耳の痛みの原因と対処法:子供の夜間・休日の応急処置から大人の関連痛まで徹底解説
耳鼻咽喉科疾患

耳の痛みの原因と対処法:子供の夜間・休日の応急処置から大人の関連痛まで徹底解説

ある日の夜中、突然のお子様の「耳が痛い!」という叫び声で目を覚ました経験はありませんか。あるいは、ご自身が風邪をひいた後、ズキズキとした耳の痛みに悩まされたことはないでしょうか。耳の痛み(耳痛)は、非常にありふれた症状でありながら、その原因は多岐にわたり、強い不安を引き起こすものです。特に、医療機関が閉まっている夜間や休日に症状が現れた場合、どのように対処すれば良いのか途方に暮れてしまう方も少なくありません。この記事は、そのような切実な悩みをお持ちの皆様のために、JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会が日本国内外の最新かつ信頼性の高い医学的知見を徹底的に分析し、まとめたものです。日本耳科学会や日本小児耳鼻咽喉科学会が示す診療指針に基づき123、耳の痛みの主な原因から、ご家庭で安全に行える科学的根拠のある応急処置、そして、どのような場合に医療機関を受診すべきかという具体的な判断基準までを、深く、そして分かりやすく解説します。本記事が、皆様の不安を和らげ、適切な行動をとるための一助となることを心から願っています。


この記事の科学的根拠

本記事は、入力された研究報告書で明示的に引用された最高品質の医学的根拠にのみ基づいて作成されています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的指針との直接的な関連性を示したリストです。

  • 日本小児耳鼻咽喉科学会・日本耳科学会: 本記事における小児急性中耳炎の診断、治療、および保護者への指導に関する核心的な推奨事項は、これらの学会が共同で作成した「小児急性中耳炎診療ガイドライン」(2018年版および2024年版)に準拠しています123。特に、解熱鎮痛薬の使用や受診の目安に関する記述は、このガイドラインが示すエビデンスに基づいています。
  • 米国家庭医学会(AAFP): 急性中耳炎の診断と管理に関する国際的な視点として、同学会の臨床レビューで示されたエビデンスを参考にしています4。これにより、日本のガイドラインとの共通点や相違点を踏まえた、より広い視野からの情報提供が可能となっています。
  • 国内の臨床医療機関(根本耳鼻咽喉科クリニックなど): 痛みを和らげるための具体的な応急処置(例:耳介後部の冷却)に関する実践的なアドバイスは、実際の臨床現場で患者指導を行っている医療機関の公開情報を参考に、その有効性と安全性を検証した上で記載しています5

要点まとめ

  • 耳の痛みの最も一般的な原因は「急性中耳炎」と「外耳炎」であり、特に小児では急性中耳炎が大多数を占めます。
  • 夜間や休日の急な耳の痛みに対して最も安全で推奨される応急処置は、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬の内服です。
  • 耳を冷やす場合は、氷嚢などをタオルで包み、耳の後ろの骨の部分に優しく当てるのが効果的です。耳の中に水や異物を入れることは絶対におやめください。
  • 高熱(38.5℃以上)、めまい、顔の動きの異常、耳の後ろの強い腫れや痛みがある場合は、夜間・休日であっても直ちに救急外来を受診する必要があります。
  • 多くの小児急性中耳炎は、適切な痛み止めを使用することで症状が緩和し、翌日の日中に耳鼻咽喉科を受診すれば問題ない場合がほとんどです。

耳の痛みを引き起こす主な原因

耳の痛みと一言で言っても、その原因は様々です。適切な対処を行うためには、まずどのような原因が考えられるのかを理解することが重要です。ここでは、特に頻度の高い代表的な疾患について解説します。

急性中耳炎(Acute Otitis Media, AOM)

急性中耳炎は、特に小児において耳の痛みを引き起こす最も一般的な原因です3。これは、風邪などをきっかけに鼻や喉の細菌・ウイルスが耳管(耳と鼻の奥をつなぐ管)を通って中耳(鼓膜の奥の空間)に侵入し、急性の炎症と膿の貯留を引き起こす疾患です6。小児は成人に比べて耳管が短く、太く、傾斜が水平に近いため、細菌やウイルスが中耳に到達しやすい構造になっています11。そのため、風邪や集団生活を始めたばかりの乳幼児に非常に多く見られます。

主な症状:

  • ズキズキとした拍動性の強い耳の痛み
  • 発熱
  • 耳だれ(鼓膜が破れて膿が出てくること)
  • 耳が詰まった感じ(耳閉感)や聞こえにくさ(難聴)
  • (乳幼児の場合)機嫌が悪い、頻繁に耳を触る、夜泣き

米国家庭医学会(AAFP)の報告によれば、診断の鍵は、急性の発症、中耳の滲出液の存在、そして中耳の炎症を示す鼓膜の膨隆や強い発赤といった兆候を耳鏡で確認することです4

外耳炎(Otitis Externa)

外耳炎は、耳の入り口から鼓膜までの「外耳道」に炎症が起きる疾患です。主な原因は、耳かきや指で外耳道の皮膚を傷つけてしまい、そこから細菌が感染することです8。「スイマーズイヤー」とも呼ばれるように、プールや海水浴で耳に水が入った後、不適切な綿棒の使用などによって発症することも少なくありません。

主な症状:

  • 耳を引っ張ったり、耳の入り口の軟骨(耳珠)を押したりすると痛みが増強する
  • かゆみを伴うことが多い
  • 耳だれ
  • 耳が詰まった感じ
  • 急性中耳炎と異なり、発熱を伴うことは比較的少ない

関連痛(Referred Otalgia)

耳自体には異常がないにもかかわらず、耳が痛いと感じるケースもあります。これを「関連痛」と呼びます9。耳の周辺には多くの神経が集中しており、喉(咽頭・扁桃)、顎関節、首、歯などの炎症や異常が、耳の痛みとして脳に伝えられることがあります。

主な原因:

  • 急性扁桃炎・咽頭炎: 喉の痛みが強いときに、耳の奥が痛むことがあります。
  • 顎関節症: 口を開け閉めする際に顎が鳴ったり痛んだりする場合、その痛みが耳に放散することがあります。
  • 虫歯や親知らずの問題: 奥歯の痛みが耳の痛みとして感じられることがあります。
  • 耳性帯状疱疹(ラムゼイ・ハント症候群): 水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化により、激しい耳の痛みに加え、顔面神経麻痺やめまい、難聴を引き起こす重篤な疾患です。

【特に保護者の方へ】夜間・休日の子供の耳痛への応急処置

お子様が夜間や休日に突然耳の痛みを訴えた時、保護者の方は冷静さを失いがちです。しかし、慌てずに適切な応急処置を行うことが、お子様の苦痛を和らげ、安全を確保する上で非常に重要です。ここでは、日本の診療ガイドラインや臨床現場の知見に基づいた、安全な対処法を段階的に説明します510

ステップ1:落ち着いて状況を観察する

まず、保護者自身が深呼吸をして落ち着きましょう。そして、お子様の状態を注意深く観察してください。

  • 痛みの程度: 泣き叫ぶほどの強い痛みか、時々痛いと訴える程度か。
  • 全身状態: 熱は何度あるか(38.5℃以上か)、ぐったりしていないか、呼びかけへの反応はどうか。
  • 他の症状: 耳だれは出ているか、めまいや吐き気はないか、顔の動き(口角が下がったり、目が閉じにくかったり)に左右差はないか。

これらの観察結果は、後ほど医療機関に相談したり受診したりする際に、非常に重要な情報となります。

ステップ2:科学的根拠のある方法で痛みを和らげる

急性中耳炎の痛みは非常に強いことがあり、痛みをコントロールすることが最初の目標となります。2024年版の小児急性中耳炎診療ガイドラインでも、鎮痛が重要であると強調されています2

解熱鎮痛薬の使用

ご家庭でできる最も安全かつ効果的な対処法は、アセトアミノフェンを含む解熱鎮痛薬(市販薬では「小児用バファリンCII」や「カロナール」と同じ成分)を使用することです57。これは、小児急性中耳炎診療ガイドラインでも第一選択として推奨されている、安全性の高い成分です1

使用上の注意:

  • 必ずお子様の年齢や体重に合った用法・用量を厳守してください。
  • アセトアミノフェンは、痛みを和らげる目的で使用できます。熱がなくても使用可能です。
  • 坐薬と飲み薬のどちらを使用しても構いません。嘔吐がある場合は坐薬が便利です。
  • 他の病気の可能性や薬物アレルギーが不明な場合は、使用前に薬剤師に相談するか、後述する相談窓口を利用してください。

耳の冷却

痛みを和らげる補助的な方法として、耳を冷やすことも有効です5。ただし、方法を誤ると逆効果になるため注意が必要です。

  • 正しい方法: 氷嚢や保冷剤などをタオルで何重かに包み、耳の後ろの出っ張った骨(乳様突起)のあたりに優しく当てます。冷たすぎると感じさせない程度の心地よい冷たさが目安です。
  • 誤った方法: 耳の穴を直接冷やしたり、冷たい液体を耳の中に入れたりすることは絶対におやめください。

ステップ3:避けるべき危険な対処法

インターネット上には様々な情報が溢れていますが、中には危険を伴うものもあります。以下の行為は絶対に行わないでください。

  • 耳の中に液体を入れる: オリーブオイルやその他の液体を耳の中に垂らすことは、感染を悪化させたり、鼓膜に穴が開いている場合に中耳にダメージを与えたりする危険性があります。
  • 耳かきや綿棒を奥まで入れる: 痛みの原因を確認しようとして耳の奥をいじることは、外耳道を傷つけたり、鼓膜を損傷したりする可能性があります。
  • 温める: 急性炎症の場合、温めることで血流が増加し、かえって痛みが増すことがあります。冷却が原則です。

医療機関を受診すべきタイミングの判断基準

家庭での応急処置はあくまで一時的なものです。最終的には専門医による診断と治療が必要となります。しかし、その緊急度は状況によって異なります。「キッズドクターマガジン」などの専門情報も参考に、受診のタイミングを冷静に判断しましょう11

直ちに夜間・休日救急外来を受診すべき危険な兆候

以下の症状が見られる場合は、急性中耳炎の合併症や、より重篤な疾患(急性乳様突起炎、髄膜炎、耳性帯状疱疹など)の可能性があります。夜間や休日であっても、ためらわずに救急外来を受診してください9

  • 38.5℃以上の高熱が続き、ぐったりしている
  • 激しいめまいや、ふらついて立てない
  • 顔の動きがおかしい(顔面神経麻痺:口が歪む、片目が閉じにくいなど)
  • 耳の後ろが赤く大きく腫れあがり、強い痛みを伴う
  • 意識が朦朧としている、けいれんを起こした
  • 痛みが解熱鎮痛薬で全く改善せず、激しく泣き叫び続ける

翌日以降、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診すべき場合

上記の危険な兆候はないものの、以下の症状がある場合は、翌日(あるいは休日明け)の日中に、必ず耳鼻咽喉科を受診してください。

  • 耳から膿や液体が出ている(耳だれ)
  • 痛みが続いている、あるいは一旦治まった痛みがぶり返す
  • 聞こえが悪い、耳が詰まった感じが続く
  • 生後6ヶ月未満の乳児が耳の痛みを訴えている(またはそのように見える)

応急処置で改善し、日中の受診で良い場合

多くのお子様の急性中耳炎は、このケースに該当します10

  • 夜間の痛みが解熱鎮痛薬の使用で和らぎ、比較的落ち着いて眠れている
  • 熱があっても38.5℃未満で、全身状態は良好である
  • 上記の「危険な兆候」が全く見られない

この場合、慌てて夜間救急に駆け込む必要はありません。応急処置を続けながら、翌日の診療時間内に、かかりつけの耳鼻咽喉科を受診すれば十分です。


よくある質問

Q. 大人が使っている痛み止めの点耳薬を子供に使っても良いですか?

A. 絶対におやめください。大人用の点耳薬は、成分の濃度や種類が子供に適していない場合があります。また、鼓膜に穴が開いている(穿孔性中耳炎)場合に使用すると、中耳や内耳に障害を引き起こす可能性がある成分を含んでいることもあります。自己判断での点耳薬の使用は非常に危険です。必ず医師の診察を受けた上で、処方された薬を使用してください7

Q. 鼻を強くかんでも大丈夫ですか?

A. 鼻を強くかむことは避けるべきです。特に急性中耳炎の場合、鼻を強くかむと鼻の奥の細菌やウイルスが耳管を通って中耳に送り込まれ、炎症を悪化させる可能性があります6。鼻をかむ際は、片方ずつ、ゆっくりと優しくかむようにしてください。まだ自分で鼻をかめない小さなお子様の場合は、市販の鼻吸い器で優しく吸引してあげるのが効果的です。

Q. 急性中耳炎はどのくらいで治りますか?

A. 症状や重症度によりますが、適切な治療を行えば、強い痛みや発熱は通常2~3日で改善します。しかし、中耳に溜まった滲出液が完全に吸収されて聴力が元に戻るまでには、数週間から数ヶ月かかることもあります4。医師の指示通りに治療を続け、完治したことを確認してもらうまで通院を続けることが非常に重要です。

Q. 飛行機に乗ると耳が痛くなるのも中耳炎ですか?

A. それは「航空性中耳炎」と呼ばれる状態で、急な気圧の変化に耳管の機能が追いつかず、中耳の圧力が調整できなくなることで起こります。風邪をひいていたり、アレルギー性鼻炎があったりすると、耳管が腫れて機能が低下するため、起こりやすくなります。急性中耳炎とはメカニズムが異なりますが、症状が強い場合は耳鼻咽喉科への相談が推奨されます。予防策としては、離着陸時にあくびをする、飴をなめる、ガムを噛む、バルサルバ法(鼻をつまんで優しく耳抜きをする)などが有効です8


結論

耳の痛みは、子供から大人まで誰にでも起こりうる、非常につらい症状です。特に、言葉でうまく症状を伝えられない小さなお子様が夜中に痛みを訴える時、保護者の皆様の不安は計り知れません。しかし、本記事で解説したように、耳の痛みの原因を大まかに推測し、科学的根拠に基づいた安全な応急処置を行うことで、パニックに陥ることなく、冷静に対処することが可能です。最も重要なことは、アセトアミノフェンなどの安全な解熱鎮痛薬でまずはしっかりと痛みを取り除いてあげること、そして重篤な合併症を示唆する危険な兆候を見逃さないことです。ほとんどの場合、適切な応急処置によって夜間を乗り切り、翌日に専門医の診察を受けることで問題なく回復へと向かいます。この情報が、皆様にとって信頼できる「お守り」となり、いざという時に落ち着いて最善の行動を選択するための一助となることを、JHO編集委員会一同、心より願っております。

免責事項本記事は、情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念がある場合や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 日本小児耳鼻咽喉科学会, 日本耳科学会. 小児急性中耳炎診療ガイドライン 2018年版 [インターネット]. 東京: 日本医療機能評価機構; 2018. 引用日: 2025年7月21日. Available from: https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00478/
  2. 日本小児耳鼻咽喉科学会, 日本耳科学会. 小児急性中耳炎診療ガイドライン 2024年版 第5版. 東京: 金原出版; 2024. Available from: https://www.kanehara-shuppan.co.jp/books/detail.html?isbn=9784307371391
  3. 日本耳科学会. 小児急性中耳炎 [インターネット]. 2018. 引用日: 2025年7月21日. Available from: https://www.otology.gr.jp/common/pdf/guideline_otitis2018.pdf
  4. Lieberthal AS, Carroll AE, Chonmaitree T, Ganiats TG, Hoberman A, Jackson MA, et al. The diagnosis and management of acute otitis media. Pediatrics. 2013 Mar;131(3):e964-99. doi: 10.1542/peds.2012-3488. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23439909/
  5. 根本耳鼻咽喉科クリニック. 急性中耳炎の応急処置 [インターネット]. 引用日: 2025年7月21日. Available from: https://nemoto.or.jp/mame/80/
  6. ふじわら耳鼻咽喉科. 中耳炎(耳が痛い・耳だれ)の治療 [インターネット]. 富田林市. 引用日: 2025年7月21日. Available from: https://www.fujiwara-jibika.com/aom/
  7. Ubie株式会社. 耳の痛みに対して自分でできる、即効性のある対処法はありますか? [インターネット]. 引用日: 2025年7月21日. Available from: https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/symptom/pl1caajeuh3
  8. 泉川クリニック. 耳の中(奥)が痛い・ズキズキする原因と治し方 [インターネット]. 大阪市. 引用日: 2025年7月21日. Available from: https://www.izumikawa-clinic.com/inthe_ear/
  9. 株式会社プレシジョン. 耳が痛い:原因は?風邪との関係は?病院受診のタイミングは?治療は? [インターネット]. 2022. 引用日: 2025年7月21日. Available from: https://www.premedi.co.jp/%E3%81%8A%E5%8C%BB%E8%80%85%E3%81%95%E3%82%93%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3/h00308/
  10. たていし耳鼻咽喉科. 夜間、休日 急性中耳炎が疑われるとき・家でできることは [インターネット]. 2023年9月13日. 引用日: 2025年7月21日. Available from: https://www.tateishi-ent-cl.com/2023/09/13/967/
  11. キッズドクターマガジン. 子どもの中耳炎の受診目安は? [インターネット]. 引用日: 2025年7月21日. Available from: https://kids-doctor.jp/magazine/kwteb2puxu4
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