胃の痛みにはバナナが効果的?痛みを和らげるおすすめの3つの料理
消化器疾患

胃の痛みにはバナナが効果的?痛みを和らげるおすすめの3つの料理

はじめに

日常生活の中で、ストレスや不規則な食生活が続くと、胃に負担をかけてしまいがちです。特に近年は仕事や家事、学業などに追われる方が多く、胃痛や胃もたれ、さらには慢性的な胃炎に悩む方も増えています。そこで本記事では、胃痛や胃炎(以下、総称して「胃の不調」と記します)の原因や、胃にやさしいとされる食材について、詳しく解説していきます。なかでも「バナナ」は古くから栄養価の高い果物として知られていますが、「胃が痛むときに本当に食べてもいいのか?」という疑問を持つ方も少なくありません。本記事では、バナナが胃に及ぼす影響や、その他にも胃にやさしい食材・食事法を検討し、できるだけわかりやすく紹介します。

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本記事は、医療専門家であるBác sĩ Nguyễn Thường Hanh(Nội khoa – Nội tổng quát · Bệnh Viện Đa Khoa Tỉnh Bắc Ninh)の監修情報をもとに執筆されています。ただし、後述するすべての内容は一般的な情報提供を目的としており、個々の症状や体調により対応が異なる場合があります。具体的な治療や診断の方針は医師や医療専門家にご相談ください。

胃の不調の主な原因

まず、胃の不調(胃痛、胃もたれ、胃炎など)にはさまざまな原因が考えられます。以下に代表的なものを挙げ、その背景を解説します。

  • ヘリコバクター・ピロリ菌(H. pylori)感染
    遺伝的に胃壁が弱いなどの要因で感染しやすい場合もあります。一度感染すると慢性的な炎症が引き起こされ、胃潰瘍や十二指腸潰瘍につながるリスクが高まります。日本ではヘリコバクター・ピロリ菌感染の有病率が比較的高いことが報告されており、適切な診断と除菌治療が推奨されています。
    なお、日本国内のH. pylori感染に関する最近の疫学的傾向として、2021年にWorld Journal of Gastroenterologyに掲載された研究(Ishioka K.ら, 2021, 27(39): 6606–6629, doi:10.3748/wjg.v27.i39.6606)では、日本において若年層の感染率は以前より低下傾向にあるものの、中高年ではいまだに一定の感染率が維持されていると報告されています。
  • 食生活の乱れやストレス
    不規則な時間に食事をとったり、暴飲暴食、脂肪分や塩分が多い食事が続くと、胃酸の分泌リズムが乱れやすくなります。また、精神的ストレスが慢性化すると自律神経が乱れ、胃酸過多や胃酸分泌低下が起きやすくなるため、胃の不調が生じやすいと考えられています。
  • 喫煙習慣
    たばこに含まれるニコチンやタールは胃粘膜を直接刺激する可能性があり、胃炎や胃潰瘍を悪化させる要因のひとつとされます。
  • 鎮痛薬(NSAIDs)の常用
    イブプロフェンやアスピリン、ナプロキセンなどの解熱鎮痛剤は、胃の粘膜保護機能を低下させ、胃の表面を傷つけやすくするといわれています。長期服用が必要な場合は、必ず医師に相談の上、胃粘膜保護剤の併用を検討するなどの対策が推奨されています。
  • 高齢者のリスク
    年齢を重ねるにつれ、胃粘膜が萎縮しやすくなるため、同じ刺激でもダメージを受けやすくなります。また、多剤服用などの影響で薬剤性胃炎が起こりやすい傾向にあります。
  • アルコールの過剰摂取
    アルコールは胃粘膜を直接刺激して炎症を起こしやすいだけでなく、胃酸分泌を促進する場合があるため、過度の飲酒は急性胃炎のリスクを上げます。

バナナがもたらす栄養学的メリット

バナナは古くから世界各国で親しまれ、朝食や間食としても人気の高い果物です。その理由は味の良さだけでなく、豊富な栄養素を含んでいるからです。以下に、バナナがもつ健康上の主な利点を紹介します。

1. 心臓血管の健康サポート

バナナにはカリウムが豊富に含まれています。アメリカ心臓協会(AHA)によると、心臓病や高血圧の予防にはナトリウム(塩分)の摂取量を控え、カリウムの摂取量を増やすことが推奨されています。中サイズのバナナ1本(約126g)で、一日に必要とされるカリウムの約10%を補給できます。
また、バナナには食物繊維も豊富に含まれており、血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を低下させる効果が期待できると報告されています。2017年に発表された研究によると、食物繊維を十分に摂取することで心血管疾患リスクが低減される可能性が示唆されています。

2. 記憶力維持と気分調整への作用

バナナにはトリプトファンという必須アミノ酸が含まれており、学習機能や記憶力をサポートするとされます。さらに、トリプトファンは中枢神経系の気分調整にもかかわり、セロトニンの産生を助ける役割があるため、ストレス軽減やメンタルヘルスの維持にも寄与すると言われています。

3. 体重コントロールへの貢献

バナナはカロリーが比較的低く、栄養価が高いことから、減量中の食事にもよく使われます。特に、まだ完全に熟していないバナナ(やや青みが残る状態)にはレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)が豊富に含まれ、満腹感を得やすい特性があるため、食べ過ぎ防止に役立つと考えられています。

4. がんリスク軽減の可能性

バナナに含まれるレクチンというタンパク質は、体内のフリーラジカル(活性酸素)を抑制する抗酸化作用があり、細胞の損傷を防ぐ働きが期待されています。特に白血病細胞の増殖を抑制する可能性があるともされ、将来的ながん予防効果に関して研究が進められています。ただし、これらの作用はまだ研究段階のものであり、バナナだけでがんを防げるわけではないことには留意が必要です。

5. 腎機能のサポート

カリウムは腎臓の機能維持や血圧コントロールに重要な役割を果たしています。慢性腎不全などで腎機能が低下すると高血圧が助長されやすく、病状の進行に影響を及ぼす可能性があります。しかし、腎機能が重度に低下している場合や透析を受けている場合、カリウム制限が必要なケースもあるため、医師の指示に従いましょう。

胃が痛むときにバナナを食べてもいいのか?

「胃が痛むときにバナナを食べるのは良い」とする意見と、「かえって胃を刺激してしまう」という意見があります。しかし、近年の考え方では、バナナはむしろ胃に優しい食材とされる場合が多いです。その主な理由を以下にまとめます。

  • バナナのアルカリ性が胃酸を中和する可能性
    バナナには弱アルカリ性の性質があり、胃酸過多の症状を緩和する働きがあると考えられています。さらに、バナナを食べると胃粘膜から粘液の分泌が促進されやすくなるとも言われ、刺激を受けやすい胃壁を保護する手助けになる可能性があります。
  • 食物繊維(ペクチン)による消化の促進
    バナナに含まれる水溶性食物繊維の一種であるペクチンは、消化管内の内容物をスムーズに動かして排出を助ける働きがあります。胃痛を引き起こす要因のひとつに食物の停滞や便秘があり、ペクチンを摂ることで腸内環境が整うと考えられています。
  • 下痢や嘔吐の際の電解質補給源
    胃の不調に伴って嘔吐や下痢がある場合、電解質であるカリウムが失われやすくなります。バナナを適度に食べることでカリウムを補給し、体内の電解質バランスを整えやすくなるというメリットがあります。
  • レジスタントスターチによる腸内細菌バランスの改善
    完熟前のバナナに比較的多く含まれるレジスタントスターチは、腸内細菌(善玉菌)のエサとなり、腸内環境を整える可能性があります。胃腸の健康維持において腸内細菌叢のバランスは非常に重要で、炎症が起きた胃粘膜を保護する面でも意味があるとされています。
  • 胃潰瘍を起こす菌への対抗作用
    一部の研究(Role of gastric antioxidant and anti-Helicobactor pylori activities… [PubMed:12019769])では、バナナが胃粘膜を保護し、ピロリ菌による潰瘍進行を抑える可能性があると報告されています。ただし、確実に除菌する効果があるわけではなく、主に補助的な観点での評価となっています。

胃にトラブルがある人がバナナを食べるときの注意点

  • 食後10~20分後に食べる
    空腹時にいきなりバナナを食べると、消化管が敏感に反応する場合があります。少量の炭水化物やたんぱく質を先に摂取しておき、胃酸の状態が落ち着いたところでバナナを摂ると良いでしょう。
  • できるだけ熟したバナナを選ぶ
    青いバナナはペクチンやレジスタントスターチの含有量が多く、敏感な胃には刺激になり得るケースがあります。完熟しているバナナは糖度が高く、やわらかいため、胃に優しいとされています。
  • 適量を守る
    バナナは健康によいとはいえ、1日に何本も大量に食べると、カリウム過多や糖質過多になる可能性があります。胃の不調がある方は、1日に1~2本程度を目安にするのがおすすめです。

胃の不調にやさしい食材:バナナ以外の選択肢

バナナ以外にも、胃に負担をかけにくいとされる食材は少なくありません。特に以下のような食材は、胃の粘膜を保護したり、消化をサポートする作用が期待できます。

1. 食物繊維が豊富な食品

胃酸の過剰な分泌や胃痛に対し、食物繊維をしっかりと摂取することが役立つ場合があります。食物繊維は胃の内容物を吸着し、排出をスムーズにするだけでなく、大腸に届いて善玉菌のエサにもなります。結果として腸内環境が整い、便秘や下痢が軽減され、長期的には大腸がんやメタボリックシンドロームの予防に寄与すると考えられています。
以下のような食品はおすすめです。

  • 玄米や雑穀米
  • 大麦やオートミール
  • 緑黄色野菜(ブロッコリー、ほうれん草、にんじんなど)
  • 根菜類(ごぼう、れんこんなど)
  • 果物(りんご、梨、完熟バナナなど)

ただし、いきなり食物繊維を大量に摂ると、かえって胃腸に負担をかけることもあります。少しずつ増やしていき、水分補給をしっかり行うようにしましょう。

2. ヨーグルト

ヨーグルトには乳酸菌やビフィズス菌などの有益菌が含まれており、腸内環境を改善する効果が期待されます。胃が荒れているときは、ヨーグルトが胃粘膜を一時的に保護してくれる緩衝作用も期待できます。ただし、脂肪分の多いヨーグルトは消化にやや時間がかかり、逆流性食道炎などを起こす可能性がありますので、低脂肪または無脂肪タイプのヨーグルトを選ぶのが無難です。

3. ショウガ(ジンジャーティーなど)

ショウガは古くから消化機能の改善や吐き気の緩和に役立つ生薬として知られています。ショウガに含まれるジンゲロールやショウガオールには抗炎症作用があり、胃粘膜を刺激から守るとされています。また、ホルモンバランスや自律神経の調整にも関与するとの報告があります。胃の不調があるときには、温かいジンジャーティーに少量のハチミツを加えるなど、やさしい飲み方を心がけるとよいでしょう。

胃の不調改善につながる生活習慣

胃に優しい食材を意識的に取り入れるだけでなく、毎日の習慣やライフスタイルを見直すことも重要です。以下に、胃の不調の緩和や予防に役立つと考えられているポイントをいくつか挙げます。

  • 規則正しい食事リズム
    毎日決まった時間に食事をとることで、胃酸の分泌リズムを整えやすくなります。忙しいときでも朝食を抜かないようにしましょう。
  • よく噛んで食べる
    しっかり噛むことで消化酵素が十分に働き、胃への負担が軽減します。また、噛む回数が増えると満腹中枢が刺激されるため、食べ過ぎ防止にもつながります。
  • アルコールとカフェインの控えめな摂取
    アルコールやカフェインは胃粘膜を刺激し、胃酸分泌のバランスを崩しやすくします。特に胃の不調が強いときは控えるのがベターです。
  • 禁煙
    たばこに含まれる成分は血管収縮や粘膜保護機能の低下を招きます。胃潰瘍や胃炎の再発リスクを高めるため、禁煙を検討することが推奨されています。
  • 適度な運動
    運動によって全身の血行が促進されると、胃腸も活発に動くようになります。ただし激しすぎる運動はかえって胃を圧迫する可能性があるため、ウォーキングや軽いストレッチから始めるとよいでしょう。
  • 十分な睡眠
    睡眠不足はストレスホルモンの分泌を高め、自律神経の乱れにつながる場合があります。寝る前にスマートフォンやタブレットの画面を見続けると睡眠の質を落とす恐れがあるので、就寝前はできるだけリラックスできる時間をとりましょう。

胃にやさしいおすすめ料理例

ここでは、バナナ以外にも胃の不調のときにおすすめできる簡単な料理例をいくつか紹介します。あくまで一例ですが、参考にしてみてください。

  • おかゆ(重湯から始めてもOK)
    日本では昔から胃が弱っているときにおかゆを食べる習慣があります。白米をやわらかく煮込んで消化しやすくするだけでなく、適度な水分とエネルギーを補給できます。具材としては、胃を刺激しにくい白身魚ややわらかく煮た野菜を少量加えても良いでしょう。
  • 野菜スープ
    にんじん、かぼちゃ、キャベツなどの消化にやさしい野菜をやわらかく煮込んだスープは、ビタミンやミネラル、食物繊維が一度に摂取できる優れたメニューです。コンソメやだしを使って味を整え、脂質や塩分は控えめにすると胃への負担を軽減できます。
  • やわらかい白身魚の煮付け
    たんぱく質も胃の修復には欠かせない栄養素です。たらやヒラメなどの白身魚を野菜と一緒に煮付けにすれば、栄養バランスが取りやすくなります。ただし、醤油やみりんなどの調味料は控えめにするのがポイントです。

結論と提言

以上を踏まえると、胃が不調なときにバナナを食べることは、基本的にはメリットが大きいと考えられます。バナナにはアルカリ性や食物繊維、ミネラルなど、胃を保護したり消化を助けたりする成分が豊富に含まれているからです。ただし、まったく胃に負担がないわけではないため、食べ方や量、熟度に気をつけることが重要です。

同時に、バナナだけでなく、食物繊維の豊富な野菜や低脂肪ヨーグルト、ショウガなど、胃にやさしいとされる食品を上手に取り入れることで、より効果的に胃の不調を和らげることができるでしょう。さらに、食事だけでなく禁煙や節酒、適度な運動、十分な睡眠などの生活習慣の見直しが、長期的な胃の健康維持につながります。

ただし、胃の痛みや不快感が長期間続いたり、嘔吐や下血がみられる場合には、ただちに医療機関を受診し、専門家の診断を仰いでください。日本国内でもピロリ菌感染の有無を調べる検査や、上部消化管内視鏡検査によって、早期に症状の原因を突き止め、最適な治療方針を立てることが可能です。早めに対策すれば、重症化を防げるケースが多いため、自己判断せず専門家に相談しましょう。

参考文献

  • Bananas
    Harvard T.H. Chan School of Public Health アクセス日: 2022年4月12日
  • Gastritis Diet: What to Eat and What to Avoid
    Healthline アクセス日: 2022年4月12日
  • Role of gastric antioxidant and anti-Helicobactor pylori activities in antiulcerogenic activity of plantain banana (Musa sapientum var. paradisiaca)
    PubMed (PMID:12019769) アクセス日: 2022年4月12日
  • Gastrointestinal bleeding
    Mayo Clinic アクセス日: 2022年4月12日
  • Benefits and health risks of bananas
    Medical News Today アクセス日: 2022年4月12日
  • 5 Foods to Fight Acid Reflux and Heartburn
    AARP アクセス日: 2022年4月12日
  • Ishioka K, et al. “Helicobacter pylori infection in Japan.” World J Gastroenterol. 2021; 27(39): 6606–6629. doi:10.3748/wjg.v27.i39.6606

免責事項
本記事で紹介した内容は、あくまで一般的な健康情報として提供しているものであり、専門的な医療アドバイスや診断・治療の代替となるものではありません。症状や体質は個人差がありますので、具体的な治療方針や食事制限については、必ず医師や管理栄養士などの専門家にご相談ください。

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