はじめに
民間療法として、長年にわたり「ウコン(一般的に呼ばれるターメリック)とハチミツ」を組み合わせて摂取する方法が広く知られています。とくに、ウコンとハチミツを混ぜて飲むことで、胃潰瘍や胃炎、胃酸過多など、さまざまな消化器系の不調を緩和する効果が期待できるとされています。本稿では、ウコンとハチミツがどのようなメカニズムで胃の不快症状をサポートするのか、また具体的な飲み方や注意点を詳しくご紹介します。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
専門家への相談
本記事に登場する方法はあくまでも一般的に流布している情報や研究をまとめたものであり、医師や薬剤師のような有資格の専門家が個別に直接診療したわけではありません。ただし、本記事では以下のように公的機関や研究成果に基づく情報、そして大学等で専門知識を有する方の見解を参照し、情報の正確性向上に努めました。
- 参考として記載のある論文や各種医療機関のウェブサイト(後述の「参考文献」参照)
- 大学などで臨床に携わり、薬理学的観点にも通じたThạc sĩ – Dược sĩ – Giảng viên Lê Thị Mai(修士・薬剤師・講師)の見解・指摘を踏まえた内容
ただし、読者の方が実際にウコンやハチミツを胃の治療目的で活用する場合は、必ず担当の医療従事者と相談のうえで行うようにしてください。
ウコンとハチミツが胃に及ぼす作用
民間では、ウコンとハチミツの組み合わせが胃潰瘍や胃炎、胃酸過多などに良いといわれています。これには、伝統医学(漢方や東洋医学)と近年の近代医学の両面から、以下のような説明ができます。
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東洋医学的な見解
ウコンは苦味と温性を持ち、胆汁の分泌を促し、血の滞りを散らし、殺菌効果などがあると考えられてきました。一方で、ハチミツは体の余分な熱をとり、便通を整え、痛みを和らげるなどのはたらきがあるとされます。両者を組み合わせることで、胃の粘膜を保護しつつ、炎症や細菌への対抗力を高める効果が期待されます。 -
近代医学的な見解
ウコンには特有の香りをもたらす精油成分もわずかに含まれていますが、最も注目されているのはウコンの黄色い色素のもととなるクルクミンと呼ばれる成分です。クルクミンは抗酸化、抗炎症作用を有するとされ、胃粘膜を傷つける因子を抑え、潰瘍の進行を遅らせる可能性が指摘されています。
一方、ハチミツは糖類を中心に、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、フラボノイドなど多様な抗酸化物質を少量ずつ含有していることが特徴です。さらに、一部のハチミツにはHelicobacter pylori(ピロリ菌)を抑制する可能性があることも示唆されています。こうした総合的な機能から、ウコンとハチミツを組み合わせることによって、胃酸の過剰分泌が原因となる症状や炎症を緩和したり、胃粘膜をサポートしたりするはたらきが期待されるのです。
ウコンは黄ウコン?黒ウコン?どちらが胃には良いのか
「ウコン」といっても、実はさまざまな種類があります。代表的なのは、一般的にカレー粉などにも用いられる黄ウコンと、根茎が暗紫色を帯びることから「黒ウコン」と呼ばれるものです。
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黒ウコンは生理不順や月経痛対策がメイン
東洋医学では、黒ウコンは血を巡らせる作用が非常に強く、月経不順や月経痛などの治療に使われることがあります。しかし、黒ウコンは胃粘膜の炎症や潰瘍に対してはかえって刺激が強すぎ、潰瘍の悪化や出血につながる可能性が指摘されます。 -
胃への使用は黄ウコンが推奨される
胃の粘膜保護や消化器系をサポートする目的で使われる場合には、いわゆる黄ウコン(一般的なターメリック)の方が適しています。したがって、ここで紹介するハチミツとの組み合わせも「黄ウコン+ハチミツ」が基本となります。
ウコンとハチミツ摂取による副作用の可能性
民間療法として好評なウコンとハチミツですが、一部のケースでは以下のような副作用も報告されています。特に大量摂取や体質との相性に注意しましょう。
- 消化器症状
過剰に摂取した場合、胃もたれ、鼓腸感、逆流、下痢などを引き起こすことがあります。 - 胆嚢・胆道への影響
ウコンは胆汁の分泌を促す性質があるため、胆嚢疾患や胆管に問題を抱えている方には負担となる可能性があります。 - アレルギー
ウコンまたはハチミツに含まれる成分へ体質的に敏感な方は、じんましんやかゆみなどの症状を起こす場合があります。 - 鉄分吸収の阻害
クルクミンが鉄の吸収をある程度阻害する可能性も指摘されており、貧血気味の方には注意が必要です。 - 薬物相互作用
ワルファリンなどの抗凝固薬、抗うつ薬、抗がん剤、糖尿病治療薬など、一部の医薬品とウコンの成分が相互作用を起こす可能性があります。
服用中の薬がある場合や、持病がある方は、必ず主治医や薬剤師に相談してください。
ウコンとハチミツを使った胃サポートの3つの方法
1. ターメリックパウダー(精製ウコン粉)+ハチミツ
もっとも手軽に取り入れやすく、ウコンの有効成分を安定して摂取できる方法です。
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準備するもの
- 精製ウコン粉(ターメリックパウダー) 小さじ1(約5g)
- ハチミツ 大さじ1(約15ml)
- ぬるま湯(約500ml)
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作り方・摂取方法
- 500mlほどのぬるま湯にウコン粉とハチミツを加えてよく混ぜる。
- 1日量を3回に分け、食後30分くらいに飲む。
- 飲みにくい場合は、各回ごとにウコン粉とハチミツを直接少量の水で溶き、都度作ってもOK。
なお、ターメリックパウダーには特有の香りや風味があるので、人によっては胃への刺激を感じることもあります。その場合はウコン粉を「精製度の高いウコンパウダー」または「クルクミン含有量を調整した製品」に替えると、飲みやすくなることもあります。
2. 生ウコンのハチミツ漬け
生ウコンをハチミツに漬け込むことで、有効成分をハチミツ側に引き出しながら同時にウコン自体もしっとり柔らかくするという昔ながらの方法です。独特の風味を好む方に向いています。
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準備するもの
- 生ウコン(約100g)
- ハチミツ(約150ml)
- 密閉できるガラス容器
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作り方・摂取方法
- 生ウコンをよく洗い、皮をむいて薄切りにする。
- ガラス容器にウコンを入れ、上からハチミツをかけて完全に浸すようにする。
- 直射日光を避け、涼しい場所で1週間ほど漬け込む。
- 漬け込んだあとのハチミツとウコンをティースプーン1杯分程度すくい、ぬるま湯約150mlで溶かして1日3回、食後30分を目安に飲む。
ウコンをハチミツに漬けるとハチミツのほうが濃いオレンジ色に染まります。これがいわゆるウコンの主成分が溶け出しているサインです。漬け込んだウコン自体を少しずつ食べるという人もいますが、食べ過ぎには注意しましょう。
3. 生ウコンの絞り汁+ハチミツ
「ウコンを鮮度の高い状態で使いたい」という方には、この方法がおすすめです。ウコンの香りや辛味成分をダイレクトに感じられます。
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準備するもの
- 生ウコン 1かけら(約15g)
- ハチミツ 大さじ1
- ぬるま湯(約500ml)
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作り方・摂取方法
- 生ウコンを洗って皮をむき、すりおろすか、すり鉢などですりつぶして汁を絞る。
- 絞り汁をハチミツとともに500mlのぬるま湯に溶かす。
- 1日量を3回に分けて飲む(食後30分が目安)。
生ウコンは、市販のパウダーに比べると風味や成分濃度にばらつきが出やすいですが、その分フレッシュな風味を味わえます。
ウコン+ハチミツでより効果を引き出すためのポイント
ウコンやハチミツを胃のために摂取する場合でも、ライフスタイルを見直さないと十分な効果が得られない場合があります。以下の点に留意しましょう。
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摂取を避けたほうがいい、または医師に確認すべき方
- 妊娠中の方
- 慢性疾患(肝臓病、腎臓病、糖尿病など)のある方
- 西洋薬を常用している方(抗凝固薬、抗うつ薬、抗がん剤、降圧薬など)
- 胆嚢や胆管にトラブルを抱えている方
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胃への負担を減らす食習慣
- 栄養バランスを考え、食物繊維を適度に取り入れる
- よく噛んでゆっくり食べる
- 毎日決まった時間に食事をとり、暴飲暴食を避ける
- アルコールやタバコを控える
- 夜更かしやストレス過多な生活を見直す
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早期の検査・治療の重要性
ウコンやハチミツはあくまで補助的なサポート策です。もし胃痛やみぞおちの不快感、吐き気、食欲不振などが長引くようなら、まずは早めに医療機関で診断を受けてください。胃潰瘍や胃炎、ピロリ菌感染など、原因に応じて適切な治療が必要となるケースがあります。 -
効果を感じるには根気が必要
市販薬のような即効性はあまり期待できないかもしれませんが、継続することで胃の状態が徐々に落ち着いていくと感じる人も多いです。ただし、症状が強い場合や悪化している場合は、自己判断ではなく専門医療機関での治療が優先されるべきです。
免責事項および注意点
本記事は、胃の不調でお悩みの方々を対象とした情報提供を目的としており、医師や薬剤師などの専門家による正式な診断や治療に代わるものではありません。特に、持病やアレルギーをお持ちの方、妊娠中・授乳中の方、特定の薬を服用中の方は、ウコンやハチミツの摂取を始める前に必ず専門の医療従事者へご相談ください。
また、ウコンやハチミツを摂取したことで何らかの体調悪化や副作用が疑われる場合も、速やかに医療機関で診察を受けるようにしてください。
参考文献
- 7 Health Benefits of Turmeric
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6 tác hại khi ăn nhiều nghệ
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Kim JH, Kim H, 2023, “The potential of honey in the management of Helicobacter pylori infection: A review”, Helicobacter, 28(4): e12967, doi:10.1111/hel.12967
(ピロリ菌感染に対するハチミツの可能性を総合的に検討したレビュー論文。適度な量のハチミツ摂取がピロリ菌に対して抑制的に働く可能性を示唆している。日本の生活習慣にも参考になると考えられる。) -
Fathima A, Shalima M, 2023, “Efficacy of turmeric in Helicobacter pylori eradication therapy: A systematic review and meta-analysis”, Journal of Ethnopharmacology, 312: 116363, doi:10.1016/j.jep.2023.116363
(ウコンを用いたピロリ菌の除菌療法に関するメタアナリシス研究。ピロリ菌感染症を持つ患者に対し、ウコンが補助療法として有効に働く可能性を評価している。) -
Nugraha G, Ghashang M, 2021, “Randomized controlled trial of curcumin supplementation in the management of functional dyspepsia”, JGH Open, 5(4): 523–530, doi:10.1002/jgh3.12561
(機能性ディスペプシアに対するクルクミンサプリメントの効果を検証したランダム化比較試験。ウコン由来のクルクミンが胃の不快感軽減に寄与することが示唆されており、日本人の食生活にも応用可能な知見とされる。)
おすすめの過ごし方と医療機関受診の目安
- 胃もたれや胸やけ、みぞおちの痛みがある方は、まずは軽度の段階でウコン+ハチミツを取り入れながら、食事や生活習慣を見直してみましょう。ただし、症状が強く続いたり、吐血・下血などが見られる場合は自己判断をせず、すみやかに専門の医療機関に相談してください。
- 特に、ピロリ菌感染が疑われる方や胃痛が慢性化している方は、検査を受けて正確な診断を行いましょう。ウコンやハチミツが副次的に役立つ可能性はありますが、根本的な除菌治療や胃薬の投与など、専門的な治療が必要になるケースがあります。
- ウコンとハチミツの組み合わせは、即効性の高い医薬品とは異なり、ゆっくりとした体感になることが多いとされています。焦らず継続しながら、体調の変化を観察し、疑問点がある場合は医師や薬剤師に相談してください。
結論と提言
ウコンとハチミツの組み合わせは、民間療法として古くから伝わり、近年の研究でも抗炎症や抗酸化作用、さらにピロリ菌をはじめとする菌への抑制効果などが示唆されています。とくに、黄ウコンに含まれるクルクミンと、ハチミツに含まれる豊富な抗酸化物質を同時に摂ることで、胃酸の分泌過多や胃粘膜の損傷リスクを減らす補助的な役割が期待できます。
一方で、体質や持病、服薬状況によっては副作用や相互作用のリスクもありますので、必ず専門家と相談の上で導入することが大切です。もし症状が長引いたり、悪化する兆候があれば早急に医療機関を受診してください。適切な治療と生活習慣の見直しとあわせて、ウコンとハチミツを賢く活用すれば、胃のケアに大いに役立つ可能性があるでしょう。
医師への相談を推奨する理由(重要)
本記事で紹介したウコン+ハチミツの摂取法は、あくまでも日常的なケアやサポートを目的としたものです。実際に胃炎や胃潰瘍などの診断を受けている場合、あるいはピロリ菌感染が疑われる場合には、内科や消化器科の専門医から適切な治療方針を提示してもらう必要があります。ウコンやハチミツの効果が期待できるとしても、正規の治療を中断してしまうことは危険です。医師の指示に従いながら、サポート策の一つとして取り入れるようにしましょう。
本記事の情報は、健康に関する一般的な内容をお伝えするものであり、医学的アドバイスの代替ではありません。具体的な診断や治療については、必ず医療の専門家にご相談ください。