耳と喉のかゆみの原因4選 | 知っておきたい予防と対策
耳鼻咽喉科疾患

耳と喉のかゆみの原因4選 | 知っておきたい予防と対策

はじめに

のどがむずむずする、あるいは耳の奥がかゆい――こうした症状は日常的に多くの方が経験するものです。一時的なかゆみであればあまり気にしない方もいらっしゃるかもしれませんが、実はのどのかゆみと耳のかゆみが同時に生じる場合、その原因にはさまざまな可能性があります。なかには軽度のアレルギーや単なるかぜが理由であれば自宅療法で改善しやすいケースもありますが、他の要因によっては早めに医療機関を受診すべきケースもあります。

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当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

本記事では、考えられる主な原因やそれぞれの対処法について、現時点でわかっている医学的知見をもとに詳しく説明していきます。読者の皆さまが安心して生活できるよう、のどと耳のかゆみのメカニズムやセルフケア、必要な受診の目安などを総合的にまとめました。

専門家への相談

本記事は、医療機関での実臨床経験を踏まえた情報や国内外の信頼できる医学雑誌・医療機関の知見に基づき執筆しています。特に、アレルギー分野の標準治療ガイドラインの更新情報や最近の研究結果なども参照し、可能な限り正確かつ分かりやすくまとめています。なお、本記事の内容はあくまでも参考情報であり、個別の診断・治療方針については必ず医師などの専門家にご相談ください。本記事作成にあたり、医療の総合内科領域を専門とする医師・内科医の意見(例:日本国内の医療機関所属)を踏まえて執筆しております。

のどと耳が同時にかゆくなる主な原因

以下に挙げるのは、のどのかゆみや耳のかゆみを同時に引き起こす代表的な原因です。実際には複数の要因が重なるケースもあり、個人差が大きいため、あくまで「こうした可能性もある」という視点で読み進めていただければと思います。

1. アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)

鼻粘膜がアレルゲンに反応して炎症を起こすアレルギー性鼻炎は、日本でも非常に多くの方が経験している疾患です。花粉やハウスダスト、ペットの毛などが代表的な原因物質として挙げられます。アレルギー症状では、鼻水やくしゃみなど鼻の症状に加えて、のどのかゆみ耳の奥のかゆみが起こりやすい特徴があります。これは、鼻・耳・のどがつながっている構造上、一部が炎症を起こすと周辺部位にもかゆみや不快感が広がりやすいことが一因です。

  • 典型的な症状
    • くしゃみ
    • 鼻水(透明でさらさらした分泌液が多い)
    • 鼻づまり
    • 目のかゆみ、充血
    • のどのイガイガ感、耳のかゆみ、口の中のかゆみ
    • 全身倦怠感(長期化すると疲労感が強まる)

近年の国内研究によれば、アレルギー性鼻炎を有する方のおよそ半数以上が同時にのどや耳のかゆみも自覚しているという報告があります(Zhang Y.ら (2023) “Allergic Rhinitis in Asia: epidemiology, burden, management, future challenges,” Allergy, 78(3): 643–658, doi:10.1111/all.15450)。この研究では、アジア地域におけるアレルギー性鼻炎患者の特徴がまとめられており、日本人も例外ではないと示唆されています。

2. 食物アレルギー

食物を摂取したあとに耳のかゆみやのどのかゆみが顕著に出る場合は、食物アレルギーが疑われます。多く見られるのは落花生・甲殻類・牛乳・鶏卵などですが、果物や野菜などでもアレルギー反応が起きる方がいます。さらに、花粉症をもつ人が特定の果物や野菜を食べたとき、口周りやのど、耳がかゆくなる「口腔アレルギー症候群」が生じるケースもあり、これは花粉に含まれるタンパク質と類似した構造をもつ物質が一部の食品にも含まれているためです。

  • よくみられるアレルギー食材

    • 落花生やその他のナッツ(アーモンド、ヘーゼルナッツなど)
    • 魚や甲殻類(エビ、カニなど)
    • 牛乳、鶏卵、大豆、小麦
    • 一部の果物(リンゴ、モモ、キウイなど)
  • 代表的な症状

    • 口・のど・耳のかゆみ
    • じんましん、皮膚のかゆみ
    • 消化器症状(腹痛、下痢、嘔吐)
    • 重症例ではアナフィラキシー(血圧低下、呼吸困難など)

世界的には食物アレルギーに対する厳格な検証が多くなされており、とくにピーナッツアレルギーに関する研究が増えています。たとえば、Chu DKらの2021年の系統的レビュー(“Oral Immunotherapy for Peanut Allergy (PACE): A Systematic Review,” JAMA, 325(15), 1589–1603, doi:10.1001/jama.2021.3079)では、食物アレルギーに対して経口免疫療法が一定の効果を示す可能性がある一方で、アナフィラキシーなどのリスク管理が重要であるとされています。このように食物アレルギーは、軽い症状から重篤例まで幅広く存在するため、早めの診断と適切な対応が欠かせません。

3. 薬剤アレルギー

薬を服用した後に、のどや耳がかゆい・皮膚にじんましんが出るなどの症状がみられる場合は、薬剤アレルギーの可能性があります。アレルギーの原因となる薬は多岐にわたりますが、抗生物質や解熱鎮痛薬などで起こりやすい例がよく報告されています。ただし、薬の副作用は必ずしもアレルギーとは限らず、単なる薬の有害事象である場合もあるため、医師による正確な鑑別診断が重要です。

  • 典型的な症状
    • じんましん、皮膚のかゆみ
    • のどのかゆみ、耳のかゆみ、唇や顔の腫れ
    • 息苦しさ、呼吸音の変化(喘鳴)
    • 重症の場合はアナフィラキシー症状

薬剤アレルギーを疑った場合は、可能な限り速やかに担当医へ連絡し、自己判断で薬を継続・中止するのではなく、医師と相談のうえ適切に対応することが大切です。

4. かぜ(感冒)

かぜウイルスの感染によって生じる感冒は、日本国内でも年間を通じて多くの人が経験するごく一般的な病気です。通常、くしゃみや鼻水、発熱、のどの痛みなどが代表的な症状となりますが、ときにのどや耳に違和感を覚えるケースもあります。これは耳管や鼻咽頭を含む上気道全体がウイルス感染によって軽い炎症を起こし、それに伴ってかゆみが生じると考えられています。

  • 代表的な症状
    • くしゃみ、鼻水、鼻づまり
    • のどの痛み・イガイガ感
    • 軽度の発熱
    • せき、たん
    • 全身のだるさ・頭痛

かぜは多くの場合、1週間ほどで自然軽快しますが、症状が長引く、または悪化傾向にある際には細菌感染や合併症を起こしているおそれもあるため注意が必要です。最新の海外研究(Nicholls JM. (2023) “Common cold coronavirus,” Lancet Infect Dis, 23(2), e39-e50, doi:10.1016/S1473-3099(22)00753-8)でも、一般的なかぜウイルス(コロナウイルス・ライノウイルスなど)は変異を繰り返す可能性があり、免疫力が低下している人では症状が長引くケースもあると報告されています。

原因別にみる対処法とケアのポイント

それでは、原因別にどのような対策が有効とされているのか、代表的な治療アプローチやセルフケアのポイントを確認していきましょう。

アレルギー性鼻炎への対処

アレルギー性鼻炎が原因と考えられる場合は、抗ヒスタミン薬点鼻薬、必要に応じてステロイド点鼻薬などが処方されることがあります。症状が軽度であれば市販薬でも対処できるケースがあり、たとえばロラタジン、フェキソフェナジンなどが一般的です。ただし、自己判断で薬を使う際は医師や薬剤師に相談のうえ正しい用量を守ることが重要です。

  • アレルゲン回避策の例
    • 花粉が多い季節は窓やドアをしっかり閉め、外出時はマスク・メガネなどで防備する
    • ペットを飼っている場合は、寝室への立ち入りを制限したり、こまめな掃除を心がける
    • ハウスダスト対策として、布団カバーやカーペットを定期的に洗濯し、掃除機でダニ対策をする
    • タバコの煙や強い香水など刺激臭を避ける

アレルギー性鼻炎の国内ガイドラインは頻繁に見直されています。たとえば、Zhang Y.ら (2023) の研究でも、日本を含むアジア地域での環境対策や薬物治療の適切な組み合わせが有用と示されており、日常生活の中でこれらを意識することが改善への第一歩となります。

食物アレルギーへの対処

アレルゲンとなる食材を明確に特定し、完全に避ける(除去食)ことが基本です。特にアナフィラキシーを起こすリスクのある人は注意が必要で、外食や加工食品を購入するときには原材料表示をしっかり確認し、少しでも疑わしいと思ったら避けることが推奨されます。

  • 口腔アレルギー症候群への注意
    • 花粉症の方は特定の果物や野菜を食べる際に口周りやのど、耳などにかゆみが出ることがある
    • 加熱すればアレルゲンが減る食品もあるため、医師や管理栄養士と相談のうえ、食べ方を工夫する

食物アレルギーの管理には専門的な検査と医師の診断が欠かせません。思い込みで「これが原因かもしれない」と除去をしすぎると、栄養バランスが崩れる恐れもあるため、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。前述のJAMAでの研究(Chu DKら 2021)でも、経口免疫療法の可能性が示唆されていますが、自己判断で行うのは極めて危険です。専門医の指導のもとで慎重に進める必要があります。

薬剤アレルギーへの対処

ある薬を飲んでのどや耳がかゆくなる・皮膚症状が出る場合には、まず服用した薬の種類とタイミングをメモしておき、速やかに処方医に連絡をとるのが基本です。医師が薬の変更や中止、別の薬への切り替えなどを検討してくれます。特に抗生物質や解熱鎮痛薬などはアレルギーを起こしやすいと言われるものがあるため、症状が出た際には自己判断で薬を使い続けないことが大切です。

かぜ(感冒)への対処

かぜによるのどや耳のかゆみは、ウイルス感染をきっかけとする軽度の炎症が影響している場合が多いです。十分な休養と水分補給を心がけ、栄養バランスを保つことで自然に回復するケースが大半を占めます。市販の解熱鎮痛薬や総合感冒薬などで症状を和らげることも可能ですが、7日~10日以上たっても改善がみられない場合や、呼吸困難や発熱が長期化するなど症状が重くなる場合には、念のため医療機関を受診してください。

  • かぜのときのセルフケア例
    • こまめな手洗い・うがい
    • 十分な休養と睡眠
    • 水分を多めに取り、のどを乾かさない
    • 部屋の適度な湿度(50~60%程度)を保つ

受診のタイミングと注意すべき症状

のどや耳のかゆみが10日以上続く、または日ごとに悪化していると感じる場合は、病院を受診し原因を調べることが望ましいです。特に、以下のような症状を伴うときは重症の可能性があるため、ただちに医療機関を受診、もしくは救急要請も視野に入れてください。

  • 息苦しさ、呼吸音の異常(ぜーぜー、ヒューヒュー)
  • 顔や口周りの強いむくみ
  • じんましんや強い発疹が突然全身に広がる
  • 激しい頭痛、飲み込み困難
  • 意識のもうろうやめまい

医療機関では、血液検査やのどの分泌物の検査などを行うことで、アレルギーの有無や細菌・ウイルスの感染状況などを調べます。アレルギーを疑う場合は、専門のアレルギー科や耳鼻咽喉科を紹介されることが多いです。

おすすめのセルフケアと生活習慣

のどや耳のかゆみを予防・軽減するには、日ごろから免疫力を高める生活習慣を心がけることも大切です。以下に代表的なセルフケアを挙げます。

  • 十分な休養と睡眠
    睡眠不足が続くと免疫力が低下しやすく、アレルギー反応やかぜなどの感染症にかかりやすくなります。
  • バランスのよい食事
    果物や野菜、良質なたんぱく質をしっかり取り、腸内環境を整えることが重要です。
    ただし、食物アレルギーがある方は医師や管理栄養士の指導のもと、アレルゲンを除去・置き換えしつつ栄養バランスを保つようにしてください。
  • 適度な運動
    ウォーキングなどの軽めの有酸素運動は血行を改善し、免疫細胞の働きをサポートします。花粉の飛散が多い季節は、屋外での運動時間帯や服装を工夫し、マスクなどでしっかり対策しましょう。
  • 室内環境の整備
    エアコンや加湿器を活用して適切な温度・湿度を保つこと、定期的に換気をすること、ホコリやダニ対策のためにまめに掃除・洗濯を行うことが大切です。

結論と提言

のどのかゆみや耳のかゆみは、アレルギー性鼻炎・食物アレルギー・薬剤アレルギー・かぜなど、さまざまな要因によって起こりえます。多くの場合は軽度で自然に改善するものの、症状が続く・強まる場合や呼吸に支障をきたすような異常が出た場合は、ためらわず医療機関を受診すべきです。自己判断で治療や薬の服用を続けると、重篤な合併症を引き起こすこともあります。

また、アレルギーが原因の場合は、具体的なアレルゲン特定と適切な回避・管理が最優先となります。食物アレルギーでは誤った除去食が栄養バランスを崩すリスクもあるため、専門医や管理栄養士のアドバイスを受けて対応しましょう。薬剤アレルギーの場合は速やかに処方医に連絡し、症状や服用履歴を正確に伝えることが大切です。

かぜの場合は、通常1週間程度で自然軽快が期待できますが、症状が長期化する・悪化する場合には合併症やほかの疾患が隠れている可能性がありますので、医師に相談するのが安全です。いずれの原因にも共通して、日常的な睡眠・栄養・運動・ストレス管理によって免疫力を維持することが、予防と早期回復に大きく寄与します。


参考文献


免責事項
本記事の内容は健康・医療に関する一般的な情報提供を目的としており、専門家による正式な診断や治療方針の決定を代替するものではありません。体調や症状に不安がある場合は、必ず医師や薬剤師などの有資格の専門家にご相談ください。自覚症状が強い、あるいは症状が長引くときは早めに医療機関を受診することをおすすめします。

医師による監修:

  • 内科・総合内科領域
    医師(例:日本国内の医療機関所属)

本記事は情報提供を目的とし、日本の一般的な医療環境や文化的背景を踏まえたうえで執筆しています。実際の診療方針や個別の薬剤使用等については、必ず担当医の指示に従ってください。どうぞご自身の健康を第一に考え、専門家のサポートを得ながら適切なケアに取り組んでいただければ幸いです。

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