はじめに
目のかゆみは、多くの方が日常生活で一度は経験したことのある不快な症状です。特に目頭や目尻といった「目の隅」がかゆくなる場合は、単純な乾燥や花粉などのアレルギー反応から、まぶたや涙の通り道の炎症、さらには細菌感染など、多岐にわたる要因が考えられます。痛みや視力低下を伴わないケースがほとんどですが、何度もくり返してしまう、あるいは充血や腫れ、目やにが増えるなどの症状が長引く場合は、より慎重なケアや早めの医療機関受診が重要です。この記事では、目の隅(とくに目頭付近)にかゆみが起きる主な原因と対処法について、詳しく解説します。目のケアに関心のある方や、最近目の不快感に悩んでいる方に向け、専門的かつわかりやすくまとめました。
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目頭がかゆくなる9つの主な原因
目の隅がかゆくなる原因は実にさまざまですが、ここでは代表的な9つの要因を挙げます。これらのうち複数が重なって症状が出る場合や、原因がひとつでも慢性的に影響するケースもあり得るため、日々の生活習慣や周囲の環境も合わせて確認し、必要に応じて早めに受診することが大切です。
1. ドライアイ(乾燥によるかゆみ)
私たちの目は涙によって常に潤され、外部からの刺激や乾燥から保護されています。しかし涙の量や質が十分でない状態が続くと、目に必要な水分が不足し、角膜や結膜が乾燥してかゆみを生じやすくなります。特に目頭(目頭側の涙の出口付近)は乾燥の影響を受けやすく、慢性的にかゆみを覚えることがあります。加齢やコンタクトレンズの使用、または特定の内服薬(抗ヒスタミン薬、利尿薬、ホルモン避妊薬など)の副作用によって涙液分泌が低下する場合もあり、こうした背景があるとドライアイが起こりやすくなります。
また、ドライアイは高齢者だけでなく若い世代にも増えているとされ、PCやスマートフォンなどの画面を長時間見続ける現代の生活習慣が背景となっている可能性があります。なお、自己免疫疾患(シェーグレン症候群など)や糖尿病、甲状腺機能の異常、膠原病などもドライアイを引き起こすことがあるため、かゆみだけでなく目のゴロつき感や異物感、光に対するまぶしさが強い場合は、早めの受診が推奨されます。
2. アレルギー
アレルギーは目のかゆみ全般の原因として頻度の高いものです。花粉やハウスダスト、ペットの毛・フケ、ダニ、カビなど、空気中に漂うアレルゲンに反応すると、目頭・目尻を含めた広範囲で赤みやかゆみ、涙目が同時に起こることがあります。症状としては目全体がかゆいケースも多いのですが、とくに目頭側が敏感になっている方もめずらしくありません。また車や工場の排気ガス、タバコの煙などの刺激でも、同様の症状が誘発される可能性があります。
花粉症が疑われる場合、日本ではスギやヒノキだけでなく、ブタクサやイネ科の植物、ヨモギなど、季節によって飛散する花粉が異なるため、時期によって症状の出方が変わるのも特徴です。アレルギーと結びつきやすい体質の方は、予防的に花粉予報をチェックし、外出時の花粉対策メガネ・マスク着用などを意識するとともに、症状が強い場合は眼科でアレルギー用の点眼薬を処方してもらうと日常生活がより快適になります。
3. マイボーム腺機能不全(MGD)
涙は単なる水ではなく、大きく3層構造(油層・水層・粘液層)から成り立ちます。このうち油分(脂質)を分泌するのがマイボーム腺で、まぶたの縁に並ぶ形で存在します。マイボーム腺の働きが低下すると、涙の油分が不足し、結果的に涙がすぐ蒸発して目が乾きやすくなり、目頭を含む目全体のかゆみやゴロゴロ感につながるケースが多いです。MGD(マイボーム腺機能不全)は現代の日本でもよく見られる目の不調の一つで、コンタクトレンズ長時間装用者やパソコン作業などでまばたき回数が減っている方に顕著にみられます。
MGDの症状としては、かゆみや乾きだけでなく、目の疲れや視界のにじみ、涙が妙に多い(ただし質が悪いためうるおっているわけではない)といった矛盾した感覚が挙げられます。まぶたの清潔を保ち、できるだけまばたきを意識的に行い、コンタクトレンズの適切な使用を心がけることが予防に役立ちます。
4. まぶたの炎症(眼瞼縁炎・麦粒腫など)
まぶたやその縁の部分に生じる炎症は、目のかゆみの原因としてよくあげられます。中でも代表的なのが「眼瞼縁炎(がんけんえん)」や「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」、あるいは「ものもらい」と呼ばれる状態です。これらは細菌感染やマイボーム腺機能不全をはじめ、皮脂や汚れがまつげの根元周辺にたまってしまう環境が長く続くと起こりやすくなります。まぶた全体が赤く腫れ、痛みやかゆみが強いこともあり、症状が長引くと角膜・結膜にも影響が出ることがあります。とくに目頭や目尻など、まぶたの両端には複数の小さな分泌腺や皮脂腺が集まりやすい傾向があり、炎症を起こすと強いかゆみやチクチク感を訴える方もいます。
慢性化すると日常生活にも支障が出るため、腫れや目やにが多い場合は早めに眼科の受診を検討してください。自己流で触りすぎたりこすりすぎたりすると、症状を悪化させるリスクがあります。
5. 涙嚢炎(涙道感染によるかゆみ)
涙嚢炎(るいのうえん)は、目頭付近から鼻へと涙を排出する管(鼻涙管)が何らかの理由で詰まり、細菌などが繁殖して炎症を起こす病気です。目頭のすぐ脇にある涙嚢という袋状の部分に膿が溜まったり、腫れや赤みが出たりし、同時にかゆみや異物感、目やにが増えることがあります。まぶたを軽く押すと、膿や涙が出てくることもあります。
原因としては、先天的な鼻涙管閉塞や外傷・炎症などによる後天的な閉塞が挙げられます。鼻の病変(ポリープなど)が絡むこともあるため、眼科だけでなく耳鼻科の治療も必要になる場合があります。とくに目頭のかゆみや腫れが長引き、繰り返す場合は、涙嚢炎の可能性を考慮して早めに診察を受けてください。
6. 結膜炎(いわゆる「ピンクアイ」「痛いほどの赤み」)
結膜は、白目の表面とまぶたの裏面を覆う薄い膜です。ウイルス・細菌・アレルギーなどにより結膜が炎症を起こすのが結膜炎で、日本では「はやり目」「流行性角結膜炎」「痛いほどの赤みが出るピンクアイ」などと呼ばれることもあります。結膜炎になると、白目がはっきりわかるほど赤くなり、目やにや涙が増加し、痛みや強いかゆみ、異物感が出やすくなります。
とりわけウイルス性の場合は感染力が強く、周囲への飛沫感染や接触感染に注意が必要です。また細菌性の場合は抗菌薬点眼が治療の中心になるため、放置せず眼科を受診するほうがよいでしょう。アレルギー性結膜炎は花粉症のシーズンに多く、全体的に目が赤くかゆみを伴うほか、目頭・目尻など粘膜の境界部が集中的にかゆくなるケースもよくみられます。
7. 結膜下出血
結膜下出血は、結膜の下にある細い血管が何らかの拍子で破裂し、白目の部分に真っ赤な出血斑が見られる症状です。大半は軽症で痛みや視力低下はともないませんが、出血部分に違和感やかゆみを覚えることがあります。強い咳やくしゃみ、重い物を持ち上げる、便秘によるいきみ、血圧の急激な変動など、日常のちょっとした動作が引き金になることもあるため、自覚しないうちに突然出血していた、というケースが少なくありません。
また、結膜下出血がくり返し起きる場合は、血液の凝固機能や高血圧など全身的な問題が隠れている可能性もあるので注意が必要です。結膜下出血そのものは自然治癒で吸収されますが、違和感が続く場合や、頻繁に再発する場合は一度検査を受けることをおすすめします。
8. 目に異物(砂やほこりなど)が入っている
砂や埃、まつげの一部が目に入ったまま取れずに刺激を起こしている状態では、目頭・目尻問わずかゆみやゴロゴロ感が起きやすくなります。ゴシゴシと目をこすり続けると角膜や結膜を傷つけてしまう可能性があるため、清潔な手でまぶたをめくり、洗面所などで生理食塩水や水道水を優しく流して取り除く方法が基本です。取り除いた後も違和感やかゆみが続く場合は、眼科の受診が必要です。
9. コンタクトレンズの使用トラブル
コンタクトレンズは視力補正の手段として多くの方が利用していますが、装用時間が長すぎる、ケア方法が不十分、レンズそのものが合わないなどの要因が重なると、ドライアイや感染症を招きやすくなります。とりわけソフトコンタクトレンズは含水率が高いものほど装用感が良い半面、汚れがたまりやすく細菌やアレルゲンが付着しやすい場合もあり、目頭のかゆみや不快感を強める原因になることがあります。
誤ったレンズケアや交換時期の遅れにより感染リスクが高まると、結膜炎や角膜炎を併発してしまい、重症化すれば強い痛みや視力低下につながることもあるため、日々の取り扱いに注意が必要です。
目頭のかゆみを和らげる対処法・セルフケア
目頭(あるいは目の隅)がかゆい場合、日常生活で取り組めるいくつかの方法があります。あくまで軽度のかゆみや不快感に対する対処としてご紹介しますが、症状が長引く、あるいは状態がひどいときは必ず医師の診察を受けましょう。
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人工涙液や目薬の活用
ドライアイや軽い刺激によるかゆみには、薬局で購入できる人工涙液(防腐剤無添加のものが望ましい)が役立つことがあります。特にパソコン・スマートフォンを長時間見続ける方や、コンタクトレンズ使用者で目が乾きやすい方に適しています。 -
温湿布・冷湿布によるケア
かゆみを鎮めるために、冷たいタオルを目の上に当てて冷やす方法はよく知られています。アレルギー性の充血やかゆみがひどい場合は冷却が向いている場合があります。一方、マイボーム腺機能不全やまぶた周辺の炎症には、適度に温めると油分の流れが良くなるといわれており、温湿布も有効です。症状によって温・冷を使い分けましょう。 -
目元を清潔に保つ
まぶたやまつげの根元には皮脂や汚れが残りやすいので、アイメイクをする場合でもオフする場合でも、低刺激のクレンジングなどを使って丁寧に洗浄することが大切です。コンタクトレンズ使用者は装用前後の手指消毒やレンズの洗浄を徹底し、レンズケースも定期的に交換すると目の健康維持に役立ちます。 -
アレルゲンとの接触を避ける
花粉やハウスダストによるかゆみが強い方は、花粉シーズンにはメガネやマスクを着用する、帰宅時は衣服や髪についた花粉を払い落とす、家の中をこまめに換気・掃除してホコリを減らすなど、生活環境を整えることが基本です。ペットが原因となる方はできる範囲で部屋を区切ったり、ブラッシングの際に室外で行うなど工夫をする必要があります。 -
コンタクトレンズの使用を見直す
コンタクトレンズが原因と考えられる場合は、まずは装用時間を減らしてみる、度数やレンズタイプを眼科で再度チェックする、ワンデータイプのレンズに切り替えるなどの検討が必要です。また、メガネと併用して目を休ませることも推奨されます。
受診の目安
軽度のかゆみや異物感程度であれば、上記のセルフケアで症状が軽減することも少なくありません。しかし、以下のような場合は早めの受診を強く検討しましょう。
- 目頭やまぶたに腫れや赤み、黄色っぽい目やになどが増え、感染症を疑う場合
- かゆみとともに激しい痛み、視力の低下や光がまぶしく感じるなど、日常生活に支障が出始めた場合
- 目の奥に鈍痛を感じたり、頭痛や発熱など全身症状を伴う場合
- 何をしても症状が改善せず、長期間(1週間以上)くり返している場合
結膜炎や涙嚢炎、あるいはまぶたの感染症は、放置すると重症化するリスクがあります。またアレルギー性疾患も適切な治療を受けずに市販薬だけで対処していると、症状が長期化・慢性化しやすいため、症状の程度に応じて眼科や適切な科を受診することをおすすめします。
結論と提言
目頭のかゆみは、ドライアイ、アレルギー、まぶたや涙道の炎症・感染症など複数の要因が複雑に絡むことが多く、自己判断が難しいケースもあります。軽度の症状ならこまめなケアや生活習慣の見直しで改善する場合もありますが、痛みや腫れ、目やにの増加などがあれば早期に医療機関を受診するのが安全です。また、再発を繰り返す場合は、背景にある生活習慣(長時間のデジタル機器使用、コンタクトレンズの扱い、寝不足など)やアレルギー体質への対策を含め、総合的に見直す必要があります。
目のトラブルは日常生活の質を左右します。パソコンやスマートフォンを扱う時間の多い現代では、若い世代もドライアイや目の不調を抱えやすくなっています。早期発見・早期対応のためにも、少しでも違和感を覚えたら適切なセルフケアを行い、症状が強い、または続くときは放置せず専門医の診察を受けてください。
参考文献
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Itchy eyes
https://health.clevelandclinic.org/itchy-red-eyes-how-to-tell-if-its-allergy-or-infection/
アクセス日: 2021年10月29日 -
Blocked tear duct
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/blocked-tear-duct/symptoms-causes/syc-20351369
アクセス日: 2021年10月29日 -
Tear Duct Infection (Dacryocystitis)
https://www.health.harvard.edu/a_to_z/tear-duct-infection-dacryocystitis-a-to-z
アクセス日: 2021年10月29日 -
Symptoms of conjunctivitis (pink eye)
https://www.cdc.gov/conjunctivitis/about/symptoms.html
アクセス日: 2021年10月29日 -
Itchy Eyes
https://www.healthdirect.gov.au/itchy-eyes
アクセス日: 2023年2月22日 -
Why are my eyes itchy answer from an expert?
https://www.hopkinsmedicine.org/health/wellness-and-prevention/why-are-my-eyes-itchy-answers-from-an-expert
アクセス日: 2023年2月22日
医師への相談と免責事項
本記事は信頼できる情報源に基づき作成した参考情報です。目に関する不快症状や疑問がある場合は、必ず医師や医療専門家の診断・治療を受けてください。症状や病態には個人差があり、自己判断で市販薬や民間療法だけで対処すると症状をこじらせる可能性があります。特に感染が疑われる場合や痛み・視力低下などの症状を伴う場合は、早期に専門医の指導を受けましょう。本記事の情報はあくまで一般的な知識の提供を目的としており、医学的アドバイスの最終判断は医師に委ねるべきことをご理解ください。
以上の点を踏まえ、日々のケアを大切にしつつ、必要に応じて早めの受診で目の健康を守ることをおすすめします。どうかご自身の目の状態を観察し、長引く症状や強い不快感がある場合は専門家のアドバイスを受けてください。皆様の目が健やかに保たれ、快適な日常生活を送れるよう心より願っております。