はじめに
私たちの生活の中で、糖尿病の管理において「食事療法」はとても重要な位置を占めています。血糖値コントロールをめぐっては、炭水化物(糖質)の摂取方法や、その質・量のバランスが特に注目されることが多いです。中でも「野菜・果物」は、ビタミン、ミネラル、食物繊維を豊富に含むため糖尿病の方向けには推奨されることが一般的ですが、糖質量や血糖値への影響が大きいものも一部存在します。したがって、「血糖値を安定させつつ栄養をしっかり補給するには、どんな野菜や果物をどのように食べればよいのか」を知っておくことは、日常生活の中で大変役立ちます。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
本記事では、糖尿病の方が特に注意したい野菜や果物について解説するとともに、血糖値管理を助けるうえでおすすめの食材や、その取り入れ方のポイントをご紹介します。いずれも血糖値を急激に上昇させない工夫が鍵となりますが、特定の野菜・果物を完全に「禁止」にするというより、「どのくらいの量で、どう食べるか」が大切です。ご自身の食事療法や、栄養バランスの調整にぜひお役立てください。
専門家への相談
本記事の内容は、栄養学的・臨床的な見解に基づく情報を参考にしながらまとめたものです。なお、本文中で引用している情報源は、信頼度の高い医療関連団体や栄養学サイトが中心です。すでに糖尿病の診断を受けている方や、血糖値が高めで食事療法を検討中の方は、主治医や栄養士などの専門家と相談しながら、記事内の情報を参考程度に活用してください。個々の病状や体質、併存症などによっても最適な食事プランは異なるため、必ず医師や管理栄養士による個別の指導を優先してください。
糖尿病の方が注意すべき野菜・果物とは
糖尿病の方にとって、野菜・果物はビタミン・ミネラルや食物繊維の補給源となりやすく、基本的には積極的に摂りたい食品群です。しかし、炭水化物(糖質)の割合が多かったり、血糖値を急激に上昇させやすい一部の野菜・果物については、摂取量や摂り方に配慮が必要とされています。血糖値への影響の目安としては、「GI(グリセミック・インデックス)」がよく利用されます。GI値は0〜100の間で示され、数値が高いほど食後の血糖値が急上昇しやすいことを意味します。
GI値の高い野菜や果物に対する考え方
- GI値70以上:血糖値を急激に上げやすいため、量に注意しながら適度に取り入れる
- GI値55未満:血糖値への影響が比較的穏やかで、日々の食事に取り入れやすい
ただし、GI値が必ずしもすべてを決定するわけではなく、実際の食事全体の栄養バランスや、他の食材との組み合わせ、調理法などによっても血糖値の変動は変わってきます。したがって、一部の野菜・果物がGI値や糖質量の面で「注意が必要」とされていても、「絶対に禁止」というわけではありません。適切な量、食べ合わせ、調理法を工夫することで、うまく食生活に取り入れられるのが理想的です。
血糖値管理の観点から食べ過ぎに注意すべき野菜
以下では、炭水化物量が多く、GI値も高めの野菜を中心にご紹介します。これらの野菜は栄養素自体に利点もありますが、一度に大量に摂取すると血糖値を大きく変動させることがあるため、食べる量や食べ方を工夫してみましょう。
トウモロコシ(スイートコーン)
「糖尿病の方は野菜をたくさん食べましょう」と言われがちですが、トウモロコシ(特にスイートコーン)は炭水化物量が高めで、GI値も高い部類に入る場合があります。
- 血糖値への影響:炭水化物量が多く、短時間で血糖値を上げやすい
- 調理・食べ方の例:茹でたコーンをサラダに加えるなど、少量を副菜として使う
- 他の炭水化物源とのバランス:もしトウモロコシを食事に取り入れるなら、同じ食事内で他の炭水化物(ごはんやパンなど)をやや控えめにすることで血糖値の急上昇を抑えやすくなります
たとえば、1/2カップほどのスイートコーンには15g前後の炭水化物が含まれるとされるため、食べる量を調整しながら、ほかの炭水化物量も合わせて把握しておくことが大切です。
ジャガイモ
代表的な「炭水化物を多く含む野菜」の一つがジャガイモです。ビタミンCやカリウムなども含むため、栄養面では悪くないのですが、食後血糖値を上昇させやすいのも事実です。
- 血糖値の急上昇リスク:一度に大量のジャガイモを摂取すると、血糖値とインスリン分泌が急激に増え、その後に急激に低下する“乱高下”を起こしやすい
- 健康リスク:高血糖状態が続くと肥満や心血管系の合併症リスクが高まる可能性がある
- 食べ方のコツ:炒め物や揚げ物などよりは、茹でる・蒸すなど脂質を追加せずに調理するほうがよい。また、同じ食事で食物繊維(たとえば緑の葉野菜など)をしっかり摂ると、血糖値の急上昇がやや緩やかになることがあります
糖尿病の方が食べ過ぎに注意すべき果物
野菜と同様に、果物も食物繊維やビタミンが豊富で健康に役立つ一方、果糖やブドウ糖を含むため血糖値上昇の面では注意が必要です。ここでは特に炭水化物量が多く、一度に大量摂取をすると血糖値が急に上がりやすいと考えられている果物を例に挙げます。
バナナ
バナナは、炭水化物量が豊富でGI値は中程度といわれています。糖尿病だからといってバナナを完全に禁止する必要はありませんが、熟度によって糖質量の割合が変化しやすい点に留意が必要です。
- 熟度の違い:バナナが青い段階(未熟)だとデンプンが多く、熟して甘みが増したものは糖分量が増える傾向
- 適切な食べ方:半分~1本程度の少量を、ほかの炭水化物源を控えめにした食事中かデザートとして取り入れるとよい
バナナにはカリウムやビタミンB6など多くの栄養素も含まれるので、適量を守る限りではメリットが期待できる果物です。
オレンジ
オレンジはビタミンCや食物繊維が豊富で、免疫機能や心血管系の健康維持に役立つ一方、糖度が比較的高い果物でもあります。100gあたり約12〜15gの糖質を含む可能性があるため、糖尿病の方は摂り過ぎに注意しましょう。
- 血糖値管理:GI値自体は中程度の範囲ですが、果糖やブドウ糖の割合も高め
- 工夫例:オレンジ半分〜1個を1回分の目安にして、食事全体の炭水化物量と合わせて調整する
ほかにGI値が中〜高めの野菜・果物
上記以外にも、GI値がやや高い可能性のある野菜や果物として「ビーツ(テーブルビートやテンサイ)」「マンゴー」「レーズン」などが挙げられます。これらを食べる場合も、1日の糖質量に合わせた摂取量の調整が必要です。もし普段から血糖値が高めで心配な方は、主治医や管理栄養士に相談しながら食べ方を決めると安心です。
糖尿病の方向けにおすすめの野菜・果物
一方で、血糖値管理の点から見ても比較的取り入れやすく、栄養素も豊富に含む野菜・果物があります。以下では、その代表的なものを解説いたします。
サツマイモ
「ジャガイモ」は注意が必要とされる食材のひとつでしたが、「サツマイモ」は比較的GI値が低めで、食物繊維やビタミンA、C、B6、βカロテンなども豊富に含まれることから、うまく使えば糖尿病の方にも良い選択肢です。
- GI値:茹でた場合は約46程度ともいわれ、比較的緩やかな血糖値上昇を期待できる
- 使い方:1食あたり半カップ程度のサツマイモを主食扱いとして使う方法が考えられる。ほかの炭水化物源を控えめにすることで血糖値のコントロールをしやすくする
でんぷん質を含まない野菜
栄養学的観点から、「ノンスターチー・ベジタブル」と呼ばれる、でんぷん質を含まない(あるいは非常に少ない)野菜は血糖値コントロールにとても適しているとされます。
- 代表例
- ホウレンソウやケール、チンゲンサイなどの葉物野菜
- キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、セロリ、きゅうりなど
- アーティチョークの心(ハート)やアスパラガス、もやしなど
- チコリ、大根、貝割れ大根なども比較的糖質が少ない
こうした野菜を積極的に食事に取り入れることで、満腹感と同時にビタミン・ミネラル・食物繊維を補給しやすくなります。
ナッツ類
ナッツ類(アーモンド、クルミ、ピーカンナッツなど)は、カロリーは高めながらも、良質な脂質やタンパク質、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質など多彩な栄養素がぎゅっと詰まった食材です。
- 利点:LDLコレステロール低下や心血管系リスク軽減が期待される
- 注意点:ナッツ類にも一定量の炭水化物が含まれるため、食べ過ぎは血糖値やカロリー過剰に繋がる可能性がある
- 取り入れ方:一度に食べる量は片手のひら半分〜一握り程度を目安にする
GI値と食事全体のバランス
前述のとおり、GI値が高い野菜・果物でも、まったく食べられないわけではありません。重要なのは下記の点を意識することです。
- 量のコントロール:1回に食べる量をほどほどに抑え、他の炭水化物源を減らす
- 食物繊維との組み合わせ:食物繊維を多く含む野菜・果物、または穀類(全粒粉や胚芽米など)と同時に摂ると、血糖値上昇を緩やかにしやすい
- 調理法や食べる順番:揚げるより茹でる、早食いよりもゆっくり噛むなど、ちょっとした工夫で血糖値変動が和らぐ場合がある
最新の研究を踏まえたポイント
近年、糖尿病治療の栄養指導では「血糖値だけでなく、体重管理や生活全般の質(QOL)まで含めたアプローチ」が重要視されています。2023年にDiabetes Care誌にて公表された合意報告(Evert ABほか, “Nutrition Therapy for Adults With Diabetes or Prediabetes: A Consensus Report”, Diabetes Care, 46(4), 585-599, doi:10.2337/dci22-0034)でも、食事全体のバランス(炭水化物、タンパク質、脂質の割合)や食物繊維の摂取量、そして個々人の文化・嗜好・経済状況に合わせた柔軟な食事療法の必要性が強調されています。
日本国内の食事習慣においても、上記のように「食べる量と頻度の調整」「ほかの栄養素との組み合わせ」に重点を置くことが、血糖値管理の要となるでしょう。
おすすめの調理・食べ方の工夫
- 茹でたり蒸したりする:油で揚げたり炒めるより、余分な脂質やカロリーを増やさずに済む
- 葉物野菜をまず先に食べる:血糖値上昇を少しでも緩やかにする目的で、食物繊維が豊富な野菜を先に食べる
- タンパク質源と合わせる:肉や魚、大豆製品と同時に食べることで消化に時間がかかり、血糖値の変動を抑えやすい
- 少量をこまめに:間食や補食として小分けに摂取すると、血糖値の安定に役立つ場合がある
よくある疑問
Q.「高GI値の野菜は絶対に避けるべき?」
A. 完全に避けなければならないわけではありません。適切な量や、他の食材との組み合わせを考慮すれば、栄養バランスを取りながら取り入れることは可能です。
Q.「果物はジュースで摂ればいい?」
A. 果物をジュースにすると食物繊維が失われやすく、血糖値が上昇しやすくなります。可能な限り生の果物を少量食べるほうが望ましいです。
Q.「どれくらい食べたら血糖値が上がりすぎる?」
A. 個人差やそのときの血糖値状況、薬物療法の有無によって異なります。一概に◯gで血糖値がどの程度上がるかは個人ごとに差が大きいため、主治医や管理栄養士に相談し、自身の生活リズムや好みに合わせた摂取量を決めていくことが大切です。
注意が必要な理由と合併症リスク
糖尿病の方が高血糖状態を長く続けると、網膜症や腎症、神経障害、さらには脳卒中や心筋梗塞といった重篤な合併症リスクが高まります。食事療法と運動療法、必要に応じた薬物療法を組み合わせて、血糖値をできる限り安定させることが合併症予防の基本です。野菜や果物の選び方と量を意識することは、その一端を担う重要なポイントといえます。
生活習慣全体で血糖値を管理する
食事以外にも、適度な運動やストレスケア、十分な睡眠時間の確保などが血糖値コントロールには欠かせません。また、定期的な血糖値測定や、主治医の診察を継続しながら、自分の身体の変化をこまめにチェックしてください。
- 運動:ウォーキングなどの有酸素運動を1日30分、週に5日ほど取り入れるとよいとされています。
- 睡眠:慢性的な睡眠不足やストレスは血糖コントロールに悪影響を及ぼす可能性があります。
- ストレス管理:過度なストレスはホルモンバランスを乱し、インスリン抵抗性を高める可能性があります。ヨガや深呼吸など、自分に合ったリラクセーション法を見つけることも大切です。
結論と提言
糖尿病と診断された方や血糖値が高めの方は、野菜や果物をどう取り入れるかに注意が必要です。基本的には、ビタミンやミネラル・食物繊維が豊富な野菜・果物は健康維持に寄与しますが、でんぷん質が多いものや、糖度の高いものは食べる量や頻度をうまく調整しましょう。とくにジャガイモやトウモロコシ、熟したバナナや甘い果物はGI値が高め(または中程度)になることが多いため、一度に大量摂取を避け、食事全体の炭水化物量のバランスを考えながら取り入れることが大切です。逆に、葉物野菜やブロッコリー、カリフラワーなどの「ノンスターチー・ベジタブル」、そしてサツマイモやナッツ類などは比較的血糖値をコントロールしやすい選択肢といえます。
最終的には、医師や管理栄養士と相談しつつ、自分のライフスタイルや好みに合わせた食事バランスを模索することが望ましいです。糖尿病は長期にわたる管理が必要な疾患ですが、食事・運動・ストレス管理といった生活習慣全体を見直すことで、健やかな日常生活を続けることが十分に期待できます。
参考文献
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アクセス日 2022年4月4日 -
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https://diabeticme.org/learning-center/diet-guides/are-oranges-good-for-diabetics-benefits-of-eating-orange-and-sugar-content/
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Can corn be part of a diabetes diet?
https://www.diabetescarecommunity.ca/diet-and-fitness-articles/diabetes-diet-articles/can-corn-be-part-of-a-diabetes-diet/
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- Evert AB, Dennison M, Gardner CD, et al. “Nutrition Therapy for Adults With Diabetes or Prediabetes: A Consensus Report.” Diabetes Care. 2023; 46(4): 585-599. doi:10.2337/dci22-0034
本記事は医療・健康情報としての性質上、あくまでも参考資料としてご覧ください。個々の疾患状態や生活背景により最適な治療法・食事法は異なりますので、具体的な治療や食事療法については必ず専門の医師・管理栄養士にご相談ください。