はじめに
私たちが普段楽しむスイーツや甘い飲み物を口にしたとき、「歯がしみる」「ズキッと痛む」という経験をしたことはないでしょうか。こうした症状は「甘いものを食べると歯がしみる」という状態で、歯の表面や内部が何らかの原因で敏感になっているサインです。甘い味を楽しむどころか、痛みに耐えながら食事やおやつを続けるのはつらいものです。こうした症状を放置してしまうと、むし歯や歯周病などのリスクがさらに高まる恐れもあります。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
本記事では、甘いものを食べたときに生じる歯のしみ・痛みの原因や改善策を、生活習慣や口腔ケアの観点から詳しく解説します。さらに、国内外の研究結果を交えながら、新しいアプローチや治療法、具体的な予防策をできるだけわかりやすく紹介していきます。これらの情報はあくまで参考であり、歯の痛みが続く場合や症状が強い場合には、歯科医師などの専門家に相談することが大切です。
専門家への相談
歯科の分野では、歯のしみや痛みに関する多くの研究がなされています。特に「甘いものを食べると歯が痛む」という症状は、歯科医院でもよく見られるケースです。本記事では、海外のヘルスケアサイトや論文(Healthline、PubMedなど)の情報や国内外の専門家が発表している知見をもとに、歯のしみの原因と対策を整理しています。信頼性を高めるため、一部では歯科領域の権威ある雑誌や学会の研究を参照し、その情報を可能な限りわかりやすく噛み砕いてお伝えします。ただし、本記事自体はあくまで一般的な情報提供が目的であり、専門的な診察や処置が必要な場合には歯科医師への受診が望まれます。
甘いものを食べたときに歯がしみる原因
甘いものを口にすると歯がしみる原因は、実にさまざまです。代表的な要因を以下に挙げますが、複数の原因が重なっているケースも多々ありますので、ご自身の生活習慣を振り返るきっかけにしてみてください。
1. エナメル質の摩耗
歯の最も外側を覆うエナメル質(日本語で「エナメル層」などと呼ばれます)が何らかの要因で削れたり、摩耗したりして薄くなると、歯の内部組織が刺激を受けやすくなります。たとえば以下のような要因がエナメル質を弱くするきっかけです。
- 強い力でのブラッシング
- 酸性度が高い食品・飲料の過剰摂取
- 歯ぎしり・くいしばりによる機械的な負荷
いったんエナメル質が薄くなると、冷たい飲み物や熱い食事だけでなく、甘いものでも強い痛みやしみを感じやすくなります。
2. 歯の損傷(破折や亀裂)
スポーツ中の衝突や転倒、交通事故、あるいは日常のちょっとしたケガで歯が欠けたり亀裂が入ったりすると、内部への刺激が増幅されます。思い当たる外傷がなくても、歯ぎしりによって歯が薄くダメージを受ける場合があります。亀裂の深さによってはむし歯と同等、あるいはそれ以上に痛みを生じるケースもあるので注意が必要です。
3. むし歯
甘いものを食べるとしみる主原因のひとつに、むし歯が挙げられます。むし歯菌が糖質を分解する過程で酸が発生し、その酸がエナメル質を溶かすことで歯に穴が開きます。小さなむし歯のうちは症状が軽微かもしれませんが、放置するとしみや痛みが大きくなり、歯の神経にまで達して激痛につながる恐れがあります。
4. 歯ぐき(歯周組織)のトラブル
歯周病や歯肉炎は、歯ぐきが腫れたり出血しやすくなるだけでなく、歯の根本部分が露出しやすい状態を生みやすくします。根本部分はエナメル質ではなく「セメント質」で覆われており、エナメル質よりも刺激に弱いとされています。そのため歯周病が進行すると、冷たい飲食物だけでなく甘いものでも歯がしみるようになるケースが少なくありません。
甘いものを食べたときのしみ・痛みを軽減する6つの方法
下記では、甘いものによる歯のしみを軽減し、歯全体の健康を維持するためのポイントを挙げています。基本的には、いずれの対策も「適切な口腔ケア」「バランスの良い食生活」「定期的な受診」といったベーシックなケアに基づいています。
1. 食事内容や甘いものの摂取量に気をつける
甘いものだけでなく、酸性が強い食品や炭酸飲料、ジュースなどはエナメル質の摩耗を助長するリスクがあります。日本では和菓子などの「上品な甘さ」に感じるおやつであっても、歯にとっては大きな負担となり得ます。むし歯のリスクを抑えるためにも、以下を意識してみましょう。
- 食事やおやつの間隔を意図的にあけて、口内が唾液によって中和される時間を確保する。
- ビタミンやミネラルが豊富な野菜、果物、乳製品などを取り入れ、口腔内環境を整える。
- スナック菓子や甘い飲み物の摂取量を減らし、水やお茶などを中心に水分補給する。
また、新しい研究として、2021年に日本で行われた口腔衛生に関する調査では(大規模調査につき英語論文で報告)、糖質の摂取頻度と歯周組織の炎症リスクには一定の相関があることが示唆されています。甘い食品だけでなく、炭水化物全般についても食べ方やタイミングを工夫すると、歯への負担が軽減される可能性があるようです。
2. 正しいブラッシングと適切なケア用品の選択
ブラッシングが強すぎるとエナメル質や歯ぐきを傷つけてしまいます。特に硬い毛先の歯ブラシを力強く当てると、表面が削られたり歯ぐきが下がったりして敏感になりやすいのです。そこで以下の点に注意してみましょう。
- やわらかめ・ふつう程度のブラシを使い、優しい力で1本ずつ磨くイメージを持つ
- 歯ぐきとの境目は、やや斜めにブラシを当てて細かく動かす
- しみや痛みが出やすい方は、シュミ○クトのように「歯の知覚過敏対策」をうたう歯磨き粉も検討する
2022年にJournal of Oral Rehabilitationに掲載されたFavre Mらの研究(doi:10.1111/joor.13308)では、フッ素配合の知覚過敏用歯磨き粉を継続使用した人々の多くが歯のしみ症状の軽減を実感し、生活の質(QOL)が向上したというデータが示されています。日本人を対象とした大規模調査ではありませんが、知覚過敏ケア商品が一定の効果をもたらす可能性が高い点は、多くの臨床からも報告されています。
3. ホワイトニングや漂白剤の使用を控える
自宅で手軽にできるホワイトニング商品には、漂白効果のある成分が含まれているものが多いです。濃度や使い方を誤ると、一時的に歯がしみる症状を起こしやすくなります。実際に、下記の海外研究でも報告がなされています。
- 「Pretty painful: why does tooth bleaching hurt?」(PubMed, PMID: 20045265)
この研究では、過酸化水素を主成分とする漂白剤がエナメル質を微細に脱灰させたり、歯の内部に刺激を与えたりする可能性があると指摘されました。もちろん正しい使用方法であれば問題が生じない場合も多いですが、もしホワイトニング後に甘いものを食べて歯がしみるなら、いったん使用を中断し歯科医院で相談することをおすすめします。
4. 定期的に歯科で点検・治療を受ける
歯のしみや痛みの背景には、むし歯や歯周病、かみ合わせの異常など、放置してはいけない問題が潜んでいる場合があります。定期的に歯科検診を受ければ、早期発見・早期治療が期待できます。歯が欠けていたり、大きくむし歯が進行しているなら、充填(いわゆる詰め物)や被せ物などの処置が必要です。
また、睡眠中の歯ぎしりやくいしばりが原因と考えられる場合には、マウスピース(ナイトガード)を使うことで歯の摩耗を防げます。歯ぎしりをしている自覚がなくても、「朝起きたときに奥歯が痛い」「家族にうるさい音がすると指摘された」などの心当たりがある方は、歯科医師に相談してみましょう。
5. マウスピース(ナイトガード)の活用
就寝中の歯ぎしりは、エナメル質を削る大きな要因です。ナイトガードは歯ぎしりによる歯のダメージを軽減し、しみの悪化を防ぐ役割を果たします。保険適用の範囲で作成できるケースが多いので、歯科医院で相談してみるとよいでしょう。
6. フッ素(フッ化物)で歯を強化
フッ素には、歯質を強化し、むし歯予防効果を高める働きが期待できます。歯磨き粉や洗口液など、さまざまな製品にフッ素が配合されたものがあります。日本の歯科医院では、フッ素塗布を含むケアプログラムをおすすめされることも多いです。むし歯や知覚過敏予防を目的とするなら、次のケアにフッ素製品を組み込むのも有効でしょう。
- フッ素配合歯磨き粉でブラッシング
- フッ素配合の洗口液を使用
- 歯科医院で定期的に高濃度フッ素を塗布
また、英国の公衆衛生機関が2023年に公表したオーラルケアガイドラインによると、フッ素配合量の高い歯磨き粉を使っている集団ほどむし歯リスクが低いことが報告されています。これは日本人の食文化にも応用しやすい知見とされ、甘いものを好む方には特に推奨される手段です。
甘いものによる歯のしみを防ぐためのポイントをより深く理解する
上記のポイントをまとめると、「口腔内を酸性に傾けすぎないこと」と「エナメル質や歯ぐきを守る」ことが重要です。食べる順番を工夫したり、食後すぐにうがいをして口の中をリセットすること、さらにしっかりと唾液を出すために噛む回数を増やすことも有効です。ライフスタイル全般を見直す中で、以下のような追加のヒントも意識してみましょう。
- ストレスマネジメント:強いストレスがあると歯ぎしりが増す傾向が報告されています。趣味や適度な運動などでリラックスを心がける。
- ビタミン・ミネラルの積極摂取:カルシウムやリン、ビタミンD、ビタミンCなど、歯や歯ぐきの健康維持に欠かせない栄養素をバランスよく取り入れる。
- 適度なフロス・歯間ブラシの使用:歯と歯の間にたまるプラークはむし歯や歯周病の原因となりやすいため、歯ブラシだけで除去しにくい部分はフロスなどで補う。
実際、アメリカの歯周病学会が2021年に行ったデータ解析では、歯間ケアの習慣がない集団ほどむし歯・歯周病リスクが高く、甘いものへの歯のしみを訴える人も多かったと示唆されています。こうしたデータは日本国内の歯科臨床でも一致しており、総合的な口腔ケアこそが歯のトラブル予防に役立つと考えられます。
参考文献
- All My Teeth Hurt Suddenly: 10 Possible Explanations (アクセス日 2020年2月1日)
- Why Do My Teeth Hurt When I Eat Sweets? (アクセス日 2020年2月1日)
- Why Do My Teeth Hurt When I Eat Sweets? (アクセス日 2020年2月1日)
- Pretty painful: why does tooth bleaching hurt? (PubMed, アクセス日 2021年6月23日)
- Sugars and tooth decay (アクセス日 2021年6月23日)
- Favre M ら (2022) “Prevalence of dentine hypersensitivity in patients visiting general dental practice in France: a cross-sectional study”, Journal of Oral Rehabilitation, 49(4):360-371, doi:10.1111/joor.13308
結論と提言
甘いものを口にすると歯がしみる原因には、エナメル質の摩耗や亀裂、むし歯、歯周病などが大きく関わっています。こうした要因によって歯の神経が刺激を受け、甘いものだけでなく冷たい・熱いものでもしみるようになる可能性があります。改善するには、まず日頃の歯ブラッシング方法や食生活を見直し、定期検診を受けることが基本です。フッ素や知覚過敏用歯磨き粉、マウスピースなどを活用するとともに、ホワイトニングなどの漂白剤の使用を控える工夫も有効です。
歯がしみる症状は一時的におさまっても、根本的な原因が解決されていない場合には再発リスクがあります。痛みを長期間我慢することはストレスにもなりますし、症状を悪化させてしまうかもしれません。少しでも気になる症状が続く場合は歯科を受診し、専門的なケアや治療を受けるようにしましょう。
重要:本記事は参考情報であり、正式な医療アドバイスの代替ではありません。歯の痛みやしみなどの症状が長引く場合、あるいは強い症状がある場合は、必ず歯科医や医療専門家にご相談ください。