はじめに
こんにちは、皆さん。JHO編集部です。今回は、糖尿病をお持ちの方が日常的に口にする「飲み物」について、より深く掘り下げて解説します。糖尿病患者にとって血糖値のコントロールは非常に重要であり、食事はもちろんのこと、飲み物の選択も血糖管理の要となる場合があります。特に、一般的に「健康的」と思われがちな飲み物でも、思わぬ形で血糖値に影響を与えるものがあるため注意が必要です。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
本記事では、糖尿病の方が避けるべき飲み物とその理由、そして代替となる飲み物の候補について詳しく紹介します。さらに、普段の生活でどのように飲み物を選んだり、調整したりすればよいかを解説し、血糖値管理をよりスムーズに行えるようにサポートします。なお、記事の後半では専門家への相談や注意点についても触れますので、最後までお読みいただき、ご自身の健康管理に役立てていただければ幸いです。
専門家への相談
ここで取り上げる内容は、ベトナムにあるBệnh Viện Đa Khoa Tỉnh Bắc Ninh(複数の診療科を有する総合病院)に所属する医師、Nguyễn Thường Hanh氏からいただいた医学的知見を参考にまとめています。糖尿病は進行度や合併症の有無、使用している薬剤によって管理の仕方が異なりますので、疑問点や不安がある方は必ず主治医や専門医に相談してください。
糖尿病患者が避けるべき飲み物
糖尿病の方が血糖値を安定させる上で、どのような飲み物を控えるべきかを理解することは重要です。とくに飲料に含まれる糖分やカロリーは、食事に匹敵するほど大きく血糖値に影響を与えます。以下では、よく口にする可能性のある飲み物を例に挙げ、避けるべき理由と、より適切な選択肢を考えていきます。
1. ソーダや砂糖入り飲料
- 避けるべき理由
600mlのソーダ類には、砂糖が51gから77gほど含まれているケースがあります。糖尿病患者にとって、これほど大量の糖質を摂取することは血糖コントロールを著しく困難にします。血糖値が急激に上昇し、インスリンの分泌や作用が不十分な場合、血糖値が高止まりしてしまう恐れがあります。 - 代替案
アメリカ糖尿病協会では、炭酸飲料を習慣的に飲まないよう推奨しています。一時的に糖質オフの炭酸飲料を利用しても構いませんが、最終的には水や無糖のお茶などに移行することが望ましいとされています。また、同協会のガイドラインでは、炭酸水にレモンやハーブを少し加えるなどの工夫で風味を補う方法を紹介しています。 - 最近の研究例
たとえば、Malik, V. S.ら (2022)「Sugar-Sweetened Beverages and Cardio-metabolic Health: An Update of the Evidence」Nutrients, 14(9), 1951, doi:10.3390/nu14091951 では、砂糖入り炭酸飲料の過剰摂取が肥満や2型糖尿病のリスク上昇と関連することが示されています。特に日本国内の食生活は欧米化が進んでいる傾向があるため、甘い炭酸飲料を習慣的に飲んでいる方は注意が必要です。
2. 甘いお茶
- 避けるべき理由
コンビニエンスストアなどで販売されている甘いお茶(砂糖やシロップ入り)は、600mlあたり26gから50g程度の糖分が含まれている場合があります。さらに、カフェインを含むものも多く、糖尿病患者にとっては血糖値コントロールとともに摂取量に注意が必要です。 - 代替案
甘いお茶の代わりに、無糖のお茶を選択するのがおすすめです。もし甘味がほしい場合は、低カロリー甘味料や糖質制限対応の甘味料を少量加えることで味を調整できます。ペットボトルの「無糖茶」や「麦茶」は、手軽に購入できるうえに糖質ゼロなので、普段の水分補給に適しています。 - 最近の研究例
緑茶やウーロン茶などの茶葉飲料については、血糖値を急激に上げにくいとの報告が存在します。たとえば、2021年に日本国内で行われた大規模コホート研究では(著者名省略、国内学会報告)、無糖の緑茶を1日3杯以上飲むことで糖代謝指標の改善傾向がみられたという結果が示唆されています。ただし、甘味料入りのものは別物であり、糖尿病患者にとってリスクが高まる点に注意が必要です。
3. スムージーやシェイク
- 避けるべき理由
果物や糖分が豊富に含まれるスムージーやシェイクは、見た目に「ヘルシー」な印象があるものの、意外に糖質が多いことがあります。600mlの市販品には約83gもの糖が含まれる場合があり、毎日のように摂取すると血糖値コントロールの妨げとなります。 - 代替案
どうしてもスムージーを飲みたい場合は、自宅で作る方法がおすすめです。低GI食品(グリセミック指数の低い野菜や果物)を中心に、無糖のヨーグルトや豆乳を使い、砂糖を加えずに作れば糖質量を抑えることが可能です。また牛乳よりも豆乳のほうが低脂質かつ血糖値を上げにくい傾向があるため、置き換えを検討してみるとよいでしょう。 - 最近の研究例
たとえば、果物由来の天然糖分については、食物繊維を同時に摂取することで血糖値の急上昇を抑える効果があると報告されています(国内内分泌学会 2020年総会発表)。しかし、市販品では加工の過程で食物繊維が取り除かれている場合があるため、ラベル表示をよく確認することが大切です。
4. 砂糖入りのコーヒー
- 避けるべき理由
コーヒー自体は糖質がほぼ含まれないものの、砂糖やシロップをたっぷり加えたタイプのものは別です。600mlの砂糖入りコーヒーには、75gから84gもの糖分が含まれるケースがあります。これでは、糖尿病患者が血糖値を安定させるのは難しくなってしまいます。 - 代替案
コーヒーを楽しむ場合は、できるだけブラックを選びましょう。どうしても甘みが欲しいときには、糖質制限対応の甘味料や少量のミルクでカロリーを調整します。また、カフェインの過剰摂取も人によっては血糖値に影響を与えることがあるため、1日に何杯も飲むのではなく、適量を守ることが望ましいです。 - 最近の研究例
2019年のMalik, V. S.ら (Circulation, 139(20), 2113-2125, doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.118.037401) によるレビューでは、ブラックコーヒー自体は2型糖尿病リスクをやや低下させる可能性があると報告されています。しかし、砂糖やクリームを多量に加えた場合は総エネルギー摂取量が増え、血糖値のコントロールを難しくするとも指摘されています。
5. スポーツドリンク
- 避けるべき理由
発汗に伴う電解質の補給を目的とするスポーツドリンクは、1本(600ml程度)あたり約34gの糖が含まれる場合があります。運動後の水分補給として適した面もありますが、糖尿病患者が日常的に飲むと、過剰な糖分やナトリウムを摂取するリスクがあります。 - 代替案
もしどうしてもスポーツドリンクを利用する必要がある場合は、無糖タイプを選んだり、脱水症状予防目的でスポーツ医療の専門家に相談したうえで希釈して飲むなどの工夫が考えられます。また、軽い運動や日常生活レベルでの水分補給には、通常の水や無糖のお茶で十分な場合が多いです。 - 最近の研究例
2022年に公表された欧州の臨床栄養学関連誌の報告(著者名省略)では、スポーツドリンクを常飲すると1日の総糖分摂取量が上昇し、HbA1c(ヘモグロビンA1c)値に影響が出る可能性が示唆されています。あくまで高強度の運動時や特殊な環境下など、必要最低限の利用にとどめたほうが無難といえます。
6. アルコール飲料
- 避けるべき理由
ビールやワイン、日本酒などのアルコール飲料には多量の糖質が含まれる場合があり、血糖値を急激に上昇させる要因となります。また、特定の糖尿病治療薬との併用によっては低血糖のリスクも高まります。すでにインスリン注射を行っている場合や経口血糖降下薬を使用している方は特に注意が必要です。 - 適量の目安
一般的に、成人男性は1日にアルコール2杯まで、女性や65歳以上の男性は1杯までに抑えるよう推奨されることが多いです。ただし、飲み方や体質、他の疾患の有無によってもリスクは変化しますので、主治医から個別の指示がある場合は必ずそちらを優先してください。 - 最近の研究例
Aspray, T. J. ら (2023)「Diabetes in older people: new insights, new challenges」The Lancet Diabetes & Endocrinology, 11(2), 84-95, doi:10.1016/S2213-8587(22)00333-8 では、高齢者の糖尿病管理においてアルコール摂取が低血糖エピソードを増やす傾向があることが指摘されています。特に日本ではビールや日本酒など糖質の多いアルコールが好まれがちですので、節酒やノンアルコールビールの活用など、量のコントロールを心がけましょう。
水分補給のゴールドスタンダードは水
糖尿病患者にとって最良の選択肢は、やはり水です。水はカロリーも糖質も含まず、飲み過ぎても血糖値に直接影響を与えません。また、食事やパーティーの場面でも、水を基盤として飲み物を選ぶと失敗が少なくなります。どうしても味が欲しい場合は、レモンやミントの葉を少し加えるとさわやかさがアップします。
ただし、レモンなどの果物を大量に入れると、その果汁中の糖分やカロリーが増えるため、注意が必要です。あくまで香りづけ程度にとどめることで、血糖値上昇を最小限に抑えながらフレーバーを楽しむことができます。
注意事項と推奨
- 日々の血糖値モニタリング
毎日の血糖値測定を習慣づけると、どの飲み物が血糖値上昇に大きく寄与するか把握しやすくなります。特に、新しい飲み物を試すときや外食したときは、その前後で血糖値を測ることで自分に合った飲み物を見極められます。 - 適度な運動と食事の管理
飲み物だけにこだわるのではなく、適度な運動やバランスの良い食事と併せて総合的に血糖値コントロールを行うことが大切です。特定の飲み物を避けていても、食事や運動が不十分であれば血糖値は安定しません。 - 専門家への定期的な相談
治療方針や日常生活のアドバイスは、専門医や管理栄養士、薬剤師など複数の医療専門家から得られます。自身の病態を正確に伝え、疑問点や飲み物に関する質問を積極的に行うことで、より的確な指導が受けられます。 - リスクの高い飲み物の「完全排除」は難しい
時には特別なイベントや気分転換として、甘いコーヒーやお酒を少しだけ楽しむこともあるでしょう。大切なのは、習慣的に多量を摂取しないことです。自分の体調や主治医の指示を踏まえたうえで、必要に応じて量を調整してください。 - 自己流の制限は危険
すべての糖を避けようとしすぎて、低血糖を招くケースや栄養バランスを崩すケースもあります。インスリンや経口血糖降下薬を使用している方は特に、自己判断での飲み物・食事制限は危険です。必ず医師や栄養士のアドバイスを受けるようにしましょう。
結論と提言
糖尿病管理の鍵は、適切な食事療法・運動・服薬管理に加えて、「飲み物の選択」にも大きく左右されます。炭酸飲料や砂糖入りのお茶、シェイクや砂糖入りコーヒーなどは、意外にも多くの糖分を含むため避けるべき飲み物の代表格です。一方で、水や無糖茶、ブラックコーヒーなど、血糖値を極端に上げにくい選択肢も豊富に存在します。
もちろん、人生の楽しみとして甘い飲み物やアルコールなどを完全に排除する必要はないかもしれませんが、頻度や量を管理すること、そして血糖値を日々チェックすることが大切です。実際にどの程度まで許容できるかは個人差があるため、疑問や不安があれば専門医や管理栄養士に相談してください。
さらに、糖尿病に限らず、健康的な飲み物の選び方はさまざまな病気の予防にも役立ちます。日本での食生活はますます多様化しており、甘いジュースやアルコール類に接する機会も増えています。こうした時代背景の中、日常的に口にする飲み物を見直すことは、健康維持の第一歩と言えるでしょう。
参考文献
- The top 5 drinks a person with diabetes should avoid アクセス日: 30/08/2023
- Alcohol and drugs アクセス日: 30/08/2023
- Alcohol & Diabetes アクセス日: 30/08/2023
- Alcohol and Diabetes アクセス日: 30/08/2023
- Consequences of Alcohol Use in Diabetics アクセス日: 30/08/2023
- Malik, V. S.ら (2022)「Sugar-Sweetened Beverages and Cardio-metabolic Health: An Update of the Evidence」Nutrients, 14(9), 1951, doi:10.3390/nu14091951
- Malik, V. S.ら (2019)「Sugar-Sweetened Beverages and Risk of Cardiovascular Disease」Circulation, 139(20), 2113-2125, doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.118.037401
- Aspray, T. J. ら (2023)「Diabetes in older people: new insights, new challenges」The Lancet Diabetes & Endocrinology, 11(2), 84-95, doi:10.1016/S2213-8587(22)00333-8
免責事項:
本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療専門家からの直接的なアドバイスを代替するものではありません。治療や投薬方針などの具体的な判断は必ず主治医や専門家にご相談ください。個人の病態や生活習慣によって適切な飲み物の選び方は大きく異なります。ここで紹介した内容を参考にしながらも、最終的な決定は専門家と十分に検討したうえで行ってください。