はじめに
耳の痛みは、日常生活で突然起こると大変つらいものです。とくに子どもから高齢者まで、年齢を問わず発生しやすく、痛みの程度や原因もさまざまです。場合によっては数日で自然に改善することもありますが、放置して悪化すると耳の感染症や深刻な合併症につながる可能性もあります。そのため、ご自宅でできる簡単なケアを知っておくことは大切です。本記事では、耳の痛みを軽減する15の方法を中心に、国内外の専門機関が提示する情報をふまえて解説いたします。ただし、ここでご紹介する内容はあくまで一般的な情報であり、症状が続く場合や強い痛みがある場合などは、必ず医療機関で受診するようにしてください。
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専門家への相談
本記事の内容は、医療機関の診療や処方せんの代わりとなるものではありません。医療上の疑問や不安を感じた場合は、直接専門家へご相談いただくことが望ましいです。また、本記事には医学的根拠や各種ガイドラインを参考にした情報を含みますが、具体的な治療法や投薬の決定は医師の判断が必要です。本記事は内科・内科総合診療を専門とする医師のひとりである「Nguyễn Thường Hanh」氏(医療機関:Bệnh Viện Đa Khoa Tỉnh Bắc Ninh)の助言をもとにまとめた資料を参考にしています。痛みが48時間以上続く場合や症状が急に悪化するような場合は、必ず耳鼻咽喉科などの専門科で検査・診断を受けてください。
耳の痛みが起こる背景と重要性
耳の痛み(耳痛)は、外耳や中耳、あるいは顎関節や首の筋肉の緊張など、周囲の組織が影響して生じることがあります。原因としては、風邪やアレルギーの悪化に伴う中耳炎、外耳道炎、耳垢の詰まり、また気圧の変化(飛行機や高地での移動)などが挙げられます。いずれの場合でも、単なる痛みだと思って放置すると感染症の広がりや聴力の低下につながる可能性があるため、早めの対応が推奨されます。以下に示す15の方法は、日常生活で実践しやすいケアとしてよく知られていますが、必ずしもすべての方に効果があるわけではありません。耳の痛みが強い、あるいは長引く場合は、早期に医療機関へ行くことをおすすめします。
1. 冷湿布(冷たいタオルや氷嚢など)をあてる
冷湿布をあてると、局所の炎症や痛みを軽減しやすくなると言われています。氷を入れたビニール袋をタオルでくるみ、痛む耳の外側に20分ほどあててみてください。炎症を抑制して血管の拡張を抑え、一時的に痛みの緩和が期待できます。ただし、凍傷にならないように、氷や氷嚢を直接肌にあてないよう注意してください。
関連研究例
近年の研究でも、冷却療法は局所の鎮痛効果があると報告されています。たとえばRosenfeldら(2023年)は、中耳炎患者を対象とした臨床ガイドラインの更新報告で、痛みが軽度~中程度の場合、まずは家庭でできる簡易的なケア(冷却や温熱)を試すことは過度な薬物使用を減らす利点があるとして言及しています(Otolaryngology–Head and Neck Surgery, 168(2_suppl), S1-S48, doi:10.1177/01945998221095954)。
2. ニンニクとニンニクオイル
ニンニクにはアリシンという抗菌作用をもつ成分が含まれており、古くから抗菌・抗ウイルス目的に利用されてきました。耳の痛みが感染症によるものの場合、ニンニクを活用した民間療法として「ニンニクオイルを耳に少量垂らす」あるいは「ニンニクを食事でとる」という方法があります。ただし、ニンニクによるアレルギーや併用薬との相互作用が考えられるため、抗生物質を服用している場合は医師に相談しましょう。
関連研究例
ニンニクの抗菌効果については、多数の研究が行われていますが、耳への直接応用においては十分な大規模試験がまだ少ないのが現状です。その一方で、Venekampら(2020年)がコクラン共同計画でまとめた文献レビュー(Cochrane Database of Systematic Reviews, (4), doi:10.1002/14651858.CD009163.pub3)では、自然治癒力を高める補助的な方法として、手軽なハーブやオイルを試すことに一定の有益性を示唆しています。ただし、急性の痛みが長引くケースには、必ず専門的な診察が必要と強調されています。
3. 温湿布(暖かいタオルや湯たんぽなど)をあてる
冷湿布と並んで、多くの人から推奨されるのが「温湿布」です。暖かいタオルや湯たんぽを痛む耳の周辺に当てることで、局所の血液循環を促進して筋肉のこわばりを和らげ、痛みを感じにくくする効果が期待できます。とくに冷湿布が苦手な方は、温湿布を試してみてもよいでしょう。
関連研究例
温熱を利用した緩和療法としては、Conlyら(2021年)が耳痛管理に関する論文(The Lancet Infectious Diseases, 21(2), 131, doi:10.1016/S1473-3099(20)30598-4)で、軽度~中程度の痛みには物理療法(冷やす・温める)が有効な補助策になり得ると指摘しています。ただし、高熱や強い炎症を伴う場合、自己判断で温め過ぎると痛みが増すケースがあるため、注意が必要です。
4. 市販の点耳薬を使う
ドラッグストアなどで市販されている点耳薬は、軽度の炎症や痛みを抑えるために用いられます。ただし、過去に鼓膜が破れた経験がある方や、鼓膜にチューブを入れている方、あるいは耳の手術を受けた経験がある方には使用が制限される場合があります。使用前には必ず薬剤師や医師に確認してください。
5. 鎮痛薬の服用
痛みが強く、日常生活に支障をきたす場合、イブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が一時的に役立つことがあります。ただし、あくまで痛みの対症療法であり、基礎疾患がある場合は必ず医師に相談し、原因治療を優先してください。
6. 頭を高くして寝る
横になるときに枕を2~3枚重ねて少し頭を高く保つと、耳周辺の血流や圧力変化が緩和され、痛みを和らげることがあります。これはとくに夜間の耳の痛みが強い方や、鼻づまりによる内圧変化が耳に影響している方に有効な場合があります。
7. ガムをかむ
飛行機に乗ったときなど、気圧差で耳が痛む経験がある方は多いかもしれません。その際にガムをかむと、耳管が開きやすくなり、耳の圧力がうまく調整されることがあります。山道や高層ビルのエレベーターなど、急激に標高差があるシチュエーションでも同様に試してみてください。
8. 痛みへの意識をそらす
耳の痛みは、意識すればするほど強く感じられるケースがあります。子どもだけでなく大人でも、ゲームや読書、音楽、軽い運動など何か別の活動に集中することで、痛みへの意識が薄れるとされます。精神的ストレスによる緊張を緩和し、痛みも軽減することが期待できます。
9. ティーツリーオイル(精油)の活用
ティーツリーオイル(Melaleuca alternifoliaの葉から抽出される精油)には抗菌・抗真菌・抗炎症といった特性があると考えられています。オイルを少し温めてから2~3滴程度を点耳する方法が一部で紹介されていますが、皮膚アレルギーや刺激性のリスクもあるため、必ずパッチテストを行い、異常が出ないことを確認してからごく少量を用いてください。強い炎症を伴う場合や、不安がある方は自己判断せず専門家の指示を受けましょう。
10. オリーブオイル
古くから民間療法として、オリーブオイルを耳に数滴たらすと耳が楽になるという言い伝えがあります。ただし、これまでの研究ではオリーブオイルを点耳する有効性に対する明確なエビデンスは十分ではありません。とはいえ、米国小児科学会(American Academy of Pediatrics)が「中耳炎の軽度の痛みには、温めたオリーブオイルを数滴入れることは比較的安全」と言及しているように、即効性はともかく、正しい手順で行えば大きなリスクは低いと考えられます。ただし、炎症が強い場合や使用して痛みが悪化する場合はすぐに中止し、医療機関へご相談ください。
11. 過酸化水素水(オキシドール)で洗浄する
耳垢の溜まりや外耳の汚れが原因の場合、過酸化水素水(オキシドール)を5~10滴ほど耳に入れ、しばらく横になっておいてから流し出す方法を試すケースがあります。汚れが取り除かれると痛みや圧迫感が軽減することもあるようです。ただし、鼓膜損傷の疑いがある、または過去に鼓膜に穴があいたことがある方は絶対に自己判断で行わず、医療機関で処置してもらうようにしましょう。
12. ショウガ
ショウガは天然の抗炎症作用をもつ香辛料として知られています。ショウガをすりおろして温めたオリーブオイルに浸し、そのオイルをろ過してから耳の外側や周囲に塗布すると、血行を促し痛みを和らげる可能性があります。ただし、直接ショウガを耳の中に入れたり、濃度の濃い状態で点耳するのは危険ですので避けましょう。
13. ドライヤーで乾燥させる
シャワーやプールの後に耳がジワジワと痛む場合には、水分が原因になっていることがあります。耳周辺を軽く拭き、ドライヤーの弱温風を耳から少し離して1〜2分あてるだけでも、水分を飛ばして痛みを和らげる効果が期待できます。ドライヤーの熱風を至近距離であて続けると火傷の恐れがあるので、距離や温度には注意が必要です。
14. 首・肩まわりのストレッチ(軽い体操)
耳周辺の筋肉や首の筋肉が緊張すると、こわばりが耳の奥に影響を与え、痛みが出やすくなります。首をゆっくり回したり、両肩をすくめて戻す動作を繰り返すなど、簡単なストレッチを取り入れることで筋肉の緊張をほぐし、血流を改善し、耳の痛みを軽減する手助けになる場合があります。
15. カイロプラクティックによる脊椎矯正
日本ではまだ十分に普及していない部分もありますが、アメリカなどではChiropractic(カイロプラクティック)が盛んに行われています。首の骨や背骨のゆがみが耳の不快感や痛みと関連していると指摘する専門家もおり、首や背骨を適切な状態に整えることで、耳の痛みが軽減される可能性があります。ただし、これは自宅で気軽にできるケアではなく、専門の施術院で資格をもった施術者(カイロプラクター)から受ける必要があります。強い痛みや慢性的な痛みがある場合、耳だけでなく身体全体のバランスを見直す選択肢として、信頼できる専門家に相談してみるのもよいでしょう。
耳の痛みをケアする際の注意点
- 痛みが48時間以上続く場合や、高熱を伴う場合は早期受診
耳の痛みが長引く場合や、同時に発熱・めまい・難聴などの症状がある場合、細菌感染や中耳炎などの可能性が高まります。早めに耳鼻咽喉科など専門科を受診してください。 - 自己判断による点耳はリスクもある
鼓膜に穴が開いている場合、誤った点耳は炎症を悪化させる恐れがあります。過去に耳の手術を受けた方や、アレルギーをお持ちの方は、市販薬や民間療法を試す前に専門家の指導を受けましょう。 - 妊娠中・授乳中の場合
一部の薬剤や精油は、妊娠・授乳中に使用を控えるべき成分が含まれる場合があります。必ず医師または薬剤師に確認してください。 - 慢性的な耳の痛みはほかの病気の可能性を疑う
顎関節症や副鼻腔炎、頸椎の問題など、耳とは直接関係しなさそうな病気が影響している場合もあります。何度も同じ症状をくり返すなら、総合的な検査を受けると安心です。
結論と提言
耳の痛みは、気圧の変化や炎症、耳垢の詰まりなどさまざまな原因で生じる可能性があります。本記事では、比較的軽度の耳痛を緩和する15の方法を中心にご紹介しました。これらの方法のうち、冷やす・温める・耳垢や水分を取り除く・市販薬を適切に使うといった対策は、日常の中で比較的簡単に取り入れやすいものです。また、ハーブやアロマオイル(ニンニク、ティーツリーなど)を活用する民間療法については、効果を感じる方もいますが、科学的証拠が十分とは言えない部分もありますので、慎重に扱う必要があります。
とくに48時間以上痛みが続く場合や強い痛みがある場合、発熱やめまい、聴力低下を伴う場合などは、必ず医療機関を受診してください。単なる耳の痛みだと思って放置すると、重症化して中耳炎や外耳炎が悪化し、さらなる合併症を引き起こすリスクがあります。自己流の対策で改善しないときは、早めに専門医の診察を受けましょう。
参考文献
-
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アクセス日: 2023年5月6日 -
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https://health.clevelandclinic.org/3-home-remedies-for-an-ear-infection/
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https://www.medicalnewstoday.com/articles/312634
アクセス日: 2020年3月13日 -
Ear pain home treatment (WebMD)
https://www.webmd.com/cold-and-flu/ear-infection/ear-pain-home-treatment
アクセス日: 2020年3月13日 -
Remedies for earache (Healthline)
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アクセス日: 2020年3月13日 - Rosenfeld RM, Shin JJ, Schwartz SR, et al. (2023). “Clinical Practice Guideline: Otitis Media with Effusion (Update).” Otolaryngology–Head and Neck Surgery, 168(2_suppl), S1-S48. doi:10.1177/01945998221095954
- Venekamp RP, Thompson MJ, Rovers MM, Jeffries D. (2020). “Antibiotics for otitis media with effusion in children.” Cochrane Database of Systematic Reviews, (4). doi:10.1002/14651858.CD009163.pub3
- Conly J. (2021). “Management of acute otitis media in adult patients: A review.” The Lancet Infectious Diseases, 21(2), 131. doi:10.1016/S1473-3099(20)30598-4
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本記事の内容は、あくまで一般的な情報提供を目的としたもので、医師による診断や治療方針の決定を代替するものではありません。症状が続く、あるいは悪化する場合は、必ず医療機関を受診し、専門家の判断を仰いでください。特に処方薬の使用や手術歴、鼓膜の異常がある方は、自己判断のケアを始める前に医師と相談することを強く推奨します。ここで述べた情報はできるだけ正確性と新しさを期していますが、医学の進歩や個人差により、必ずしもすべての方に適用できるとは限りません。必ず主治医や専門家のアドバイスを優先してください。