目のかゆみとは?考えられる8つの原因とその対処法
眼の病気

目のかゆみとは?考えられる8つの原因とその対処法

はじめに

日常生活の中で、突然「目がかゆい」と感じた経験は、多くの方にあるのではないでしょうか。目のかゆみは、季節性のアレルギーから感染症まで、さまざまな原因で起こり得ます。ときには一過性の軽い症状で済む場合もあれば、重度の炎症につながることもあります。特に、かゆみだけでなく充血や痛み、視力の低下などが見られる場合は、何らかの疾患が背景に潜んでいる可能性があります。本記事では、代表的な8つの原因とその対処法・予防策について、文化的背景や生活習慣に精通した立場から丁寧に解説していきます。日常のケアだけで十分コントロールできるケースもあれば、医療機関を受診したほうがよいケースもありますので、ご自身の状況を把握しながら、参考にしてみてください。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

本記事の内容は、多くの信頼できる研究や医療関連機関(Cleveland Clinic、American Academy of Ophthalmology、American College of Allergy、Mayo Clinic、Johns Hopkins All Children’s など)の情報をもとにしています。これらの機関は長年にわたり、目の疾患やアレルギーに関する研究や治療ガイドラインを発信してきたことで知られており、情報の信頼性が高いと考えられています。また、近年では目のアレルギーや炎症に関する研究がさらに進み、新しい治療法も登場しています。特にLeonardi A ら (2021) “Ocular allergy: Recognizing, treating, and managing ocular allergic disorders,” Allergy, 76(1), 8–23, doi: 10.1111/all.14454 では、花粉症をはじめとするアレルギー性結膜炎の特徴や治療法に関して詳細に議論されており、日常で起こる目のかゆみの仕組みや対処を理解するうえで大いに参考になります。

一方で、かゆみや充血が続く場合、細菌やウイルス感染が絡んでいることもあります。なかでも、まぶたのふち(眼瞼縁)にある脂腺の機能不全が原因となるマイボーム腺機能不全は、慢性的な炎症や乾燥を引き起こし、長引く目のかゆみを増幅させる恐れがあります。最新の検査・治療法に関しては、Geerling G ら (2022) “The Value of Diagnostics in Blepharitis Management: A Tear Film & Ocular Surface Society International Workshop Report,” Ocul Surf, 22, 58–75, doi: 10.1016/j.jtos.2021.10.002 が詳細に報告しており、診断と治療方針の重要性を強調しています。この記事ではこうした知見を踏まえつつ、身近な原因から医師の診察が必要なケースまでをわかりやすく解説します。

1.季節性アレルギーによる目のかゆみ

季節性アレルギーとは

ある特定の時期になると、花粉などのアレルゲンによってアレルギー反応が起きやすくなるのが季節性アレルギーです。日本では春先や秋口に花粉症の患者数が増えることがよく知られていますが、スギやヒノキ、ブタクサなど植物の種類によって飛散時期が異なるため、年中通して注意が必要な場合もあります。季節性アレルギーの場合、目のかゆみだけでなく、くしゃみや鼻づまり、鼻水などが同時に起こることが多い点が特徴です。

原因とメカニズム

季節性アレルギーの主要な原因は、花粉やカビなどが目や鼻の粘膜に付着して起こる免疫反応です。体内の免疫系が異物と認識してヒスタミンを放出し、炎症やかゆみにつながります。特に初春や秋には花粉飛散量が増えやすいため、この時期に症状が出やすい方は、花粉情報をチェックするなどの対策が重要です。

対処法

  • アレルゲン回避
    花粉の飛散量が多い日は、窓やドアを閉め切り、空気清浄機を活用するなど、屋内の環境を整えてアレルゲンとの接触を減らします。外出時は、メガネやゴーグル、マスクなどで物理的にブロックすることが有効です。
  • 洗顔・衣類の交換
    外出後は、髪や衣類に付着した花粉を落とすため、洗顔やシャワーをこまめに行います。衣類は部屋干しに切り替えるか、花粉対策機能のある乾燥機を使うことも対策の一つです。
  • 薬物療法
    軽度の症状であれば、市販の抗ヒスタミン薬や抗アレルギー点眼薬を試すことができます。ただし、症状が重くなる場合は専門の医師に相談し、処方薬であるステロイド点眼薬などを適切に使用する必要があります。

2.通年性アレルギーによるかゆみ

特徴

通年性アレルギー(Perennial allergies)は、季節に関係なく一年を通して症状が続くアレルギーです。代表的なアレルゲンとしては、ハウスダスト、ダニ、ペットのフケ、カビなどが挙げられます。とくに室内環境が原因の場合、毎日の生活空間での対策が欠かせません。花粉と異なり、1年中アレルギー症状が出やすいため、慢性的に目がかゆい、鼻がムズムズするなど、生活の質が低下しやすくなります。

対策

  • アレルゲンの特定
    アレルゲンの特定は、病院で行われるアレルギー検査(皮膚テストなど)によって可能です。原因物質がわかれば、空気清浄機の利用、寝具のこまめな洗濯、ペットの衛生管理など、より的確な対策を取りやすくなります。
  • 生活環境の改善
    こまめな掃除や換気、布団カバーのダニ対策などを徹底し、湿度管理にも気を配ることが大事です。
  • 医療機関への相談
    室内環境を整えても症状が続く場合は、通年性アレルギーに特化した薬や免疫療法などを検討するため、医師に相談します。

3.空気中の刺激物質

どんな物質が原因か

大気汚染、排気ガス、タバコの煙、そして香水やスプレー剤などの揮発性物質が原因となって目のかゆみを引き起こすことがあります。特に日本の都市部では排気ガスやPM2.5が増加するタイミングがあるため、敏感な人は注意が必要です。

対策とケア

  • 原因物質から離れる
    タバコの煙が原因であれば喫煙所や副流煙がある場所を避ける、香水など揮発性物質が強い場所から離れるといった対策が即効性をもたらします。
  • 目を洗う・冷やす
    生理食塩水や市販の洗眼薬で目を洗浄し、清潔なタオルを水で冷やして目の上に置くと、かゆみや炎症を和らげる効果が期待できます。

4.感染症(結膜炎・ぶどう膜炎など)

ウイルス・細菌・真菌などによる感染

ウイルス感染症でよく知られているのが結膜炎(痛みを伴う場合は「痛風性結膜炎」と呼ばれることも)です。目が充血し、水様性の目やになどが多くなることがあります。非常に感染力が強いため、家族内や職場で集団発症することも珍しくありません。細菌感染でも同様に充血やかゆみが起こり、膿性の目やにが特徴的です。

ぶどう膜炎のリスク

より深部に及ぶ炎症としてぶどう膜炎が挙げられます。これは目の内層にあるぶどう膜(虹彩や毛様体、脈絡膜)に炎症が起こるもので、光に対して過度にまぶしさを感じる、かゆみや痛みが出るなどの症状があります。放置すると白内障や緑内障を誘発するおそれがあり、視力に深刻な影響を及ぼす場合があります。

治療のポイント

  • 医療機関での受診
    感染性の可能性がある場合は放置せず早めに眼科を受診し、病原体を特定するための検査を受けることが大切です。正確な診断のもと、ウイルスなら抗ウイルス薬、細菌なら抗生物質、真菌なら抗真菌薬、ぶどう膜炎ならステロイド点眼などが処方されます。
  • 周囲への配慮
    結膜炎は家庭や学校、職場などで集団感染を起こしやすいため、手洗いを徹底し、タオルや洗面用具を共有しないように注意が必要です。

5.ドライアイによる目のかゆみ

ドライアイの背景

ドライアイは、涙液の分泌量が十分でなかったり、涙が早く蒸発しすぎたりすることで角膜表面が乾燥し、目のかゆみや疲労感、異物感を生じる疾患です。日本ではパソコン、スマートフォンの長時間使用、エアコンのきいた室内環境などが要因となり、ドライアイの患者が増加しています。また、高齢になると涙の分泌そのものが減少しやすいことも知られています。

症状と悪化因子

  • 目のかゆみ・ゴロゴロ感
    まばたきの回数が減ると角膜表面の保護力が低下し、かゆみやゴロゴロ感が強まります。
  • 視力の一時的低下
    乾燥により涙の屈折力が乱れ、ピントが合わせづらくなることで視力が不安定になります。
  • 悪化因子
    エアコンの風が直接目に当たる環境、長時間のデスクワーク、睡眠不足、コンタクトレンズの誤使用などが症状を悪化させます。

対処法

  • 人工涙液の使用
    市販の人工涙液やヒアルロン酸点眼薬などを使用し、定期的に角膜を潤すことで症状が軽減します。
  • まばたきの意識・休憩
    パソコンやスマートフォンの使用中は意識的にまばたきを増やし、1時間に数分程度休憩を入れるなどの工夫をすると疲労が軽減されます。
  • 環境の調整
    加湿器を使ったり、エアコンの風向きを変えるなどして室内の乾燥を防ぐと、ドライアイの進行を抑えるうえで役立ちます。

6.眼精疲労(がんせいひろう)による目のかゆみ

長時間の作業が原因

パソコンやスマートフォンを長時間見続けることで生じる眼精疲労は、かゆみ・乾燥感・ピント調整のしづらさなど多岐にわたる症状を引き起こします。加えて、夕方以降の暗い環境下や車の運転など目に負担のかかる作業が長引くと、疲れが蓄積して目のかゆみが強まることがあります。

ケアの方法

  • 照明環境の見直し
    部屋の明るさを確保し、読書やパソコン作業をする際に照明を適度に調整します。暗すぎる部屋やまぶしすぎる照明はどちらも目に悪影響を与えやすいです。
  • 適度な休憩とストレッチ
    1時間に数分程度は目を休める、遠くの景色を見るなどして、眼筋をほぐします。首や肩のストレッチを取り入れると血行不良も改善しやすくなり、眼精疲労の軽減につながります。

7.コンタクトレンズの使用による刺激

レンズによるトラブル

コンタクトレンズを長時間装用したり、交換時期を守らなかったりすると、角膜に負担がかかり、乾燥やかゆみ、充血が起こりやすくなります。レンズについた微生物や汚れが原因で結膜炎や角膜潰瘍を起こすこともあるため、取り扱いには注意が必要です。

対応策

  • 装用時間の管理
    医師やメーカーが推奨する装用時間を超えないようにし、就寝時には必ずレンズを外します。1日使い捨てタイプなどを利用する場合も、正しいタイミングで交換しましょう。
  • レンズケアの徹底
    清潔な手での装着、専用の洗浄液でのこすり洗い、レンズケースの定期的な交換などを行い、雑菌繁殖を防ぎます。
  • 定期検査の重要性
    違和感がなくても定期的に眼科を受診し、角膜の状態をチェックしてもらうとトラブルの早期発見につながります。

8.まぶたのふち(眼瞼縁)の炎症:眼瞼炎(ブリファリティス)

ブリファリティスとは

目のかゆみや赤みが続き、特にまぶたの縁(まつ毛付近)にかさぶたや脂肪がたまる状態が眼瞼炎(ブリファリティス)です。主にマイボーム腺が詰まることで脂質の分泌が乱れ、まつ毛の生え際に汚れが蓄積しやすくなります。症状が進むとドライアイを併発し、慢性的に目がかゆい状態が続くこともあります。

原因と対処

  • 原因
    慢性的なまぶたの衛生不良、皮膚の常在菌バランスの乱れ、マイボーム腺機能不全などが挙げられます。
  • セルフケア
    まぶた専用の洗浄シートやぬるま湯を含ませた清潔なガーゼで、まぶたの縁を優しく拭き取ります。脂質や汚れをこまめに除去することが大切です。
  • 症状が重い場合
    抗生物質の点眼や内服薬、ステロイド点眼などを使用することがあります。自己判断で薬を使わず、まずは医師に相談し、適切な治療を受けることが大事です。前述のように、近年は眼瞼炎に関する研究も盛んで、原因と対策がさらに細分化されています。

おすすめのケア・受診の目安

ここまで紹介したように、目のかゆみはアレルギー、ドライアイ、感染症、環境要因など多様な原因で生じます。軽い症状なら日常的な対策で改善することもありますが、以下のような場合は早めに医療機関を受診してください。

  • 症状が数日以上続く場合
    市販薬を使っても改善しない場合は、アレルギーの慢性化や感染症の可能性を疑い、専門的な診断が望まれます。
  • 痛みや目やにがひどく、充血が強い場合
    細菌やウイルス感染のほか、ぶどう膜炎など深刻な疾患の早期発見のためにも、迅速な受診が必要です。
  • 視力が急激に低下する場合
    かゆみや乾燥が原因というよりも、網膜や角膜の異常が考えられるため、ただちに検査を受けてください。

結論と提言

目のかゆみは、単なるアレルギー症状の場合もあれば、感染症やドライアイ、眼瞼炎など多様な病態の一端である可能性があります。まずはご自身の生活習慣や環境を見直して原因を推測し、対処法を試みてみると良いでしょう。たとえば、花粉症シーズンには花粉を屋内に持ち込まない工夫をし、ドライアイが疑われる場合は人工涙液を上手に使うなどのセルフケアが有効です。いずれの場合でも症状が強かったり、長引いたりする場合は、専門の眼科医に相談することをおすすめします。

なお、近年の研究(たとえばLeonardi A ら (2021), Allergy および Geerling G ら (2022), Ocul Surf)では、目のかゆみに関わるアレルギー反応やまぶた周辺の炎症メカニズムがさらに詳しく解明され、改善策や新たな治療法の可能性も示唆されています。特に日本国内でも、花粉症に限らず室内環境からの刺激、ドライアイ、コンタクトレンズの誤使用などによるトラブルが年々増えており、ライフスタイルと医療の両面から適切なケアを行うことが大切です。

最後に一言として、ここで述べた情報はあくまで参考資料であり、すべての方に当てはまるわけではありません。症状が重い、あるいは少しでも不安がある場合は、医師などの専門家に相談してください。

参考文献


注意事項
本記事は、一般的な情報提供を目的とした参考資料であり、専門家による診療や治療を代替するものではありません。症状の悪化や長期化が見られる場合は、必ず医師に相談してください。また、疑問点や不安があるときも専門家の意見を仰ぎ、適切なケアを受けるようにしましょう。

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