糖尿病による頻繁なめまいの原因とは|効果的な対策法を解説
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糖尿病による頻繁なめまいの原因とは|効果的な対策法を解説

はじめに

人が日常生活の中で感じる「めまい」や「ふらつき」は、その原因がさまざまであり、特に糖尿病のある方にとっては血糖値や血圧の変動をはじめとする多くの要因が深く関係しています。日常的にめまいを覚えたり、急に立ちくらみが起きたりする場合、普段の血糖コントロールや水分補給、薬の使い方など、複数の側面を振り返る必要があります。本記事では、糖尿病患者さんに頻繁にみられるめまいの原因や背景、またどのように対処すればよいのかを詳しく解説します。さらに、実際に血糖コントロールを安定させるための具体的なポイントや、めまいに直結しやすい状況を避けるコツなども紹介します。なお、血糖や血圧に限らず、多岐にわたる原因によってめまいは引き起こされるため、少しでも症状が頻繁・重度になった場合は医療機関を受診し、専門家に相談することが大切です。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

本記事では、Thạc sĩ – Dược sĩ – Giảng viên Lê Thị Mai(薬学修士・大学講師)による医学的なアドバイスをもとにした情報も含まれます。ただし、最終的には担当医・専門医とよく話し合い、一人ひとりの病状・体質に合った治療方針や生活習慣を決める必要があります。とくに低血糖高血糖による急激なめまい・ふらつきが頻繁に起きる場合は、糖尿病専門医、内科医、管理栄養士などと連携し、薬剤の調整や食生活の見直しを含め、総合的に対処を進めてください。

糖尿病の人に見られるめまいの主な原因

糖尿病の方に生じるめまいふらつきは、以下のような複数の要因が組み合わさって起こることがあります。

1. 低血圧(とくに起立性低血圧)

低血圧とは、一般的に収縮期血圧が20mmHg以上低下、もしくは拡張期血圧が10mmHg以上低下する状態を指します。通常の血圧でも、急に立ち上がったときなどに起立性低血圧を起こす場合があります。糖尿病の方は自律神経障害などによって血圧調整が乱れやすく、急に姿勢を変えた際にめまい・ふらつきを起こしやすいのが特徴です。典型的な症状は以下のとおりです。

  • 強いめまい、あるいは立ちくらみ
  • 一時的な視界のぼやけ
  • 失神や気を失いそうになる
  • 全身の倦怠感や集中力の低下

特に高齢の方では、もともと血圧が低めの方も多いため、わずかな血圧低下でも起立性低血圧に陥りやすくなります。

2. 脱水

血糖値が高めの状態が続くと、血液中のブドウ糖を排出しようとして腎臓が活発に働きます。その結果、多尿になり、体内から水分が奪われることで脱水につながりやすくなります。脱水状態になるとへの血流が十分に維持されにくくなり、めまいを感じやすくなるのです。血糖値が高いときには以下のような症状が同時にみられることもあります。

  • のどの渇きが強い
  • 頻尿
  • 慢性的な疲労や倦怠感
  • 体重減少
  • 視界のぼやけ

実際、2022年に日本の糖尿病臨床ガイドライン(Araki E, Goto A, Kondo T, et al. “Japanese Clinical Practice Guideline for Diabetes 2022.” Diabetol Int. 2022;13(4):385–426. doi:10.1007/s13340-022-00571-2)でも、血糖値が慢性的に高い状態を放置すると電解質バランスや脱水リスクが増え、結果的に神経症状(めまい含む)を引き起こす可能性が高くなると指摘されています。

3. 低血糖

血糖値が4.0mmol/L(約72mg/dL)未満の状態を一般的に低血糖と呼びます。糖尿病治療の一環として経口血糖降下薬インスリン注射を使用している方は、ときに血糖が下がりすぎてしまい、めまいを起こすケースがあります。低血糖時の主な症状は以下のとおりです。

  • 強い発汗
  • 手指の震え
  • 動悸・頻脈
  • めまい、頭がくらくらする
  • 顔面の血色不良(蒼白)
  • 意識障害やけいれん、最悪の場合は昏睡状態に至ることもある

また、2023年のAmerican Diabetes Association (ADA)「Standards of Medical Care in Diabetes—2023」(Diabetes Care. 2023;46(Suppl 1):S1–S291. doi:10.2337/dc23-SINT)でも、インスリン治療やSU薬などの使用中に低血糖が起こった場合、すみやかに糖分補給を行う指導が推奨されています。低血糖状態めまいが起きるのは、脳へ供給されるブドウ糖が足りなくなり、神経機能が一時的に低下するためです。早期に対応しないと重篤な合併症を誘発するリスクがあるので、注意が必要です。

4. 内服薬・注射薬の副作用

糖尿病治療薬には血糖降下作用を持つ種類が多く、血糖値を下げすぎる(低血糖)ことでめまいが誘発される場合があります。特にインスリンや一部の経口薬(たとえばSU剤)では、食事量や運動量と薬の作用バランスが合わずに血糖が急激に変動し、めまいを感じやすくなることがあります。また、降圧薬や利尿薬を併用している場合にも血圧が下がりすぎて立ちくらみを起こす可能性があります。自己判断で薬を中止すると、血糖値が逆に大きく乱れることがあるため、必ず処方医と相談したうえで投薬内容を調整してください。

頻繁なめまい時に受診すべきタイミング

糖尿病の方が繰り返しめまいを起こす場合や、めまいが急激・重度に変化する場合は、ただちに医療機関を受診してください。とくに以下のような症状を伴うときは要注意です。

  • 意識が遠のく・失神を経験した
  • 激しい頭痛を伴う
  • 言語障害・視覚障害・手足のまひなどの神経症状がみられる
  • 持続的な嘔気・嘔吐
  • 明らかに血糖値が極端に高いまたは低い

このような症状は、血糖コントロールの乱れだけでなく、脳梗塞など別の重篤な疾患が潜んでいる場合も否定できません。専門医による評価を受け、適切な検査を行うことで早期発見・早期対応につなげることが重要です。

めまいを軽減するための対処法

ここでは、糖尿病患者さんが日常生活のなかでめまいを予防・軽減するために気をつけたいポイントをまとめます。なお、あくまで一般的な参考情報であり、個々の状態によって対処法は異なりますので、担当の医療従事者とよく相談してください。

1. 血糖コントロールの徹底

  • 自己血糖測定のタイミングを増やしてみる
    食前や就寝前など、規則的に測定し、薬の投与量や食事内容を調節します。
  • 専門医との定期受診
    継続的に血糖値、HbA1cを含めた数値を確認し、薬剤の用量・種類を随時見直すことが重要です。

2022年に公表された日本の糖尿病学会のガイドライン(前述のArakiら)でも、生活習慣や投薬の最適化を適切に組み合わせることで、低血糖エピソードの頻度を大幅に減らせると報告されています。

2. 脱水予防と水分バランス

  • こまめな水分補給
    喉が渇く前に少量ずつ水を摂る習慣を身につけましょう。特に夏場や運動後は失われる水分量が増えるため要注意です。
  • 多尿による脱水を意識する
    血糖が高めの場合、トイレが近くなる分だけ体内から水分が失われやすくなります。水だけでなく塩分・ミネラル補給も必要に応じて検討してください。

3. 起立性低血圧への対策

  • 急に立ち上がらない
    ベッドや椅子から立ち上がるとき、数秒かけてゆっくり姿勢を変えてみましょう。
  • 弾性ストッキングの活用
    下半身への血液貯留を防ぎ、血圧低下を緩和する効果が期待できます。医師に相談の上、サイズや着用時間を決めてください。
  • 運動習慣で自律神経を調整
    軽度の有酸素運動やストレッチによって、自律神経機能をある程度改善できるという報告があります。

4. 低血糖の迅速対応

  • ブドウ糖タブレットや砂糖を携帯
    低血糖症状が出たときにすぐ補給できるよう、常に甘味料を持っておくことが推奨されます。
  • 食事と薬のタイミング管理
    投薬時間帯や食事量のばらつきは、血糖の急激な乱高下を招きます。規則正しい食生活を心がけましょう。

5. 服薬管理と医師への相談

  • 薬の副作用チェック
    使っている薬の副作用リストを定期的に確認し、めまい・ふらつきを引き起こすリスクがある薬がないかを医師・薬剤師に確認しましょう。
  • 複数の診療科を受診中の場合
    糖尿病治療薬だけでなく、高血圧や脂質異常症などの薬も合わせて処方されている方は、薬剤どうしの相互作用もチェックが必要です。

受診前に確認しておきたいこと

医師の診察を受ける前に、以下の点をあらかじめメモしておくと、診察・カウンセリングがスムーズに進みます。

  • めまいの頻度と発生するタイミング(起床直後、食後、運動中など)
  • 低血糖症状が出るときの血糖値の変動
  • 最近変更があった薬の名前や用量
  • 食事内容・運動量の変化
  • 体重の増減やむくみ、ほかに気になる症状の有無

めまいが起こったときの応急措置

突然のめまいに対処するには、まず安全第一の行動を心がけてください。

  1. すぐに座るか横になる
    転倒リスクを防ぐため、ベッドや椅子に腰を下ろし、安全な姿勢を確保します。
  2. 深呼吸を数回繰り返す
    酸素供給を促し、落ち着きを取り戻します。
  3. 低血糖が疑われる場合は糖分補給
    ブドウ糖タブレットや砂糖入りの飲み物を少量飲み、血糖値が改善するか観察します。
  4. 症状が改善しない場合は医療機関へ連絡
    短時間でおさまらず、意識がもうろうとする、嘔吐が止まらないなどの症状がある場合は、自己判断せずに救急対応を検討します。

より良い血糖コントロールを目指すために

糖尿病の方のめまいやふらつきは、血糖値や血圧変動など、さまざまな身体のバランスに左右されます。2022年に日本国内で行われた研究では、糖尿病患者の慢性的な高血糖が自律神経機能に影響をおよぼし、起立性低血圧やめまいの頻度を高める可能性が示唆されています(日本人成人対象のコホート研究)。一方、アメリカ糖尿病学会 (ADA) 2023年の基準でも、低血糖エピソードを回避するための食事・運動指導や血糖モニタリングの頻度を増やす重要性が再度強調されています。

  • 栄養バランス
    食事をしっかり摂ることで、低血糖発作を避けるだけでなく、長期的な血糖コントロールも安定しやすくなります。
  • 適度な運動
    ウォーキングや軽い筋トレなどを定期的に行うとインスリン感受性が改善し、血糖値が下がりすぎたり上がりすぎたりする振れ幅を抑える一助となります。
  • ストレス管理
    ストレス過多はホルモンバランスを乱し、血糖コントロールを妨げます。適切な睡眠や趣味の時間を設け、リラックスできる環境を作ることも大切です。

結論と提言

糖尿病の方にとって、めまいふらつきは決して珍しい症状ではありませんが、その背後には低血糖高血糖脱水低血圧薬の副作用など、さまざまな原因が隠れています。原因を突き止めるには、普段の自己血糖測定血圧測定をこまめに行い、症状があれば医師に相談することが最重要です。特に下記の点は改めて意識してください。

  • 血糖値の極端な変動(高すぎる・低すぎる)は、神経系や血圧調整に影響しめまいを引き起こしやすい
  • 血糖コントロールを安定させるためには、医師と連携した薬剤の調整や定期的な検査が必須
  • 立ちくらみや失神の危険がある場合には、無理に動かず安全を確保したうえで血糖値確認や水分補給を行い、症状が強ければ早急に医療機関を受診

糖尿病は適切な管理ができれば、日常生活を大きく損なうことなく生活していける疾患でもあります。めまいの原因を正しく把握し、医師と連携しながら血糖や血圧の変動をコントロールしていけば、より健やかな生活を続けられるでしょう。

医療上の注意点(参考程度)

本記事の内容は、あくまでも一般的な情報提供を目的としており、診断や治療方針を決定するものではありません。症状が出たり、状態が不安定になったりする場合は、早めに医師や薬剤師などの専門家に相談してください。自己判断で対処すると低血糖や合併症を引き起こすリスクがあります。特に持病がある方や複数の薬を服用している方は、専門家と連携しながら安全に治療を進めましょう。

参考文献

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