糖尿病におすすめの穀物とは?| 健康を守る選び方ガイド
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糖尿病におすすめの穀物とは?| 健康を守る選び方ガイド

 

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

はじめに

近年、糖尿病の管理において炭水化物の摂取量を意識的に調整することが重視されるようになっています。とくに「糖質はできるだけ控えたほうがいい」というイメージから、「穀類をすべて抜かなくてはいけないのではないか」と心配する方も少なくありません。しかし、バランスの良い食生活を保つうえで、穀類――とりわけ栄養価の高い全粒穀物(全粒の状態が保たれた穀物)は、上手に取り入れれば大いに役立ちます。
そこで本記事では、糖尿病の方にとって有用とされる穀物の種類、選び方やポイントなどについて詳しく解説し、あわせて最近の研究データを踏まえながら、より納得感のある情報をお伝えします。

専門家への相談

本記事は、日本国内における糖尿病に関するさまざまな情報源や学会の提言、海外の糖尿病専門機関が公開している参考文献をもとにまとめています。さらに栄養学・公衆衛生学領域の信頼性が高い学術誌の研究結果を織り交ぜながら解説しました。ただし、個々の症状や体調は人によって異なりますので、実際の食事制限や治療の方針については、必ず医師や管理栄養士などの専門家にご相談ください。

糖尿病でも穀物は食べられるのか?

糖尿病は、インスリンの不足または作用低下(インスリン抵抗性)によって高血糖状態を引き起こす代謝性疾患です。血糖コントロールを維持するためには、毎日の食事で摂取する炭水化物(糖質)量に気を配ることが重要とされます。
とはいえ、糖質をまったく摂らない食生活は推奨されていません。糖尿病の方でも、適正量の炭水化物は身体のエネルギー源として欠かせない要素です。そこで注目されるのが、GI値(グリセミック・インデックス)が低めの“全粒穀物”です。全粒穀物は精製度の高い穀類と比べて血糖値を急上昇させにくいだけでなく、食物繊維やビタミン、ミネラル、抗酸化物質などを豊富に含んでいます。

全粒穀物が糖尿病によいとされる理由

栄養価と血糖値のコントロール

白米や白い小麦粉など、精製度の高い穀物は主成分がデンプンで、食物繊維やビタミン・ミネラルの多くが取り除かれている状態です。一方、全粒穀物(玄米や全粒小麦、オーツなど)は外皮や胚芽を含むため、以下のような特徴があります。

  • 食物繊維(特に不溶性食物繊維)が豊富
  • ビタミンB群やミネラルが残っている
  • 健康的な脂質や抗酸化物質を含んでいる

特に不溶性食物繊維や一部の水溶性食物繊維は、胃腸内で水分を吸収してかさを増し、消化・吸収をゆるやかにします。そのため、糖尿病の方が炭水化物を摂取した場合でも、血糖値の急上昇をある程度抑えられる可能性があるのです。
さらに、2023年に発表されたメタアナリシス研究では、全粒穀物を継続的に摂取している人は、2型糖尿病の発症リスクや心血管疾患リスクが下がる可能性が示唆されています。たとえば、Nutrients誌(2023年)の報告では、前向きコホート研究を複数統合した結果、全粒穀物を日常的に摂るグループのほうが糖尿病発症率が有意に低いとのデータが得られたとしています(Adamsら, 2023, doi: 10.3390/nu15030667)。こうした知見は、すでに糖尿病を発症している方に対しても、上手に穀類を選ぶヒントとなるでしょう。

満腹感の維持と体重管理

糖尿病管理の一環として、体重コントロールも重要視されます。過度の肥満は、インスリン抵抗性を高めて糖尿病を悪化させるリスク要因となり得るためです。
全粒穀物には食物繊維が多く含まれるため、白米などに比べると腹持ちが良いとされます。実際に、食物繊維の摂取が増えることで食後の過剰な食欲を抑え、1日の総カロリー摂取を無理なく減らせる可能性があります。その結果として、体重コントロールや血糖コントロールに好影響を及ぼすことが期待されます。

生活習慣病予防への幅広いメリット

全粒穀物の摂取は、糖尿病や肥満だけでなく、動脈硬化・心血管疾患など生活習慣病全般のリスク軽減に寄与するという報告もあります。2023年にCritical Reviews in Food Science and Nutritionで公表されたシステマティックレビュー(Zhuら, doi: 10.1080/10408398.2021.1880361)では、十分な量の全粒穀物を継続的に取り入れることで、心血管疾患や一部のがん、総死亡リスクを下げられる可能性があると示唆しています。日本人にも応用できるかたちで類似の研究がなされており、日常食として適度に全粒穀物を取り入れる意義は高いと考えられます。

主な全粒穀物の種類と特徴

ここでは、糖尿病の食事制限や健康管理に役立つとされる代表的な全粒穀物をいくつかご紹介します。

1. オーツ麦(オートミール・オーツ)

「穀物の女王」とも呼ばれるオーツ麦は、食物繊維のなかでもとくにβ-グルカンが豊富です。β-グルカンには以下の作用が期待されています。

  • 血糖上昇の抑制: インスリン応答を緩やかにし、食後の急激な血糖値上昇を抑える
  • 血中脂質の改善: 血中コレステロールや中性脂肪の低下につながる可能性
  • 満腹感の持続: 食物繊維の粘度が高く、消化を緩やかにする

アメリカ食品医薬品局(FDA)も、1日あたり3g以上のオーツ由来β-グルカン摂取を継続することで、心臓病リスクを下げる可能性があるとしています。糖尿病の方も、朝食のオートミールやクッキーの材料などに取り入れてみると、食物繊維を効率的に摂取できます。

2. 玄米(ブラウンライス)

日本で全粒穀物といえば、まず挙がるのが玄米です。精白米に比べて外皮や胚芽がそのまま残っているため、ビタミンB群やミネラル、食物繊維が多く含まれます。玄米には以下のメリットが期待できます。

  • 血糖値の安定: GI値が白米より低い
  • ビタミンやミネラルの補給: マグネシウムやナイアシンなどが豊富
  • 食後の満足感: 噛み応えがあり、咀嚼回数が増えて満腹感が得やすい

白米から完全に移行するのが難しい場合は、白米と玄米を混ぜたり、週に数回玄米を取り入れる方法がおすすめです。

3. キヌア(Quinoa)

南米原産のキヌアは、高タンパク・高食物繊維の穀物として注目されています。以下の栄養素が特徴です。

  • たんぱく質と食物繊維が豊富: 食後の過剰な食欲を抑え、体重管理を助ける
  • ビタミンB群、リン、マンガン、マグネシウムが豊富: 糖代謝やエネルギー生成をサポート
  • GI値は中程度(約53): 血糖の急激な上昇を抑えやすい

穀物としての風味は淡泊で、サラダやスープの具材、ライス代わりなど、汎用性が高いのが利点です。

4. 大麦(バーリー)

大麦は食物繊維が非常に多く、β-グルカンも含まれます。さらに、マグネシウムなどのミネラル分も多いのが特徴です。血糖値が徐々に上がる傾向があり、糖尿病の方でも比較的安心して取り入れられる穀物として知られています。

5. そば(キョウマイ・Buckwheat)

日本でも馴染み深いそば粉は、実は「擬似穀類」と呼ばれる性質をもつ植物の種子です。胚乳が取り除かれていない“全粒そば粉”であれば、食物繊維、ビタミンB群、ミネラル類がまるごと残ります。パンや菓子作りでは小麦粉の代用品にもなり、低GIの粉として利用されることがあります。

6. トウモロコシ(コーン)

トウモロコシは未成熟の状態で食べると糖度が高い場合もありますが、ドライコーンやポップコーン(無添加・塩分や砂糖を加えないもの)として取り入れる分には、比較的血糖コントロールに適したおやつとなることがあります。油で揚げたスナック菓子などと比べると、低脂質かつ食物繊維を摂取できます。

糖尿病の方が穀物を食べる際の摂取目安

1日の全粒穀物の目安量

厳密な指針はないものの、1日3食のうち最低1食は全粒穀物を取り入れるのが推奨されることが多いです。アメリカでは、1日3サービング(約48gの全粒穀物)が目安ともいわれますが、日本人向けには1〜2サービングを目標とし、ほかの食材とのバランスを考慮して調整すると良いでしょう。

  • 1サービングの例:
    • 玄米ごはん 80g(お茶碗半分弱)
    • オートミール 30g〜40g(乾燥状態)
    • キヌア 40g〜50g(乾燥状態)

製品ラベルや原材料表記のチェック

加工食品を買う際には、パッケージの成分表をよく確認することが大切です。

  • 全粒粉、玄米、オーツ、キヌア、ライ麦などが最初に記載されているか
  • 1食あたりの食物繊維量や糖分(特に精製糖の有無)
  • 過剰な甘味料やシロップが含まれていないか

特に市販のシリアル類は、砂糖や糖蜜、はちみつなどが多めに加えられている商品もあるため、「全粒」や「ファイバー入り」を謳っていても注意が必要です。アメリカ糖尿病協会(ADA)によると、1食分あたり少なくとも食物繊維3g以上、砂糖6g以下が望ましいとされています。

市販の「糖尿病向け」穀物製品の一例

現在、多種多様な「糖質オフ」「糖尿病対応」を謳う粉末タイプの穀物製品が市販されています。たとえば以下のようなものがあります。

  • NutriFoodのDiabet
    • 全粒粉、マルチトール、フラクトオリゴ糖などを組み合わせ、血糖値の上昇を緩やかにする工夫がされている
    • 食物繊維やビタミン類を強化
  • Calbeeの全粒グラノーラ系統
    • 全粒オーツ、ライ麦、玄米、トウモロコシなどが主体
    • ドライフルーツやナッツが加わっている製品もあるが、糖質量が多すぎないかラベル確認が必須
  • Green Max
    • さまざまな雑穀や豆類、種子類をブレンド
    • 砂糖をあまり追加せず、食物繊維を補える設計
  • Markalの五穀ブレンド
    • 大麦、ライ麦、オーツ、小麦、米など5種類ほどの穀類を配合

これらはあくまでも「補助的」な位置づけの製品であり、食事全体のバランスや総エネルギー量を踏まえて選ぶことが大切です。特に糖尿病の場合は、こういった製品を主食にして摂りすぎないよう注意しながら、主治医や管理栄養士とも相談しましょう。

具体的な食事の組み方と注意点

バランスの良い食事が基本

糖尿病の食事療法では、穀物だけでなくタンパク質源(魚、肉、大豆製品など)や野菜などさまざまな食材をバランスよく組み合わせる必要があります。全粒穀物はたしかに血糖値を急上昇させにくいとはいえ、摂取しすぎれば総カロリーが増えて血糖コントロールの妨げになることもあります。
適宜、主治医や管理栄養士に相談し、1日の総エネルギーや炭水化物割合を把握しつつ取り組むようにしてください。

調理・加工時に砂糖や油脂を追加しない

全粒穀物を使った食品でも、調理過程で糖分や油を大量に加えると、血糖値やカロリーは上昇しがちです。たとえば玄米やオートミールを炊く際にバターやマーガリンをたっぷり使うと、かえって脂質摂取過多になり健康リスクが高まります。「身体に良い穀物だから」と思い込み、余計な味付けをたくさんしてしまわないよう注意が必要です。

おやつや朝食には無添加ポップコーンや全粒フレークを活用

間食や軽食として上手に全粒穀物を取り入れる例として、無糖のポップコーンや全粒シリアル、グラノーラ(低糖タイプ)などがあります。スナック菓子や菓子パン、甘いビスケットを常習的に食べるよりも、血糖コントロールを妨げにくい可能性があります。ただし、ここでも砂糖や甘味料の添加に留意しましょう。

糖尿病の方が全粒穀物を取り入れるメリットを示す研究

先述のように、近年は全粒穀物摂取が糖尿病の予防や管理にプラスの影響を与えるというデータが増えています。具体例として、以下の研究成果が挙げられます。

  • 2023年 Nutrients誌掲載 (doi: 10.3390/nu15030667)
    複数の前向きコホート研究を統合したメタアナリシス。全粒穀物を多く摂取する群では2型糖尿病発症リスクの低下が報告されている。
  • 2023年 Critical Reviews in Food Science and Nutrition (doi: 10.1080/10408398.2021.1880361)
    全粒穀物摂取と心血管疾患リスク、一部がんリスクおよび総死亡率との関連を調べたシステマティックレビュー。全粒穀物の積極的な摂取がさまざまな生活習慣病リスクを下げることを示唆。

これらの研究は欧米を中心としたデータに基づいていますが、日本を含むアジア人でも同様の傾向を示す研究は少なくありません。もちろん、個々の体質や食習慣、医療状況によって結果に差が出る場合はありますが、参考になる知見といえます。

実生活での活用アイデア

  • ごはんに混ぜる: 白米に玄米や大麦を混ぜて炊く。食物繊維を無理なく増やせる
  • 味付けはシンプルに: 醤油や塩などを控えめにし、野菜やきのこ、海藻などと合わせる
  • 朝食での置き換え: パン食なら、全粒粉パンやライ麦パンを選ぶ、オートミールに牛乳や豆乳をかけてフルーツを添える
  • スープやサラダ: 茹でたキヌアや大麦を野菜スープやサラダに加え、ボリュームと食物繊維をプラス

こうした工夫で、日常の中に少しずつ全粒穀物を組み込み、食事全体の栄養バランスを整えることが大切です。

まとめ

  • 糖尿病の方が穀物を摂取する際は、精製度の高いものよりも全粒穀物(玄米、オーツ、大麦、キヌアなど)を意識して取り入れるとよい
  • 全粒穀物は、GI値が低く、食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富で、血糖値コントロールや体重管理に寄与する可能性がある
  • 市販の「糖尿病向け」や「全粒粉使用」の商品でも、ラベルをよく確認し、砂糖や添加物の過剰摂取に注意
  • 食べ方や量を誤ると、カロリー過多になり得る点にも留意し、医師や管理栄養士など専門家の助言を受けながらうまく活用する

適切な全粒穀物の摂取は、血糖値だけでなく生活習慣病全般のリスク低減にも役立つと考えられています。毎日の食事において、白米やパンをすべて置き換える必要はありませんが、部分的にでも全粒穀物を取り入れ、総合的な栄養バランスとエネルギー量をコントロールすることが糖尿病管理の一助となるでしょう。

結論と提言

本記事では、糖尿病の方が安心して取り入れやすい全粒穀物の特徴とメリット、具体的な選び方や食べ方のポイントなどを解説しました。全粒穀物には食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富に含まれ、血糖値や体重のコントロールをサポートする可能性があります。ただし、どの穀物でも摂りすぎれば総エネルギーが増え、高血糖や肥満のリスクを高めかねません。
最終的には、医師や管理栄養士のアドバイスに従いながら、日常の食事に適量を上手に組み込むことが大切です。バランスよく摂取すれば、糖尿病管理だけでなく、健康全般の維持・増進にも役立つでしょう。

参考文献


免責事項
本記事の内容は信頼性の高い情報に基づいて作成しておりますが、個々の症状や体質によって合う・合わないがあるため、必ず医師や管理栄養士などの専門家にご相談ください。本記事はあくまで参考情報であり、専門的な診断・治療の代替を目的とするものではありません。

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