はじめに
夜になると、人は一日の疲れを癒やし、安らかな眠りにつきます。しかし、私たちが眠っている最中には、しばしば自分では制御できない不思議な現象が起こることがあります。たとえば、よだれを垂らしてしまったり、いびきをかいて周囲を驚かせたり、寝言を大声で話したり…。こうした行動はときにコミカルですが、家族やパートナーに見られると気恥ずかしい思いをすることもあるかもしれません。さらに、症状によっては健康面での問題を示唆するケースもあるため、軽視できない場合があります。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
本稿では、眠っているあいだによくみられる5つの現象を取り上げ、それぞれの原因や予防策、さらに必要に応じた対処法などを詳しく解説します。あわせて、ここ数年で発表された医学的根拠に基づく最新の知見も盛り込み、より多角的な視点で考察していきます。日常生活の習慣やストレスレベル、睡眠環境の違いなど、さまざまな要因が深く関係する眠りの世界をひも解くことで、より健やかな睡眠を手に入れる一助になれば幸いです。
専門家への相談
本稿では、睡眠中に起こりうる複数の現象について解説していますが、それらの内容はあくまで一般的な情報です。医学的な観点から詳しく分析する際は、専門の医師や睡眠専門医の判断を仰ぐことが大切です。本稿で言及されている内容の一部は、Bác sĩ Lê Thị Mỹ Duyên(Đa khoa · Bệnh viện Đa khoa Hồng Ngọc)の見解を参考にしています。したがって、もし深刻な症状を自覚していたり、長期間続く場合には、速やかに医師へ相談してください。専門家の視点で自分の健康状態を評価し、適切な治療方針を選択することが何より重要です。
以下では、睡眠中の5つの現象(よだれ、夜尿症、いびき、寝言、夢遊病)を一つずつ取り上げ、その背景にあるメカニズムや具体的な対策を詳しく見ていきます。
よだれを垂らしてしまう(唾液が出すぎる場合)
なぜ寝ているときに唾液が漏れるのか?
人間の口腔内には、唾液を分泌する複数の腺が存在します。通常、起きているときは唇を閉じたり嚥下を繰り返したりすることで、唾液が過度に外へ漏れることはあまりありません。しかし、睡眠中は筋肉の緊張が緩み、口が開きがちになり、唾液がそのまま外へ垂れてしまうことがあります。特に横向きで寝る人は、うつぶせ寝や仰向け寝と比べて口周辺が開放されやすいため、よだれが出やすい傾向にあります。
子どもと大人では原因が違う?
子どもの場合は口周りの筋肉や嚥下のコントロールが未熟なため、よだれが出るのは比較的よくあることです。歯が生え揃う時期には歯茎が刺激されて唾液分泌が活発になることも影響します。一方、大人で過剰なよだれが長期間続く場合、鼻づまりや扁桃の炎症など呼吸路に問題があったり、妊娠中の体調変化(悪心・つわり)などが背景にあるケースも考えられます。こうした症状が顕著で、日中も唾液分泌が過剰だったり、のどの痛みなどが続く場合は医師の診察を受けたほうがよいでしょう。
具体的な対処法
- 睡眠姿勢の調整
横向きより仰向けに近い姿勢を維持するよう心がけると、唾液が口から流れ出しにくくなります。枕の高さや材質を調整することで、寝返りのしやすさにも変化が出るため、自分に合った寝具を選ぶのもおすすめです。 - 口呼吸を改善
鼻づまりが原因で口呼吸になっている場合は、アレルギーや鼻炎などの治療を行い、できるだけ鼻呼吸を保つようにしましょう。 - 環境因子の見直し
部屋が乾燥していると鼻粘膜が不快になり、口呼吸につながることがあります。適度な湿度(およそ40~60%)を保ちましょう。
夜尿症(寝ている間の排尿)
大人にも起こる夜尿症とは?
子どもの“おねしょ”はよく知られていますが、大人にも夜間に無意識の排尿が起こることがあります。これは一般的に「夜尿症」と呼ばれ、恥ずかしさから相談を避ける方も少なくありません。実際には、小児期だけでなく成人でもストレスやアルコール摂取の影響、持病などさまざまな要因で起こりうるため、放置せず原因を探ることが大切です。
アルコールと夜尿症の関係
アルコールには利尿作用があり、さらに眠りを浅くする特性があります。酔った状態では身体の感覚や意識が鈍くなり、トイレに行きたいというサインを逃しやすくなります。そのまま寝入ってしまい、気がついたら下着を濡らしていたというケースは珍しくありません。
その他の原因
- 膀胱の容量が小さい、または膀胱機能に問題がある
- 泌尿器系の感染症やホルモンバランスの乱れ
- ストレスや睡眠の質の低下
- 糖尿病などの持病が関与している可能性
具体的な対処法
- アルコールのコントロール
就寝前の飲酒を控えることで、夜間の利尿作用を抑えられます。どうしてもお酒を飲む場合は量や時間を工夫し、睡眠の2~3時間前には切り上げることを意識しましょう。 - 排尿習慣の見直し
寝る直前に必ずトイレに行く習慣をつける、夕方以降の水分摂取量を調整するなど、日常のルーティンを工夫してみてください。 - 医師への相談
頻繁に夜尿症が続く場合は、専門の医療機関で検査を受けることをおすすめします。感染症や糖尿病など、ほかの疾患が隠れている可能性も考慮すべきです。
いびき(睡眠時の音)
いびきはなぜ起こるのか?
いびきは、呼吸の通り道が狭くなることで気道周辺の組織が振動し、音を発する現象です。鼻づまりや扁桃腺肥大などの生理的要因もあれば、肥満やアルコール、喫煙など生活習慣が原因となることも多いです。日本でも中高年層を中心に、いびきに悩む人は少なくありません。
いびきの健康リスク
一時的ないびきであれば、そこまで大きな問題にならないこともあります。しかし、慢性的ないびきが睡眠の質を大きく下げたり、周囲の人の安眠を妨げたりするケースもあります。特に「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」が疑われる場合は、注意が必要です。SASは呼吸が止まる時間帯が繰り返し出現し、日中の眠気や高血圧など深刻な症状を引き起こす可能性があります。
対処法・予防策
- 体重管理
肥満は気道を圧迫していびきを悪化させる要因となります。栄養バランスのとれた食事と適度な運動で、標準体重を維持しましょう。 - 禁煙と飲酒制限
喫煙は気道粘膜を刺激し、アルコールは筋肉の緩みを増幅させるため、いびきを助長しやすくなります。 - 口呼吸・鼻呼吸の改善
鼻炎やアレルギーがある場合はしっかり治療し、日常的に口呼吸を減らす努力をしましょう。就寝時に鼻腔を通りやすくするテープや枕調整なども有効です。 - 医療機関での検査
夜間の無呼吸や睡眠の質が心配な場合は、睡眠外来などで専門的な検査(終夜睡眠ポリグラフ検査など)を行うことが推奨されます。
寝言(睡眠中の独り言・会話)
寝言の正体は?
「寝言」は医学的には“睡眠時の言語化現象”と呼ばれ、レム睡眠やノンレム睡眠の一部の段階で起こるとされています。多くの場合、夢の内容と連動しており、過去の体験やストレスなどが断片的に言葉として表に出るのです。
どんな人に多い?
寝言は子どもにも大人にも起こりますが、特にストレスが高いときや睡眠不足が続いているときに起こりやすいと考えられています。一過性のものであれば健康上の問題は少ないとされていますが、大声で叫んだり攻撃的な内容の寝言が多かったりする場合は、心因性の不調や特定の精神疾患が隠れている可能性も否定できません。
具体的な対策
- ストレスコントロール
過度のストレスは脳を興奮状態にし、眠りを妨げます。リラックスできる入浴や軽いストレッチ、呼吸法などを取り入れるとよいでしょう。 - 睡眠環境の改善
部屋を暗く静かに保つことで深い睡眠に入りやすくなります。 - 生活習慣の見直し
就寝前のスマホや激しい運動を控え、カフェインやアルコールの摂取を軽減するなど、日々の行動を改めて見直すことが重要です。 - 継続する場合は専門家へ
寝言が長期間にわたって周囲にも影響を与えるほどの状態であれば、睡眠専門医や心療内科でのカウンセリングを検討してもいいでしょう。
夢遊病(睡眠中の歩行や行動)
夢遊病とは?
夢遊病は、一般的に「睡眠時遊行症」と呼ばれ、深い睡眠時に起き出して歩き回ったり、時には外出してしまうこともある現象です。本人は意識がほとんどなく、翌朝になるとその行動を覚えていないケースが大半です。子どもに多い傾向がありますが、大人でもストレスや薬剤の影響、生活リズムの乱れなどが引き金となって発生する場合があります。
具体的なエピソード
比較的軽度の例では、ただベッドの中で座り込む、部屋の中をうろうろ歩く程度にとどまることが多いです。しかし、まれに車を運転する・玄関の鍵を開けて外へ出るなどの危険な行動に至ることがあります。こうしたケースでは本人だけでなく周囲もリスクが高まるため、速やかに対策を講じることが重要です。
対策と予防
- 睡眠時間の確保
夢遊病は深い眠りに入るタイミングが不規則だったり、慢性的な睡眠不足が重なったりすると起こりやすいとされています。7~9時間程度の十分な睡眠を確保し、寝る時間もできるだけ固定しましょう。 - 環境整備
危険を回避するため、夜間は部屋の鍵や窓の施錠をしっかり確認し、転倒や外出を防ぐよう障害物を片付けることが大切です。 - ストレス軽減
ストレスや不安感が高いときに夢遊病のエピソードが増えることも報告されています。心理的ケアや生活習慣の改善でストレスをコントロールしましょう。 - 必要に応じて専門医に相談
頻繁に夢遊病が繰り返される場合や、危険行動が目立つようであれば、精神科や睡眠外来での相談を検討すべきです。
最新研究による補足情報
睡眠障害全般に関する近年の研究
- 睡眠外来を対象とした大規模調査(2021年、Sleep Medicine Clinics, doi:10.1016/j.jsmc.2021.05.002)
研究者であるOhayon, M.M.らによる2021年の報告では、睡眠障害を抱える成人約2,000名を対象に調査を実施しています。深い睡眠中に起こる行動障害(夢遊病や激しい寝言など)は、ストレスレベルや不規則な生活リズム、飲酒量などの影響を強く受ける可能性が示唆されました。この研究は医療機関で診断済みの成人患者を対象としているため、一般の健康な人より症状が重度のケースが多いものの、日本国内でも生活習慣を整えることの重要性が改めて確認されています。 - アメリカ合衆国の疫学調査(2022年、Centers for Disease Control and Prevention)
米国CDCの睡眠関連報告(2022年版)でも、夜間の口呼吸や慢性的ないびきは高血圧や心血管リスクとの関連が指摘されています。海外と日本では食習慣や生活リズムに若干の違いがあるものの、睡眠環境を整備し、アルコールやたばこを控えるといった基本的な対策は国内でも有用だと考えられています。
これらの研究は成人を主な対象としているため、同じ症状でも小児に当てはめるには注意が必要です。しかし、基本的な対策(睡眠リズムの維持、ストレスの緩和、適切な体重管理など)が広く推奨されている点は共通しており、日本においても医療専門家から同様の助言が行われています。
結論と提言
睡眠中に起こる「よだれ」「夜尿症」「いびき」「寝言」「夢遊病」の5つの現象は、いずれも多くの方が経験しうる身近なものです。生理現象や生活習慣の影響が大きく、必ずしも重篤な病気のサインとは限りません。しかし、症状が慢性的・深刻化して日常生活や心身の健康に支障をきたす場合は、医師の診断を受けることが望ましいです。
- よだれを垂らす
寝姿勢の工夫や口呼吸の改善で軽減できる可能性があります。過剰な唾液分泌が続くときは耳鼻咽喉科の受診を検討しましょう。 - 夜尿症
アルコール量の調整や水分摂取のタイミングを見直し、続く場合は原因となる疾患やストレス要因を専門家に相談するのが大切です。 - いびき
肥満や飲酒、喫煙など生活習慣の見直しが第一歩。睡眠時無呼吸症候群の可能性がある場合は専門外来での検査を受けましょう。 - 寝言
一時的なストレスや寝不足で起こりやすく、生活リズムの改善やリラックス法を取り入れることで症状が緩和することがあります。長期化する場合は心療内科等の相談も検討を。 - 夢遊病
成長過程の子どもに多いですが、大人にもストレスや薬剤の影響などで起こります。周囲への危険が伴う場合は早めの対策が必要です。
睡眠トラブルは本人だけでなく、周囲にもさまざまな影響を及ぼすことがあります。ちょっとした気遣いや習慣の変更でも、驚くほど改善が見られる場合も少なくありません。もし症状が続くようなら、早めに医師や専門家に相談し、個々の体質や生活環境に合わせたアドバイスを得ることを強くおすすめします。
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参考文献
- 8 Embarrassing Sleep Secrets(WebMD) アクセス日: 2016年11月26日
- Embarrassing Sleep Secrets – would you share your bedtime problem with family and friends?(Ergoflex) アクセス日: 2016年11月26日
- Ohayon MM. “Epidemiological Overview of Sleep Disorders: Prevalence, Associations, and Treatments.” Sleep Medicine Clinics. 2021;16(3):343-356. doi:10.1016/j.jsmc.2021.05.002
- Centers for Disease Control and Prevention (CDC). “Sleep and Sleep Disorders.” 2022.
免責事項(重要)
本記事の内容は、あくまで一般的な健康情報の提供を目的としており、医療専門家による直接の診断や治療に代わるものではありません。症状の程度や持病の有無によって対処法は異なりますので、ご自身の体調や症状に不安がある場合は、必ず専門の医師・医療機関にご相談ください。また、ここで紹介した情報は信頼できる研究や専門家の見解に基づいておりますが、すべてのケースに当てはまるわけではないことをご留意ください。
(本記事は情報提供のみを目的としており、個別の病状に関しては医療従事者にお問い合わせいただくようお願いいたします。)