はじめに
月経中の体やホルモンバランスの変化は、多くの女性にとってデリケートな話題です。特に「自分で性器を刺激する行為」、つまりいわゆる「マスターベーション(以下、本記事では「セルフプレジャー」と表記)」に関しては、周囲に相談しづらく、疑問を抱えてもなかなか解決できないことが多いのではないでしょうか。たとえば「セルフプレジャーは生理周期に影響するのか?」「経血が出ている時にセルフプレジャーを行っても問題ないのか?」など、日常生活ではあまり語られない疑問もあるかもしれません。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
本記事では、それらの疑問にしっかり向き合い、セルフプレジャーと月経の関係、さらに生理期間中にセルフプレジャーを行う際のメリット・リスクや衛生的な注意点について、深く掘り下げて解説します。生理痛や不快感の軽減、睡眠の質への影響など、女性の体がどのように反応し得るのかといった視点も盛り込みながら、お伝えしていきます。
専門家への相談
本記事の内容は、産婦人科を中心とした女性のヘルスケアに関する知見をもとにまとめており、医療の専門家による監修情報を参照しています。特に「セルフプレジャーが生理周期に及ぼす影響」については、複数の信頼できる医療機関(例:Planned Parenthood、Cleveland Clinicなど)や研究論文の情報を確認しながら整理しました。本記事で引用している研究や見解は、あくまでも学術的・臨床的な参考としてご覧いただくものであり、一人ひとりの体質や状況には個人差があります。気になる症状や疑問がある場合、あるいはご自身の性行動を見直したい場合は、必ず婦人科医などの専門家にご相談ください。
なお、本記事の医学的アドバイスに関しては「Tham vấn y khoa: Bác sĩ Văn Thu Uyên(産婦人科)」からの見解を含んでおります。実際の診断や治療方針は、各個人の状態によって異なるため、必ず医療機関での受診をおすすめします。
セルフプレジャー(いわゆる「自分でする行為」)とは
セルフプレジャーとは、性的興奮や快感を得る目的で、自分自身で性器や性感帯を刺激する行為を指します。女性の場合、主に陰核(クリトリス)や膣入り口付近を指で刺激したり、性具を用いたりすることなどが典型例です。とくに女性のセルフプレジャーは、性感とともにリラックスや精神的安定を得ることを目的とすることも多く、性行為とは別のアプローチで性的満足を得られる点が特徴的です。
セルフプレジャーに対する一般的な印象
- 恥ずかしさや罪悪感
セルフプレジャーは個人のプライベートな領域で行われる行為であるため、恥ずかしさや後ろめたさを感じやすいかもしれません。しかし、適切に行えば身体への大きな悪影響はなく、むしろ気分転換や性的欲求の自己コントロールに役立つことが多いとされます。 - 快感とリラックス効果
セルフプレジャーでオーガズム(性的絶頂)を得ると、エンドルフィンやオキシトシンといった、いわゆる「幸福感」に関連するホルモンが分泌されることがあります。これによりストレスを軽減したり、不安感を和らげたりする効果が期待されるという報告が多数存在します。
セルフプレジャーは月経に影響するのか
1. 結論:基本的に影響はない
「セルフプレジャーをすると生理が遅れるのでは?」という不安を抱く女性は少なくありません。結論から言えば、適切にセルフプレジャーを行うだけで直接的に生理周期(ホルモンバランス)を変化させることはほとんどないと考えられています。医療機関や保健指導を行う専門家たちの見解によれば、セルフプレジャー自体で月経が不順になることは極めてまれです。
実際、複数の医療情報サイト(Planned Parenthoodなど)でも「マスターベーションや性玩具を使用した行為が生理を早めたり遅らせたりすることは考えにくい」と明言されています。月経は、体内のホルモン分泌サイクルによってコントロールされており、情緒的なストレスや大幅な体重減少、過度な運動、服用中のホルモン製剤(経口避妊薬など)の影響のほうがはるかに大きいからです。
2. 生理が遅れる・止まる原因は他に
もし月経不順が起こった場合、その背景には以下のような要因が考えられます。
- 過度なダイエットや激しい運動
極端な食事制限や強度の高い運動が長期間続くと、女性ホルモンの分泌が乱れ、月経が遅れたり止まったりすることがあります。 - 強いストレス
仕事や人間関係などによる精神的ストレスが蓄積すると、脳下垂体や視床下部を通じたホルモン調節に影響し、生理不順を招きやすくなります。 - ホルモン剤の使用、避妊方法の影響
経口避妊薬、子宮内避妊具、注射避妊などを使用すると、月経のリズムが変化する場合があります。 - 妊娠
避妊を行っていても100%確実ではありません。万が一、生理がこない、あるいはいつもと違うという場合は妊娠検査薬や受診で確認する必要があります。
このように、月経の乱れはセルフプレジャー以外の要因による場合がほとんどであり、「セルフプレジャーをしたから生理がおかしくなる」という心配は、医学的に大きくは取り沙汰されていません。
生理中にセルフプレジャーを行うメリット
月経が始まると、下腹部痛や腰痛、倦怠感など不快な症状が現れやすくなります。それに対してセルフプレジャーがどのようなメリットをもたらす可能性があるのか、具体的にみていきましょう。
1. 痛みの軽減
オーガズムに達すると、脳内でエンドルフィンが分泌されると言われています。エンドルフィンは自然の鎮痛作用を持ち、気分を高揚させる役割を担います。その結果、生理痛が緩和されやすくなることが知られています。
さらに、オーガズム時には骨盤内の血流が一時的に増え、子宮や周囲の筋肉がリズミカルに収縮と弛緩を繰り返すため、血行が促進されることで痛みや張り感が軽減しやすいとも考えられています。
2. 気分のリフレッシュ・睡眠の質の向上
セルフプレジャーで性的快感が高まると、ドーパミンやオキシトシンといった「幸福感・絆形成」に関連するホルモンが分泌されます。これらのホルモンはストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑え、リラックスや快い気持ちを生み出す働きをします。
実際に、睡眠と性的活動の関係性を調査した報告として、2019年から2020年代にかけて複数の研究が行われています。たとえば、「Sex and Sleep: Perceptions of Sex as a Sleep Promoting Behavior in the General Adult Population」(PMC6409294)では、442人の成人を対象に、セルフプレジャーやパートナーとの性行為が睡眠導入・睡眠の質にプラスの効果を及ぼす可能性が指摘されました。
このように、セルフプレジャーによるオーガズムがリラックス効果を高め、その結果眠りにつきやすくなる方もいるのです。
3. 気分の安定
女性は月経前や月経中にホルモンバランスが変動し、イライラや憂うつ感、疲労感などを抱きやすくなります。オーガズムによって気分を安定させるホルモンが分泌されれば、精神的な安定につながりやすいと言われています。過度に不安やストレスを抱えやすい方にとっては、生理期間中のセルフプレジャーが少しでもストレスを和らげる手立てとなることもあり得ます。
生理中のセルフプレジャーにおけるリスク・注意点
生理中にセルフプレジャーを行うこと自体は問題ありませんが、以下の点を押さえれば、より安全で快適な経験となります。
1. 過度な摩擦による刺激
セルフプレジャーを頻繁に行いすぎたり、力の入れ方が強すぎたりすると、外陰部や膣内に傷やかぶれが生じる可能性があります。特に生理中は粘膜がデリケートになりやすいため、清潔かつやさしいタッチを心がけましょう。刺激が強すぎると痛みが生じたり、その後の性交渉に影響が出る恐れもあります。
2. 感染リスク
生理中は子宮頸管がやや開き気味になるため、外部からの雑菌が子宮内部に入り込みやすい時期とも言われます。セルフプレジャーの前後に手指や使用するおもちゃを洗浄・消毒しないまま行うと、感染症を引き起こすリスクが高まる可能性があります。また、陰部のpHバランスを乱すような行為(強い洗浄剤を使用しての奥までの洗浄など)には注意が必要です。
3. 精神的な依存や罪悪感
セルフプレジャーそのものは自然な行為ですが、頻度や行為に対する心理的な捉え方次第では、ネガティブな感情を引きずる場合があります。たとえば「自分ばかりがセルフプレジャーに頼ってしまっている」と感じて罪悪感を抱えることや、行為への依存感が強まって、パートナーとの性交渉への興味が薄れるケースもないわけではありません。こうした感情が続く場合は、カウンセリングや専門家への相談を検討するのも一つの方法です。
生理期間中に安全にセルフプレジャーを楽しむためのポイント
生理中にセルフプレジャーを行う場合、以下のような方法が衛生面・安全面で推奨されています。
1. 清潔さを徹底する
- 事前に手指をしっかり洗う
せっけんを使って爪の間まで清潔にしましょう。 - おもちゃを使う場合の洗浄・消毒
シリコン製のトイを使う方は、使用前後にきちんと水洗いし、素材に合った方法で消毒してください。 - 長時間の刺激を控える
長時間の刺激は摩擦を増やし、外陰部に負担をかけることがあります。痛みを感じたらいったん中止するなど、体の声に耳を傾けましょう。
2. 下着やタオルで対策
生理時は経血が出るため、ベッドシーツの汚れなどが気になるかもしれません。以下のように対策すると、精神的にも安心感が得られます。
- 濃い色のタオルやシーツを敷く
経血が付いても目立ちにくく、洗濯時に気が楽です。 - シャワー中や浴槽での実施
湯船でのセルフプレジャーは快適に思う方も多いですが、浴槽内は雑菌の繁殖が意外と多い場所でもあります。水流が強すぎると自然な潤いが流されてしまう可能性もあるため、刺激が強すぎないよう注意が必要です。
3. 性具にコンドームを使用する
月経中は感染リスクを下げるためにも、性具を使う場合はコンドームをつけるのが望ましいとされています。
- 着脱は慎重に
コンドームは一度外したら新しいものに交換するのが基本です。経血が付着したまま再使用すると細菌が増殖しやすくなる可能性があります。 - 潤滑剤の使用
生理中は経血だけでは十分な潤滑にならない場合もあります。潤滑剤を活用し、痛みを減らすとともに外陰部への摩擦ダメージを軽減しましょう。
セルフプレジャーによるリラックス効果と睡眠
睡眠改善のメカニズム
セルフプレジャーでオーガズムを得るとき、脳内では快楽ホルモン(エンドルフィン、オキシトシン、ドーパミンなど)が放出される可能性が高まり、それらがリラックス効果や鎮痛効果を発揮することが指摘されています。
さらに、興奮状態からクールダウンする過程で副交感神経が優位になり、心拍数や血圧が落ち着いていくため、自然に眠りやすい状態になると考えられています。
研究事例
- 「Sex and Sleep: Perceptions of Sex as a Sleep Promoting Behavior in the General Adult Population」
先述のとおり、442人の男女を対象とした研究(2020年頃に報告)では、セルフプレジャーやパートナーとの性行為によるオーガズムが、睡眠の質を向上させる傾向があるとの結果が示唆されました(PMC6409294)。 - 「Directed Masturbation: A Treatment of Female Orgasmic Disorder」
臨床心理学や性科学の領域では、セルフプレジャーを指導することで女性が性的快感を得やすくなり、結果として自律神経の安定やストレス軽減に寄与すると報告されています(psycnet.apa.org/record/2009-02305-026)。
これらの研究はいずれも「セルフプレジャーの効果は個人差が大きい」ことに注意を促しており、万人に同じ効果があるとは限らないものの、月経中の痛みや睡眠の質に対してポジティブな影響を感じる方が一定数存在することは確かです。
セルフプレジャーが与える心理的影響とパートナーとの関係
セルフプレジャーを適度に行うことは心身のバランスを保つ一助になりますが、以下のような点にも注意する必要があります。
1. 頻度が多すぎる場合
セルフプレジャーにのめり込みすぎると、日常生活に支障が出る恐れがあります。たとえば、仕事や家事などを後回しにしてしまったり、パートナーとのコミュニケーションが減少したりする可能性があります。
2. 罪悪感や羞恥心
「自分の体を自分で刺激することは悪いことではない」と頭では分かっていても、社会的なタブーや教育背景から罪悪感を覚える方もいます。罪悪感が強くストレスを伴う場合は、むしろ心の健康にマイナスに働くかもしれません。
3. パートナーとの性生活への影響
セルフプレジャーだけで満足してしまい、パートナーとのセックスがおざなりになるケースや、パートナーが「自分が必要とされていないのではないか」と誤解するケースも報告されています。ただし、多くの場合はセルフプレジャーを通じて自分の快感のポイントや体のメカニズムを学ぶ機会となり、結果的にパートナーとの性交渉でもコミュニケーションがうまくいくという良い影響が指摘されることもあります。
まとめとアドバイス
女性がセルフプレジャーを行うことによって、生理周期が大きく乱れることはほぼありません。むしろ、オーガズムを得ることで生理痛の軽減やリラックス効果、睡眠の質向上などのメリットを感じる方もいます。ただし、生理中は感染リスクが通常より高まる可能性があるため、清潔さを保つことと刺激のしすぎを避けることが重要です。
以下のポイントを再度整理します。
- セルフプレジャーは基本的に生理周期に影響しない。
月経不順の大半はストレスやホルモン剤、運動や体重の大きな変化によるものが多い。 - 生理中にセルフプレジャーを行う際の注意点
事前後の手洗い・おもちゃの洗浄消毒、適度な力加減、長時間の摩擦を避ける、コンドームやタオルを活用して衛生面に配慮するなどが挙げられる。 - 快感のメリット
痛みの軽減、気分のリフレッシュ、ストレス軽減や睡眠の質向上など、女性ホルモン以外の幸福ホルモンの分泌が関係してメリットを得やすい。 - リスクやデメリット
摩擦刺激による痛みや感染症リスク、行為への依存・罪悪感など、個人差はあるものの注意すべき点もある。 - パートナーシップとの関係
セルフプレジャーが悪影響を及ぼすケースより、むしろ自分の体をよく知ることでパートナーとの性生活が向上する可能性も示唆されている。ただし、コミュニケーション不足は誤解を招くため、お互いの性行動についてオープンに話し合うことが大切。
専門家への相談と今後のケア
生理不順が継続したり、生理痛が異常に強かったり、セルフプレジャーに対する心理的な不安や罪悪感が拭えなかったりする場合は、婦人科やカウンセリング機関など、信頼できる専門家に相談することをおすすめします。生理にまつわる悩みは人それぞれ異なるため、専門家の個別のアドバイスで適切なケアを見つけることが重要です。
さらに、日本では地域の保健センターや女性医療センターなどで無料相談を行っている機関もあるため、必要に応じて活用してみましょう。セルフプレジャーの頻度や方法、そのときの感情などについて一人で悩んでいると、かえってストレスを増幅させてしまうかもしれません。
生理に関連する他の記事(参考までに)
- 3つの対策:経血がモレやすい日でも快適に過ごすために
- 新型ウイルス後に生理が乱れやすくなる原因とは?
参考文献
- Masturbation: Facts & Benefits
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/24332-masturbation
アクセス日: 2024年4月22日 - Every time I masturbate, I get my period but it’s not like my real menstruation…
https://youngwomenshealth.org/2017/05/05/every-time-i-masturbate-i-get-my-period/
アクセス日: 2024年4月22日 - Can masturbating or using toys delay my period?
https://www.plannedparenthood.org/learn/ask-experts/can-masturbating-or-using-toys-delay-my-period
アクセス日: 2024年4月22日 - Sex and Sleep: Perceptions of Sex as a Sleep Promoting Behavior in the General Adult Population
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6409294/
アクセス日: 2024年4月22日 - Directed masturbation: A treatment of female orgasmic disorder.
https://psycnet.apa.org/record/2009-02305-026
アクセス日: 2024年4月22日
免責事項
本記事の内容は、あくまでも一般的な情報提供を目的としており、医学的助言や診断を代替するものではありません。個々の症状や状況に応じて、必ず医療機関や専門家へご相談ください。とくに生理不順や強い痛み、セルフプレジャーに対する心理的な悩みなどがある場合は、早めの受診による正確な診断・治療が必要です。
Tham vấn y khoa: Bác sĩ Văn Thu Uyên(産婦人科)
(本記事は健康情報を分かりやすくまとめた参考資料であり、最終的な医療行為や指導は各専門機関の判断に従ってください)