簡単にできる!効果的な手根管症候群のエクササイズ4選
筋骨格系疾患

簡単にできる!効果的な手根管症候群のエクササイズ4選

はじめに

手や手首に痛みやしびれなどの違和感が生じる「手根管症候群(いわゆる“ハンドトンネル症候群”とも呼ばれることがあります)」は、日常生活や仕事で手をよく使う方に比較的多くみられます。特に40~65歳前後の女性に多いとされ、パソコンでのタイピングや家事、筆記作業など、手首を酷使する動作を長時間続けることで症状が進行するケースがあります。自宅や職場でできる簡単なエクササイズとして「手根管症候群のリハビリ体操」を取り入れることで、症状の悪化を防ぎやすくなると考えられています。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

ただし、これらの体操はすべての方に当てはまるわけではなく、誤った方法で無理に行うと、神経への刺激をかえって強めてしまい、痛みやしびれが増す恐れがあります。そのため、医師や作業療法士、理学療法士などの専門家に相談したうえで、適切な運動量や動作を確認してから実践することが重要です。本記事では、手根管症候群に関連する基本情報から、運動療法として推奨される代表的なエクササイズまでを詳しく解説します。

専門家への相談

本記事では、整形外科やリハビリの専門家が一般的に推奨している運動方法を紹介しています。また、本記事内で示されているリハビリ体操は、参考として紹介されている複数の医療機関・海外の公的機関の資料(後述の「参考文献」参照)から得られた情報です。さらに、内科全般や総合内科など幅広い分野を担当されるBác sĩ Nguyễn Thường Hanh(Bệnh Viện Đa Khoa Tỉnh Bắc Ninh)によるアドバイスも踏まえ、運動時の留意点をできるだけわかりやすくまとめました。実際に体操を行う際は、必ず担当の医師や理学療法士などから直接指導を受け、自身の症状や進行度合いに応じた調整を行ってください。

手根管症候群とは何か

手根管症候群は、手首にある「手根管」と呼ばれるトンネル状の部分で正中神経が圧迫されることで起こります。正中神経は、手のひら側の指や手首の感覚、および一部の筋肉の動きに関与する重要な神経です。この神経が圧迫されると、手首や手のひら、指先に痛みやしびれ、感覚異常が起こりやすくなります。特に夜間から朝方にかけて症状が強くなりやすいとされ、仕事中や家事の最中などにも手先がジンジンしびれる、力が入りにくいといった悩みを抱える方が少なくありません。

一般的なリスク要因としては、ホルモンバランスの変化(更年期や妊娠期など)、手首を反らす動作の繰り返し(パソコンでのタイピング、長時間の筆記作業など)、リウマチなどの基礎疾患、糖尿病などの代謝異常などが指摘されています。日本国内でもデスクワークやスマートフォンの使用時間増加に伴い、手根管症候群と診断される方が増える傾向があると報告されています。

手根管症候群の主な症状と日常への影響

  • 痛みやしびれ
    手首から手のひら側にかけての痛みやしびれ、違和感などが代表的です。初期には軽いジンジンした感覚が中心ですが、進行すると強い痛みを伴うこともあります。
  • 夜間や早朝の症状悪化
    夜になると手を無意識に曲げたまま寝てしまう場合があり、その姿勢が神経圧迫を助長して夜間・早朝に症状が強く出るといわれています。
  • 握力の低下や物を落としやすくなる
    正中神経の障害が進むと、つかむ力が弱まったり、細かい動作がしづらくなったりします。ドアノブを回す、ペンを握る、茶わんを持つなどの日常動作で支障を感じる方もいます。
  • 親指付け根の筋萎縮
    長期間放置した場合、親指のつけ根(母指球)付近の筋肉が萎縮する可能性があり、手の形状や機能に大きな影響を及ぼすことがあります。

いずれの症状も、放置して悪化させると生活の質が大幅に低下するおそれがあります。早期に対応して悪化を防ぐことが重要です。

手根管症候群の治療や対処法

  • 生活習慣・動作の見直し
    パソコン作業の場合はキーボードやマウスの位置を調整し、手首を反らさない角度で操作できる環境を整えるとよいでしょう。家事で重い荷物を持つ機会が多い方は、手首を休ませる時間を意識的につくることも大切です。
  • 装具(テーピング・サポーター・ナイトスプリント)の使用
    夜間に手首を固定する装具やサポーターをつけると、睡眠中の手首の過度な屈曲を防ぎ、神経圧迫をやわらげやすいとされています。
  • 薬物療法
    炎症や痛みが強い場合は、消炎鎮痛薬やステロイド注射などが行われることがあります。ただし、一時的に症状を緩和する目的であり、原因自体を取り除くわけではありません。
  • 手術療法
    重症の場合は、手根管を切開して神経への圧迫を取り除く「手根管開放術」が検討されることがあります。手術の侵襲度は比較的低いといわれていますが、術後の回復にはリハビリが必要です。

これらの対処法と並行して、以下で詳しく紹介するリハビリ体操(エクササイズ)を実践することで、痛みやしびれを軽減したり、回復を早めたりする効果が期待できます。ただし、運動がかえって症状を悪化させる可能性があるため、医師や専門家の指導のもとで無理のない範囲で行うことが大前提です。

リハビリ体操の重要性と注意点

手根管症候群の原因の一つは、手首や指の使い過ぎや、不適切な角度での動作による正中神経の持続的な圧迫です。痛みやしびれがあると、手首を安静にしすぎてしまう方もいますが、まったく動かさない状態が長引くと関節周囲の組織が硬くなる恐れがあります。医師の許可を得たうえで適度にリハビリ体操を取り入れることで、

  • 血流促進
  • 関節可動域の改善
  • 神経が通るスペースの確保
  • ほかの治療法との相乗効果

などが期待できます。実際、夜間のしびれの頻度が軽減したり、軽度~中程度の症状であればステロイド注射の使用量が抑えられたという報告もあります。

ただし、正中神経の癒着や腱の滑走不良が強い場合、強引なストレッチはかえって神経を伸ばしすぎてしまい、痛みを増幅させます。無理な動きで悪化させないように、以下の点に注意してください。

  • 短時間・少回数から徐々に増やす
  • 痛みが強くなったら一旦中止し、医師に相談する
  • 一日の中で、手首を酷使する前にウォームアップとして行う

手根管症候群におすすめのエクササイズ

ここからは、手根管症候群の症状緩和に役立つとされる代表的なリハビリ体操を詳しく紹介します。いずれも、整形外科の専門家が推奨するプログラムに基づいており、海外の医療機関のガイドラインでも取り上げられている内容です。各エクササイズには「推奨回数」や「実施のコツ」を記載していますが、あくまで一般的な目安にすぎません。ご自身の症状や体力に合わせて調整し、主治医や専門家と相談しながら進めてください。

1. 手首を伸ばすストレッチ

手順

  1. 右腕を前に伸ばし、手のひらを上向きにして手首をそらすように指先を上へ向ける(“ストップ”の合図のような形)。
  2. 左手のひらを右手の手のひらに当て、やさしく手前に引き寄せる。このとき、前腕の下側(手のひら側)に心地よい張り感があればOK。
  3. 15秒ほどキープし、ゆっくり戻す。
  4. これを5回くり返し、反対側の手も同様に行う。

回数と頻度の目安

  • 1回につき5回、1日に4セット程度
  • 週5~7日ほど継続する

2. 手首を曲げるストレッチ

手順

  1. 右腕を前に伸ばし、手の甲が上を向くようにして手首を曲げ、指先を床方向に向ける。
  2. 左手で右手の甲を軽く押さえ、前腕の上側に張りを感じる程度に引き寄せる。
  3. 15秒ほどキープし、ゆっくり戻す。
  4. これを5回くり返し、反対側の手も同様に行う。

回数と頻度の目安

  • 1回につき5回、1日に4セット程度
  • 週5~7日ほど継続する

これら2種類のストレッチは、パソコン作業などで手首を酷使する前のウォームアップとして特に有効とされています。実際、イギリスの理学療法士協会のガイドラインでも、長時間の作業前に手首のストレッチを習慣化することが推奨されています。

3. 正中神経の「スライド運動」

手順

  1. まず手のひらを正面に向けて握り込み、親指をほかの指の外側に置く。
  2. 指をひらき、親指は手のひら側へ寄せる。
  3. 指をまっすぐ伸ばしたまま手首を反らすようにし、次に親指を外側へ開く。
  4. 手のひらをゆっくりと上向きに回す。
  5. その状態から、もう一方の手で親指をやさしく外方向へ引っ張る。

ポイントは各段階で数秒キープしながら、痛みが出ない程度にじわじわと伸ばすこと。1セットあたり10~15回、1日1セット以上継続し、慣れてきたら1日のうちに2~3セットほど行っても構いません。特に朝起きた直後など、指がこわばりやすい時間帯に行うと血流が改善しやすく、日中の作業が楽になるという声もあります。

ただし、無理に指や手首を反らしすぎると、神経を痛める場合があるため注意してください。事前に手首を温める(約15分程度)と筋肉や腱が柔らかくなり、効果が高まりやすいとも報告されています。

4. 腱の「グライド運動」

「グライド運動」とは、腱がスムーズに動くように導くための体操です。手根管の内部には複数の腱が通っているため、それらを柔軟に動かすことは手根管症候群の症状緩和に役立つと考えられています。AパターンとBパターンがあり、手順は以下の通りです。

Aパターン

  1. 手のひらを正面に向けて、手首はまっすぐ伸ばす。指先を天井に向けた状態にする。
  2. 指を第一関節から曲げ、かぎ爪のような形にする(“フック”のイメージ)。
  3. 指全体を握り込み、親指は外側に添えるようにする。

Bパターン

  1. 手のひらを正面に向けて、手首はまっすぐ伸ばす。指先を天井に向けた状態にする。
  2. 指をまっすぐ揃えたまま、関節だけを曲げて平らな“板”のような形を作る(指先全体を横に倒す感じ)。
  3. さらに指を曲げ、指先が手のひらに触れるように握り込む。

各ポジションごとに3秒ほどキープし、痛みがない範囲で5~10回行うのが目安です。慣れてきたら1日2~3回、週6~7日実施してもかまいません。こちらも事前に手首や手のひらを温めると効果が高く、終了後は痛みや炎症を防ぐために20分程度アイシング(冷やす)を行うのがおすすめです。

リハビリ体操の継続と効果

前述の運動は、一般的に3~4週間は継続することが望ましいとされています。症状が軽い場合は数日~1週間ほどで「少しラクになった」と感じられる人もいますが、神経の炎症が強かったり長期間患っているケースでは数カ月以上の地道なリハビリが必要になることもあります。

また、体操を継続していても痛みがまったく軽減しない、あるいは症状がむしろ悪化している場合は、運動方法が誤っているか、炎症が進行している可能性があります。医師や理学療法士と相談し、リハビリ内容を見直してもらうことが大切です。

新しい研究やエビデンスの紹介

近年(過去4年以内)では、手根管症候群の非外科的治療に関して、複数の研究報告がなされています。たとえば、2023年にBMJ(英国医師会雑誌)に掲載された研究報告によると、軽度~中等度の手根管症候群患者に対して、サポーターなどの装具とリハビリ体操を並行して行うことで、夜間の症状緩和や睡眠の質向上に有意な効果が認められたとされています。
(Ashworth NL, Bland JD. “Carpal tunnel syndrome.” BMJ. 2023 Apr 10;380:e072114. doi: 10.1136/bmj-2022-072114)

さらに、2020年にアジア太平洋手外科学会誌に掲載された報告では、軽度から中等度の段階であれば、早期の手術よりも保存療法(リハビリや装具による固定)の効果を評価する重要性を指摘しています。症状が進行する前に適切なリハビリを実施し、腱や神経が癒着しないようにケアすることで、手術を回避できる可能性があるとの見解が示されています。
(Okutsu I. “Endoscopic management for carpal tunnel syndrome.” J Hand Surg Asian Pac Vol. 2020 Dec;25(4):531-538. doi: 10.1142/S2424835520500551)

これらの研究からは、早期の保存療法適切なエクササイズが手根管症候群の患者にとって効果的である可能性が示唆されています。一方で、重症化してからでは運動や装具だけでは十分な効果を得られず、手術が必要になる場合もあるため、早期発見と早期対処が何より重要といえます。

おすすめのセルフケアと予防

日常生活の中で以下のようなセルフケアを取り入れると、手根管症候群の進行を抑えたり再発を予防したりする一助となるかもしれません。

  • 作業環境の整備
    パソコンのキーボードやマウスの高さや角度を調整し、手首に負担がかからないようにする。クッション性のあるリストレストを使用するのも有効です。
  • 定期的な休憩とストレッチ
    30分~1時間作業したら、2~3分程度でもいいので手首や指を軽く回したり伸ばしたりして休ませる。小まめに手を温めて血行を良くすることもおすすめです。
  • 冷えや乾燥を防ぐ
    手首周辺が冷えると筋肉や腱の動きが悪くなりがちです。冬場や冷房の効いた室内では、手首を覆うリストウォーマーを使うなどして冷えを予防しましょう。
  • 適度な運動習慣
    全身の血流を高めるウォーキングや軽い筋トレは、末梢の循環を改善するとともに代謝を向上させます。過度な負荷をかけず、継続しやすい運動を選びましょう。

医師への相談と治療の目安

セルフケアやリハビリ運動で改善しない場合や、手の動かしにくさが日常生活に大きな支障をきたすほど悪化している場合には、早めに整形外科などを受診してください。具体的には、

  • 夜間の強いしびれや痛みが何週間も続いている
  • ペンや茶わんなど軽い物でも落としてしまうことが増えた
  • 親指の付け根がやせてきて見た目の変化がある

これらの状況では、神経の圧迫が進み、回復に時間がかかる可能性があります。また、神経伝導速度検査や超音波検査などによって、実際に神経がどの程度圧迫されているかを調べることも大切です。

おすすめのリハビリ継続方法

  • 専門家による定期的なフォローアップ
    運動のやり方を間違えていると、知らず知らずのうちに症状を悪化させる恐れがあります。少なくとも1~2週間に一度は理学療法士や作業療法士に動きをチェックしてもらいましょう。
  • 痛み日誌やチェックシートの活用
    毎日の痛みレベル(0~10段階など)やしびれの頻度を記録し、自分の体操実施状況や作業環境の変化との関連を把握すると、改善傾向や悪化のサインを早期に捉えられます。
  • 少しでも痛みが引いてきたら成功体験として重ねる
    痛みが軽減した、物を持ちやすくなった、夜間のしびれで起きる回数が減ったなど、小さな変化を感じ取ったら、それを励みに継続しましょう。

結論と提言

手根管症候群は、軽度のうちに発見し適切に対処すれば、保存療法(装具の使用、適度なリハビリ体操、生活習慣の改善など)で症状が緩和しやすい疾患です。一方、悪化して重度になると手術を考慮せざるを得ない場合があります。そのため、日常生活での動作や痛みのサインを早めに察知し、医師や専門家に相談しつつ適切なケアを行うことがとても大切です。

本記事で紹介したストレッチやエクササイズは、あくまで一般的なガイドラインに基づいたリハビリ方法です。実際には、一人ひとりの症状、身体の状態、生活習慣によって最適な運動量や方法は異なります。症状が強い方や基礎疾患をお持ちの方は特に、自己判断だけで長期間無理をすることは避け、必ず専門家による指導を仰いでください。

また、定期的な休憩や作業環境の見直しを行い、手首に無理な負荷がかからないように工夫することが、予防と再発防止において重要です。手根管症候群の症状が出たら「そのうち治るだろう」と放置せず、早期発見・早期対処の姿勢で臨みましょう。

重要な注意
本記事で紹介した情報は健康に関する一般的な参考資料であり、医学的な助言・診断・治療の代替とはなりません。症状や治療法についての最終的な判断は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。

参考文献


免責事項
本記事の内容はあくまで一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の治療法や診断方法を推奨するものではありません。症状の有無や個人の体調、疾患の程度に応じた適切な対応は、それぞれの専門家(医師、理学療法士、作業療法士など)の指導に従ってください。自己判断で対処が難しい場合や疑問がある場合は、必ず医療機関に相談しましょう。

この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ