糖尿病患者の疑問解決:水分を多く摂るべきか?
糖尿病

糖尿病患者の疑問解決:水分を多く摂るべきか?

はじめに

日常生活の中で食事や運動、服薬など、さまざまな管理が求められる糖尿病は、血糖値のコントロールを安定させるために多角的な視点が必要とされます。とくに糖尿病の方には「何を食べるか」「何を飲むか」が大きく影響を及ぼすため、普段から注意を払うことが重要です。その中でよく耳にする疑問のひとつが、「糖尿病の人はたくさん水を飲んだほうがよいのか?」という点です。本記事では、この疑問に対して医学的根拠や実践的な視点を盛り込みながら詳しく解説します。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

また、飲料の種類や1日に摂取する水分量、注意すべきポイントなど、糖尿病管理における水分補給に関する疑問を総合的に取り上げます。専門家による推奨や最新の研究から得られた知見をできるだけわかりやすく紹介しつつ、実生活で役立つ具体的な方法を提示します。

専門家への相談

本記事の内容は、医療分野の権威ある研究・文献および専門家の推奨に基づき作成しています。特に以下のような世界的に認められた機関・文献を参考にし、糖尿病と水分補給に関する情報を整理しました。

  • American Diabetes Association(糖尿病に関するガイドラインや研究を数多く公表)
  • 日本糖尿病学会(国内の糖尿病診療ガイドラインを策定)
  • Diabetes CareJournal of Diabetes Investigationなどの専門ジャーナル

なお、本記事はあくまでも情報提供を目的とするものであり、最終的な診断や治療方針については医師や医療の専門家に相談することを強くおすすめします。本記事の監修には、内科領域を中心とした診療に従事しているBác sĩ Nguyễn Thường Hanh(Nội khoa – Nội tổng quát, Bệnh Viện Đa Khoa Tỉnh Bắc Ninh)より医学的見地からのチェックを受けています。


糖尿病の人は水をたくさん飲むべき?:基本的な考え方

血糖値と水分摂取の関係

糖尿病の特徴のひとつに、高血糖によって腎臓に負担がかかり、体外に余分な糖を排泄しようと尿量が増えることがあります。尿量が増加すると、体の水分が不足しやすくなるため、のどの渇きを強く感じやすくなるのです。アメリカ糖尿病学会(American Diabetes Association)は、糖尿病患者が脱水にならないよう、適切な水分摂取を心がけるよう推奨しています。

なぜ水がよいのか?

  • カロリーや糖質がほぼゼロ
    血糖値を急上昇させるリスクがなく、余分なエネルギー摂取も防ぎやすいというメリットがあります。
  • 腎臓にかかる負担を和らげる可能性
    水分を十分にとることで尿量を確保し、血中の余分な糖を早めに排泄する助けになる可能性があります。

さらに、過去のいくつかの研究では、適切な水分補給が血糖値のコントロールにプラスに作用するという指摘があります。たとえば、2011年に糖尿病専門誌『Diabetes Care』で公表された観察研究(後述の参考文献「Low Water Intake and Risk for New-Onset Hyperglycemia」参照)では、水分摂取量の少ない成人が高血糖傾向に陥りやすい可能性が示唆されました。もっとも、すべての人に当てはまるわけではなく、個人差がある点にも留意が必要です。

水分不足がストレスホルモンを増やす?

血糖値を悪化させる要因として、「脱水」や「ストレスホルモンの上昇」が相互に影響することが指摘されています。水分不足が続くとコルチゾールなどのストレスホルモンが上がり、血糖値を上げるホルモンの分泌を促進する可能性があります。そのため、定期的に水分を補給して脱水を防ぐことは、血糖コントロールを安定させるうえでも意味があると考えられています。


具体的な水分摂取量の目安

一般的な推奨量

厚生労働省や各種医療団体による推奨では、成人男性は1日あたりおおむね2L程度、成人女性は1.6L程度の水分摂取が推奨されることが多いとされています。これには食事や他の飲料から得られる水分も含まれます。もちろん、体格や活動量、発汗量によって個人差はあるため、一律に「この量がベスト」とは言い切れません。

糖尿病を患っている場合でも、大枠は同じと考えられます。ただし、運動や気温、個々の病態、薬物療法の内容などにより推奨量が変わる場合がありますので、主治医に相談しながら自分に合った水分摂取量を調整するのが望ましいでしょう。

水分補給が必要なタイミング

  • 朝起きた直後
    就寝中は長時間水を飲まないため脱水になりがちです。朝食前にコップ1杯の水を飲むことで血液循環をスムーズにしやすくなります。
  • 食事時
    食事中に適度な水分を摂ると満腹感を得やすくなり、食べ過ぎを防ぐ効果も期待できます。
  • 運動前後
    運動時は発汗により水分とミネラルが失われるため、開始前と終了後の両方でこまめに水を補給しましょう。
  • 入浴前後
    入浴中は気づかないうちに大量の汗をかくことがあるため、入浴前後にも水を飲む習慣が大切です。

実際、2020年のアメリカ糖尿病学会ガイドライン(「Facilitating Behavior Change and Well-being to Improve Health Outcomes: Standards of Medical Care in Diabetes—2020」)でも、脱水を防ぐ生活習慣づくりが推奨されています。血糖値が高めの方は特に、こまめな水分摂取が重要と示唆されています。


水だけじゃ味気ない?おすすめの飲み物と注意点

糖尿病と診断されると、甘い清涼飲料水を避けなければならないイメージが強く、「水以外に飲めるものがない」と感じる方もいるかもしれません。しかし実際には、適切な選択をすることで、味わいながら血糖値管理を行うことが可能です。以下では、水以外でおすすめできる飲み物と、その際の注意点を解説します。

推奨される飲み物の具体例

  • 無糖のお茶
    日本では緑茶や麦茶、ほうじ茶、ウーロン茶など、無糖タイプのお茶が豊富に販売されています。糖質がほぼ含まれないため血糖値上昇のリスクを抑えられます。
  • ブラックコーヒー・低カロリー甘味料を用いたコーヒー
    コーヒー自体には糖質が含まれませんが、市販の缶コーヒーは砂糖やミルクが多量に入っていることがあります。自宅やオフィスなどでブラックコーヒーを飲むか、どうしても甘みが欲しいときは糖質の少ない甘味料を選びましょう。
  • 炭酸水(無糖・無香料)
    甘い炭酸飲料の代わりに、無糖の炭酸水を飲むと炭酸の刺激で満足感が得られます。レモンやライムのスライスを加えれば風味を楽しめます。
  • 香りづけフレーバーウォーター
    レモンやミント、きゅうりなどのハーブや果物を水に漬け、ほんのり香りを楽しむ方法です。砂糖やシロップを使わずに味わいの変化を出せるため、物足りなさを感じにくくなります。
  • 低脂肪・無脂肪の牛乳や植物性ミルク
    カルシウムやビタミンDの補給源として、牛乳を取りたい方は低脂肪、あるいは無脂肪タイプを選ぶとよいでしょう。豆乳やアーモンドミルクなどの植物性ミルクを選ぶ場合も、無糖タイプかどうかを確認します。

飲み物選びの注意点

  • 「無糖」「糖質ゼロ」「カロリーオフ」の意味に注意
    市販の「糖質ゼロ」「カロリーオフ」と表記された飲料でも、実際には少量の糖質やカロリーが含まれている場合があります。表示をよく確認し、1日トータルで考慮しましょう。
  • 水以外の摂取カロリーが積み重なる場合
    ジュースや甘いカフェラテなどを頻繁に飲むと、食事とは別に糖質やカロリーを余分に摂取してしまいます。水以外を飲む量やタイミングは意識的に調整が必要です。
  • 果汁100%ジュースでも油断禁物
    砂糖が加えられていないフルーツジュースでも、果糖が多く含まれているため、一度に大量に摂取すると血糖値が上がりやすくなります。1日150mL程度に抑え、飲みすぎには注意しましょう。

実際、2019年頃から欧米での大規模調査では、糖質入り清涼飲料水を日常的に飲む習慣がある人は、糖尿病リスクや合併症リスクが上昇するという結果が多数報告されています。特にBMIが高い方や、すでに糖尿病を発症している方では影響が顕著に表れる可能性があります(参考:アメリカ糖尿病学会の各種統計より)。


飲むべきでない、あるいは控えたほうがよい飲料

ここでは糖尿病の方が避けるべき、あるいは摂取を大幅に制限することが推奨される飲料について解説します。もちろん、絶対に一口も飲んではいけないというわけではなく、適量を超えないように意識することが大切です。

  1. 砂糖入り炭酸飲料
    代表的な例として、甘いコーラやサイダーなどがあります。1本(350mL前後)の中に30〜40g程度の糖が含まれることが多く、血糖値を急激に上げる原因になりかねません。
  2. 甘みの強いスポーツドリンク
    脱水対策としてスポーツドリンクを利用する方は多いですが、糖分が高めのものが多く、運動量が少ない日や軽い活動レベルで大量に摂取すると、トータルでの糖質オーバーになりがちです。
  3. アルコール飲料
    アルコール自体は血糖値を下げる方向に働く場合もありますが、一方で飲みすぎると肝臓の糖新生が抑制され、低血糖を引き起こすリスクが高まります。特にインスリン注射や経口血糖降下薬を使用している方では危険度が上がります。さらに、甘いカクテルやビールには炭水化物が含まれるため、血糖値コントロールを乱す可能性があります。

    • 女性の場合:1日あたり30mL程度の蒸留酒(アルコール度数40度)、あるいはビール1缶(350mL程度)、ワイン1杯(約140mL)などが上限の目安。
    • 男性の場合:女性の倍程度とされていますが、飲まないに越したことはありません。
  4. シロップ入りのフルーツジュースや果物加工飲料
    「果実入り」など健康的に見えるパッケージであっても、加糖シロップが多量に含まれるケースがあります。果汁100%と誤解しないよう、成分表示を確認することが重要です。

「糖尿病だけどたくさん水を飲んで大丈夫?」への答え

結論として、糖尿病の方が適度な量の水をしっかり飲むことは、むしろ推奨されるケースが多いといえます。高血糖に伴う頻尿や脱水を予防し、血中の余分な糖を排出する手助けにもなるためです。ただし「たくさん飲めば飲むほどよい」というわけではなく、一日に必要な水分量の範囲でこまめに摂取することが大切です。

特に日本の夏は湿度も高く、熱中症のリスクが上がるため、汗による脱水にも注意が必要です。温度や湿度、運動の程度、個々の健康状態などを勘案しながら、飲むタイミングや量を調整するよう心がけましょう。


最新研究からの補足:適切な水分摂取と血糖コントロール

2023年版のアメリカ糖尿病学会「Standards of Medical Care in Diabetes—2023」(Diabetes Care, 46(Suppl.1), S1-S291, doi:10.2337/dc23-SINT)では、糖尿病患者のライフスタイルマネジメント全般が見直され、水分摂取に関しても脱水を防止する重要性が改めて言及されています。特に高齢者や腎機能が低下している方は、脱水によって腎臓への負担が増しやすい点が指摘されており、飲水のタイミングや量を計画的に管理することの重要性が強調されています。

また、日本糖尿病学会が策定した「糖尿病診療ガイドライン2023」(南江堂)でも、喉の渇きや利尿の頻度に応じた適切な水分補給を心がけるよう述べられています。特にインスリンや経口血糖降下薬を使用している患者は、血糖値が不安定になりやすいため、医師の助言に基づいて自己管理を行うことが推奨されています。


実践的アドバイス:水分補給を続けるコツ

  • 自分に合った容器を持ち歩く
    外出先でも水や無糖のお茶をこまめに摂取しやすいよう、マイボトルやタンブラーを常備しておくと便利です。
  • アラームやアプリの活用
    忙しいときほど水分補給を忘れがち。スマートフォンのアプリやタイマーを活用し、定期的に飲み物を摂る習慣づくりをサポートしましょう。
  • 食事の最初に水を飲む
    食べ過ぎ防止や満腹感の維持にも役立ち、糖尿病では注意が必要な「過剰カロリー摂取」を抑えやすくなります。
  • 季節による工夫
    夏はこまめに冷たい水やお茶を摂り、冬は温かいお茶や白湯で体を冷やしすぎないようにするなど、季節に合わせた飲み物を取り入れましょう。

よくある疑問:ココナッツウォーターはどうか?

日常生活の中で「ココナッツウォーターは健康に良い」という話を耳にすることがありますが、ココナッツウォーターにも自然な果糖やブドウ糖が含まれています。適量であればミネラル補給にもなるため問題ありませんが、1日何本も飲むような形で過剰摂取すると糖質過多になりかねません。実際に「ココナッツウォーターを飲んだら血糖値が急上昇した」という臨床報告は少なくありません。飲む場合は必ず無糖タイプを選び、量を控えめにすることを心がけてください。


他にも気になる疑問:水以外に飲んではいけないものは?

水以外にも「無糖・低糖質」ならOK

先述の通り、無糖のお茶やコーヒー、無糖炭酸水、低脂肪牛乳などは選択肢として優れています。糖尿病だからといって「水だけしか飲めない」というわけではありません。

天然果汁ジュースは?

天然果汁100%ジュースにも果糖(フルクトース)が含まれ、摂りすぎれば血糖値が上昇しやすくなります。一度に多量を飲まず、1日150mL程度を目安に控えめに楽しむとよいでしょう。

甘酒や豆乳ドリンクは?

甘酒(麹から作られるタイプ)は栄養価が高い一方で糖質も多い場合があります。豆乳ドリンクでも加糖タイプは血糖値に影響しやすいため、無糖タイプを選ぶのが無難です。


日本国内での水分補給の文化と糖尿病管理

日本では季節や食文化に合わせた飲み物の選択肢が多彩に存在します。緑茶や麦茶、ほうじ茶などは歴史的・文化的にも根付いており、無糖飲料として血糖コントロールの妨げになりにくい特徴があります。一方で、コンビニや自動販売機で気軽に購入できる缶コーヒーやジュースには砂糖が多く含まれるケースが多いです。日常生活でのちょっとした選択の積み重ねが血糖管理に影響するため、飲み物選びには常に意識を払う必要があります。


合併症リスクを抑えるためのポイント

糖尿病は血糖値のコントロールが不十分だと、心血管疾患や腎障害、神経障害などさまざまな合併症リスクを高める可能性があります。水分摂取をはじめとする日常の習慣管理は、長期的に見れば合併症予防に寄与すると期待されています。もちろん、食事療法や服薬、運動療法といった包括的なケアがあってこその結果ですが、水分摂取はその大切な要素のひとつです。


おすすめのセルフモニタリング

自己血糖測定

日々の飲食や運動がどのように血糖値に影響するかを把握するため、自己血糖測定を積極的に行うとよいでしょう。水分を多く摂った日とそうでない日で血糖値に変化があるか、運動の有無でどう違うかなど、数値の推移を記録することで自己管理能力が高まります。

体重・体脂肪率の管理

飲み物はカロリーにも影響します。無糖でも、牛乳や豆乳、その他の飲料を過剰に飲めばカロリーオーバーになる可能性があるため、体重や体脂肪率の測定も大切です。とくに体重が急増した場合は、飲み物の糖質・カロリーの摂りすぎを疑い、記録を振り返ってみましょう。

血圧・腎機能のチェック

糖尿病が長期化すると、腎機能の低下や高血圧が起こる場合があります。腎機能が低下しているとむやみに水分をとりすぎるのも負担になるため、定期的な血液検査でクレアチニンや尿素窒素、推定GFR(糸球体ろ過量)などを確認して主治医と相談しましょう。


生活習慣全体を見直す重要性

糖尿病管理は、水分摂取だけで完結するものではありません。食事療法、適度な運動、服薬、ストレスコントロールなど、総合的な生活習慣の見直しが必要です。ただし、その中でも「毎日欠かせない水分摂取」は習慣化しやすい部分であり、血糖値の安定化に大きく貢献する可能性があります。

2022年に発表された一部の大規模研究(たとえばAmerican Diabetes Associationの年次学会報告など)でも、適切な水分補給と栄養バランスを維持しつつ、食事全体のカロリーをコントロールする生活習慣を続ける群は、体重増加やヘモグロビンA1c(HbA1c)の上昇が抑えられるという結果が示されています。とくに日本人は炭水化物中心の食事をとる傾向があるため、その分、血糖値への影響を細かくチェックする姿勢が求められます。


結論と提言

  • 糖尿病の方は1日の水分摂取量を意識して増やす価値がある
    高血糖による脱水や頻尿が起こりやすく、水分不足は血糖値上昇リスクを高める要因となりうるためです。
  • 摂り方は「こまめに、必要量を守る」
    成人男性は約2L、成人女性は約1.6Lを目安とし、食事や天候・運動量に応じて増減を検討しましょう。
  • 飲み物の種類を工夫する
    無糖の緑茶、麦茶、ほうじ茶、ブラックコーヒー、無糖炭酸水、低脂肪乳、無糖の植物性ミルクなど、多様な選択肢があります。
  • 控えるべき飲料も把握する
    砂糖入り清涼飲料水や甘いアルコール飲料、シロップ添加ジュースなどは血糖値を急上昇させるため、日常的には極力避けるか量を制限しましょう。
  • 総合的な生活習慣の見直しが不可欠
    水分補給は糖尿病管理の一部にすぎず、食事・運動・薬物療法・ストレスコントロールなどを統合的に実践することで、合併症リスクを下げ、生活の質を高められます。

重要
本記事で紹介した内容は、糖尿病治療の一助となる情報提供を目的としたものであり、医学的診断や治療方針を代替するものではありません。個々の症状や体質によって異なる場合があるため、具体的な対処法や治療については必ず医師などの専門家にご相談ください。


参考文献

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