【専門医が徹底解説】特発性大腿骨頭壊死症とは?原因・初期症状から最新治療、難病申請まで
筋骨格系疾患

【専門医が徹底解説】特発性大腿骨頭壊死症とは?原因・初期症状から最新治療、難病申請まで

股関節に突然、あるいは持続的な痛みを感じたとき、多くの人は単なる筋肉痛や関節の使いすぎを考えるかもしれません。しかし、その痛みが「特発性大腿骨頭壊死症(とくはつせいだいたいこつとうえししょう)」という、骨が静かに壊死していく難病のサインである可能性もあります。この病気は、特に働き盛りの世代を襲い、診断された方やそのご家族に大きな不安と混乱をもたらします。JapaneseHealth.org編集委員会は、この記事が、特発性大腿骨頭壊死症(ONFH)と診断された方、あるいはその疑いがある方々にとって、信頼できる羅針盤となることを目指しています。本稿では、日本の主要な診療ガイドラインと公的データを基に、この病気の全体像を深く、かつ分かりやすく解き明かします。原因や初期症状の見極め方から、最新の治療選択肢、そして日本の公的支援制度である「難病医療費助成制度」の具体的な申請方法に至るまで、あなたが情報に基づいた最善の決断を下すために必要な知識を網羅的に提供します。


この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性を含むリストです。

  • 日本整形外科学会 (JOA) / 厚生労働省 (MHLW): 本記事における特発性大腿骨頭壊死症の定義、診断基準、病期・病型分類、および治療選択肢に関する指針は、主に日本整形外科学会が策定し、厚生労働省の研究班によって検証された「特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン」に基づいています12。これは日本国内における診療の根幹をなす最も権威ある情報源です。
  • 厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 研究報告書: 日本国内の患者数、年齢・性別分布、ステロイドやアルコールといった原因別の割合などの具体的な疫学データは、厚生労働省の公式な研究調査報告書を引用しています3。これにより、記事の背景情報に正確性と信頼性を持たせています。
  • 難病情報センター: 国の指定難病としての定義、認定基準、および医療費助成制度の申請手続きに関する情報は、公益財団法人難病医学研究財団が運営する難病情報センターの公式情報に基づいています4。これは、患者さんが実用的な支援を得るための最も重要な情報源です。
  • 国際的な査読付き医学論文: 骨切り術や人工関節置換術、再生医療などの特定の治療法に関する最新の知見や国際的な動向については、PubMed等で公開されている査読付きの学術論文を参考にし、日本のガイドラインとの比較検討を行っています。

要点まとめ

  • 特発性大腿骨頭壊死症とは:大腿骨の付け根部分である「大腿骨頭」への血流が滞り、骨組織が壊死(死んでしまうこと)する病気です。感染やがんが原因ではなく、国の「指定難病」の一つです。
  • 主な原因:最大の危険因子はステロイド薬の大量使用で、次に多いのがアルコールの多飲です。しかし、原因が全く不明な場合も少なくありません。特に働き盛りの30代から50代に多く発症します。
  • 診断の鍵はMRI:初期段階ではX線写真(レントゲン)で異常が見つからないことが多く、早期発見にはMRI検査が不可欠です。病気の進行度(ステージ)と壊死範囲(タイプ)の分類が治療方針を決定します。
  • 多様な治療法:治療は病期や年齢、活動度に応じて選択されます。初期には骨の温存を目指す「骨切り術」や「再生医療」が、進行期には痛みの除去と機能回復に優れた「人工関節置換術」が主な選択肢となります。
  • 公的支援制度の活用:この病気は国の指定難病であるため、重症度などの基準を満たせば「難病医療費助成制度」の対象となり、医療費の自己負担が大幅に軽減されます。正しい手続きを知ることが重要です。

これは単なる股関節の痛みではありません

股関節の痛みはありふれた症状ですが、特発性大腿骨頭壊死症(Idiopathic Osteonecrosis of the Femoral Head、以下ONFH)は、一般的な変形性股関節症とは根本的に異なります。変形性股関節症が主に加齢により軟骨がすり減って起こるのに対し、ONFHは血流障害によって骨そのものが死んでしまう病気です5。骨が壊死すると、その部分の強度が失われ、体重がかかることで骨頭が潰れ(圧潰)、激しい痛みや歩行困難を引き起こします。この病気の本質を理解することが、適切な対処への第一歩となります。

あなたは一人ではない:日本のONFH患者の現状

データで見る疫学情報

ONFHは「稀な病気」と思われがちですが、決してそうではありません。厚生労働省の研究班による全国調査によると、日本国内でONFHの治療を受けている患者数は約23,100人、そして毎年約2,100~2,200人が新たにこの病気と診断されていると推定されています3。これは、決して他人事ではない数字であり、多くの人々がこの病気と向き合っていることを示しています。

男女と年齢で見るリスクの違い

この病気の発症には、性別や年齢によって明確な傾向が見られます。厚生労働省のデータ分析によると、発症年齢のピークは男性では40代、女性では30代と60代に二つの山があります3。原因別に見ると、アルコールに関連するONFHは圧倒的に男性に多く、一方でステロイドに関連するONFHは、全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患の治療を受けることが多い女性にも多く見られます。このように、ご自身の性別、年齢、そして生活習慣や既往歴が、この病気のリスクを考える上で重要な手がかりとなります。

なぜ起こるのか?ONFHの主な原因と危険因子

ONFHの発症メカニズムは完全には解明されていませんが、血流障害を引き起こす危険因子はかなり特定されています。「特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン2019」によれば、主な原因はステロイド使用とアルコール多飲であり、これらが全体の約80%を占めます1

ステロイド使用との関連

全身性エリテマトーデス(SLE)、腎臓病、気管支喘息など、様々な病気の治療に用いられる副腎皮質ステロイド薬の投与は、ONFHの最大の危険因子です1。特に、一日あたりのプレドニゾロン換算量が多い場合など、高用量のステロイド治療を受けた場合に発症リスクが高まることが知られています。ステロイドがどのようにして血流障害を引き起こすかについては、血液が固まりやすくなる(血液凝固能亢進)、血液中の脂質代謝に異常をきたす、血管内皮細胞を障害するなど、複数の仮説が提唱されていますが、決定的な結論には至っていません。

アルコール多飲との関連

習慣的なアルコールの多量摂取は、特に日本人男性における主要な危険因子です3。日本の診療ガイドラインでは、週あたりの純エタノール換算で400mL以上の飲酒が危険因子とされています1。これは、日本酒なら約15合、ビールなら大瓶約15本に相当する量です。アルコールが関連する発症メカニズムもステロイドと同様に完全には解明されていませんが、肝機能障害を介した脂質代謝異常や血液凝固異常などが関与していると考えられています。日本の社会文化における「飲み会」などの習慣が、このリスクと無関係ではない可能性も指摘されています。

その他の原因と真の「特発性」

ステロイドやアルコールといった明確な危険因子がないにもかかわらず発症する場合もあり、これが本来の「特発性」と呼ばれます。その他、まれな原因として、大腿骨頸部骨折などの外傷、潜水士などにみられる減圧症、放射線治療、化学療法などが挙げられます5。これらの因子がない場合は、遺伝的な背景も含め、未だ解明されていない要因が関わっていると考えられています。

気づきにくい初期症状と進行のサイン

ONFHの恐ろしさの一つは、初期段階では症状がほとんどないことです。骨の壊死が始まっても、骨頭が圧潰するまでは痛みを感じない「無症候性」の期間が数ヶ月から数年にわたって続くことがあります6

「発症」の瞬間:突然の股関節痛

多くの場合、最初の自覚症状は、歩行時や階段の上り下り、立ち上がる際などに感じる、股関節(足の付け根)の突然の鋭い痛みです5。この痛みは、安静にしていると和らぐこともありますが、体重がかかると再び現れます。痛みの部位は、お尻や太ももの前側、膝にまで及ぶこともあり、腰の病気と間違われることもあります。

進行するとどうなるか?可動域制限と跛行

骨頭の圧潰が進行すると、痛みは持続的かつ強くなります。それと同時に、股関節の動きが悪くなる「可動域制限」が現れます。あぐらをかく、靴下を履く、足の爪を切るといった動作が困難になります6。痛みと可動域制限から、無意識に患部をかばって歩くようになり、「跛行(はこう)」と呼ばれる、足を引きずるような歩き方になります。

確定診断への道:検査と病期・病型分類

ONFHの診断と治療方針の決定には、画像検査による正確な評価が不可欠です。

診断プロセス:問診から画像検査まで

診断は、まずステロイド使用歴や飲酒歴、症状についての詳細な問診から始まります。次に画像検査が行われますが、ここで最も重要なのがMRIです。X線(レントゲン)検査では、骨頭の圧潰が始まるまで(ステージ3以降)は異常が映らないことがほとんどです。一方、MRIは骨の中の微細な変化を捉えることができるため、X線で異常がないステージ1の段階でも壊死を検出することが可能です15。したがって、ONFHが疑われる場合には、MRI検査が確定診断のための「ゴールドスタンダード」となります。

【重要】病期(ステージ)分類:あなたの壊死はどの段階?

ONFHの進行度を示す「病期(ステージ)」分類は、治療方針を決定する上で極めて重要です。日本の厚生労働省研究班が定めた基準では、以下のように分類されます1

  • ステージ1:X線では異常なし。MRIでのみ診断可能。
  • ステージ2:X線で骨頭に骨硬化像や嚢胞が見られるが、圧潰はない。
  • ステージ3:X線で骨頭の圧潰が始まる(初期の扁平化)。「クレセントサイン(三日月状の骨折線)」が見られることもある。
  • ステージ4:骨頭の圧潰が進行し、関節の隙間が狭くなるなど、変形性関節症の変化を伴う。

【重要】病型(タイプ)分類:壊死の場所が予後を決める

ステージ分類と並行して、MRI画像から壊死の範囲と位置を評価する「病型(タイプ)」分類も行われます。これは骨頭が将来的に圧潰するリスクを予測するために重要です1

  • タイプA/B:壊死範囲が比較的小さく、体重がかかる主要な部分を外れている。圧潰のリスクは比較的低い。
  • タイプC (C1/C2):壊死範囲が広く、体重がかかる部分の大部分を占めている。圧潰のリスクが非常に高く、多くの場合、骨を温存するための早期の外科的介入が検討される。

ご自身の病気がどのステージ、どのタイプに分類されるかを主治医に確認し、理解することが、治療法を共に考えていく上で不可欠です。

治療法の全貌:保存療法から最先端手術まで

ONFHの治療目標は、痛みをコントロールし、関節機能を維持・改善することです。治療法は、ステージ、タイプ、年齢、活動レベルなどを総合的に考慮して決定されます。

保存療法:手術をしない選択肢

手術をしない保存療法は、主にステージ1や2の初期段階で、壊死範囲が小さい(タイプAや一部のB)場合、または症状がない場合に選択されます1。主な目的は痛みの緩和であり、壊死の進行そのものを止める確実な方法は確立されていません。具体的には、杖の使用による免荷(体重をかけないようにすること)や、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による薬物療法が行われます。ビスフォスフォネート製剤などが進行を抑制する可能性について国際的に研究されていますが、日本の標準治療としては確立していません。

関節温存手術:自分の関節を守るための戦い

骨頭の圧潰がまだ起きていない、あるいは軽度である若年・中年層の患者さんに対しては、自身の関節を温存するための手術が検討されます。これは、将来的な人工関節への移行を遅らせることを目的とします。

骨切り術(こつきりじゅつ)

骨切り術は、大腿骨を切って角度を変え、壊死部分を体重がかかる場所から健常な部分へ移動させる手術です5。代表的なものに「大腿骨頭回転骨切り術」があります。これは技術的に難易度の高い手術ですが、成功すれば自分の関節で長期にわたり良好な機能を維持できる可能性があります。日本では、若年者に対して重要な治療選択肢と位置づけられています。

骨穿孔術(こっせんこうじゅつ)と再生医療

骨穿孔術(コア減圧術)は、壊死部にドリルで穴を開けて内圧を下げ、血流の改善と骨再生を促す方法です。単独で行われることは少なく、近年では自家骨髄液中の幹細胞を移植する方法など、再生医療技術との組み合わせが試みられています7。これらは、初期段階のONFHに対する有望な治療法として期待されていますが、まだ研究段階の側面も大きいのが現状です。

人工関節置換術:痛みのない生活を取り戻す最終手段

骨頭の圧潰が進行し(ステージ3、4)、痛みや機能障害が著しい場合には、人工関節置換術が最も確実で効果的な治療法となります8。これは、損傷した骨頭と臼蓋(骨盤側の受け皿)を金属やポリエチレンなどでできた人工の関節(インプラント)に置き換える手術です。この手術により、多くの患者さんが痛みから解放され、日常生活や軽いスポーツに復帰することが可能になります。近年では、筋肉へのダメージを最小限に抑える低侵襲手術(MIS)も普及し、術後の回復が早まっています。

【実践ガイド】国の指定難病制度と医療費助成

ONFHと診断されたとき、治療そのものと並行して直面するのが経済的な負担です。しかし、この病気は日本の公的な支援制度の対象となっています。このセクションは、その制度を理解し、活用するための実践的な手引きです。

あなたは対象者?指定難病の認定基準

ONFHは、国の「指定難病71」としてリストされています4。この制度の対象となるためには、まずONFHであるという診断が確定していることに加え、病状の重症度が一定の基準を満たす必要があります。具体的には、X線所見でステージ2以上、またはMRI所見でタイプBもしくはタイプCであることが主な基準となります。つまり、比較的初期の段階から助成の対象となる可能性があります。

申請手続きのステップ・バイ・ステップ

医療費助成を受けるための申請は、以下の手順で進めます。手続きは複雑に感じるかもしれませんが、一つずつ進めることが大切です。

  1. 指定医の受診:まず、お住まいの都道府県が指定した「難病指定医」のいる医療機関を受診し、診断を受ける必要があります。
  2. 臨床調査個人票の作成依頼:指定医に、助成申請に必要不可欠な書類である「臨床調査個人票」の作成を依頼します。この書類に、診断名や重症度分類が記載されます。
  3. 必要書類の準備:臨床調査個人票の他に、申請書、住民票、世帯の所得を証明する書類、健康保険証の写し、マイナンバー関連書類などが必要になります。必要な書類は自治体によって若干異なる場合があるため、必ず確認してください。
  4. 保健所への提出:全ての書類が揃ったら、お住まいの地域を管轄する保健所(または市区町村の担当窓口)に提出します。

申請が承認されると、「医療受給者証」が交付され、医療費の助成が開始されます。詳細な情報や最新の手続きについては、難病情報センターのウェブサイトや、お住まいの自治体の保健所にご確認ください9

受けられる支援の内容

この制度により、ONFHに関連する医療(診察、薬剤、手術、リハビリテーションなど)について、医療保険適用後の自己負担額が、世帯の所得に応じて定められた上限額までに抑えられます。これにより、高額になりがちな手術や長期にわたる通院の経済的負担が大幅に軽減されます。

ONFHと共に生きる:日常生活と心のケア

仕事、運動、生活習慣の調整

診断後も、多くの人は仕事や日常生活を続けることになります。デスクワークのような股関節への負担が少ない仕事は継続しやすいですが、重労働や長時間の立ち仕事は、症状や治療法に応じて調整が必要になる場合があります。運動については、水泳やエアロバイクなど、関節に負担の少ないものが推奨されます。医師や理学療法士と相談しながら、適切な活動レベルを見つけることが大切です。

不安やストレスとどう向き合うか

「難病」という診断は、将来への不安、痛みへの恐怖、キャリアや人生設計への影響など、大きな精神的ストレスをもたらします。この不安は決して一人で抱え込む必要はありません。信頼できる家族や友人、主治医に気持ちを話すこと、そして必要であれば心理カウンセリングなどの専門的なサポートを受けることも非常に有効です。正しい情報を得て病気を理解することも、漠然とした不安を軽減する助けになります。

患者会とサポートグループ

同じ病気を抱える他の患者さんと交流することは、大きな心の支えになります。経験を共有し、情報を交換し、共感しあうことで、孤独感が和らぎ、前向きな気持ちを取り戻すことができます。日本にはONFHの患者会も存在しますので、情報を探してみることをお勧めします。

よくある質問

この病気は遺伝しますか?

特発性大腿骨頭壊死症の明確な遺伝性は証明されていません。しかし、家族内で発症する例も報告されており、骨の脆弱性や血液凝固のしやすさなど、何らかの遺伝的素因が関与している可能性は研究されています。ただし、親がこの病気だからといって、子供が必ず発症するわけではありません。

人工関節の手術後、スポーツはできますか?

はい、多くのスポーツへの復帰が可能です。ウォーキング、ゴルフ、水泳、サイクリング、軽いテニス(ダブルス)など、股関節への衝撃が少ないスポーツは推奨されます。一方で、ジャンプや急な方向転換を伴うサッカー、バスケットボール、柔道などのコンタクトスポーツは、インプラントの摩耗や緩みの原因となる可能性があるため、避けるべきとされています。最終的な判断は、手術を担当した医師にご相談ください8

この病気を完全に予防する方法はありますか?

残念ながら、現時点で完全に予防する確立された方法はありません。しかし、危険因子を管理することは重要です。ステロイド治療が必要な場合は、ONFHの発症リスクについて主治医とよく話し合い、可能な限り最小限の量と期間に留める努力がなされます。アルコールについては、節度ある飲酒を心がけることが、最も有効な個人でできる予防策と言えます。

この病気は自然に治りますか?

壊死した骨組織が自然に再生して完全に治癒することは、残念ながら期待できません。ごく初期で壊死範囲が非常に小さい場合に、進行せずに症状が出ないまま経過することはありますが、一度始まった壊死のプロセスが元に戻ることはないと考えられています。そのため、適切な時期に適切な治療介入を行うことが重要になります。

どの診療科、どの病院に行けばよいですか?

股関節の痛みが続く場合は、まず「整形外科」を受診してください。特に、股関節外科や人工関節を専門とする医師がいる病院を選ぶことが望ましいです。ONFHは専門性の高い疾患であるため、診断や治療の経験が豊富な医療機関で相談することが、最善の治療結果につながります。

結論:希望を持って、正しい情報と共に一歩を踏み出す

特発性大腿骨頭壊死症という診断は、誰にとっても衝撃的で、先の見えない不安を感じさせるものです。しかし、この病気は「不治の病」ではありません。医学の進歩により、診断技術は向上し、骨切り術や人工関節置換術といった効果的な治療法が確立されています。さらに、日本では国による手厚い医療費助成制度も整えられています。最も大切なことは、不確かな情報に惑わされず、この記事で提供したような科学的根拠に基づいた正しい知識を身につけることです。そして、その知識を持って主治医と深く対話し、ご自身の年齢、活動度、ライフプランに最も合った治療法を共に選択していくことです。希望を失わず、正しい情報と共に、着実な一歩を踏み出してください。

免責事項本記事は、情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康に関する懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 日本整形外科学会, 厚生労働省特発性大腿骨頭壊死症研究班. 特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン2019. 南江堂; 2019. Available from: https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00541/
  2. 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業. 「特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン 2019」の検証. 2022. Available from: https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202211002B-buntan51.%20%E3%80%90R2%202-12%E5%A4%A7%E9%98%AA%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%AE%89%E8%97%A4%E3%80%91%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%A4%9C%E8%A8%BC_0.pdf
  3. 福島 若葉, 他. 特発性大腿骨頭壊死症の全国疫学調査. 厚生労働科学研究成果データベース. 2016. Available from: https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2016/162051/201610043A_upload/201610043A0009.pdf
  4. 難病情報センター. 特発性大腿骨頭壊死症(指定難病71) [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.nanbyou.or.jp/entry/160
  5. 日本整形外科学会. 「特発性大腿骨頭壊死症」|症状・病気をしらべる [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/femur_head_necrosis.html
  6. メディカルノート. 骨が壊死する難病「特発性大腿骨頭壊死症」とは?突然の股関節の痛みに注意 [インターネット]. 2017. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://medicalnote.jp/diseases/%E5%A4%A7%E8%85%BF%E9%AA%A8%E9%A0%AD%E5%A3%8A%E6%AD%BB/contents/170605-004-RV
  7. Chang CC, et al. Core decompression and concentrated bone marrow aspirate injection for the treatment of osteonecrosis of the femoral head: a meta-analysis of controlled studies. BMC Musculoskelet Disord. 2021;22(1):199. doi:10.1186/s12891-021-04024-7. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7905141/
  8. 股関節の専門医 久留隆史. 大腿骨頭壊死症とは | 人工股関節置換術の第一人者 [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://kokansetsu-dr.com/symptoms/avascular-necrosis-of-the-femoral-head/
  9. 厚生労働省. 指定難病71 特発性大腿骨頭壊死症 [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/001173522.pdf
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