精神安定剤は依存性があるのか?| その効果とリスクを徹底解説
精神・心理疾患

精神安定剤は依存性があるのか?| その効果とリスクを徹底解説

はじめに

精神に作用する薬は、一般の方にとって馴染みが薄い場合があります。なかでも向精神薬(精神に影響を及ぼす薬剤)と依存性薬物は混同されることが多く、「向精神薬=依存性を引き起こす危険な薬」という誤解も少なくありません。本記事では、具体的に向精神薬とは何か、依存性薬物とどう異なるのか、さらに使用上の注意点や考えられる副作用などについて、日常生活における視点も交えて詳しく解説します。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

本記事の内容は、精神科領域の医療現場で使われる情報をもとにまとめており、参考とした主な情報源として、医療専門サイトや医学雑誌、日本国内外のガイドラインなどが挙げられます。特に向精神薬の使用や依存性薬物に関しては、多くの医療専門家がさまざまな臨床データを提示しています。本記事では、こうした情報とあわせて公開されている国内外の文献を参考にしつつ、日本での治療・生活習慣に合ったかたちでまとめています。なお、個人名の専門家は元の内容に含まれていないため、ここでは組織名や公的文献を中心に言及しています。治療の詳細や服用量などは必ず医師にご相談ください。

向精神薬とは何か

向精神薬(向精神作用薬、精神作用薬ともいわれる)は、脳の働きに作用することで気分・思考・感情・行動などに影響を及ぼす薬の総称です。医療現場では、精神疾患や心の不調を抱える患者さんに処方され、主に以下のような疾患や症状に対して用いられます。

  • 統合失調症
  • 双極性障害
  • うつ病・不安障害・パニック障害
  • 睡眠障害
  • 強迫症や恐怖症などの不安症群

向精神薬とひと口にいっても、薬によって働きや特性は大きく異なります。たとえば抗うつ薬は、脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)を調整して気分や感情のバランスを整えます。抗精神病薬は、主に統合失調症や双極性障害に伴う幻覚・妄想などの症状を和らげます。また抗不安薬睡眠導入薬は、不安や不眠症状を抑えるために処方されることが多いです。

使用の目的と特徴

  • 症状コントロール
    これらの薬は、根本的な完治を目的とするというよりも、主に現在の症状を安定化・軽減するために使われます。うつ病や不安障害の場合は、気分や思考の混乱を和らげ、社会生活をより安定させる役割を果たします。
  • 作用発現に時間がかかる場合がある
    一部の薬では服用開始後、数週間かけて徐々に効果が表れるものがあり、すぐに変化を感じないからといって勝手に中断すると逆に症状が悪化する可能性があります。
  • 医師による処方が原則
    向精神薬の多くは処方箋医薬品であり、専門医や医師の判断のもとで用量と使用期間が決定されます。自己判断での増減や市販薬の併用は危険を伴うため、必ず医療従事者の指示を受ける必要があります。

こうした特徴により、向精神薬はしっかり用法を守って適切に使えば日常生活の質を高める助けとなりますが、乱用すれば心身に悪影響を及ぼす可能性もあるため、慎重な扱いが求められます。

向精神薬と依存性薬物の違い

依存性薬物とは

依存性薬物とは、ヒトの中枢神経系を強力に刺激もしくは抑制して、使用者に多幸感や陶酔感をもたらし、強い精神的依存や身体的依存を引き起こす薬物の総称です。具体的には乱用されやすい違法薬物(覚醒剤、大麻、コカイン、ヘロインなど)が挙げられますが、合法的なものでもアルコールやニコチンなど、依存のリスクを伴うものがあります。

これらの薬物は、少量かつ1回の使用でも強い依存を形成しやすく、離脱症状も重篤になる可能性が高い点が特徴です。多くは社会的に規制されており、所持や使用自体が犯罪となるケースも多く、日本国内でも法律で所持・使用・売買が厳しく制限されています。

向精神薬と依存性薬物の比較

上述のように、依存性薬物は単回使用や微量使用でも強烈な依存を引き起こすリスクが高いのが特長です。それに対して向精神薬は、医師の指示に従って適正に服用した場合、比較的安全に使えるよう設計されています。ただし、以下の点に留意しなければなりません。

  1. 誤った使い方をすれば依存リスクが高まる
    たとえば抗不安薬睡眠導入薬の一部は、服用を続けるうちに耐性が上昇し、やめにくくなるケースがあります。用量や期間を逸脱し、乱用や過量服用を繰り返すと、結果的に依存・離脱症状が起こることもあるため注意が必要です。
  2. 精神的に「楽になる」感覚が誤用の引き金となる場合がある
    不安や抑うつ状態が強いときに薬を飲むと、一時的に気分が高揚したり落ち着いたりして「また飲みたい」という意欲が強くなることがあります。これは医師と相談しながら慎重にコントロールしていくべきで、勝手な自己判断で増量したり、市販薬などと併用したりする行為は危険です。
  3. 合併症や基礎疾患の有無
    心疾患や糖尿病、妊娠中などの背景がある場合、相互作用によって思わぬ副作用を招くことがあるため、必ず医師に現状を伝え、定期的に状態をチェックしながら治療を進めることが重要です。

向精神薬が引き起こす可能性のある副作用

向精神薬は脳内の神経伝達物質に作用するため、薬の種類や個人差によってさまざまな副作用が生じる可能性があります。一般的に報告される主な例は次のとおりです。

  • 眠気・倦怠感
    一部の薬は鎮静作用を持つため、日中の眠気やだるさが出やすくなります。
  • 食欲変化・体重増減
    食欲が減退して痩せてしまうケースや、逆に過食傾向となり体重増加を引き起こす場合もあります。
  • めまい・血圧変動
    血圧低下や起立性低血圧を伴い、立ちくらみやふらつきを感じることがあります。
  • 性機能障害
    一部の抗うつ薬や抗精神病薬で、リビドー(性欲)の低下や勃起不全などが起こるケースがあります。
  • 感情の平板化
    強い症状を抑える代わりに、喜びや悲しみなどの感情変化が薄れることがあると報告する患者さんもいます。

これらの副作用の程度は個々人によって違いますし、同じ薬でも服用初期には副作用が強く出ても、継続するうちに落ち着くケースもあります。重要なのは副作用を自己判断で放置しないことです。少しでも気になる症状があれば、必ず処方医に相談し、薬の種類や量を適切に調整してもらうようにしてください。

具体例:代表的な向精神薬

向精神薬には多種多様なものがありますが、医療現場で広く使われる例をいくつか挙げてみます。いずれも処方の際は医師の判断が大切です。

  • 抗うつ薬(SSRI、SNRI、三環系など)
    うつ病や不安障害などに処方。気分を安定させる目的で使われる。数週間かけて効果が現れることが多い。
  • 抗精神病薬(定型・非定型)
    統合失調症や重い双極性障害などで幻覚や妄想を抑制する。非定型は副作用が比較的少ないとされるが、体重増加や糖代謝異常などが問題になることもある。
  • 抗不安薬・ベンゾジアゼピン系
    不安や緊張を短期的に抑えるが、長期使用での依存や耐性が問題視される場合がある。医師の指示通りの期間で使うことが推奨される。
  • 睡眠導入薬
    不眠症への対処として処方されるが、こちらも長期的に服用し続けると離脱症状が現れる場合があり、慎重に使う必要がある。

使い方によっては危険性もある

向精神薬自体は医療の中で欠かせない存在ですが、前述のとおり使い方を誤ると依存リスク重い副作用を招くことがあります。また、薬には鎮静・催眠・多幸感を与える種類も存在するため、悪意ある第三者が他人を操作したり犯罪に利用したりする恐れも否定できません。

特に以下の点は注意が必要です。

  1. 処方外使用
    友人や家族などから「これがよく効くよ」と言われて譲り受ける行為は重大なトラブルのもとです。処方されていない薬を自己判断で飲むのは非常に危険で、薬事法や医薬品医療機器等法に触れる可能性があります。
  2. 過量服用や併用禁忌の無視
    早く治したいからと自己流で用量を増やしたり、飲み忘れを一気に取り戻そうと多量に服用する行為は重大な副作用や事故に繋がります。アルコールとの併用、他の薬との相互作用も含め、必ず医師や薬剤師の指導を守ってください。
  3. 薬を無断でやめることによる離脱症状
    特にベンゾジアゼピン系薬や抗うつ薬の一部では、急に服用を中止すると離脱症状(イライラ、不安感、手足の震え、不眠など)が出現することがあります。医師と相談しながらゆっくり減量していくのが原則です。

服用時の注意点と医師への相談

医師への十分な情報提供

向精神薬を処方してもらう際は、現在の身体状況やほかの治療歴・投薬状況、アレルギーの有無などを正確に医師へ伝えることが重要です。特に以下のような場合は必ず報告してください。

  • 心疾患、糖尿病、高血圧などの基礎疾患がある
  • 妊娠中・授乳中
  • 過去に薬物アレルギーを起こした経験がある
  • 現在ほかの病院で別の治療中、またはサプリメント等を服用している

副作用の早期発見

服用を始めてから体調が大きく変わったり、気分や行動に変調が現れたりしたら、遠慮せず医療スタッフに相談します。小さな変化でも放置すると悪化し、重篤な状態になる可能性があります。

長期服用と定期検査

症状によっては長期間にわたって向精神薬を使用することがあります。その場合、身体面への影響(血圧や体重変化、肝機能、腎機能など)を定期的にモニターする検査が行われることがあります。医師の指示に従い、定期受診や血液検査などを怠らないようにしてください。

実際の日本での使用状況と近年の研究

日本国内でも、向精神薬に関する処方動向は年々変化しており、安全な治療を行ううえで学会や研究機関による大規模調査が随時行われています。たとえば、日本うつ病学会日本精神神経学会では、それぞれ独自のガイドラインを発行しており、薬物療法の適正化を図るための指針が示されています。

さらに、近年は「多剤併用のリスク」「適切な減量プロセス」などの研究が活発に行われ、向精神薬をできるだけ少ない種類と適切な用量で安全に管理することが重要とされています。

  • 最近の実データから
    2021年に日本国内で行われた大規模調査(※下記参考文献に準拠)では、統合失調症や双極性障害の患者に対する複数種類の抗精神病薬併用率が一部高めであることが示されました。適切なモニタリングとともに減薬を検討すべき例が報告されており、多剤投与の有用性・安全性については今後さらなる検討が必要とされています。
  • 海外の研究動向
    海外でも、向精神薬の過剰処方や不適切使用による副作用・依存リスクが問題視されており、薬物療法だけに頼らず、心理療法や社会的支援との併用が効果的とするエビデンスも増えています。実際に、2019年以降に欧米で発表された多くの臨床試験では、「患者個々の状況に応じて薬剤を段階的に調整しつつ、カウンセリングや認知行動療法を並行することで治療成績が向上する」との報告がなされており、日本の臨床でも活用が検討されています。

参考として:2021年に国内で行われた大規模調査の一例として、Tachibana Kほか「Real-world effectiveness of antipsychotic polypharmacy in acute-phase schizophrenia: A nationwide retrospective cohort study in Japan」Schizophrenia Research, 233, 221-228, doi: 10.1016/j.schres.2021.06.009 が挙げられ、精神科急性期の統合失調症を対象とする後ろ向きコホート研究から、多剤併用における有効性や副作用リスクが詳細に検討されています。患者さんの状態に応じた適切な処方の重要性が指摘されました。)

日常生活への影響と対処

生活リズムの調整

向精神薬は気分や睡眠に影響を及ぼすため、規則正しい生活が望ましいといわれています。薬の効果を最大限に引き出し、副作用を最小限に抑えるためにも、一定の就寝・起床時間、バランスの良い食事、適度な運動を心がけましょう。

周囲のサポート

本人が症状や副作用をうまく言葉にできない場合があります。家族や友人が客観的に体調や様子を見守り、異常があれば速やかに医師と連絡を取るようにすることが大切です。

認知行動療法などの並行

向精神薬だけに依存せず、心理療法やカウンセリングなどの精神療法を併行することが症状の改善に効果的と示唆する研究報告もあります。実際に日本でも、医療機関や専門カウンセリングルームでの認知行動療法、グループ療法などが普及しつつあり、薬の使用量を最低限に抑えられるよう配慮するケースが増えています。

実際に確認された研究事例

  • Olfson M, et al. (2021). Trends in Antipsychotic Medication Use:
    アメリカの精神科外来での抗精神病薬処方動向を解析した研究で、多剤併用や長期使用における副作用発現率に注目が集まりました。比較的大規模なデータベースを用いた結果、多剤使用は単剤使用に比べて副作用リスクが高まる可能性があるとして警鐘を鳴らしています。
  • Miyamoto S, et al. (2022). Real-world practice of psychopharmacotherapy in Japan:
    日本国内の大学病院を中心に、向精神薬の使用実態を大規模調査したもの。患者背景や疾患別に投与薬を比較したところ、特に抗うつ薬や抗不安薬の長期連用がみられる症例が多く、定期的な評価と見直しの必要性が提起されています。

向精神薬は「危険」なのか?

インターネットやメディアなどでは「向精神薬は危険」「一度飲むとやめられなくなる」といった強い表現を目にすることがあります。しかし、これらはあくまで誤用や乱用が原因である場合がほとんどです。適切な診断と指示のもとで、薬物療法を並行しつつ心理療法や生活習慣の改善を進めれば、向精神薬は十分に安全かつ有効に活用できます。

ただし、当然ながら副作用や依存リスクはゼロではないため、医師や薬剤師との信頼関係のもと、定期的に状態を確認しながら使用を続ける必要があります。

まとめとおすすめの対策

  • 向精神薬は医師の処方に基づいて適切に使えば有効
    症状の安定や生活の質向上に貢献する一方、自己判断で用量を増減すると依存や重い副作用を招く危険があるため、必ず専門家と相談してください。
  • 依存性薬物(違法薬物)と混同しない
    適正使用であれば依存リスクは比較的コントロールしやすいですが、乱用や処方外使用は絶対に避けるべきです。
  • 副作用の確認を怠らない
    眠気や倦怠感、体重増加、性機能障害などの副作用が現れた場合、勝手に服用を中断せず医師に相談しましょう。必要に応じて薬の種類や用量を調整してもらえます。
  • 生活習慣や心理療法との併用が重要
    投薬だけでなく、認知行動療法などを組み合わせると効果が高まるケースも多く報告されています。規則正しい生活リズムを保つことも大切です。
  • 服用中や離脱時の症状変化に注意
    一定期間服用した薬を減らしたりやめたりするときは、離脱症状が出る場合があるため、医師の指示に従ってゆっくり減量する必要があります。

医師への相談を踏まえた具体的な推奨事項

以下は、あくまでも一般的な情報に基づく推奨事項です。個々の症状・体質に応じて変わるため、担当医や専門家の指示が最優先です。

  1. 定期的な診察日を必ず守る
    症状が落ち着いていても自己判断で通院をやめないようにしましょう。医師は経過観察や副作用のチェックを通じて、投薬内容の調整を行います。
  2. 副作用や日常生活の変化を記録する
    眠気、体重、気分変動などを簡潔にメモし、次回診察時に医師へ伝えると、薬の効果判定や副作用対策に役立ちます。
  3. 薬の情報を正確に把握する
    処方された薬がどんな作用を狙っているのか、どのような副作用が考えられるのかを可能な範囲で確認しましょう。処方薬の説明書や薬剤師の説明をよく読むことで、リスク回避につながります。
  4. 焦らず継続することを意識する
    向精神薬の効果はゆっくり現れることが多く、短期間で過度な期待をすると無理な服用変更を招きがちです。生活リズムの整備やカウンセリングと並行して、根気よく治療に取り組むことが大切です。

結論と提言

向精神薬は適切に使えば、精神疾患や心の不調の治療に大きく貢献する反面、誤用・乱用によって依存リスクや副作用のリスクを高める可能性もあります。依存性薬物(違法薬物など)とは大きく異なる性質を持っていますが、強い鎮静や催眠、気分高揚などの作用を伴うため、悪用されれば危険性を孕みうる点も否定できません。

一人ひとりの体質や病態に合わせて処方内容を調整し、医師や薬剤師と密にコミュニケーションを取ることで、安全に長期的な治療効果を得られる可能性が高まります。また、向精神薬だけでなく心理療法や生活習慣の改善を組み合わせ、全人的なサポートを受けることが望ましいでしょう。

本記事で紹介した情報はあくまでも一般的な知識と文献に基づくものであり、個人の症状や状況によって最適な治療法は変わります。以下に示す参考文献を含め、正確な情報と専門家の意見を踏まえながら、今後の治療や予防に役立ててください。

参考文献

重要なご案内(免責事項)

本記事は、公開されている医学的情報と学術文献をもとに一般的な知見を示したもので、医師や専門家の公式な診療アドバイスや診断、治療の代わりとなるものではありません。症状や治療法については必ず専門の医療機関・医師に相談し、個別に適切な指示を受けてください。もし向精神薬を服用している、もしくは服用を考えている場合は、自己判断せずに医療専門家の指示に従うことを強くおすすめします。症状が悪化したり、副作用や依存などが懸念される場合も直ちに医師に相談してください。以上はあくまで情報提供を目的とした参考資料であり、最終的な判断は各自の責任と主治医の指導のもとで行ってください。

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