男性不妊の予防と対策のすべて|2024年最新ガイドラインと専門医が解説する完全網羅版
妊娠準備

男性不妊の予防と対策のすべて|2024年最新ガイドラインと専門医が解説する完全網羅版

「子どもが欲しいけれど、なかなか授からない」——この悩みは、今や決して珍しいものではありません。厚生労働省の最新の調査によると、日本では約4.4組に1組の夫婦が不妊の検査や治療を経験しています1。この数字は2015年の5.5組に1組という状況から著しく増加しており2、不妊が多くの人々にとって身近な健康問題となっていることを示しています。さらに、2022年には、日本で生まれた子どもの約10人に1人が体外受精などの生殖補助医療(ART)によって誕生しており1、これは現代の家族形成における医療の役割の大きさを物語っています。これまでの社会では不妊の原因は女性側にあるという偏見が根強くありましたが、最新の医学的知見では、不妊症例の約3割から5割に男性側の要因が関与していることが明らかになっています4。男性不妊は「個人の欠点」ではなく、予防や改善が可能な医学的な状態です。この記事は、2024年2月に日本で初めて策定された歴史的な「男性不妊症診療ガイドライン」7の内容を一般の方々にも分かりやすく解説し、科学的根拠に基づいた具体的な予防策から、専門医への相談のタイミング、最新の治療選択肢までを網羅的に提供するものです。あなたやあなたのパートナーが抱える不安を解消し、前向きな一歩を踏み出すための信頼できる羅針盤となることを目指します。

この記事の科学的根拠

この記事は、引用元として明記された最高品質の医学的根拠にのみ基づいて作成されています。以下は、本文中で参照される主要な情報源と、それが示す医学的指針の関連性です。

  • 厚生労働省(MHLW): 日本国内の不妊治療の実態に関する最新の統計データ(カップルの不妊治療経験率、生殖補助医療による出生児の割合など)は、厚生労働省が公表した公式報告書に基づいています1
  • 日本泌尿器科学会 & 日本生殖医学会: 2024年に日本で初めて策定された「男性不妊症診療ガイドライン」は、本記事における診断基準、治療選択肢、生活習慣の推奨に関する中核的な権威情報源です712
  • 世界保健機関(WHO): 精液検査の基準値や男性不妊に関する世界的な定義は、世界保健機関が定めた国際基準に基づいています1525
  • 国際的な学術論文(Systematic Reviews & Meta-Analyses): 喫煙、飲酒、肥満、栄養、運動などの生活習慣が精子の質に与える影響に関する具体的な科学的根拠は、信頼性の高い医学論文データベース(PubMed等)に掲載された複数のシステマティックレビューやメタアナリシスに基づいています5141621

要点まとめ

  • 日本の夫婦の約4.4組に1組が不妊を経験し、その原因の3〜5割に男性が関与しています14
  • 2024年、日本初の「男性不妊症診療ガイドライン」が策定され、診断と治療の標準化が進みました7
  • 禁煙、節度ある飲酒、適正体重の維持、定期的な運動は、精子の質を改善するための科学的根拠が強い対策です141521
  • 魚、野菜、果物、オリーブオイルが豊富な「地中海式食事法」は、精子の質向上に有効であることが多くの研究で示されています5
  • 1年間の妊活で妊娠に至らない場合(パートナーが35歳以上の場合は半年)は、専門医への相談が推奨されます24

第I部:男性不妊を正しく理解する – あなたが知るべき基礎知識


なぜ今、男性不妊がこれほど注目されているのか?

近年、男性不妊への関心が高まっている背景には、明確な社会的・医学的理由があります。前述の通り、厚生労働省のデータは、日本において不妊が特別な問題ではなく、多くの人々が直面する現実であることを示しています1。世界保健機関(WHO)もまた、不妊を「世界的な公衆衛生上の課題」と位置付けており、これは日本に限った話ではありません15。社会的な認識の変化も大きな要因です。かつて不妊は女性側の問題と見なされがちでしたが、科学的知見の蓄積により、原因の半分近くは男性側にある、あるいは男女双方にあるという理解が広まりました4。この認識の変化は、不妊という課題に対して、カップルが共に取り組み、解決策を探るという健全なアプローチを促進しています。

精子の質とは?WHO基準と知っておくべき3つの重要指標

「精子の質」という言葉はよく耳にしますが、具体的には何を指すのでしょうか。医療現場では、世界保健機関(WHO)が2021年に改訂した最新の基準値を用いて精液の状態を評価します25。これは「精液検査(Semen Analysis)」によって測定され、主に以下の3つの指標が重要視されます。

  • 精子濃度 (Concentration): 精液1ミリリットルあたりにどれくらいの精子が存在するかを示します。WHOの基準では、1mlあたり1600万個以上が正常範囲とされています25。数が多ければ、それだけ卵子に到達する確率が高まります。
  • 運動率 (Motility): 精子がどれだけ活発に動いているかを示す指標です。前に進む力強い動きが重要で、総運動率(動いている精子の割合)が42%以上であることが一つの目安となります25。卵子まで自力で泳ぎ着くためには、この運動能力が不可欠です。
  • 正常形態率 (Morphology): 精子の形が正常であるものの割合を指します。頭部、中間部、尾部が整った形の精子は、運動能力や受精能力が高いと考えられています。WHOの基準では、正常な形の精子が4%以上あれば良いとされています25

これらの数値はあくまで目安であり、基準値を下回っていても自然妊娠が不可能なわけではありません。しかし、これらの指標を改善することが、妊娠の可能性を高めるための重要な第一歩となります。

第II部:積極的な予防 – 科学的根拠に基づく妊活実践法


男性の生殖能力は、日々の生活習慣に大きく影響されます。ここでは、科学的な証拠の強さに応じて分類した、具体的な改善策を詳しく解説します。これは、漠然としたアドバイスではなく、あなたの行動がなぜ、そしてどの程度効果的なのかを理解するための「エビデンス・スケール(証拠の尺度)」に基づいています。

生活習慣の改善:科学が認める7つのアクション

【証拠レベル:強】禁煙

作用機序: 喫煙は、体内で「酸化ストレス」を増大させる最大の要因の一つです14。酸化ストレスとは、体をサビつかせる活性酸素が過剰になった状態を指し、精子を作る精巣にダメージを与え、精子のDNAを直接損傷させます。DNAが傷ついた精子は、受精能力が低下したり、たとえ受精しても胚の発育が途中で止まってしまう原因となり得ます16
具体的な推奨: 電子タバコや加熱式タバコを含め、あらゆる種類の喫煙を完全にやめることが強く推奨されます。パートナーからの受動喫煙も避けるべきです。

【証拠レベル:強】節度ある飲酒

作用機序: 過度なアルコール摂取もまた、酸化ストレスを増加させます。さらに、男性ホルモンであるテストステロンの産生を妨げ、ホルモンバランスを乱す原因となります14
具体的な推奨: 飲酒は適量に留めるべきです。多くの研究では、1日あたり1〜2ドリンク(ビールなら中瓶1本程度)までが目安とされています。酩酊するほどの飲酒は避けるべきです。

【証拠レベル:強】適正体重の維持(BMI管理)

作用機序: 肥満、特に内臓脂肪の増加は、男性不妊の大きな危険因子です。脂肪組織では、男性ホルモン(テストステロン)を女性ホルモン(エストロゲン)に変える「アロマターゼ」という酵素が活性化します。これによりホルモンバランスが崩れ、精子を作る機能が低下します。また、肥満は体全体の炎症や酸化ストレスを促進することも知られています15
具体的な推奨: BMI(ボディマス指数)を18.5から24.9の正常範囲内に維持することが目標です。肥満(BMI 25以上)の場合は、食事と運動による減量が非常に重要です。

【証拠レベル:強】定期的な運動

作用機序: 定期的な運動は、テストステロン値を高め、インスリン感受性を改善し、体内の炎症や酸化ストレスを軽減する効果があります21
具体的な推奨: 複数の研究を統合したネットワーク・メタアナリシスという手法の分析では、有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)と筋力トレーニングを組み合わせた運動(Combined Aerobic and Resistance Training – CET)が最も効果的であると結論付けられています21。ただし、過度なトレーニングは逆にストレスとなりうるため、週に数回、心地よいと感じる程度の運動が推奨されます。

【証拠レベル:中】陰嚢(いんのう)の温度を上げない

作用機序: 精巣は、体温より2〜4度低い温度で最も効率的に機能します。長時間のサウナや熱い風呂、膝の上でのノートパソコンの使用など、陰嚢の温度を上昇させる行為は、精子を作る機能を低下させる可能性があります27
具体的な推奨: 長時間の入浴やサウナ(15〜20分以上)は避け、ノートパソコンは机の上で使用しましょう。下着は、通気性が良く、締め付けの少ないトランクスやボクサーパンツが推奨されます。

【証拠レベル:中】ストレス管理

作用機序: 慢性的なストレスは、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を促します。高いコルチゾールレベルは、テストステロンの産生を抑制し、視床下部-下垂体-精巣というホルモン分泌の司令塔の働きを乱す可能性があります29。日本の研究でも、仕事上のストレスと精子の質の低下との関連が指摘されています36
具体的な推奨: 瞑想、ヨガ、深呼吸などのリラクゼーション技法を実践しましょう。また、毎晩7〜8時間の質の良い睡眠を確保することも非常に重要です。

【証拠レベル:中】適切な射精頻度

作用機序: 長期間射精をしないと、古い精子が精路内に留まり、活性酸素に長く晒されることでDNA損傷のリスクが高まります。定期的な射精は、常に新鮮な精子を供給するために役立ちます27
具体的な推奨: 理想的な頻度は2〜3日に1回程度とされています。5〜7日以上の長い禁欲期間は、逆に精子の質を低下させる可能性があるため、避けた方が良いでしょう。

食生活の最適化:精子を元気にする食事法と栄養素

【証拠レベル:強】地中海式食事法

作用機序: 地中海式食事法は、抗酸化物質、抗炎症成分、良質な脂質(不飽和脂肪酸)を豊富に含み、精子を酸化ストレスによるダメージから守るのに非常に効果的です。数多くの研究で、この食事法を実践する男性は精子の濃度、運動率、形態率が良好であることが示されています5
具体的な推奨: 日々の食事で、緑黄色野菜、果物、豆類、全粒穀物、魚(特に青魚)、オリーブオイル、ナッツ類を積極的に摂取しましょう。一方で、赤身肉や加工肉、甘いお菓子や飲料、飽和脂肪酸の多い食品は控えることが推奨されます。

【証拠レベル:中】重要な栄養素の補給

特定の栄養素を意識的に摂取することも、精子の質をサポートします。

  • オメガ3脂肪酸: 特にDHAは精子の細胞膜の重要な構成成分であり、膜の柔軟性を高め、受精能力を向上させます。サバ、イワシ、サンマなどの青魚や、くるみ、亜麻仁油に豊富です17
  • 亜鉛: 精子形成(Spermatogenesis)とテストステロン合成に不可欠なミネラルです。日本の成人男性の推奨摂取量は1日11mgで、牡蠣、牛肉、ラム肉、ナッツ類、かぼちゃの種などに多く含まれます17
  • 抗酸化物質(ビタミンC, E, コエンザイムQ10, リコピン): これらの栄養素は、体内の活性酸素を無害化し、酸化ストレスから精子を守る「防御部隊」として働きます16。ビタミンCはパプリカや柑橘類、ビタミンEはナッツ類や植物油、リコピンは加熱したトマト、コエンザイムQ10はレバーやイワシに豊富に含まれています。

第III部:いつ心配すべきか?セルフチェックと医療機関受診の目安


男性不妊のセルフチェックリスト【専門医監修】

以下の項目に当てはまるものがないか確認してみましょう。これはあくまで簡易的なスクリーニングであり、医学的診断に代わるものではありません。一つでも当てはまる場合は、専門医への相談を検討するきっかけとしてください。

  • □ 避妊せずに定期的な性交渉を1年以上続けているが、妊娠に至らない。
  • □ パートナーの年齢が35歳以上で、半年以上妊娠に至らない。
  • □ 過去に精巣炎(おたふく風邪によるものを含む)や精巣、鼠径部の手術を受けたことがある。
  • □ 陰嚢に痛みや違和感、こぶのようなものを感じる(精索静脈瘤の可能性)。
  • □ 性欲の低下や勃起障害(ED)がある。
  • □ BMIが25以上、または18.5未満である。
  • □ 喫煙の習慣がある。
  • □ ほぼ毎日、多量の飲酒をする。
  • □ 日常的に強いストレスを感じている。

専門医に相談するタイミングとは?

日本生殖医学会は、一般的に「1年間」避妊をせずに性交渉を行っても妊娠しない場合を不妊症と定義し、検査や治療を考慮すべき時期としています。ただし、妻の年齢が35歳以上の場合は、卵巣機能の低下が早まる可能性があるため、「半年」を目安に早めに相談することが推奨されます24。また、上記のセルフチェックリストで明らかな危険因子がある場合は、期間にかかわらず速やかに相談することが賢明です。

病院ではどんな検査をするの?初診から診断までの流れ

専門医(主に泌尿器科医)を受診すると、通常は以下のような段階的な検査が行われます。これにより、不安だった状況が明確になり、具体的な次の一歩が見えてきます。

  1. 問診: 医師があなたの健康状態、生活習慣、これまでの病歴、妊活の状況などについて詳しく質問します。
  2. 身体診察: 精巣の大きさや硬さ、精管の有無などを確認します。特に、触診によって精索静脈瘤(精巣の上にある静脈のこぶ)の有無を調べることが重要です6
  3. 血液検査: テストステロン、FSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体形成ホルモン)といった、精子を作るのに重要なホルモンの値を測定します6
  4. 超音波検査: 陰嚢の超音波検査は、精索静脈瘤の確定診断やその程度を客観的に評価するために行われます13
  5. 精液検査: 男性不妊の診断における最も基本的な検査です。前述の濃度、運動率、正常形態率などをWHOの基準に基づいて評価します25

これらの検査結果を総合的に判断し、不妊の原因を特定していきます。

第IV部:主な原因と治療選択肢の概要


診断によって特定される男性不妊の主な原因と、それに対する治療の選択肢を「2024年版男性不妊症診療ガイドライン」7に基づいて概観します。

男性不妊の主な原因トップ3

  1. 造精機能障害 (精子を作る機能の問題): 最も多い原因で、全体の約8割を占めます。この中で特に重要で、かつ治療可能なのが「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」です。これは精巣の静脈にこぶができ、血流が滞ることで精巣の温度が上昇し、精子を作る機能が低下する病態で、男性不妊の最大原因(約40%)とされています422
  2. 性機能障害 (性交渉の問題): 勃起障害(ED)や射精障害(精液をうまく排出できない状態)などが含まれます。これらは心理的な要因や他の身体疾患が原因であることもあります24
  3. 精路通過障害 (精子の通り道の問題): 精子は作られているものの、精管(精子の通り道)が詰まっているために精液中に出てこられない状態です。閉塞性無精子症とも呼ばれます4

その他、「原因不明」とされるケースも少なくありません。

治療の選択肢:ステップアップアプローチ

治療は、原因や状態に応じて、負担の少ない方法から段階的に進められるのが一般的です。

  • ステップ1: 生活習慣の改善と栄養療法: すべての治療の基礎として、本記事の第II部で解説した方法がまず推奨されます。
  • ステップ2: 薬物療法: ホルモン異常が原因の低ゴナドトロピン性男子性腺機能低下症に対するホルモン補充療法や、性機能障害に対する治療薬、酸化ストレスを軽減するための抗酸化サプリメントなどが用いられます24
  • ステップ3: 外科的治療: 精索静脈瘤に対する顕微鏡下手術(microsurgical varicocelectomy)が代表的です。これは非常に効果の高い治療法とされています。また、精路の閉塞を解消する手術も行われます24
  • ステップ4: 生殖補助医療 (ART): 上記の治療で効果が見られない場合や、適応とならない場合に選択されます。人工授精(IUI)、体外受精(IVF)、そして顕微授精(ICSI)などがあります。精液中に精子が全くいない無精子症の場合でも、精巣内から直接精子を回収する手術(TESEやmicro-TESE)によって、顕微授精が可能になることがあります24

第V部:課題を乗り越える – 心のケアと仕事との両立


「妊活疲れ」は男性にも。ストレスとどう向き合うか

不妊治療の道のりは、身体的な負担だけでなく、「いつになったら終わるのか」という精神的なプレッシャーも伴います。「妊活疲れ」は女性だけの問題ではありません。男性もまた、期待に応えられないという罪悪感や、パートナーへの申し訳なさ、将来への不安など、複雑な感情を抱えることがあります。特に日本では、長時間労働などの職場環境がストレスの一因となり、精子の質に悪影響を与える可能性も指摘されています3637。この課題を乗り越えるためには、まず自分の感情を認め、一人で抱え込まないことが重要です。パートナーと率直に気持ちを話し合う時間を持つこと、信頼できる友人や家族に相談すること、そして必要であれば専門のカウンセラーの助けを借りることも有効な選択肢です。

仕事と不妊治療の両立:知っておきたい公的支援と職場の理解

不妊治療は、定期的な通院が必要となることが多く、仕事との両立は大きな課題です。幸いなことに、日本社会もこの問題への理解を深めつつあります。厚生労働省は、企業が従業員の不妊治療を支援するためのガイドラインや助成金制度を設けています1。また、2022年4月からは、不妊治療が保険適用の対象となり、経済的負担が大幅に軽減されました。不妊治療のために利用できる休暇制度を設けている企業も増えています。自身の会社の制度を確認し、必要であれば上司や人事部に相談することも一つの方法です。治療と仕事を両立させることは、決してわがままなことではなく、社会全体で支えていくべき課題であるという認識が広まっています38

よくある質問

Q1: ブリーフよりトランクスの方が本当に良いのですか?

はい、その可能性はあります。科学的な根拠は「中程度」ですが、ブリーフのような体に密着する下着は、精巣の温度を上昇させる可能性があると指摘されています27。精巣は体温より少し低い温度で最もよく機能するため、通気性が良く締め付けの少ないトランクスの方が理論的には望ましいと考えられています。劇的な効果を期待するものではありませんが、簡単にできる生活習慣の改善策の一つとして試してみる価値はあります。

Q2: サプリメントは本当に効果がありますか?どのサプリメントを選べば良いですか?

いくつかの栄養素(コエンザイムQ10、L-カルニチン、亜鉛、セレン、ビタミンC・Eなど)が精子の質を改善する可能性を示唆する研究結果(証拠レベル:中程度)が複数報告されています16。これらは主に、酸化ストレスを軽減する働きによるものと考えられます。しかし、サプリメントはあくまで食事の補助であり、バランスの取れた食事に取って代わるものではありません。また、効果には個人差があり、過剰摂取は逆に健康を害することもあります。どのサプリメントが自分に適しているかについては、自己判断で選ぶ前に、必ず医師や薬剤師などの専門家に相談してください。

Q3: 精索静脈瘤があると診断されました。必ず手術は必要ですか?

必ずしも全員が手術を必要とするわけではありません。「男性不妊症診療ガイドライン 2024年版」によると、精索静脈瘤があり、かつ精液検査の結果に異常が見られ、カップルが不妊の状態にある場合に、手術が強く推奨されます713。軽度の場合や、精液検査の値が正常範囲内である場合などは、経過観察となることもあります。治療方針は、静脈瘤の程度、精液検査の結果、年齢、カップルの希望などを総合的に考慮して、主治医と相談の上で決定されます。

結論

男性不妊は、もはやタブー視されるべき問題ではなく、科学的根拠に基づいたアプローチによって予防・改善が可能な医学的課題です。この記事で解説したように、禁煙や食生活の改善といった日々の小さな積み重ねが、あなたの生殖能力に大きなプラスの影響を与える可能性があります。最も重要なことは、正しい知識を身につけ、不確かな情報に惑わされず、必要であれば早期に専門家の助けを求める勇気を持つことです。そして何よりも、この課題は一人で、あるいは男性だけで抱え込むものではありません。パートナーと心を開いて話し合い、二人三脚で向き合っていくことが、あらゆる治療の第一歩であり、最も大切なことです。この記事が、あなたの前向きな一歩を力強く後押しできることを心から願っています。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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  33. ミキハウス. 【専門医監修】男性の妊活で大切なことってなんでしょうか?. [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://baby.mikihouse.co.jp/information/post-16295.html
  34. 誠心堂薬局. 体質で考える「男性不妊」. [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.seishin-do.co.jp/kodakara/male-infertility/
  35. 誠心堂薬局. もしかして、男性不妊?. [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.seishin-do.co.jp/kodakara/note/male_infertility/
  36. ミネルバクリニック. 仕事上のストレス・疲労が精子の質に与える影響|遺伝専門クリニックが解説. [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://minerva-clinic.or.jp/hiromi/shigoto-stress-seishi-shitsu-eikyo/
  37. ニッセイ基礎研究所. 働く男性の自覚症状(健康問題)-就労男性は「ストレスを感じる」が、自覚症状、仕事へ最も影響する症状ともに高い割合に-. [インターネット]. 2023年. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75965?site=nli
  38. 政府広報オンライン. 不妊治療、社会全体で理解を深めましょう. [インターネット]. 2023年. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.gov-online.go.jp/article/202309/entry-7862.html
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