糖尿病の「完治」を徹底解説:寛解との違い、最新治療、そして未来の展望
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糖尿病の「完治」を徹底解説:寛解との違い、最新治療、そして未来の展望

「糖尿病は完治するのか?」という問いは、希望と同時に多くの誤解を生んでいます。インターネット上には「根本治療」を謳う情報が溢れていますが、科学的真実はどこにあるのでしょうか。この記事では、JHO編集委員会が、世界保健機関(WHO)5、米国糖尿病協会(ADA)6、日本糖尿病学会(JDS)17などの権威ある機関の最新の科学的知見に基づき、この重要な問いに深く、そして正確に答えます。医学界で用いられる「完治」と「寛解」という二つの重要な概念を明確に区別し、現在達成可能な目標と将来の展望を徹底的に解説します。本稿が、患者様ご自身が情報を見極め、主体的に健康管理に取り組むための一助となることを心から願っています。

この記事の科学的根拠

本記事は、提供された調査報告書で明確に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性を示したリストです。

  • 米国糖尿病協会(ADA)、欧州糖尿病学会(EASD)、Diabetes UK: この記事における「糖尿病の寛解」の定義に関する指針は、これらの組織が2021年に発表した国際的なコンセンサスレポートに基づいています910
  • 英国および日本の研究: 体重減少による寛解達成の可能性に関する記述は、英国の大規模研究13および日本の臨床データ11に基づいています。
  • 世界保健機関(WHO)および日本糖尿病学会(JDS): 生涯にわたる管理という治療の基本方針は、WHO45やJDS17などの主要な保健機関のガイドラインに基づいています。
  • KIYAN MEDICAL株式会社の研究論文: 特定の「完治」に関する主張の分析は、同社が引用する学術論文(例:Nature Medicine誌)の動物モデル研究を批判的に評価したものです18
  • 厚生労働省および糖尿病データマネジメント研究会(DMC): 日本における糖尿病の統計データや国の目標に関する記述は、国民健康・栄養調査23や患者調査24、DMCの報告書25などの公的資料に基づいています。

要点まとめ

  • 現在の医学では、糖尿病の「完治(病気が永久になくなること)」は不可能とされています。その理由は、糖尿病が膵臓のインスリン産生細胞(β細胞)の不可逆的な損傷や、加齢とともに進行する機能低下を伴うためです13
  • 「寛解(かんかい)」は、2型糖尿病患者にとって現実的で達成可能な目標です。これは、薬物療法なしで血糖値(HbA1c 6.5%未満)を3ヶ月以上正常範囲に保つ状態を指します9
  • 寛解を達成する最も効果的な方法は、大幅な体重減少です。特に診断から数年以内の早期に、集中的な生活習慣の改善や減量手術などに取り組むことで、寛解の可能性が著しく高まります1113
  • 「糖尿病を根本から治す」といった主張には注意が必要です。多くは動物実験など非常に早期段階の研究に基づいており、人間への応用には大きな隔たりがあります。科学的根拠を批判的に吟味することが重要です18
  • iPS細胞などを用いた再生医療や免疫療法は、将来の完治につながる可能性を秘めた正当な研究分野として、日本のAMED(日本医療研究開発機構)のような公的機関の支援のもとで進められています120

第1部:科学的コンセンサス:なぜ糖尿病は生涯にわたる疾患とされるのか

潜在的な治療法を探求する前に、なぜ世界の医学界が現在、糖尿病を一回限りの治療ではなく、長期的な管理を必要とする慢性疾患と見なしているのかを理解することが不可欠です。その答えは、この病気が身体に引き起こす、根本的かつ大部分が不可逆的な生物学的変化にあります。

1.1. 糖尿病の非可逆的な性質:病態生理の深掘り

現在の医療技術で糖尿病が治癒可能と見なされていない主な理由は、身体の血糖調節メカニズムに対する根本的な損傷または機能不全にあります。

1型糖尿病:これは自己免疫疾患であり、身体の免疫系が膵臓内のインスリンを産生する唯一の細胞であるβ細胞を誤って攻撃し、破壊します。これらの細胞が破壊されると、体はインスリンを産生する能力を失います。インスリンは血液中から細胞へブドウ糖を取り込みエネルギーとして利用するために不可欠なホルモンであるため、この絶対的な欠乏は、生命を維持するために外因性インスリン(注射またはポンプ)による治療を生涯にわたり必須とします1。現代医学には、この自己免疫攻撃を完全に止めたり、破壊されたβ細胞を安全かつ永続的に人体内で再生させたりする方法はまだありません。

2型糖尿病:この状態はより複雑で、主に二つの欠陥によって特徴づけられます:

  • インスリン抵抗性:身体の細胞(特に筋肉、肝臓、脂肪)がインスリンに効果的に反応しなくなります。これは、血糖値を下げるという同じ仕事をするのにより多くのインスリンが必要になることを意味します。
  • 進行性のβ細胞機能不全:当初、膵臓はインスリン抵抗性を補うためにより多くのインスリンを産生します。しかし、時間とともにβ細胞は疲弊し、インスリンを分泌する能力が徐々に低下していきます。この低下プロセスは、遺伝的要因、生活習慣、そして特に自然な老化プロセスによって影響を受けます1

強調すべき重要な点は、糖尿病、特に2型は「進行性の病気」であるということです3。健康な人でさえ、膵臓のインスリン産生能力は年齢とともに徐々に低下します。2型糖尿病の人では、このプロセスがより速く進行し、より低い機能の閾値から始まります。これが、真の「治癒」がなぜ捉えどころのないものであるかを説明しています。「治癒」という概念は、健康的で安定した状態への復帰を意味します。しかし、2型糖尿病の現実は、絶え間ない老化によって影響を受ける動的なプロセスです。たとえ患者が生活習慣の改善を通じて正常な血糖値を達成したとしても、年齢に関連した膵機能の低下は続きます。そのため、もし以前の習慣に戻れば、高血糖状態が再発することはほぼ確実です2。現代の治療の目標は老化プロセスを逆転させることではなく、患者が合併症なく長く健康的な生活を送れるように代謝状態を効果的に管理することです。

1.2. グローバルな標準治療:根絶ではなく管理

この病態生理学的理解に基づき、世界保健機関(WHO)5、米国糖尿病協会(ADA)6、日本糖尿病学会(JDS)17といった世界の主要な保健機関は、根拠に基づいた治療モデルを確立しています。このモデルは、病気を完全に根絶することではなく、包括的で生涯にわたる管理に焦点を当てています。

現代の治療目標には以下が含まれます4

  • 血糖コントロール:症状を軽減し、急性合併症(低血糖やケトアシドーシスなど)を防ぎ、そして最も重要な長期合併症のリスクを低減するために、目標範囲内の血糖値を達成し維持すること6
  • 心血管危険因子の管理:糖尿病は心臓病や脳卒中のリスクを大幅に増加させます。したがって、血圧や異常な脂質(コレステロールや中性脂肪)レベルの管理は、糖尿病ケアの不可欠な部分です4
  • 合併症のスクリーニングと治療:目(網膜症)、腎臓(腎症)、神経(神経障害)、足に影響を与える長期合併症を早期に発見し治療するために、定期的なスクリーニングを実施すること4

このアプローチは、「慢性期医療モデル(Chronic Care Model)」に要約され、患者と医療チームとの継続的な協働、自己管理支援、根拠に基づく意思決定、そして地域社会の関与を強調しています6。これは、一時的な解決策を求めるのではなく、糖尿病と健康的に共存するための積極的で長期的な戦略です。


第2部:寛解(かんかい):2型糖尿病における達成可能な目標

「完治」はまだ手の届かないところにありますが、2型糖尿病を患う多くの人々にとって、希望に満ちた達成可能な目標があります。それが「寛解」です。寛解を正しく理解することは、患者が自らの健康を主体的に管理するための第一歩です。

2.1. 用語の定義:寛解に関する国際的コンセンサス

2021年、米国糖尿病協会(ADA)、欧州糖尿病学会(EASD)、Diabetes UKを含む国際的な専門家グループが、2型糖尿病の寛解に関する明確なコンセンサス定義を発表しました9。この定義は現在、世界的に広く受け入れられています10

寛解の基準:

  • ある人が2型糖尿病の寛解状態にあるとされるのは、血糖降下薬を一切使用せずに、ヘモグロビンA1c(HbA1c)の値が6.5%未満の状態を少なくとも3ヶ月間維持した場合です9
  • HbA1c:これは過去2~3ヶ月間の平均血糖値を反映する血液検査です。HbA1cが6.5%以上であることが、糖尿病の診断基準の一つです6
  • 3ヶ月の期間:この期間は、血糖値の改善が、薬を中止した後の単なる一時的な変動ではなく、持続的なものであることを確認するために必要です。
  • 薬物未使用:これが核心的な要素です。寛解とは、体が薬物の助けなしに血糖値を正常に近いレベルで自己調節できることを意味します。

HbA1c検査が信頼できない場合(例えば、特定の種類の貧血を持つ人)は、空腹時血糖値が126 mg/dL(7.0 mmol/L)未満であることなど、代替基準が用いられることもあります9

寛解は完治ではないことを理解することが極めて重要です。これは病気が非活動状態にあることを意味します。根底にあるリスクや遺伝的素因は依然として存在し、もし生活習慣が悪化すれば、病気は再発する可能性があります3

2.2. 寛解への道筋:科学的根拠に基づく戦略

寛解は偶然に起こるものではありません。それは、2型糖尿病の根本原因、特に過体重とインスリン抵抗性に取り組むための強力な介入の結果です。

  • 集中的な生活習慣介入と大幅な体重減少:これは最もアクセスしやすく、最も研究されている方法です。体重減少が決定的な要因となります。大規模な研究では、大幅な体重減少が2型糖尿病を寛解に導く可能性があることが示されています。英国の研究では、体重を10%以上減少させた人々で寛解率が著しく高かったことが示されました13。日本のデータもこれを裏付けており、5%以上の体重減少が寛解達成の重要な因子であることが示唆されています11。体重を減らすことは、肝臓や膵臓に蓄積した脂肪を減少させ、インスリン感受性を改善し、β細胞がより効率的に機能することを可能にします。
  • 代謝改善手術/減量手術:これはより侵襲的な選択肢ですが、非常に効果的です。胃バイパス術のような手技は、迅速かつ大幅な体重減少につながり、血糖コントロールを改善する有益なホルモン変化ももたらします。手術後の寛解率は非常に高く、一部の試験では3年後に最大37.5%の寛解率が報告されています13。成功を予測する因子には、若年であること、糖尿病の罹病期間が短いこと、術前の血糖コントロールが良好であることが含まれます13

これら両方のアプローチに共通する極めて重要な要素は、介入のタイミングです。多くのエビデンスは「機会の窓(window of opportunity)」の存在を示唆しています。病気の初期段階で寛解を達成する可能性は著しく高くなります。米国、英国、日本の研究はすべて、診断後数年以内に介入を開始した場合、成功の可能性が高いことを示しています11。これは、代謝的負荷(高血糖、脂質毒性)が早期に取り除かれれば、β細胞の機能低下を食い止め、あるいは部分的に回復させることさえ可能であることを示唆しています。膵臓がこのストレスに長くさらされるほど、損傷が永続的になる可能性が高くなります。新たに診断された患者にとって、これは重要な分岐点です。増え続ける薬物療法を受け入れる人生を選ぶか、あるいは、この時間的に限られた重要な機会を捉え、抜本的な生活習慣の変革を通じて薬物不要の状態を達成する可能性を追求するかです。

2.3. 日本における臨床的視点:グローバル基準の適用

日本の医学界は、これらの国際基準と完全に足並みをそろえています。日本の臨床ガイドラインや資料は、寛解の概念を迅速に取り入れています。

  • 日本の大学や病院からの資料では、2021年の国際的な寛解の定義が明確に引用されています1415
  • 日本の臨床医によるプレゼンテーションでも、同様の基準(薬物療法なしでHbA1c < 6.5%を3ヶ月以上)が用いられ、同じ重要な要素である体重減少が強調されています11
  • 日本で最も権威ある大学や病院の第一線の専門家からなる委員会によって編纂された日本糖尿病学会(JDS)の「糖尿病診療ガイドライン」16も、この世界的なエビデンスに基づく枠組みと一致する管理・目標に関する推奨事項を記載しています17。これは、日本における医療現場での寛解という概念の正当性と適用可能性を裏付けるものです。

より明確にするために、以下の表で、しばしば混同されるこれら二つの概念を直接比較します。

表1:「完治」と「寛解」- あなたの健康のための重要な区別
側面 「完治」(Kanchi) 「寛解」(Kankai)
定義 病気とその根本原因が永久に除去されること。再発のリスクはない。 薬なしで血糖値が正常に戻るが、根底にある病気の素因は残る。病気は活動していないだけで、消えたわけではない1
病態生理 膵機能が完全に正常な状態に回復する。インスリン抵抗性が永久に解消される。 膵機能は改善したが、完全には正常でない可能性がある。生活習慣の変更をやめると再発のリスクが存在する2
経過観察の必要性 糖尿病に関する追加の経過観察は不要。 再発の早期発見と合併症のスクリーニングのため、生涯にわたる、少なくとも年1回の経過観察が必要9
生活習慣 診断前の生活習慣に戻ってもリスクはない。 寛解を維持するためには、健康的な生活習慣(食事、運動、体重管理)の継続が不可欠3
医学的現状 現在の医学では達成不可能。将来の研究目標。 多くの2型糖尿病患者にとって、根拠に基づいた達成可能な目標1

第3部:「完治」の主張の分析:科学的事例研究

治療に関する情報をどのように評価するかをよりよく理解するために、ある企業が「完治」法を開発しているという実際の主張を分析してみましょう。

3.1. 主張:糖尿病の「完全な治療法」?

KIYAN MEDICAL株式会社は、「糖尿病を根本から治す」ことを目的とした薬剤を開発していると主張し、現行の治療法は血糖値を管理するだけで病気を治すものではないと示唆しています18

彼らの仮説は、学術顧問である小島英敏氏の研究に基づき、糖尿病は骨髄中の異常な造血幹細胞によって引き起こされるというものです。彼らは、特定の薬剤(HDAC阻害剤)でこれらの「糖尿病幹細胞」を除去することにより、糖尿病とその合併症の完全な治癒につながる可能性があると主張しています18

3.2. 研究者の評価:エビデンスの吟味

この主張の科学的基盤を深く分析することが、その妥当性を評価するために必要です。

  • 科学的エビデンスの階層:まず、科学的エビデンスがどのように分類されるかを理解することが重要です。動物研究は重要ですが、非常に初期のステップです。動物、特に人為的に作られた疾患モデルでの結果は、しばしば人間に適用できません。最も強力なエビデンスは、大規模なランダム化比較臨床試験から得られます。
  • 研究の分析
    • 出版物の正当性:このグループの研究は、Nature MedicineやCommunications Biologyといった査読付き科学雑誌に掲載されています。これは科学的な質の高さを示すポジティブな兆候であり、研究がその分野の専門家による審査を経たことを示しています18
    • 重要な限界:動物モデル:「完全な寛解」という主要な発見は、ストレプトゾトシン(STZ)で糖尿病を誘発したマウスで達成されました18。これは何を意味するのでしょうか? STZはβ細胞を破壊する化学物質であり、遺伝、生活習慣、肥満、インスリン抵抗性が関与する人間の複雑な2型糖尿病よりも、1型糖尿病に近い疾患モデルを作り出します。このモデルは、人間の病状を完全には再現していません。したがって、STZマウスモデルで効果的な治療法が、2型糖尿病患者で効果的である保証はありません。
    • 製品化への長い道のり:新薬開発のプロセスは非常に長く、費用がかかり、多くの段階を含みます:前臨床(動物実験)→第I相(少数の健康な志願者での安全性試験)→第II相(少数の患者での予備的有効性試験)→第III相(有効性と安全性を確認するための大規模試験)→規制当局(日本のPMDAなど)による承認。KIYAN MEDICALの研究は現在、前臨床段階にあります19。動物で有望な結果を示した薬剤の大多数は、人間向けの承認された治療法になることに失敗します。

3.3. 結論:期待と現実の間

科学論文で用いられる慎重で限定的な言葉遣いと、企業の宣伝資料で使われる「完全な治癒」という大胆で断定的な言葉遣いの間には、大きな隔たりがあります18。これは、科学コミュニケーションにおける「誇大広告サイクル(hype cycle)」の典型例です。研究者が新しい生物学的メカニズムを発見し(これは正当な科学的進歩です)、その後、この発見が商業組織によってマーケティングメッセージに変換され、発見が過度に単純化され、人間向けの治療法開発に必要な莫大な不確実性と長い時間が無視されます。

したがって、利用者からの質問に対する直接的な答えは、「この情報源から現在得られる『根本的な治療法』に関する情報は、人間向けの利用可能な治療法という文脈では不正確である」ということです。この研究は科学的に興味深く、将来の潜在的な方向性を示していますが、今すぐ、あるいは近い将来に利用可能な治療法ではありません。それは動物で検証中の研究仮説です。


第4部:糖尿病研究の最前線:治癒の未来への真の道筋

根拠のない主張を分析した後、治癒の未来への真の希望が育まれている、正当で先進的な研究に目を向けることが重要です。

4.1. 先端科学:真の治癒法が眠る場所

  • 再生医療と細胞療法:これは最も有望な分野の一つです。研究者たちは、β細胞を再生する方法、膵島移植(健康な膵臓の細胞群を移植する)、そしてiPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いて新しいインスリン産生細胞を作り出す方法を探求しています1。これらの技術は、身体の自然なインスリン産生能力を回復させる可能性があります。
  • 1型糖尿病のための免疫療法:1型糖尿病の究極の目標は、自己免疫攻撃を停止または逆転させることです。研究者たちは、免疫系にβ細胞を攻撃しないよう「再教育」する治療法を開発しています。これが実現すれば、1型糖尿病の真の「治癒」となるでしょう。
  • 国の機関の役割:日本医療研究開発機構(AMED)のような機関は、これらの長期的で正当な研究プロジェクトに資金を提供し、科学が責任を持って、かつ確固たる証拠に基づいて進歩することを保証する上で重要な役割を果たしています20

4.2. 医療ニュースを評価するための患者用ツールキット

読者が賢い医療情報の消費者になるのを助けるため、以下の表は健康に関する主張を評価するための実践的なツールキットを提供します。

表2:医療ニュースの評価:患者のためのツールキット (あなたの健康情報を守るためのツールキット)
確認すべき質問 信頼できる兆候 注意すべき兆候
研究対象は? 大規模でランダム化比較対照試験によるヒトでの臨床試験の結果。 動物実験、細胞培養、または個人の体験談のみに基づく主張18
試験の段階は? 第III相試験のデータが公表されている。規制当局(PMDA、FDA、EMA)によって承認されている。 「前臨床」、第I相、または試験段階に言及がない18
情報源は? 査読付きジャーナル(JMA Journal22など)、主要な医学会(JDS、ADA)、政府機関(厚生労働省、AMED20)。 企業のプレスリリース、ソーシャルメディア、「秘密の」治療法を謳う単一のクリニックのウェブサイト。
言葉遣いは? 科学的で慎重な言葉:「寛解」「コントロールの改善」「関連している」。 扇情的な言葉:「完治」「画期的」「奇跡」「秘密」。
裏付けは? 複数の独立した研究グループや組織によって議論または再現されている発見。 独立した確認のない、単一の企業や研究者にのみ帰属する主張。

第5部:日本で糖尿病と健康的に生きるための行動計画

このセクションでは、分析から行動へと移り、日本の患者が効果的に健康を管理するための具体的な計画を提供します。

5.1. 国内の状況:今日の日本における糖尿病を理解する

問題を国の文脈に置くことで、読者は課題の規模と公衆衛生上の取り組みを理解することができます。

表3:日本の糖尿病:統計的概観
指標 最新データ 出典/年 国の目標 [健康日本21]
「糖尿病が強く疑われる者」の割合(男性/女性) 16.8% / 8.9% 23, 2023
「糖尿病予備群」の推定人口 約1,000万人 23, 2016
治療中の総患者数 579.1万人 24, 2020
糖尿病性腎症による新規透析導入患者数 15,271人(年間) 25, 2021 2032年までに12,000人25
治療中断者の割合 67.6% (継続率) 25, 2019 2032年までに75% (継続率)25
コントロール不良者 (HbA1c ≥ 8.0%) の割合 男性1.86%, 女性0.71% 25, 2019 2032年までに1.0%25

これらの数字は、糖尿病が日本における大きな公衆衛生上の課題であり、政府がケアの改善と合併症の予防のために明確な目標を設定していることを示しています26

5.2. 健康のパートナーシップ:医師との効果的な対話

医師とのオープンで効果的なコミュニケーションは、成功した糖尿病管理の基盤です。患者は自身の治療目標について積極的に話し合うべきです。

医師に尋ねるべき重要な質問:

  • 「私の診断日、体重、現在のコントロール状況から見て、私は寛解を目指す候補者でしょうか?」
  • 「私にとって現実的で安全な減量目標は何ですか?」
  • 「もしこれらの目標を達成できたら、薬を減らしたり中止したりする計画を立てることはできますか?」
  • 「[新しい治療法X]に関するニュースを見ました。これに対する主流の医学的見解は何ですか?」

5.3. コントロールの基盤:エビデンスに基づく生活習慣計画

厚生労働省、WHO、JDSからの推奨事項はすべて、生活習慣の重要性を強調しています。

  • 栄養:バランスの取れた食事、ポーションコントロール、加工食品、糖分の多い飲み物、過剰な飽和脂肪の摂取を減らすことに焦点を当てます。日本のガイドラインは、量と質の両面でバランスの取れた食事を強調しています4
  • 身体活動:ガイドラインは定期的な中強度の身体活動を推奨しています。良い出発点として、現在のレベルから一日あたり1000歩増やすことが挙げられます5
  • 体重管理:これは2型糖尿病で寛解を達成するための最も影響力のある要素です。行動計画の中心的な柱として考えるべきです。

よくある質問

1型糖尿病も「寛解」しますか?

いいえ、現在のところ、1型糖尿病における「寛解」という概念は、2型糖尿病のように確立されていません。1型糖尿病は自己免疫によってインスリン産生細胞が破壊される病気であり、生涯にわたるインスリン補充が不可欠です。ただし、診断直後に一時的にインスリン必要量が著しく減少する「ハネムーン期」と呼ばれる現象が見られることがあります。これは寛解とは異なります1

寛解を達成したら、もう糖尿病の心配はしなくてよいのですか?

いいえ、それは誤解です。寛解は完治ではなく、病気が「休眠状態」にあることを意味します。糖尿病になりやすい体質は残っているため、体重が増えたり、不健康な生活習慣に戻ったりすると、血糖値は再び上昇し、再発する可能性があります。そのため、寛解を維持するためには健康的な生活習慣を続けることと、合併症の早期発見のために少なくとも年に一度は定期的な検査を受けることが強く推奨されます39

痩せている2型糖尿病患者でも寛解は可能ですか?

痩せ型の2型糖尿病の場合、主な原因はインスリン抵抗性よりもインスリン分泌能力の低下にあることが多いです。そのため、大幅な減量による寛解は、肥満を伴う2型糖尿病ほど一般的ではありません。しかし、適切な食事療法、運動療法によって血糖コントロールが大幅に改善し、薬が不要になるケースはあり得ます。個々の状況によりますので、主治医とよく相談することが重要です。

サプリメントや特定の食品で糖尿病は治りますか?

現時点で、特定のサプリメントや食品が糖尿病を「完治」または「寛解」させるという科学的根拠はありません。バランスの取れた健康的な食事の一部として特定の食品を摂ることは有益かもしれませんが、「治療」と謳う製品には注意が必要です。治療の基本は、医師の指導のもとでの食事療法、運動療法、そして必要に応じた薬物療法です。健康食品などを試す前には、必ず主治医や薬剤師に相談してください。

結論

本報告書は、「糖尿病を根本から治す」という主張を包括的に分析しました。その結論は明確です:現在のところ、「完治」は存在しません。これに関する主張は、しばしば非常に初期段階の研究に基づいており、人間向けの利用可能な治療法と混同してはなりません。

しかし、これは希望がないという意味ではありません。むしろ、強力で前向きな現実は、多くの2型糖尿病患者、特に新たに診断された人々にとって、「寛解」が現実的で達成可能な目標であるということです。これは遠い未来の希望ではなく、断固たる、根拠に基づいた行動を通じて、今ここにある可能性です。

糖尿病を患う人の健康の未来は、定められた運命ではありません。正確な知識で自身を武装し、情報を批判的に評価し、医療チームと主体的に協働することで、各個人が病気を意味のある形でコントロールし、寛解を目指し、長く健康な人生を送ることが可能なのです。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言を構成するものではありません。健康に関する懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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