知られざる真実!| 歯科矯正の10のリスクとその影響
口腔の健康

知られざる真実!| 歯科矯正の10のリスクとその影響

はじめに

「歯並びを整える」という目的で一般的に行われる矯正治療(以下「矯正」と表記)は、出っ歯・受け口・歯のすき間・歯列の乱れなどを改善し、咬み合わせを正しく導くことで見た目だけでなく口腔内全体の健康面にもプラスの効果をもたらすと考えられています。しかし一方で、矯正にともなうリスクやデメリットについては、あまり詳しく説明されないこともあるようです。今回の記事では、矯正治療によって起こりうる「10の影響・リスク」に焦点を当てながら、治療時に注意すべき点や、よくある疑問、さらに日常生活で気をつけるべきポイントなどを包括的に解説していきます。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

この記事では、矯正装置を歯に装着してから除去するまでの過程で起こりやすい問題や、痛み・見た目の変化など、治療を検討する上で多くの方が不安に思う要素をまとめていきます。また、必要に応じて近年(過去4年以内)の信頼できる研究結果を織り交ぜつつ、日本国内における口腔ケアの実情や習慣も踏まえて解説を行います。なお、本記事の情報はあくまでも参考資料であり、実際の治療は担当歯科医師と充分な相談を行ったうえで進めてください。

専門家への相談

歯科矯正は専門的な診断と高度な技術を要する治療です。必ず歯科医師のもとで精密検査を受け、自身の咬み合わせや顎・歯の状態を理解したうえで進めることが大切です。とくに顎関節症など既往歴がある場合や、歯周病の有無によっては治療内容が大きく変わることもあります。なお、本記事で言及されている医師名としては、元の情報源に記載されていたBác sĩ Lâm Trần Thảo Vyが存在します。矯正治療の方針を固める際には、必ず実際の担当歯科医師や信頼のおける医療機関にご相談いただき、ご自身に合う治療計画を確認してください。

10個のリスク・影響とよくある疑問

以下では、矯正治療による10個の影響・リスクについて詳しく解説します。実際に治療が必要な方や、これから検討する方があらかじめ知っておくことで、より適切な対策やケアが行いやすくなるはずです。

1. 虫歯リスクの上昇

矯正を行うと、ブラケットやワイヤーなどの装置が歯の表面や歯列に付着します。この装置まわりは歯垢(プラーク)が溜まりやすく、通常の歯磨きだけでは十分に汚れが落ちにくくなるため、結果として虫歯のリスクが高まります。

  • 矯正中は歯みがき回数やみがき方に細心の注意が必要です。通常の歯ブラシだけでなく、矯正中専用の細かいブラシや歯間ブラシ、フッ素入り歯磨き粉などを併用するとよいでしょう。
  • またマウスウォッシュやデンタルフロス、歯間ブラシの使用、さらに近年注目されているウォーターピック(口腔洗浄器)なども積極的に導入することで、虫歯リスクが抑えられる可能性があると報告されています(Song X ら, 2021, BMC Oral Health, doi:10.1186/s12903-021-01683-6 でのシステマティックレビューより)。

2. 歯の脱灰・ミネラル喪失(ホワイトスポット形成)

歯面にプラークが溜まったまま放置されると、歯の表面からカルシウムなどのミネラルが溶け出し、白く濁ったホワイトスポット(白斑)ができやすくなります。これを「脱灰」と呼び、初期的な虫歯の一歩手前ともいわれる状態です。矯正装置を外した際、ブラケットが付いていた部分以外にホワイトスポットが目立つというケースもあり、「見た目」が大きく損なわれることがあります。

  • 症状が軽度であれば、フッ素塗布や再石灰化を促す処置によって改善する可能性があります。放置すると虫歯へ進行しやすいため、要注意です。

3. 金属アレルギー・ラテックスアレルギー

金属アレルギー体質の方は、矯正装置(ブラケットやワイヤー)に含まれるニッケルなどの金属成分に反応することがあります。また、矯正で用いるゴム(エラスティック)に含まれるラテックスに対しアレルギーを起こす可能性もあります。もし治療中に口内炎とは異なるただれや発疹、かゆみ、紅斑が生じた場合、即座に担当歯科医へ相談し、金属以外の素材やラテックスフリーのゴムに変更するなどの対策を取りましょう。

4. 歯根の吸収(根の短縮)

矯正では歯を動かすために持続的な力を加えますが、人によっては長期の加圧によって歯根が短くなる(歯根吸収)リスクがあります。多くの場合、ごく軽微にとどまるため、臨床上問題を起こさないケースがほとんどですが、まれに歯根が半分ほど短くなってしまう人もいます。歯根が短くなりすぎると、将来的に歯の寿命や強度に影響が出やすくなる可能性があります。

  • 歯根吸収が起こっていないかどうかは、定期的なX線撮影や歯科医による検診で確認が可能です。担当歯科医が適切な力加減を行うことでリスクを下げられるとされています。

5. 歯と顎の癒着(アンキローシス)

非常にまれなケースですが、歯根とあごの骨が癒着(アンキローシス)を起こしてしまい、意図したとおり歯が動かなくなることがあります。この場合、矯正装置では歯を移動させられず、逆にほかの歯だけが動いてしまい、隙間が開くなど歯列全体のバランスが崩れることがあります。

  • こうしたトラブルを早期に発見するためにも、担当歯科医による定期検診は欠かせません。アンキローシスが疑われる場合は、X線撮影やCTなどでの精密検査が行われ、必要に応じて治療計画が変更されることがあります。

6. 噛み合わせが戻る可能性(後戻り)

矯正治療が無事終了しても、歯の位置はまだ安定していません。とくに装置を外した直後からしばらくは、保定装置(リテーナー)をしっかり装着しないと、せっかく整えた歯並びが元に戻ってしまう(後戻り)リスクがあります。後戻りを防ぐには、歯科医の指示どおり保定装置を着用し続けることが重要です。

  • 保定期間は個人差があり、矯正治療期間が長ければ長いほどリテーナー着用にも時間がかかることが一般的です。

7. 矯正中の不快感(痛み・頭痛・違和感)

強い力で歯を移動するため、装置装着当初や調整後数日は痛みや違和感を覚える方が多いです。これ自体は「歯が動いている証拠」ともいわれ、矯正ではある程度避けられないものとされています。とはいえ、我慢できないほど強い痛みが続く場合や、頭痛・顎関節の痛みを伴う場合は、装置や力加減に問題がある可能性もあるため、必ず担当歯科医に相談しましょう。

  • 近年の研究(Al-Qahtani MH ら, 2022, J Orthod, 49(4):379-388, doi:10.1177/14653125221099185)でも、歯列矯正中の過度な圧力は歯肉の後退や顎関節症状などを引き起こすリスクがあると指摘されており、適切な力のコントロールが非常に重要と報告されています。

8. 食事制限・咀嚼への影響

矯正装置を付けている間は、食べ物が装置に引っかかりやすくなり、硬い食材や粘着質の高い食品を無理に噛むと、ワイヤーが外れたりブラケットが壊れたりするリスクがあります。そのため、咀嚼しにくい食品や硬い食品を極力避ける、もしくは小さくカットしてゆっくり噛むなどの工夫が必要になります。

  • 特に、調整直後の数日は歯が圧迫され痛みやすくなっているため、柔らかい食事を意識し、刺激や痛みを軽減できるよう配慮するとよいでしょう。

9. 歯肉炎・歯周病のリスク

矯正中は口腔清掃が不十分になりがちなため、虫歯だけでなく歯肉炎や歯周病リスクも高まります。歯周組織が炎症を起こすと出血や腫れ、痛みなどの症状が強くなることがあるので、なるべく早期にケアを行う必要があります。

  • 特に歯肉炎や歯周病の既往歴がある方は、矯正前の段階で歯周組織を健康にしておくことが推奨されます。歯石除去やクリーニング、適切なブラッシング指導などを行い、口腔内を安定させてから矯正に臨むことで、リスクを大幅に抑えられます。

10. 矯正による顎関節への影響

まれに矯正治療後、顎関節症状(開口障害、顎関節の痛みや異音など)が出現するケースがあります。もともと顎関節に問題を抱えている場合や、咬合(かみ合わせ)が複雑な不正咬合の場合、治療の進め方次第で顎関節に過度のストレスがかかる可能性があります。実際、強度の不正咬合や顎関節症のリスクが高い患者に対しては、慎重な治療計画や専門医との連携が必須とされています。

  • こうしたリスクを最小限に抑えるためには、矯正専門医だけでなく、顎関節を専門とする歯科医師や口腔外科との協力体制が重要になるケースもあります。

よくある質問への回答:矯正は危険なのか?

「矯正は危険ではないか」という問いに対しては、基本的に“適切な診断・技術・アフターケア”が行われれば安全性は高いといえます。しかし、歯科医院選びを誤ったり、自己ケアを怠ったりすると、以下のような深刻な問題が生じる可能性があります。

  • 歯肉の退縮や骨吸収
  • 歯の寿命低下(歯がぐらつく、抜け落ちやすくなるなど)
  • 噛み合わせがかえって悪化する
  • 虫歯、歯周病、口臭のリスク増大
  • 顎関節症への移行

特に矯正前に抜歯が必要とされるケースでは、「抜歯で歯並びが悪影響を受けないか」「顔の輪郭に変化が生じないか」などの不安がよく挙げられます。矯正計画で抜歯が必要かどうかは個人差が大きいため、担当歯科医からじっくり説明を受け、メリット・デメリットを明確にしてから最終決定するとよいでしょう。

また、日本の食文化では比較的柔らかい食材も多い一方で、噛み応えのある食材やお菓子などを日常的に食べる場合もあり、矯正治療中は食習慣の見直しが必要です。さらに近年は、インビザラインなどのマウスピース矯正を選ぶ方も増えていますが、この方法でも同様に自己管理やメンテナンスが疎かになると似たようなリスクが発生します。

矯正中に起こりやすい問題とその対策

不快症状の対策

  • 痛みや違和感は、鎮痛薬やオーラルケア製品で対処できます。もし強い痛みが続くようなら、装置の調整が強すぎる可能性があるため、すぐ担当医に相談を。
  • ワイヤー先端が粘膜に当たり、口内炎の原因となる場合は、歯科用ワックスを利用すると摩擦を軽減できます。

虫歯・歯周病対策

  • 矯正治療専門の歯科医院やクリニックでは、定期的なクリーニングやブラッシング指導が提供されていることが多いです。これを活用して、こまめにチェックを受けましょう。
  • フッ素入りの洗口液や歯磨き粉は、脱灰を予防し歯の再石灰化を促す効果が期待できます。

食生活の見直し

  • 矯正装置に負担のかかる固い食品や粘着性のある食べ物は、できるだけ避けるか、小さく切って食べるなど工夫を。
  • 糖質が多い食品を頻繁に摂取すると、虫歯リスクがさらに高まります。間食の回数を減らし、水やお茶などで口をすすぐ習慣を身につけましょう。

保定装置(リテーナー)の重要性

  • 装置を外した後にリテーナーを適切に使用しないと、後戻り(歯並びが再び乱れる)が起こりやすくなります。とくに初期の数ヶ月は、ほぼ24時間装着を指示されることもあります。
  • リテーナーも汚れが付きやすいので、装置専用のブラシや洗浄液を用いて衛生的に保ちましょう。

日本国内の矯正事情と研究

日本では保険適用外の矯正治療が多く、費用や通院回数などのハードルが比較的高いと感じる方も少なくありません。そのため、治療に踏み切る前に入念に情報を集める必要があります。近年の国内研究や国際的な報告を見ると、矯正中の口腔ケア指導を徹底することで、虫歯や歯周病などのリスクを効果的に低減できることが示唆されています。また、歯科矯正専門のクリニックでは矯正認定医や指導医が在籍している場合が多く、より正確な診断・技術を受けられる可能性が高まります。

さらに、2021年以降に国内外で報告されたシステマティックレビューやメタアナリシスでは、「矯正治療中の定期的なプロフェッショナルケアや患者教育の強化」がリスク低減に寄与するとの結果が複数示されています(Song X ら, 2021, BMC Oral Health、Al-Qahtani MH ら, 2022, J Orthod など)。こうした研究の多くは欧米を中心に行われていますが、日本国内でも同様の対策を取ることで十分に応用可能です。

矯正治療における注意点と推奨アクション

矯正治療で理想の歯並びを手に入れるためには、以下のような点を意識し、実践することが大切です。

  • 治療前の口腔状態の確認
    虫歯や歯周病、顎関節症などがある場合、先に適切な治療を行い、口腔環境を整えてから矯正に入ると、トラブル発生リスクが下がります。
  • 歯科医院・担当医の選択
    矯正専門医や、日本矯正歯科学会などの関連学会に所属している歯科医師を選ぶと、研究や学会活動を通じた最新知見のフィードバックが期待できます。カウンセリング時に十分な説明を行ってくれるかどうかも重要な指標です。
  • 定期受診とアフターケア
    矯正中は月1回程度の受診が目安とされますが、個人差があります。痛みや不具合を感じたら早めに受診し、適切な調整を行ってもらいましょう。矯正終了後も、リテーナー装着や定期検診が数年単位で必要になる場合があります。
  • セルフケアの徹底
    食後の歯磨きはもちろん、デンタルフロス・歯間ブラシ・マウスウォッシュなどを使い、装置の隅々まで清掃する習慣をつけましょう。ブラッシングが難しい場合は、歯科衛生士による指導を受けると効果的です。
  • 生活習慣の見直し
    飲食物の内容や食べ方、噛み合わせに影響する姿勢など、普段の生活習慣を意識することで矯正効果を高められます。特に硬い食べ物や粘着性の高い食品は装置トラブルの原因になるため、適切に対処を。

結論と提言

ここまで述べてきたように、矯正治療は歯並びや咬合を長期的に改善し、健康的で美しい口元を得るための有効な手段です。その一方で、虫歯や歯周病リスクの上昇、歯根吸収、装置による不快感など、知っておかないと後悔しかねないリスクも存在します。大切なのは事前に正しい情報を得て、信頼できる歯科医とともに慎重に計画を立てることです。また、治療途中のケアや保定装置の使用状況によっては、せっかく整えた歯並びが後戻りしてしまう恐れもあります。

矯正中・矯正後のトラブルを最小限にするには、以下の4点をとくに意識しましょう。

  1. 治療計画を担当医と綿密に相談し、事前準備を徹底する
  2. 矯正期間中の口腔ケアを強化し、定期検診を怠らない
  3. 装置の破損や不具合があれば、すぐに歯科医師へ連絡し対処してもらう
  4. 矯正後の保定装置を決められたとおりに使用し、後戻りを予防する

矯正によるリスクは確かに存在しますが、正しい理解と適切な対策によって、その大部分は軽減することができます。治療計画とセルフケアをきちんと行うことで、より健康的で美しい歯列を実現する可能性が高まるでしょう。

重要: 本記事で紹介した情報はあくまで一般的な事例や研究成果をまとめたものであり、すべての個人に当てはまるわけではありません。実際の治療を受ける際は、必ず歯科医師などの専門家に相談してください。

参考文献

免責事項・医療上の注意

本記事の内容は、医療従事者による専門的な診断や治療の代替を目的としたものではありません。文中で紹介した情報・研究結果は参考資料としてご利用いただき、実際の治療やケアを行う際は必ず歯科医師や医療専門家にご相談ください。また、個々の健康状態・既往症・ライフスタイルなどによって最適な治療法は異なります。自己判断で無理な対応を行うことは避け、疑問点は遠慮なく専門家にお問い合わせください。

(本記事は情報提供のみを目的としており、歯科医師など医療資格を有する筆者による執筆ではございません。本記事で言及したBác sĩ Lâm Trần Thảo Vyは参考情報に基づき掲載されているものであり、個別の治療内容については必ず現地の医療機関・歯科医にご相談ください。)

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