糖尿病でも楽しく健康に生きるためのヘルシーダイエットガイド
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糖尿病でも楽しく健康に生きるためのヘルシーダイエットガイド

はじめに

日常生活の中で、血糖値を管理しながら健康的に過ごしていくことは、糖尿病(特に2型糖尿病)と診断された方々にとって非常に大きな課題です。糖尿病になると、身体がインスリン(主に糖質を代謝するホルモン)に適切に反応しにくくなるため、血糖値が上昇しやすい状態になります。そこで、多くの医師や栄養士は、まず食習慣やライフスタイルの見直しを提案します。なかでも「食事内容の管理」や「食事療法」は、糖尿病のコントロールにおける重要な要素として注目されています。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

本記事では、2型糖尿病の方に向けた栄養学的視点からのアドバイスや、実際の食事メニューのポイントを詳しく解説します。さらに、日常生活で役立つ工夫や、買い物・調理方法のヒントなども取り上げます。糖尿病があるからといって、食べる楽しみを完全に失ってしまうわけではありません。栄養バランスや適切な糖質量を理解・実践することで、満足度を保ちつつ健康管理を行う方法を一緒に見ていきましょう。

専門家への相談

本記事の内容は、実際に糖尿病の方々を対象にした食事指導や調査結果をもとに構成しています。なお、本文中では「Ban biên tập Hello Bacsi」などの名称が登場しますが、これは情報を引用した元の編集部名であり、固有名詞のためそのまま表記しています。また、「Bác sĩ Nguyễn Thường Hanh」という医師名も文中に表記されていますが、こちらも元情報に基づくため翻訳せずに表記しています。もし治療方針や食生活改善に関する詳細なアドバイスを個別に受けたい場合は、かならず医師や管理栄養士などの専門家へご相談ください。

なぜ糖質(炭水化物)は2型糖尿病の方にリスクをもたらすのか

2型糖尿病では、体内のインスリンへの感受性が低下したり、インスリン分泌量が不十分になったりすることにより、血液中のブドウ糖(血糖)がうまく細胞に取り込まれにくくなります。糖質(炭水化物)は、主にブドウ糖や果糖などに分解されて血中に吸収されるため、過剰に摂取すると血糖値が急激に上がりやすくなります。

糖質量を計算して摂取量を管理する

糖質量を管理する代表的な方法の一つが、1日の摂取総カロリーに占める糖質の割合を計算することです。たとえば、1日あたり1,500kcalを摂取する場合、糖質からのカロリーはそのうちの約半分、具体的には700~800kcal程度までに抑えるという計画が考えられます。糖質1gあたり4kcalなので、1日に摂取できる糖質は175~200g程度となります。

以下は、朝食例として示した糖質量の計算例です。

  • 全粒粉パン1枚:約12gの糖質
  • ミックスビーンズ大さじ1杯:約8gの糖質
  • オートミール1/2カップ:約27.4gの糖質
  • ギリシャヨーグルト150g+ベリー類1/2カップ:約13.5gの糖質

朝食合計で約60.9gの糖質となります。こうした方法で、各食事における糖質の摂取量を均等に分散させると、血糖値の急上昇を予防しやすくなると考えられています。

食品のグリセミック指数(GI値)を活用する

同じ「糖質」を含む食品でも、血糖値への影響の仕方が異なります。ある食品は血糖をゆるやかに上昇させ、ある食品は急激に上げてしまいます。その指標として知られているのが「グリセミック指数(GI値)」です。GI値が低い食品ほど、血糖値をゆるやかに上昇させる傾向があり、高い食品ほど急激に血糖値を上げるリスクがあります。

低GI食品を積極的に取り入れることで、血糖値コントロールに役立つとされています。食品の糖質量を計算する方法とあわせて、このGI値を意識すると、より血糖値の安定を図りやすくなるでしょう。

実際、2019年に発表された系統的レビューとメタアナリシスでは、低GIの食事療法が糖尿病の血糖管理に効果があると報告されています(Zafarら, 2019, The American Journal of Clinical Nutrition, 110(4), 891-902, DOI:10.334946095…)。日本国内でも近年、低GI食品への関心が高まっていますが、あくまで一要素であるため、糖質全体の質・量のバランスも含めて把握することが肝要です。

食事療法の重要性:なぜ「食事」が鍵になるのか

Hello Health Groupによる東南アジア地域での調査(^)では、多くの2型糖尿病患者が「食事管理」の重要性を自覚している一方で、具体的な食材選びに難しさを感じていると報告されています。日本でも、日常で当たり前に目にする加工食品や外食メニューには糖質が多く含まれていることがあり、血糖値管理の観点から「どれを選べばよいか」迷いがちです。

糖尿病を持つ方は、主治医や管理栄養士の指導下で自分に合った食事療法を続けることで、血糖値や体重の適正なコントロールをサポートできます。もちろん、食事管理だけで病状を完全に改善させるわけではありませんが、薬物療法や運動療法などとあわせて継続すると、合併症のリスクを軽減できる可能性が高まります。日本では、糖尿病患者向けの「フードガイド」や「日本糖尿病学会の食事療法ガイドライン」も存在し、実践しやすい形で紹介されています(Araki Eら, 2022, J Diabetes Investig, 13(11), 1771-1800, doi:10.1111/jdi.13909)。

^この調査はAbbottが委託し、Hello Health Groupが2021年5~7月にベトナム、マレーシア、タイ、フィリピン、インド、台湾で実施したアンケート(参加者771名)によるもの。

糖尿病患者向けの食事:何を食べ、何を控えるべきか

糖質を多く含む加工食品や甘い炭酸飲料、白パン、パスタなどの「精製された炭水化物」を多量に摂取すると血糖が急激に上がりやすいです。そこで、全粒穀物や豆類、野菜などの「未精製または最小限の加工にとどめた炭水化物」に切り替えることが推奨されます。

下記では、糖尿病患者の総合的な健康維持に役立ついくつかの食品グループと、その推奨摂取量の目安を紹介します(American Diabetes Association, 2021, Diabetes Care, 44(Suppl 1), S53-S72, doi:10.2337/dc21-S005)。

1. 果物・野菜

ビタミンやミネラルが豊富な野菜や果物を、1日2~3食分取り入れるのが理想的です。彩り豊かな野菜を生で食べたり、蒸したり、煮たりすることでバリエーションをつけ、飽きずに続けられます。ただし、果物は種類によって糖度が異なるため、摂取量には注意が必要です。

2. タンパク質

肉や魚、卵、大豆製品、ナッツ類など、1日に合計で140~200g程度(例:1食あたり約28g×数回)のタンパク質源を摂取することが推奨されます。特に大豆製品や魚介類は、日本人の食生活でも比較的取り入れやすく、栄養バランスを整えやすい食材といえます。

3. 穀類(主食)

白米や精製小麦粉がメインになりがちな食生活を見直し、可能な範囲で玄米や全粒粉パン、全粒粉パスタなどの「全粒穀物」に切り替えると、食物繊維やミネラルを多く取り入れやすくなります。1日5食分ほどが目安とされますが、これはあくまで一般的な推奨量なので、医師や栄養士の助言を受けながら調整するのが望ましいでしょう。

4. 低脂肪の乳製品

低脂肪ヨーグルトや無脂肪牛乳など、乳製品からもカルシウムやビタミンDを補給できます。1日3食分を目安に、コーヒーや紅茶に入れる、またはヨーグルトをデザート代わりにするなどの工夫を取り入れてみてください。

食材選びのコツ

  • 色とりどりの野菜を意識する
  • タンパク質源として魚や大豆製品を優先
  • 全粒穀物雑穀米で食物繊維を確保
  • 低脂肪乳製品でカルシウムを補給
  • 調理の際は揚げ物よりも焼く・蒸す・煮るなどを選ぶ

適切なポーションコントロールと食材の具体例

糖尿病の方にとって、食材そのものの質だけではなく「食事量(ポーションコントロール)」も極めて重要です。たとえば、炭水化物を多く含む食品の量を無理に極端に減らしすぎると、満足感が得られず、間食の回数が増える可能性があります。一方で、栄養バランスを保ちながらも適度な量にコントロールすれば、血糖の急上昇をある程度抑えられます。

食物繊維を増やす

食後血糖値の急上昇を抑えるには、食物繊維が豊富な食品を増やすことがカギです。オートミールや全粒粉パン、ベリー類、ブロッコリー、豆類などは食物繊維が多く、腸内環境も整えやすいため一石二鳥です。たとえば、おかずに豆を取り入れたり、サラダにカットした野菜をふんだんに加えたりするなど、手軽にできる工夫はたくさんあります。

タンパク質で腹持ちを良くする

タンパク質は、炭水化物や脂質に比べて消化に時間がかかるため、少量でも比較的長く満腹感を得られます。鶏肉や魚、卵、納豆など、日本の食卓でなじみ深い食材を適宜取り入れると良いでしょう。ただし、揚げ物や脂肪分の多い部位ばかりを選ぶとカロリーが高くなりがちなので、調理法は「焼く・蒸す・煮る」を意識するのがおすすめです。

野菜(非でんぷん質)を欠かさない

ほうれん草、キャベツ、もやし、チンゲンサイ、ブロッコリー、きのこ類、海藻類などの非でんぷん質野菜は、糖質量が比較的少なく、ビタミン・ミネラルや食物繊維が豊富です。毎食必ず加えることで、血糖コントロールだけでなく便通の改善にも寄与します。

外出制限下での買い物と食事管理:どう乗り越える?

感染症の流行やその他の理由で外出が制限される状況では、買い物や調理の頻度を減らしつつ栄養バランスを維持する必要があります。日本でもネットスーパーや宅配サービスが以前より普及しており、これらの活用が推奨されています。

1週間分の献立をざっくり立てる

忙しさや外出制限などで買い物の回数を減らしたい場合は、週単位で献立を考えてまとめ買いをするのが効率的です。あらかじめ献立案を作成し、食材を使い回すことを意識しましょう。たとえば、大量に買った鶏むね肉を複数の調理法(蒸す・ソテー・煮物)で使い回したり、豆類やトマト缶を常備しておくことで、手軽に栄養価の高いスープや煮込み料理が作れます。

非常食にも栄養を考慮

レトルト食品や冷凍食品などをストックするときも、糖質や塩分過多に注意しましょう。調理が簡単な分、糖質・脂質・塩分が高めのものも多いので、成分表をしっかりチェックすることが大切です。

デリバリーやテイクアウトの活用

外出制限下でも、やむを得ず外食や宅配を利用する機会はあります。その場合はできるだけ野菜メニューが豊富な店を選んだり、主食を玄米に変更できるサービスを利用したりして、血糖値上昇を抑える工夫をすると良いでしょう。

さらなる理解のための調査・研究:近年の知見

糖尿病の食事療法は、さまざまな研究を経てガイドラインが更新され続けています。ここ数年の主だった傾向としては、極端な糖質制限だけでなく、食物繊維の積極摂取や、中鎖脂肪酸・不飽和脂肪酸など質のよい脂質の選択も注目されています。日本糖尿病学会でも、個々のライフスタイルや嗜好を踏まえた柔軟な食事指導の必要性を訴えています(Araki Eら, 2022, J Diabetes Investig, 13(11), 1771-1800, doi:10.1111/jdi.13909)。

さらに、アメリカ糖尿病学会は毎年、食事療法や薬物療法、運動療法の統合的なガイドラインを出しており、2022年版でも糖質管理の重要性や継続的な血糖モニタリングの必要性が強調されています(Draznin Bら, 2022, Diabetes Care, 45(Suppl 1), S1-S264, doi:10.2337/dc22-SINT)。こうした国際的ガイドラインと、日本の生活・食文化をふまえたガイドラインを照らし合わせながら、自分に合った食事計画を作成することが推奨されます。

結論と提言

糖尿病(特に2型)の管理において、食事は極めて重要な要素です。糖質の質と量をコントロールし、GI値の低い食品をうまく選び、タンパク質や食物繊維を積極的に取り入れることで、血糖値の安定化が期待できます。加えて、適切なカロリー管理やバリエーション豊かな食材選び、週単位の献立作りなどの工夫を行うと、食事の楽しみを失わずに健康管理を続けることができます。

一方で、糖尿病の進行度や合併症の有無は個人差が大きいため、一律に「これが正解」とは言えません。日本では、米を主食とする食文化がありますが、近年は玄米など食物繊維を多く含む選択肢も増えています。味付けはだしを活かすなど、塩分を抑える工夫も重要です。

日常生活が忙しくても、ネットスーパーや食材宅配を活用することで、買い物や調理の負担を減らしながらバランスのよい食事をキープすることは可能です。外出制限がある中でも、1週間程度の献立計画を立ててまとめ買いする、非常食にも気を配るなどして「手軽さと健康」の両立を目指しましょう。糖尿病は一生付き合っていく可能性のある疾患ですが、その管理次第で生活の質は大きく変わります。自分自身の身体の反応を確かめながら、「食事を通じて血糖値を安定させる」という意識を常に持ち続けることが大切です。

参考文献

  • 1. Trumbo P, Schlicker S, Yates AA, Poos M, Food, Nutrition Board of the Institute of Medicine TNA. Dietary reference intakes for energy, carbohydrate, fiber, fat, fatty acids, cholesterol, protein and amino acids. J Am Diet Assoc. 2002;102(11):1621-30. [https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12449285/] (アクセス日:28/09/2021)
  • 2. Zafar MI, Mills KE, Zheng J, Regmi A, Hu SQ, Gou L, Chen LL. Low-glycemic index diets as an intervention for diabetes: a systematic review and meta-analysis. The American journal of clinical nutrition. 2019;110(4):891-902. [研究概要参照:https://www.researchgate.net/publication/334946095] (アクセス日:28/09/2021)
  • 3. American Diabetes Association. Diabetes Care. 2021;44(Suppl 1):S53-S72. doi:10.2337/dc21-S005 [https://care.diabetesjournals.org/content/44/Supplement_1/S53] (アクセス日:28/09/2021)
  • 4. Araki E, Goto A, Kondo T, et al. Japanese Clinical Practice Guideline for Diabetes 2022. J Diabetes Investig. 2022;13(11):1771-1800. doi:10.1111/jdi.13909
  • 5. Draznin B, Aroda VR, Bakris G, et al. The American Diabetes Association’s 2022 Standards of Medical Care in Diabetes. Diabetes Care. 2022;45(Suppl 1):S1-S264. doi:10.2337/dc22-SINT

免責事項:本記事は医学的助言の提供を目的としたものではありません。あくまで参考情報としてご利用いただき、実際の治療方針や詳細な食事計画の立案につきましては、必ず医師や管理栄養士などの専門家にご相談ください。本記事の内容は、執筆時点における文献・研究をもとに作成しており、将来的な研究の進展によって見解が変わる可能性もあります。

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