がん・腫瘍疾患

浸潤性小葉癌とは?症状・検査・治療とこれからの生活を日本の公式情報に基づいて解説

「乳がんの検診は毎年受けていたのに、しこりに気づかなかった」「マンモグラフィでは異常なしと言われたのに、後から浸潤性小葉癌(しんじゅんせいしょうようがん)と診断された」──そんな不安や戸惑いを抱えて、このページにたどり着いた方も多いかもしれません。

浸潤性小葉癌は、乳がんの中では比較的少ない「特殊型乳がん」の一つです。多くの乳がんが乳管(母乳の通り道)から発生するのに対し、浸潤性小葉癌は乳腺の「小葉」と呼ばれる部分から発生し、細胞が一列に並びながら広がるという独特の広がり方をします。そのため、触ってもしこりとして分かりにくく、マンモグラフィにも写りにくい場合があり、早期発見が難しいと感じる方も少なくありません19

一方で、浸潤性小葉癌の多くは女性ホルモン受容体が陽性(ホルモン感受性乳がん)であり、適切なホルモン療法(内分泌療法)を継続することで再発を抑え、長期的な予後を期待できるタイプでもあります29。大切なのは、「特殊だから怖い」と思い込みすぎず、このがんの特徴と治療の選択肢、日本の乳がん検診制度やサポート体制を正しく理解することです。

本記事では、国立がん研究センター がん情報サービスや厚生労働省のがん検診指針、日本および海外の査読付き論文などの一次情報をもとに、浸潤性小葉癌の基礎知識から症状・検査・治療の流れ、仕事や家庭生活・妊娠との両立、再発や長期フォローアップまでを、できるだけ分かりやすい言葉で丁寧に解説します1245679101112

「自分や家族に当てはまるかもしれない」「誰にも相談できずに不安を抱えている」という方にとって、この記事が少しでも安心につながり、次に取るべき一歩(検診・受診・治療の相談など)を考える手がかりになれば幸いです。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。

本記事は、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が、国立がん研究センター がん情報サービスや厚生労働省のがん検診指針、日本乳癌学会のガイドラインの情報と、海外の査読付き論文(Frontiers in Oncology、Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention、Radiographics など)のデータを参照し、AIツールのサポートを受けながら作成しました123456789101112

  • 厚生労働省・自治体・公的研究機関:e-ヘルスネット、がん検診に関する指針、がん統計など、日本人向けの公式情報を優先して参照しています345678
  • 国立がん研究センター がん情報サービス:乳がんの種類や治療法、患者数・生存率、就労支援など、患者さん向けに整理された情報を基盤として用いています123
  • 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:日本乳癌学会の診療ガイドライン、および浸潤性小葉癌に特化した総説や大規模レジストリ研究を参考に、浸潤性乳管癌との違いや治療方針の特徴を整理しています9101112
  • 教育機関・医療機関・NPOによる一次資料:日本の健診制度や働く世代のがん対策など、生活に密着した情報を補足的に利用しています678

AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。

私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、運営者情報(JapaneseHealth.org)をご覧ください。

要点まとめ

  • 浸潤性小葉癌(invasive lobular carcinoma: ILC)は、乳腺の「小葉」から発生する乳がんで、乳がん全体の約5〜15%を占める比較的少ないタイプですが、アジアでは約5%程度とされています19
  • 多くの浸潤性小葉癌はホルモン受容体陽性・HER2陰性で、細胞同士の接着に関わるEカドヘリン(E-cadherin)が失われているため、細胞が一列に並ぶように広がり、しこりとして分かりにくいことが特徴です29
  • 日本の乳がん検診は、厚生労働省の指針に基づき、40歳以上の女性を対象に2年に1回のマンモグラフィ検査が推奨されていますが、浸潤性小葉癌はマンモグラフィで見つかりにくいケースもあり、必要に応じて乳腺エコーや乳房MRIが追加されます456711
  • 治療は、乳房温存術や乳房切除術、センチネルリンパ節生検などの手術と、必要に応じた放射線治療、ホルモン療法、抗がん剤、分子標的薬(CDK4/6阻害薬など)を組み合わせて行われます。浸潤性小葉癌だからといって必ずしも治療成績が悪いわけではなく、適切な治療を行えば浸潤性乳管癌と同程度の生存率が得られるとする報告もあります291012
  • 浸潤性小葉癌は、骨や腹膜、消化管などへの特徴的な転移パターンや、10年以上たってから再発する「遅い再発」を示すことがあり、長期的なフォローアップと、ちょっとした体調の変化にも気づくことが大切です911
  • 仕事や家事、妊娠・出産、更年期症状など、生活への影響は人それぞれです。国立がん研究センターや厚生労働省の情報、がん相談支援センターなどの公的な相談窓口をうまく活用しながら、一人で抱え込まずに支援を受けることが重要です1238
  • 本記事を通じて、「浸潤性小葉癌だから特別に悪い」というイメージに偏りすぎず、自分の状況に合った検査・治療・生活の整え方を、主治医や医療スタッフと一緒に考えていくための基礎知識が得られることを目指しています。

第1部:浸潤性小葉癌とは?乳がんの中での位置づけと基礎知識

まずは、「浸潤性小葉癌」という名前が何を意味しているのか、乳がん全体の中でどのような位置づけにあるのかを整理しておきましょう。ここを押さえておくと、後で出てくる検査や治療の説明がぐっと理解しやすくなります。

1.1. 乳がんの種類と「組織型」という考え方

乳がんは一つの病気のように聞こえますが、実際には「どの場所から発生したか」「細胞がどのような形をしているか」「ホルモン受容体やHER2の状態はどうか」といった特徴によって、いくつものタイプに分かれます。顕微鏡で見た細胞の違いによる分類を、医学的には「組織型(そしきがた)」と呼びます12

国立がん研究センター がん情報サービスでは、浸潤性乳管癌(もっとも多いタイプ)、浸潤性小葉癌、粘液癌、管状癌など、いくつかのタイプをまとめて紹介しており、浸潤性小葉癌は「特殊型乳がん」の一つとして位置づけられています29。特殊型といっても「治療ができないほど特別に悪い」という意味ではなく、「発生場所や広がり方、顕微鏡で見た姿が他と少し違うグループ」と考えるとイメージしやすいでしょう。

1.2. 浸潤性小葉癌の頻度と「特殊型乳がん」としての特徴

浸潤性小葉癌は、世界全体で見ると乳がん全体の約5〜15%を占めると報告されていますが、アジア地域では約5%程度とされ、日本でも同程度と考えられています9。つまり、数としては決して多くはありませんが、「まれすぎて情報がない」というほどの希少がんでもありません。

浸潤性小葉癌の多くは、エストロゲン受容体(ER)やプロゲステロン受容体(PR)が陽性で、HER2は陰性という「ホルモン感受性・HER2陰性」のタイプに分類されます912。このため、後で説明するホルモン療法が治療の柱になることが多いのが特徴です。

1.3. 浸潤性乳管癌とのざっくりした違い

もっとも一般的な乳がんである浸潤性乳管癌(IDC)と浸潤性小葉癌(ILC)の違いは、患者さんにとって一番気になるポイントの一つです。大まかにいうと、次のような違いがあります2910

  • 発生場所:浸潤性乳管癌は乳管から、浸潤性小葉癌は小葉から発生します。
  • 広がり方:浸潤性乳管癌は「塊(しこり)」としてまとまって増えることが多いのに対し、浸潤性小葉癌は細胞が一列に並ぶようにバラバラと広がり、境界がはっきりしにくい傾向があります。
  • 画像での見え方:浸潤性乳管癌はマンモグラフィで石灰化や明らかなしこりとして写ることが多いのに対し、浸潤性小葉癌は密度の左右差など微妙な変化のみで見つかることがあり、見落としのリスクが相対的に高いとされています11
  • 分子学的特徴:浸潤性小葉癌ではEカドヘリンという接着分子が失われていることが多く、このことが細胞の広がり方や転移先の違いに関係していると考えられています9

とはいえ、治療方針の大枠は「ステージ」「ホルモン受容体・HER2の状態」「全身状態」などで決まる点は浸潤性乳管癌と共通です。浸潤性小葉癌だからといって、必ずしも極端に不利な病気というわけではありません。

1.4. 浸潤性小葉癌の仕組みとEカドヘリン・CDH1の異常

浸潤性小葉癌の重要なキーワードが、細胞同士の接着に関わるタンパク質「Eカドヘリン」と、それをつくる設計図となる「CDH1遺伝子」です。通常、乳腺の細胞はEカドヘリンを介してお互いにしっかりと接着し、整然と並んでいます。ところが、浸潤性小葉癌ではCDH1遺伝子の変化などによりEカドヘリンが失われることが多く、細胞同士の結びつきが弱くなります9

その結果、がん細胞は「一列に並んでじわじわと広がる(single file pattern)」ような形で周囲の乳腺や脂肪組織、筋肉の間に入り込んでいきます。イメージとしては、綿のような組織の隙間に細い糸が静かに這い込んでいくような状態です。このため、触ってもはっきりした塊として感じにくく、マンモグラフィなどの画像でも輪郭のはっきりしない影としてしか写らないことがあります911

また、Eカドヘリンの異常は、乳房以外の場所への広がり方にも影響していると考えられており、浸潤性小葉癌では骨や腹膜、消化管、卵巣などへの転移が比較的多いと報告されています911。この点も、後の「再発・転移」や「長期フォローアップ」を理解するうえで重要なポイントになります。

表1:浸潤性乳管癌(IDC)と浸潤性小葉癌(ILC)のざっくり比較
項目 浸潤性乳管癌(IDC) 浸潤性小葉癌(ILC)
発生場所 乳管 乳腺小葉
頻度 乳がんの大部分 5〜15%程度(アジアでは約5%)9
画像での特徴 しこり・石灰化として写ることが多い 境界不明瞭な陰影や左右差など、微妙な変化のみのことも11
ホルモン受容体 ER陽性が多いが様々 ER/PR陽性が多くHER2陰性が主体9
転移しやすい部位 肺・肝・骨など 骨・腹膜・消化管・卵巣・髄膜などが比較的多い911

第2部:日本と世界のデータに見る浸潤性小葉癌とリスク要因

ここでは、日本と世界の乳がん・浸潤性小葉癌に関するデータを整理し、「自分はどのくらいのリスクがあるのか」「どんな背景を持つ人に多いのか」を具体的にイメージできるようにしていきます。

2.1. 日本における乳がん全体の状況

国立がん研究センター がん情報サービスによると、乳がんは日本人女性に多いがんの一つであり、新たに乳がんと診断される人は年々増加傾向にあります13。患者数や5年相対生存率(同じ年齢・性別の一般集団と比べた生存率)は、がん種ごとに公開されていますが、浸潤性小葉癌だけを分けた統計は現時点では公表されていません3

乳がん全体としては、早期に発見され適切な治療を受けた場合、5年相対生存率は高い水準にあります3。ステージが進むほど生存率は下がりますが、「早期発見・早期治療」が重要である点は、浸潤性小葉癌を含むすべての乳がんに共通しています。

2.2. 浸潤性小葉癌の割合と年齢分布

Frontiers in Oncology の総説では、浸潤性小葉癌は世界全体で乳がんの約5〜15%を占めるが、アジアでは約5%程度にとどまると報告されています9。また、大規模なレジストリ研究では、浸潤性小葉癌の患者さんは浸潤性乳管癌と比べて診断時の年齢がやや高く、閉経後の女性に多い傾向が示されています10

日本における正確な浸潤性小葉癌の割合は、公的統計上は明示されていませんが、アジアの傾向と大きくは変わらないと考えられています139。つまり、「乳がん患者さんの中でも一部にみられるタイプ」というイメージです。

2.3. リスク要因:ホルモン・ライフスタイル・遺伝

浸潤性小葉癌に限らず、乳がん全体のリスクを高める要因として知られているのが、年齢、ホルモン環境、生活習慣、家族歴などです289。浸潤性小葉癌では特に次のような点が注目されています。

  • 年齢・閉経:浸潤性小葉癌は、閉経後の女性に多いとされています。年齢とともに乳がん全体のリスクも高まるため、40歳以降は定期的な検診が重要です139
  • ホルモン補充療法(HRT):閉経後にホルモン補充療法を長期間行った場合、浸潤性小葉癌のリスクが高まる可能性があるとする報告があります9。ただし、治療の必要性は個々で異なるため、自己判断で中止するのではなく、主治医とリスクとメリットをよく相談することが大切です。
  • 出産歴・授乳歴:初産年齢が高い、出産回数が少ない、授乳期間が短いといったライフスタイルは、ホルモン感受性の乳がん全体のリスクを高める方向に働くとされています28
  • 肥満・運動不足:閉経後の肥満(特に内臓脂肪型肥満)は、エストロゲンの産生を増やし、ホルモン受容体陽性乳がんのリスクを高めると考えられています28
  • 家族歴・遺伝子:乳がんや卵巣がんの家族歴がある場合、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(BRCA1/2変異)や、CDH1遺伝子変異による遺伝性びまん性胃がん症候群に伴う浸潤性小葉癌など、遺伝的な背景が関わっている可能性があります9

もちろん、これらのリスク要因が一つも当てはまらない人にも浸潤性小葉癌は起こり得ますし、いくつか当てはまっていても一生発症しない人もいます。「リスクがある=必ず発症する」というわけではないことを覚えておきましょう。

第3部:症状と気づきにくさ — 検診・検査でどう見つける?

浸潤性小葉癌は、「しこりとして分かりにくい」「検診で見つかりにくい」と言われることがあります。ここでは、その背景と、日本の乳がん検診の仕組み、実際の検査の流れを整理します。

3.1. 浸潤性小葉癌の症状とred flagサイン

乳がん全体の典型的な症状としては、次のようなものが知られています12

  • 乳房に触れるしこりや硬い部分がある
  • 乳房の形や大きさが左右で変わってきた
  • 乳頭がへこんだり、向きが変わったりする
  • 乳頭から血の混じった分泌物が出る
  • 乳房の皮膚が赤く腫れたり、オレンジの皮のようにブツブツしたりする

浸潤性小葉癌では、これらに加えて、「広い範囲がうっすらと厚くなっている」「なんとなく片側の乳房だけ張り方が違う」といった、微妙な変化として現れることがあります。しこりとしてはっきり触れない場合も多く、「年齢のせいかな」と見過ごされてしまうこともあります911

また、病気が進行して他の臓器に広がると、次のようなred flag症状が出ることがあります911

  • 背中や腰、骨の痛みが数週間以上続く、夜間に強くなる
  • わずかな外傷で骨折してしまう(骨転移の可能性)
  • おなかが張る、食欲不振、原因不明の体重減少、吐き気や便秘・下痢が続く(腹膜・消化管への転移の可能性)
  • ひどい頭痛、めまい、手足のしびれ、けいれんなど(脳や髄膜への転移の可能性)

こうした症状があるからといって必ず浸潤性小葉癌というわけではありませんが、長引く場合には早めに医療機関で相談することが大切です。

3.2. 日本の乳がん検診と浸潤性小葉癌

厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」では、乳がん検診について、40歳以上の女性を対象に2年に1回、問診とマンモグラフィを組み合わせて行うことが推奨されています4567。視触診のみの検診は推奨されておらず、あくまで画像検査を中心としたスクリーニングが基本です。

マンモグラフィは、乳房を板で挟んでX線撮影を行う検査で、石灰化やしこりを比較的早い段階で見つけることができます。日本のデータでは、40〜69歳の女性のマンモグラフィ検診受診率はまだ十分高いとは言えず、2019年時点で約44.6%に留まっていると報告されています7。検診自体を受けていない人が多いことは、浸潤性小葉癌に限らず乳がん全体の課題です。

一方で、Radiographics のレビューなどによると、浸潤性小葉癌はマンモグラフィでの検出感度が相対的に低く、画像上もはっきりとしたしこりとして写らず、左右の乳房の濃度差やわずかな構造の乱れとして見えるだけの場合があります11。そのため、マンモグラフィだけでは病変の広がりを過小評価してしまう可能性が指摘されています。

3.3. マンモグラフィ・乳腺エコー・MRIの役割

浸潤性小葉癌を含む乳がんの検査では、次のように複数の検査を組み合わせて診断していきます1211

  • マンモグラフィ:乳がん検診の基本となる検査で、石灰化やしこりの有無を確認します。浸潤性小葉癌では、微妙な左右差や構造の乱れとして現れることがあり、専門医による丁寧な読影が欠かせません。
  • 乳腺エコー:超音波を使って乳腺の内部を調べる検査です。しこりの性状や液体・固形の区別、血流の有無などを確認します。マンモグラフィでは評価が難しい高濃度乳房の方や、浸潤性小葉癌のように境界のはっきりしない病変の評価に役立つ場合があります。
  • 造影MRI:造影剤を用いて乳房全体の血流や病変の分布を詳しく調べる検査で、浸潤性小葉癌に対して高い感度を示すと報告されています11。特に、多発病変や広範な広がりが疑われる場合、乳房温存術が可能かどうかを判断する材料として有用です。

どの検査をいつ行うかは、症状や検診結果、年齢、乳腺の状態などによって異なります。検診のマンモグラフィで「要精査」となった場合や、しこりがはっきりしないものの違和感が続く場合には、乳腺外来でエコーやMRIなど追加の検査が行われることがあります。

3.4. セルフチェックと受診の目安

日本では、自己検診(セルフチェック)の有用性については慎重に議論されていますが、自分の乳房の状態を日ごろから把握しておくことは、変化に気づくうえで役立ちます1。入浴時や着替えの際に、次のようなポイントを意識してみましょう。

  • 左右の乳房の形・大きさに急な変化はないか
  • 皮膚にへこみや引きつれ、赤みなどが出ていないか
  • 乳頭から分泌物が出ていないか(特に血が混じっていないか)
  • 触ってみて、部分的に硬いところや厚く感じるところがないか

ただし、セルフチェックだけで「がんではない」と判断するのは危険です。40歳以上の方は、厚生労働省が推奨する2年に1回のマンモグラフィ検診を基本とし、気になる症状がある場合には年齢に関わらず医療機関で相談することが大切です4567

表2:こんな症状・状況があれば医療機関に相談を
症状・状況 考えられる背景・受診の目安
しこりではなく、片側の乳房全体が厚くなったように感じる 浸潤性小葉癌を含む乳がんや良性疾患の可能性。数週間で改善しない場合は乳腺外来で相談を129
乳頭から血の混じった分泌物が出る 乳がんを含む病変が隠れている可能性。早めの受診が推奨されます12
背中や腰の痛みが長く続き、鎮痛薬でも軽くならない 骨転移以外の原因も多いが、乳がん既往のある方は早めに主治医に相談を9
原因不明の体重減少・食欲不振・長引く消化器症状 腹部の病気全般を含め、消化器内科や主治医に相談。浸潤性小葉癌の腹膜・消化管転移が見つかることもあります911

第4部:浸潤性小葉癌の治療の基本と長期フォローアップ

浸潤性小葉癌と診断されたとき、多くの方がまず知りたいのは「どのような治療を受けることになるのか」「乳房を残せるのか」「再発しやすいのか」という点ではないでしょうか。ここでは、日本の標準的な治療と、浸潤性小葉癌ならではの注意点を整理します。

4.1. 手術(乳房温存術 vs 乳房切除術)とリンパ節の治療

日本の乳がん治療は、乳癌診療ガイドラインなどに基づき、ステージや腫瘍の大きさ、位置、患者さんの希望などを踏まえて決定されます29。浸潤性小葉癌でも基本的な方針は同じですが、腫瘍の広がり方が独特なため、切除範囲の決定に注意が必要です。

  • 乳房温存術(部分切除):乳房の一部の組織と、その周囲の正常乳腺を含めて切除する方法です。術後にはほぼ必ず乳房への放射線治療が行われます。浸潤性小葉癌では、顕微鏡で見ると予想以上にがんが広がっていることがあり、切除断端(切り口)にがん細胞が残りやすいと報告されています911。そのため、術前にMRIで広がりを詳しく評価したり、切除範囲を広めに取ったりする工夫が行われます。
  • 乳房切除術(全摘):乳房全体を切除する方法です。病変が広範囲に及ぶ場合や、多数の病変が多発している場合、あるいは温存後に断端陽性が続く場合などに選択されます。乳房再建(インプラントや自家組織)を組み合わせるケースもあります。
  • センチネルリンパ節生検:乳房から最初にリンパ液が流れる「見張りリンパ節」を調べ、転移の有無を確認する検査です。リンパ節に転移がなければ、大規模なリンパ節郭清を省略でき、腕のむくみ(リンパ浮腫)のリスクを減らせます2

「乳房を残せるかどうか」は多くの方にとって大きな関心事ですが、浸潤性小葉癌の場合は、病変の広がりを過小評価しないことが特に重要です。MRIを含めた画像検査の結果や、病理所見を踏まえて、主治医とメリット・デメリットをよく話し合うことが大切です911

4.2. 放射線治療の役割

乳房温存術を行った場合、多くの症例で術後の放射線治療が推奨されます。これは、残った乳房内での再発リスクを下げるためであり、浸潤性小葉癌かどうかに関わらず基本的な考え方は同じです29。乳房切除術後でも、腫瘍の大きさやリンパ節転移の数によっては胸壁やリンパ節領域への放射線治療が検討されます。

放射線治療中は、照射部位の皮膚が赤くなったり、軽いやけどのような症状が出たりすることがありますが、多くは数週間〜数か月で改善します。長期的なリスクとしては、ごくまれに心臓や肺への影響が指摘されていますが、近年は照射技術の進歩によりリスクを減らす工夫がなされています2

4.3. ホルモン療法・抗がん剤・分子標的薬

浸潤性小葉癌の多くはホルモン受容体陽性であるため、ホルモン療法(内分泌療法)が治療の柱となります2912

  • ホルモン療法:エストロゲンの働きを抑えたり、エストロゲンの産生を減らしたりすることで、再発や転移のリスクを下げる治療です。閉経前の方にはタモキシフェンや卵巣機能抑制、閉経後の方にはアロマターゼ阻害薬(アナストロゾール、レトロゾールなど)がよく用いられます。治療期間は5〜10年に及ぶことが多く、長期的な継続が重要です29
  • 抗がん剤(化学療法):腫瘍の大きさやリンパ節転移の有無、増殖能(Ki-67値)などに応じて、術前・術後に抗がん剤が用いられることがあります。浸潤性小葉癌は、浸潤性乳管癌に比べて術前化学療法による完全奏効率が低いとされていますが、再発リスクの高い症例では依然として重要な選択肢です912
  • 分子標的薬・CDK4/6阻害薬:HER2陽性の浸潤性小葉癌は少数ですが、その場合にはトラスツズマブなどのHER2標的薬が用いられます。また、ホルモン受容体陽性・HER2陰性で再発リスクの高い症例や進行・再発例では、ホルモン療法にCDK4/6阻害薬を併用することで病勢コントロール期間を延ばせるとする臨床試験結果が報告されています12

どの薬物療法をどの順番で受けるかは、ステージや全身状態、年齢、ほかの病気の有無などによって大きく変わります。同じ浸潤性小葉癌でも、患者さんごとに最適なバランスは異なるため、治療方針については主治医と納得いくまで相談することが大切です。

4.4. 再発・転移と長期フォローアップ

浸潤性小葉癌は、診断・治療から10年以上経ってから再発する「遅い再発」の傾向があることが報告されています911。また、骨や腹膜、消化管、髄膜など、比較的「見落とされやすい」部位に転移することもあり、長期的なフォローアップが重要です。

国立がん研究センター がん情報サービスや日本乳癌学会の資料では、乳がん全体のフォローアップとして、定期的な問診・診察、必要に応じた画像検査や血液検査が推奨されています239。具体的な頻度は施設や患者さんの状況によって異なりますが、「治療が終わったからもう関係ない」と考えるのではなく、長い目で付き合っていく感覚が大切です。

再発のサインとしては、第3部で挙げたような骨の痛みや消化器症状、神経症状などが代表的です。こうした症状が続く場合、「年齢のせい」「疲れのせい」と決めつけず、一度主治医やかかりつけ医に相談することをおすすめします。

表3:治療後フォローアップで意識したいポイント
項目 具体的なチェック内容
乳房・胸壁 触ったときのしこり、皮膚の変化、手術跡の違和感などを定期的にチェックし、外来で診察してもらう。
骨・関節 原因のはっきりしない骨の痛みや背部痛が数週間以上続く場合は、骨転移の可能性も含めて相談する。
消化器症状 腹部膨満、食欲不振、便通異常、体重減少などが長引くときは、消化器内科や主治医に相談する。
日常生活 疲れやすさ、倦怠感、気分の落ち込みなど、生活の質に影響する変化も遠慮なく伝える。

第5部:仕事・家庭・妊娠・更年期 ─ 日本で生きる患者さんのリアル

浸潤性小葉癌の治療は、手術や薬物療法といった医学的な側面だけでなく、仕事や家庭生活、妊娠・出産、更年期との関係など、人生全体に大きな影響を与えます。ここでは、典型的なペルソナ(人物像)を通して、よくある悩みと向き合い方を考えてみます。

5.1. 働きながら治療を受ける不安

例えば、都市部でフルタイム勤務をする40代の会社員の方は、「仕事を続けながら、手術や通院、抗がん剤・ホルモン療法をどう両立させればよいか」という不安を抱えがちです。国立がん研究センターや厚生労働省は、がんと仕事の両立支援に関する資料や制度の紹介を行っており、治療と就労の調整に役立つ情報がまとめられています28

具体的には、主治医に治療スケジュールの見通しを確認し、会社の産業医や人事担当者と相談しながら、休職・時短勤務・在宅勤務などの選択肢を検討することができます。また、がん相談支援センターでは、仕事と治療の両立について社会保険労務士や看護師などに相談できる窓口が設けられていることもあります12

5.2. 家事・介護・孫育てとのバランス

60代以降で、家事や孫の世話、親の介護を担っている方にとっては、「自分が治療中に家族に負担をかけてしまうのではないか」という心配も大きなテーマです。特に浸潤性小葉癌は閉経後に多く、体力の低下や骨粗鬆症など、年齢に伴う変化とも重なりやすくなります389

治療中は、「今まで通り全部自分でやらなければ」と考えすぎず、家族や周囲の人に具体的なお願いをすることが大切です。「買い物だけお願いする」「重いものを持つ作業は別の家族に頼む」など、負担を分散させる工夫を一緒に考えてみましょう。

5.3. 妊娠・出産と浸潤性小葉癌

浸潤性小葉癌は比較的高年齢の女性に多いものの、40代前半など妊娠・出産をまだ考えている世代で見つかることもあります。その場合、「今後妊娠できるのか」「いつまでホルモン療法を続ける必要があるのか」といった不安が大きくなります。

海外を含む乳がん全体のデータでは、治療後に一定期間をおいて妊娠を希望する場合、主治医と相談のうえで妊娠が可能と判断されるケースも少なくありません912。ただし、ホルモン療法の中断時期や再開のタイミング、再発リスクとのバランスは非常に個別性が高いため、「浸潤性小葉癌だから必ずこう」という画一的な答えはありません。

妊娠・出産を希望する可能性がある方は、できるだけ早い段階で主治医や生殖医療の専門家に相談し、卵子凍結などの生殖補助医療を検討することも選択肢の一つです。日本乳癌学会や国立がん研究センターでも、若年乳がん患者さんの妊娠・出産について情報提供が行われています29

5.4. 更年期症状・ホルモン療法の副作用

ホルモン療法は、浸潤性小葉癌の再発を抑えるうえで非常に重要な治療ですが、更年期症状に似た副作用が出ることがあります。例えば、ほてり、発汗、気分の落ち込み、関節痛、性欲低下、膣の乾燥などです29

これらの症状は、「我慢するしかない」と考えられがちですが、実際には漢方薬や鎮痛薬、運動・ストレッチ、カウンセリングなど、さまざまな緩和策があります。症状を詳細にメモし、外来で医師や看護師、薬剤師に相談することで、薬の種類や用量の調整を含めた対策を一緒に考えることができます。

5.5. 心理的サポート・相談窓口

浸潤性小葉癌の患者さんの中には、「特殊な乳がんと言われて怖くなった」「検診で見つからなかったことへの不信感や後悔が消えない」「再発が怖くて将来の計画が立てられない」といった深い不安を抱える方も少なくありません。

国立がん研究センターをはじめ、多くのがん診療連携拠点病院にはがん相談支援センターが設置されており、看護師やソーシャルワーカー、心理士などが病気や治療、仕事、経済的な問題など幅広い相談に対応しています12。また、患者会やNPOが開催する交流会やオンラインコミュニティも、同じ経験を持つ人とつながる場として役立つことがあります。

一人で悩みを抱え込まず、信頼できる公的な窓口や専門職に思いを打ち明けることは、心の負担を軽くする大切な一歩です。

第6部:専門家への相談 ─ いつ・どこで・どのように?

「検診で異常なしと言われたのに違和感が続く」「浸潤性小葉癌と診断されたが、セカンドオピニオンも検討したい」など、受診や相談のタイミングに迷う場面は少なくありません。ここでは、日本の医療制度やがん診療体制を踏まえた受診の目安を整理します。

6.1. 受診を検討すべき危険なサイン

  • 片側の乳房に、2〜3週間たっても改善しないしこり・厚み・変形がある
  • 乳頭から血の混じった分泌物が出る、乳頭が急に陥没してきた
  • 乳房の皮膚が赤く腫れ、熱感があり、抗生物質を飲んでも改善しない
  • 背中や腰、骨の痛みが続き、夜間に強くなる、あるいは原因不明の骨折が起こった
  • おなかの張りや食欲不振、体重減少が続き、消化器症状も長引いている
  • ひどい頭痛やめまい、手足の脱力・しびれなどの神経症状が出現した

これらの症状があるからといって、必ず浸潤性小葉癌の進行や再発というわけではありません。しかし、いずれも重い病気のサインである可能性があり、「様子を見続ける」よりも早めに医療機関で相談することが重要です。急激な悪化や意識障害、呼吸困難などがある場合は、ためらわずに119番に連絡してください。

6.2. 症状に応じた診療科の選び方

  • 乳房に関する症状(しこり・変形・分泌など):乳腺外科や乳腺専門外来のある外科・外来が第一選択です。
  • すでに乳がんの診断・治療歴がある方:まずはこれまで診てもらっていた主治医(がん専門医)に相談し、必要に応じて他科への紹介を受けるのが一般的です。
  • 骨の痛みや神経症状:整形外科や脳神経外科、神経内科などが関わることもありますが、乳がん既往がある場合は、主治医と連携を取りながら検査を進めることが重要です。
  • 消化器症状:消化器内科を受診しつつ、乳がんとの関連について主治医にも共有すると安心です。

6.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安

  • 紹介状・検査結果:過去のマンモグラフィやエコー、MRIの画像、病理検査結果などがあると、診断や治療方針の検討がスムーズになります。
  • お薬手帳:現在服用している薬やサプリメントの情報は、治療方針や副作用対策を考えるうえで重要です。
  • 症状メモ・質問メモ:いつから、どのような症状があるのか、どのような不安があるのかを書き出しておくと、限られた診察時間でも聞きたいことを漏らしにくくなります。
  • 費用の目安:乳がんの検査・治療には、健康保険(通常3割負担)が適用されます。高額療養費制度や医療費控除などの仕組みも活用できる場合があるため、がん相談支援センターや自治体の窓口で情報を確認しておくと安心です268

よくある質問

Q1: 浸潤性小葉癌とはどんな乳がんですか?

A1: 浸潤性小葉癌は、乳腺の「小葉」と呼ばれる部分から発生する乳がんで、乳がん全体の約5〜15%を占めるとされています。アジアでは約5%程度と報告されており、日本でも同程度と考えられています9。多くがホルモン受容体陽性・HER2陰性で、Eカドヘリンという細胞接着分子が失われていることが多く、細胞が一列に並んで広がるのが特徴です9

Q2: 浸潤性小葉癌と浸潤性乳管癌は何が違うのですか?

A2: 大きな違いは、発生する場所と広がり方です。浸潤性乳管癌は乳管から、浸潤性小葉癌は小葉から発生します。また、浸潤性乳管癌が「しこり」としてまとまりやすいのに対し、浸潤性小葉癌は細胞が一列に並んでじわじわと広がるため、境界がはっきりしないことが多いとされます29。その結果、マンモグラフィでの写り方や転移しやすい部位にも違いが出ることがあります1011

Q3: 浸潤性小葉癌はマンモグラフィで見つかりにくいって本当ですか?

A3: Radiographicsなどの報告では、浸潤性小葉癌はマンモグラフィで石灰化や明瞭なしこりとして写りにくく、乳房全体の密度の左右差や構造の乱れとしてしか見えない場合があるとされています11。ただし、マンモグラフィは乳がん全体の死亡率を減らすことが示されている重要な検診手段であり、日本でも40歳以上の女性に2年に1回の受診が推奨されています4567。必要に応じて乳腺エコーやMRIが追加されることもあります。

Q4: 浸潤性小葉癌のステージ別生存率はどのくらいですか?

A4: 日本の公的統計では、浸潤性小葉癌だけを分けた生存率は示されていませんが、乳がん全体としてはステージが早いほど5年相対生存率が高く、適切な治療により良好な予後が期待できることが示されています3。大規模な海外レジストリ研究では、ステージや治療法を調整したうえで比較すると、浸潤性小葉癌と浸潤性乳管癌の生存率は大きくは変わらない、あるいはわずかな差にとどまると報告されています10

Q5: 浸潤性小葉癌は再発しやすい・遅く再発すると聞きましたが本当ですか?

A5: 浸潤性小葉癌は、ホルモン受容体陽性であることが多く、長期間にわたって再発リスクが続くとされます。10年以上経ってから骨や腹膜、消化管などに再発が見つかるケースも報告されており、「遅い再発」が特徴の一つと考えられています911。このため、治療終了後も定期的なフォローアップと、体調の変化に対する注意が重要です。

Q6: 40代で検診を毎年受けていても、浸潤性小葉癌が見逃されることはありますか?

A6: 乳がん検診を定期的に受けていても、すべての乳がんを100%早期に見つけられるわけではありません。浸潤性小葉癌はマンモグラフィでの検出が難しい場合があり、画像上の変化がごくわずかであることもあります11。ただし、検診を受けていない場合と比べれば、早期発見の可能性を高めるうえで大きな意味があります4567。気になる症状があるときは、検診結果にかかわらず医療機関で相談しましょう。

Q7: 浸潤性小葉癌でも乳房温存はできますか?

A7: 浸潤性小葉癌でも、腫瘍の大きさや位置、数、患者さんの希望などによっては乳房温存術が可能な場合があります。ただし、病変の広がりを過小評価すると切除断端にがんが残りやすいとされているため、術前のMRIなどで範囲を詳しく評価し、必要に応じて切除範囲を広めにとる、あるいは乳房切除術を検討するなどの工夫が行われます911。どちらが良いかは一人ひとり異なるため、主治医と十分に話し合うことが大切です。

Q8: ホルモン療法だけで十分ですか?抗がん剤も必要でしょうか?

A8: 浸潤性小葉癌の多くはホルモン受容体陽性であり、ホルモン療法が再発予防の中心になります29。一方で、腫瘍径が大きい場合やリンパ節転移が多い場合、Ki-67が高い場合など、再発リスクが高いと判断されるときには、抗がん剤を併用することで再発リスクをさらに下げられるとされています12。どこまで治療を行うかは、年齢や体力、ほかの病気の有無、希望などを総合的に考慮して決められます。

Q9: 浸潤性小葉癌の治療後、どのくらいの間フォローアップが必要ですか?

A9: 乳がん全体のフォローアップでは、少なくとも5〜10年間は定期的な通院が推奨されることが多く、浸潤性小葉癌のように遅い再発が問題となるタイプでは、それ以降も何らかの形で経過観察が続くことがあります239。ホルモン療法を長期間継続する場合は、その期間中も副作用や骨密度のチェックなどが必要になります。

Q10: 家族に同じような乳がんが出る可能性はありますか?遺伝子検査は必要ですか?

A10: 乳がんや卵巣がんが家族内に複数いる場合や、若くして乳がんを発症した家族がいる場合には、BRCA1/2などの遺伝性乳がん・卵巣がん症候群が関与している可能性があります。また、CDH1遺伝子の変異があると、遺伝性びまん性胃がん症候群とともに浸潤性小葉癌のリスクが高まることが知られています9。遺伝子検査が必要かどうかは、家族歴や本人の病歴をもとに遺伝カウンセリングで判断されるため、気になる場合は主治医に相談し、専門の遺伝カウンセリング外来を紹介してもらうとよいでしょう。

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

浸潤性小葉癌は、乳腺の小葉から発生し、細胞同士の接着に関わるEカドヘリンの異常によって独特の広がり方を示す乳がんです。しこりとして分かりにくく、マンモグラフィでも見つけにくい場合がある一方で、多くはホルモン受容体陽性・HER2陰性であり、ホルモン療法をはじめとする標準治療によって長期的なコントロールが期待できるタイプでもあります2911

日本では、厚生労働省が40歳以上の女性に2年に1回のマンモグラフィ検診を推奨しており、国立がん研究センター がん情報サービスなどの公的機関が、治療や就労支援、相談窓口に関する情報を提供しています1345678。検診や自己チェックだけですべてを防げるわけではありませんが、「何かおかしい」と感じたときに躊躇せず相談できる環境を整えることが、命と生活の両方を守るうえで非常に重要です。

仕事や家事、妊娠・出産、更年期、家族との関係など、浸潤性小葉癌が影響を与える範囲は多岐にわたります。しかし、あなたと同じような悩みを抱えながら治療や生活を続けている人は決して少なくありません。一人で抱え込まず、主治医や医療スタッフ、公的な相談窓口、家族や信頼できる仲間と一緒に、自分らしい治療と生活のバランスを探っていきましょう。

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。本記事では、国立がん研究センター がん情報サービス、厚生労働省のがん検診指針、日本乳癌学会の情報、海外の専門誌に掲載された浸潤性小葉癌に関する総説や大規模研究などをもとに内容を整理しました123456789101112

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本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言や診断、治療に代わるものではありません。健康上の懸念がある場合や、治療内容の変更・中止等を検討される際には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス. 乳がん. https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/index.html(最終アクセス日:2025-11-25)
  2. 国立がん研究センター がん情報サービス. 乳がん 治療. https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/treatment.html(最終アクセス日:2025-11-25)
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス. 乳がん 患者数(がん統計). https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/patients.html(最終アクセス日:2025-11-25)
  4. 厚生労働省. がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000111662.pdf(最終アクセス日:2025-11-25)
  5. 厚生労働省. 胃がん・乳がん検診に関する指針の改正について. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000114067.pdf(最終アクセス日:2025-11-25)
  6. 厚生労働省. 日本の健診(検診)制度の概要. https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000682242.pdf(最終アクセス日:2025-11-25)
  7. 厚生労働省. がん検診の国際比較 乳がん検診. https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001132584.pdf(最終アクセス日:2025-11-25)
  8. 厚生労働省. 働く女性の心とからだの応援サイト – 女性特有のがん. https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/cancer.html(最終アクセス日:2025-11-25)
  9. Loibl S, et al. Lobular Breast Cancer: A Review. Frontiers in Oncology. 2021;10:591399. https://doi.org/10.3389/fonc.2020.591399(最終アクセス日:2025-11-25)
  10. Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention. Treatment and Survival Differences between Patients with Invasive Lobular Carcinoma Versus Invasive Ductal Carcinoma. 2025; DOI:10.1158/1055-9965.EPI-24-1250. https://doi.org/10.1158/1055-9965.EPI-24-1250(最終アクセス日:2025-11-25)
  11. Radiographics. Imaging Features, Screening, and Prognosis of Invasive Lobular Carcinoma of the Breast. 2023. Radiographics journal. https://pubs.rsna.org/journal/radiographics(最終アクセス日:2025-11-25)
  12. Early breast cancer treatment guidelines and Cochrane-style reviews on systemic therapy. Adjuvant endocrine therapy and chemotherapy in hormone receptor-positive breast cancer. 2018–2021. https://www.cochranelibrary.com(最終アクセス日:2025-11-25)
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