12。衛生面では、入浴はシャワーのみとし、浴槽に浸かるのは避けてください。これは、まだ開いている子宮頸管からの細菌感染の危険性を減らすためです12。出血は徐々に減少し、1~2週間で止まるのが一般的ですが、1時間ごとにナプキンを交換する必要があるほどの異常な多量出血、高熱、悪寒、激しい腹痛、悪臭のあるおりものなどが見られた場合は、感染症や絨毛遺残の兆候である可能性があるため、直ちに医療機関に連絡してください15
  • 第1ヶ月:段階的な回復期
    最初の週が過ぎたら、軽い活動を再開できますが、常に自分の体に耳を傾ける必要があります。最初の月経は、流産日から約4~6週間後に来ることが多いですが、ホルモンバランスが再調整される過程で、周期が不規則になることもあります15。激しい運動や重い物を持ち上げることは避け、長距離の旅行も延期するのが賢明です12。性交渉は、出血が完全に止まるまで(通常は約2週間、または最初の再診まで)控えることが推奨されます15
  • 2ヶ月以降:評価と正常化
    2ヶ月経っても月経が再開しない場合は、医師の診察を受けるべきです12。準備ができたと感じたら基礎体温の測定を再開することもできますが、それがストレスになる場合は、最初の月経が戻るまで待っても問題ありません12

1.3. 心の旅路:自分自身が癒えるのを許す

身体的な回復には比較的明確な道筋がありますが、流産後の感情的な旅はより複雑で予測困難です。この痛みは、単なる妊娠の喪失ではなく、未来への希望や夢、計画の崩壊でもあります。

日本で流産を経験した女性たちの体験談は、この時期の感情の多様で深い様相を映し出しています。最も一般的な感情の一つは、極度の孤独感と空虚感です。ある母親は、「昨日までお腹にいたプウちゃん。今はもうお空に。私だけが取り残されて…」と綴っています1。この「取り残された」感覚は、愛した小さな命との突然で痛ましい断絶を反映しています。痛みに伴うのは、罪悪感と自責の念です。「なんで、どうして」という問いが多くの人を苛みます2

非常にデリケートな側面は、夫婦間での悲しみへの向き合い方の違いです。女性は身体的・内面的に痛みを経験する一方、夫は、同じく苦しんでいても、感情を控えめに表現することがあります。ある体験談では、夫が冷静に「体は大丈夫?」と尋ねたことに妻が傷つき、口論になったとあります2。この違いは、夫が気にかけていないという意味ではありません。男女の感情処理や表現方法の違い、特に男性が弱さを見せることが奨励されない文化的背景を反映している可能性があります。この違いを認識し、認めることが、不必要な傷を避ける第一歩です。

癒やしとは、忘れることではありません。痛みを人生の物語の一部として受け入れ、前に進む力を見出すことです。泣くこと、悲しむこと、怒ることを自分に許してください。パートナーや信頼できる友人に感情を話してみてください3。ただ聞いてもらうだけで、大きな助けになることもあります18。悲しみが長く続き、日常生活に深刻な影響を及ぼす場合は、心理専門家や支援団体に助けを求めることは、勇気ある必要な選択です3


第II部:核心的な問い – いつ再び妊娠を試みるべきか?

喪失の痛みを経験した後、「いつまた挑戦できるのか」という問いは、多くの夫婦にとって最大の関心事となります。これは医学的な回復だけでなく、感情的な準備も関わる複雑な問題です。長年、医療上の推奨は慎重なものでしたが、近年の科学的根拠は、より柔軟で、夫婦に選択を委ねる新しい視点をもたらしています。

2.1. 時期を巡る議論:現代の科学的根拠が伝統的な助言に挑む

長年にわたり、流産後に次の妊娠を試みるまでには一定期間待つべきだというのが一般的な助言でした。推奨期間は通常最低3ヶ月5、世界保健機関(WHO)はかつて最低6ヶ月の待機を推奨していました5。この助言の背景には、女性の体、特に子宮とホルモン系が完全に「治癒」し、新たな妊娠に最適な状態に戻るには十分な時間が必要だという想定がありました。

しかし、過去10年間で、一連の大規模な科学研究がこの待機の必要性に疑問を投げかけました。2010年に権威ある医学雑誌『The BMJ』に掲載された影響力の大きい研究では、スコットランドの3万人以上の女性のデータが分析され、驚くべき結果が示されました4。流産後6ヶ月以内に再び妊娠した女性は、6~12ヶ月待った女性に比べて、次回の流産、子宮外妊娠、早産、低出生体重児のリスクが低いことがわかったのです4。これらの発見は、その後の多くの研究によっても裏付けられています2122

これらの強力な科学的根拠は、世界の医学界の考え方に大きな変化をもたらしました。「待たなければならない」という硬直的な助言は、合併症のない初期流産後のほとんどのカップルにとって、妊娠を遅らせる説得力のある医学的理由はない、という柔軟なアプローチに取って代わられつつあります7

表2:妊娠再開時期に関する推奨:各見解の比較

基準 伝統的見解(旧WHO) 現代の科学的根拠 日本産科婦人科学会(JSOG)の見解
主要な推奨 最低6ヶ月待つ19 待機は不要。6ヶ月以内の再妊娠でより良い結果も4 意図的に避妊期間を設ける必要はない24
医学的理由 子宮やホルモン系の完全な回復を待つため5 早期の再妊娠は流産や早産のリスクを増加させない4 期間が短くても次の流産率は上昇しない24
心理的要因 悲しみを乗り越え、精神的に準備する時間を与える5 感情的な準備の重要性を認めつつ、医学的必要性とは区別6 精神的に落ち込む傾向があるため、落ち着くまで待つのも良い選択24

2.2. 日本産科婦人科学会(JSOG)の公式見解

日本の読者にとって、日本産科婦人科学会(JSOG)の見解は最も重要な情報源です。JSOGの立場は現代の科学的根拠と完全に一致しており、医学と心理学の絶妙なバランスを示しています。

JSOGは公式に、「流産後の次の妊娠までの期間が短くても、そのために流産率が上昇するということはありません。したがって、流産後に意図的に避妊期間を設ける必要はないようです」と明言しています24。この声明は、早期の再妊娠が「危険」であるという古い概念を直接否定するものです。

しかし、JSOGの指導が特に思慮深いのは、感情的な側面を認識している点です。「ただし、流産後の女性は精神的に落ち込み、強い不安を抱える傾向があります。次の妊娠に臨む前に、気持ちが落ち着くまで少し待つのもよいでしょう」と続けています24。このアプローチは、医学的な安全性と個人の準備を区別し、最終的な決定権を患者に委ねるものです。

2.3. あなたにとっての理想的な時期:身体と心の準備が鍵

最終的に、「いつ再挑戦すべきか」という問いの答えは、カレンダーの特定の日付ではなく、医学的根拠、あなたの身体的回復、そして夫婦双方の感情的な準備の交差点にあります。現代科学とJSOGの指針がもたらした解放的なメッセージは、医学的には待つ必要はない、というものです。これにより、問いの本質は「医師は許可してくれるか」から「私たちは、カップルとして、この旅を再び始める準備が本当にできているか」へと変わりました。

ある東洋医学の情報源はこれを「『赤ちゃんが欲しいな』と自然に思えるようになったら、それが良い時期」と表現しています12。これは新しいアプローチの精神、すなわち自分自身に耳を傾けることを要約しています。身体的、精神的に準備ができたと感じた時が、あなたにとっての理想的な時期なのです。


第III部:行動計画 – 健やかな妊娠のための基盤作り

時期を決めた後の次のステップは、次の妊娠に向けて身体的・精神的に強固な基盤を積極的に築くことです。管理可能な要素に集中することは、健やかな妊娠の機会を最適化するだけでなく、不確実な時期に主体性と希望をもたらします。

3.1. 身体的健康の最適化:積極的なアプローチ

  • 栄養とサプリメント: 妊娠前から最も重要な微量栄養素の一つが葉酸です。胎児の神経管閉鎖障害を予防するために、妊娠を試みる数ヶ月前から毎日摂取することが推奨されます3。バランスの取れた食事、健康的な体重の維持も重要です3
  • 生活習慣: 禁煙、禁酒、違法薬物の使用中止は絶対条件です3。カフェインの摂取は1日200mg未満に制限することが推奨されます3。ウォーキングや水泳などの適度な運動は有益ですが、医師と相談し、体に耳を傾けながら行いましょう6。質の良い睡眠もホルモンバランスを整えるために不可欠です。

3.2. 精神的健康の涵養:次の妊娠における不安への対処

流産後の妊娠は、喜びと希望と同時に、常に不安を伴うものです。「嬉しさと不安が同時にやってくる」という専門家の言葉通りです3。この現実を認識し、備えることが重要です。

  • 感情の承認と共有: 不安を感じることを自分に許し、パートナーと率直に話し合いましょう。
  • 専門家とコミュニティの支援: 周産期ロスに関する経験を持つカウンセラーや、同じ経験を持つ人々と繋がれる支援グループは、大きな力となります3
  • より密な医療的ケアの要求: 不安を和らげるために、初期の超音波検査を頻繁に行うなど、より手厚いフォローアップを医師に相談することを躊躇しないでください6
  • マインドフルネスとリラクゼーション: 瞑想や深呼吸などの技法は、神経系を落ち着かせ、ストレスを軽減するのに役立ちます。

3.3. 医療機関の受診と相談:医師との対話の準備

医師との効果的な対話のために、質問や懸念事項のリストを事前に準備することが有効です。以下は、そのための行動計画チェックリストです。

表3:回復と準備のための行動計画(チェックリスト)

項目 具体的な行動 完了 (✔)
身体的ケア 流産後の十分な休息、出血の完全停止、再診の受診、月経周期の正常化を確認。
生活習慣・栄養 葉酸の摂取開始、バランスの取れた食事、有害物質の排除、カフェイン制限、適正体重の維持、適度な運動。
精神的準備 悲しむ時間を自分に与える、パートナーと感情を共有する、サポート源を特定する、不安への心構え。
医師への質問 ・私の状況で、いつから再挑戦するのが妥当ですか?
・追加の検査は必要ですか?
・推奨されるサプリメントはありますか?
・食事や運動の計画は適切ですか?
・次の妊娠で、より手厚い経過観察(早期超音波検査など)は可能ですか?
・特に注意すべき警告サインは何ですか?

このチェックリストを活用し、ご自身の健康管理において主体的なパートナーとなってください。


第IV部:流産を繰り返す場合 – 「不育症」の理解

流産を2回以上経験した場合、それは「不育症」と呼ばれる医学的な状態の兆候である可能性があります。この診断は不安を増大させるかもしれませんが、原因を系統的に調査し、適切な治療法を探す道を開くものでもあります。

4.1. 日本における「不育症」の定義と診断

日本産科婦人科学会などによると、「不育症」は2回以上の流産・死産を経験した場合に診断されます26。これには、出産経験の有無や流産が連続しているかどうかは問いません827。既知の危険因子には、抗リン脂質抗体症候群(約8.7%)、甲状腺機能異常(約9.5%)、子宮形態異常(約7.9%)などがありますが、約65%のケースでは原因が特定できません8。2回の流産後、医師は通常、これらの原因を探るための検査を開始することを提案します3

4.2. 日本のガイドラインに基づく検査と原因究明の道筋

不育症と診断されると、原因を特定するために一連の検査が行われます。「不育症管理に関する提言2021」では、これらの検査が科学的根拠に基づいて分類されています8

表4:日本における不育症の検査

検査の種類 具体的な検査名 目的・注記
推奨検査 子宮形態検査、抗リン脂質抗体検査、内分泌検査(甲状腺)、夫婦染色体検査 子宮の形態異常、自己免疫疾患、ホルモン異常、夫婦いずれかの染色体構造異常などを発見する。
選択的検査 血栓性素因検査(プロテインSなど)、その他自己抗体検査 特定の状況において有用な場合がある検査。
研究的検査 免疫学的検査(NK細胞活性など) 臨床的有用性がまだ確立されていない研究段階の検査。

注:詳細は「不育症管理に関する提言2021」8を参照。夫婦染色体検査の前には十分なカウンセリングが必要です。

4.3. 治療法と予後:希望のメッセージ

原因が特定できれば、効果的な治療法が存在する場合があります。例えば、抗リン脂質抗体症候群には低用量アスピリン・ヘパリン療法が有効です28。しかし、半数以上は「原因不明」とされます8。この結果は落胆させるかもしれませんが、ここにも希望のメッセージがあります。

日本の研究によると、原因不明の不育症で特別な治療を受けなかった場合でも、3~4回の流産歴がある女性の次回の妊娠における生児獲得率は、60%から70%に達します28。この数字は、医学がまだ答えを見つけられなくても、体には驚くべき回復力と成功の可能性があることを示しています。流産を繰り返すことが、子どもを持てないという最終宣告ではないのです。

第V部:結論 – 希望と入念な準備をもって未来へ

流産後の道のりは困難なものですが、一人で歩む必要はありません。現代医学の支援、愛する人々の理解、そして明確な行動計画があれば、希望と入念な準備をもって未来に向かうことができます。本稿で議論した要点を心に留めてください:

  • 妊娠再開の時期は個人的な決断です。 現代の科学的根拠は早期の挑戦が安全であることを支持しており、感情的な準備が整っているかどうかが鍵となります。
  • 包括的なケアが重要です。 身体的な健康最適化と、精神的な健康の涵養の両方が、次の健やかな妊娠のための基盤となります。
  • 日本の医療システムは支援を提供しています。 不育症に対する明確な診断・治療の道筋があり、たとえ原因が不明でも、次回の妊娠で成功する可能性は依然として高いです。

この情報が、あなた自身の体と感情をより深く理解し、医師やパートナーと効果的に対話するための道具となることを願っています。前途は常に平坦ではないかもしれませんが、決して絶望的ではありません。体の回復力と心の強さを信じ、明るい未来への希望を持ち続けてください。

よくある質問

医師から3ヶ月待つように言われました。本当にそれより早く試しても大丈夫ですか?

はい、現代の医学的根拠および日本産科婦人科学会の指針は、身体的・精神的に準備ができていれば、より早期に試みることを支持しています424。3ヶ月待つという助言は伝統的なものですが、必ずしも強い科学的根拠に基づくものではありません。ご自身の状況について、医師と改めて話し合うことをお勧めします。

流産を2回経験しました。どうすればよいですか?

「不育症」の可能性があります。日本の医学ガイドラインに概説されているように、潜在的な原因を調査するための系統的な検査を受けるために、専門医に相談することが推奨されます826

40歳以上です。待つことで妊娠の可能性は下がりますか?

母体の年齢は妊娠成功率に大きく影響します。感情的な回復も重要ですが、長く待つ医学的必要性がないことを示す科学的根拠は、年齢を重ねた女性にとって心強い情報となり得ます。これはパートナーや医師と行うべき極めて重要な話し合いです。(表1参照910

パートナーと悲しみの感じ方が違います。どう支え合えばよいですか?

パートナー同士が異なる方法で悲しみを表現するのは正常なことです。判断せずにオープンにコミュニケーションをとることが鍵です。お互いの感情を認め合い、この困難な時期を共に乗り越えるために、専門的なカウンセリングを検討することも一つの方法です23

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康に関する懸念や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格を持つ医療専門家にご相談ください。

参考文献

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  28. 日本産科婦人科学会. 不育症の診断と治療. [インターネット]. [引用日: 2025年7月27日]. Available from: http://jsog.umin.ac.jp/68/handout/3_2Dr.Maruyama.pdf
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