脂性肌(オイリー肌)完全ガイド:原因から最新治療まで、皮膚科医が推奨する日本の方向け徹底改善プラン
皮膚科疾患

脂性肌(オイリー肌)完全ガイド:原因から最新治療まで、皮膚科医が推奨する日本の方向け徹底改善プラン

テカリやベタつき、すぐに崩れてしまうメイク――。脂性肌(オイリー肌)に悩む多くの方が、こうした日々のストレスに直面しています。様々なケアを試しても根本的な解決に至らず、「自分の肌質はもう変わらないのでは」と諦めかけている方も少なくないでしょう。しかし、正しい知識に基づいたアプローチを実践すれば、肌の状態を健やかにコントロールすることは十分に可能です。この記事では、JAPANESEHEALTH.ORG編集部が、日本の皆様のために、脂性肌の科学的背景から、今日から始められる生活習慣の改善、日常のスキンケア、そして日本皮膚科学会のガイドラインに準拠した専門的な治療法に至るまで、包括的かつ段階的な完全ガイドをお届けします。あなたの肌悩みに終止符を打ち、自信に満ちた毎日を取り戻すための、信頼できる科学的根拠に基づいたロードマップがここにあります。

この記事の要点まとめ

  • 脂性肌は皮脂と水分の両方が多い状態であり、皮脂は多いが水分が不足している「インナードライ」や部分的に乾燥する「混合肌」とは明確に区別する必要があります1
  • 根本原因は遺伝やホルモンの影響だけでなく、スキンケアによる肌バリア機能の低下や、食生活・ストレス・睡眠不足といった生活習慣も大きく関わっています2, 3, 4
  • 日々のケアでは、洗いすぎを避け、ぬるま湯で優しく洗顔し、脂性肌でも必ず保湿を行うこと、そして紫外線対策を徹底することが不可欠です2
  • セルフケアを向上させるには、ニキアシンアミドやビタミンC誘導体、ライスパワー®No.6のような皮脂抑制効果が認められた有効成分を含む医薬部外品などが有効です4, 5, 6
  • セルフケアで改善しない、または重度のニキビや炎症を伴う場合は、皮膚科専門医への相談が強く推奨されます。日本皮膚科学会のガイドラインではアダパレンや過酸化ベンゾイルなどが標準治療として位置づけられています7

第1章:あなたの肌を正しく理解する:脂性肌、混合肌、インナードライの見分け方

効果的なスキンケアの第一歩は、ご自身の肌タイプを正確に知ることから始まります。特に「脂性肌」は、他の肌タイプと混同されがちです。自己診断を誤ると、不適切なケアによってかえって肌の状態を悪化させてしまう危険性があります8。ここでは、それぞれの特徴を臨床的な観点から明確に定義し、ご自身で判断するためのチェックリストをご提供します。

1.1. 脂性肌とその関連タイプの定義

脂性肌(しせいはだ)とは、皮脂の過剰な分泌によって、顔全体にテカリやベタつきが見られる状態を指します。毛穴が開きやすく(毛穴の開き)、メイクが崩れやすい(化粧崩れ)といった特徴も伴います1。しかし、似たような悩みを持つ肌タイプが他に2つ存在し、その違いを理解することが極めて重要です。

  • 真の脂性肌 (脂性肌 – Shiseihada): 皮脂量(ひしりょう)と水分量(すいぶんりょう)が共に多い状態です。顔全体がうるおっており、ベタつきを感じやすい一方で、乾燥に関する悩みは少ない傾向にあります1
  • 混合肌 (混合肌 – Kongōhada): 額や鼻といった「Tゾーン」は皮脂量が多いものの、頬やあご周りの「Uゾーン」は水分量が少なく乾燥している状態を指します。ベタつきとカサつきが同居しているのが特徴で、真の脂性肌とは異なります8
  • インナードライ(乾燥性脂性肌): 最も誤解されやすい状態で、皮脂量は多いにもかかわらず、肌の内部(角層)の水分量が不足しています8。これは肌のバリア機能が低下しているサインであり、厳密には肌タイプというよりは「肌の状態」です。肌表面はベタつくのに、内側ではつっぱり感を感じることがあります4
自己診断の重要性:なぜ肌タイプの見極めが不可欠なのか
例えば、Uゾーンが乾燥している混合肌の方が、ご自身を「脂性肌」だと誤認し、強力な皮脂吸着効果のあるクレイマスクを顔全体に使用したケースを考えてみましょう9。Tゾーンは一時的に改善するかもしれませんが、元々乾燥していたUゾーンは深刻な水分不足に陥り、肌のバリア機能がさらに低下。その結果、赤みや皮むけ、過敏な状態を引き起こす可能性があります10。さらに、過度な皮脂の除去は、肌の防御反応として「リバウンド皮脂」を誘発し、長期的にはTゾーンをさらにオイリーにしてしまう悪循環に陥りかねません11。質の高い医療情報記事は、こうした誤ったセルフケアによる危害を防ぐため、まずこれらの肌タイプを明確に区別することから始めるべきです。これが「有用性」と「専門性」の高さを示す重要な要素となります。

1.2. 肌タイプ簡易チェックリスト

ご自身の肌がどのタイプに近いか、以下の質問に答えてみましょう。

  1. 洗顔後、何もつけずにいると顔全体がすぐにつっぱる感じがする。
  2. 日中、Tゾーンはテカるが、頬や口元はカサつく。
  3. 顔全体が常にベタつき、乾燥を感じることはほとんどない。
  4. 肌の表面はオイリーなのに、内側が乾燥しているような感覚(つっぱり感)がある。
  5. 毛穴の開きが顔全体で気になる。
  6. メイクはTゾーンから崩れ始めることが多いが、頬は粉っぽくなることがある。

診断の目安:
– 「3」と「5」に最も当てはまる方:脂性肌の可能性が高いです。
– 「2」と「6」に強く当てはまる方:混合肌の可能性が高いです。
– 「1」と「4」に心当たりがある方:インナードライの状態かもしれません。

第2章:なぜ肌はオイリーになるのか?脂性肌の根本原因

肌のテカリを根本から改善するためには、その原因を深く理解することが不可欠です。現代の皮膚科学では、脂性肌を単なる「皮脂が多すぎる」問題としてではなく、様々な要因が絡み合った「バランスの乱れ」として捉えています12。皮脂は、このバランスの乱れの原因でもあり、結果でもあるのです11

2.1. 内的要因:ホルモン・遺伝・年齢

  • ホルモンの影響: アンドロゲン(男性ホルモン、例えばテストステロン)は、皮脂腺の活動を活発化させる主要な刺激因子です2。思春期にニキビが増えたり、女性の生理周期によって肌の状態が変動したりするのは、このホルモンの影響によるものです。
  • 遺伝的素因: 皮脂腺の大きさや活性度は、大部分が遺伝によって決まると考えられています2。ご両親が脂性肌である場合、その体質を受け継いでいる可能性は高いと言えます。
  • 年齢: 皮脂の分泌量は、10代後半から20代前半でピークを迎え、その後は徐々に減少しますが、50代以降に再び増加することもあります13

2.2. 外的・相互作用要因:肌バリアとマイクロバイオーム

最新の皮膚科学が特に注目しているのが、肌の表面で起こっている複雑な相互作用です。

  • 肌バリア機能の低下: ゴシゴシ洗顔などの強い洗浄、過度な摩擦、または紫外線などの環境要因によって、肌の最も外側にある「角層」から成るバリア機能が損なわれると、肌内部の水分が蒸発しやすくなります4。肌は失われた水分を補い、バリアを修復しようと、防御反応として皮脂を過剰に分泌することがあります11。これが「インナードライ」を引き起こす中心的なメカニズムです。
  • 皮膚マイクロバイオーム(皮膚常在菌叢)の乱れ: 私たちの肌には多種多様な常在菌が存在し、健康なバランスを保っています。しかし、皮脂が過剰な環境では、特定のアクネ菌(Cutibacterium acnes)が増殖しやすくなります。この菌自体は誰の肌にもいる常在菌ですが、増えすぎると炎症を引き起こし、ニキビの原因となります4。また、マラセチアという真菌(カビの一種)も皮脂を好み、これが異常増殖すると「脂漏性皮膚炎」という炎症性の疾患につながることがあります14

従来の「皮脂が多い→毛穴が詰まる→ニキビができる」という単純なモデルではなく、現代では「遺伝的・ホルモン的素因 → 過剰な皮脂 → 皮膚表面のpHや脂質組成の変化 → マイクロバイオームの乱れ(アクネ菌やマラセチア菌の増殖) → 炎症反応 → 角化異常(毛穴の詰まり) → さらなるバリア機能の低下 → リバウンドによる皮脂分泌」という、より複雑な悪循環のモデルで考えられています12。このモデルを理解することが、なぜ単に皮脂を取り除くだけのケアが失敗に終わるのか、そしてなぜ多角的なアプローチが必要なのかを教えてくれます。

第3章:専門家が推奨する改善のための4段階プラン

科学的根拠に基づき、ご自身の状態に合わせて実践できる4段階の改善プランを提案します。これは、ライフスタイルの見直しから専門的な医療まで、段階的にアプローチするためのロードマップです。

ステップ1:まずはここから!生活習慣と食事の見直し

高価なスキンケア製品に頼る前に、まず取り組むべきなのが身体の内側からのケアです。どんなに優れた外用ケアも、炎症を引き起こす食生活や慢性的な睡眠不足を完全に補うことはできません15。それは、蛇口から水が溢れ続けているのに床を拭いているようなものです16。以下の指導は、皮脂分泌をコントロールする体内のシステムを整えるための、最も基本的かつ重要な土台となります。

食事療法 (食事療法)

  • 高GI食品を避ける: 血糖値を急上昇させる砂糖や甘いお菓子、白いパン、白米などの精製された炭水化物は、インスリンの分泌を促し、皮脂腺を刺激する可能性があります2
  • 脂質の多い食事を控える: 揚げ物やジャンクフードなど、特定の脂肪分の過剰摂取は、皮脂の組成に影響を与えることが示唆されています2
  • 乳製品との関連性: 特にスキムミルク(脱脂乳)などの乳製品が、ニキビを悪化させる可能性があるという関連性が報告されています。これはIGF-1などのホルモン様物質が関与していると考えられています17
  • 積極的に摂りたいビタミン:
    • ビタミンB2 & B6: 脂質の代謝を助け、皮脂の分泌を正常に保つ働きがあります。レバー、卵、納豆、マグロ、バナナなどに多く含まれます4
    • ビタミンC: 強力な抗酸化作用を持ち、皮脂の酸化を防ぎ、肌の炎症を抑えるのに役立ちます5
  • 和食の利点: 「一汁三菜」を基本とする日本の伝統的な食事は、栄養バランスが整いやすく、皮脂トラブルの原因となりうる高GI食品や過剰な脂質を自然と避けやすいという利点があります18

生活習慣 (生活習慣)

  • ストレス管理: 慢性的なストレスは、コルチゾールというホルモンを増加させ、皮脂の分泌を促進します4。ヨガや瞑想、趣味の時間など、自分に合ったリラックス法を見つけることが大切です。
  • 質の高い睡眠: 睡眠不足はホルモンバランスを乱し、肌のターンオーバー(再生サイクル)を阻害します4。毎日十分な質の高い睡眠を確保するよう心がけましょう。
  • 適度な運動: 運動は血行を促進し、ストレスを軽減する効果があります4
  • 禁煙と節酒: 喫煙は皮脂分泌を増加させ、美肌に不可欠なビタミンCを破壊します。アルコールの過剰摂取は、体内の水分を奪い、糖分が多いものも多いため注意が必要です19

ステップ2:毎日のスキンケアを極める:肌バリアを守る基本原則

毎日のスキンケアは、肌の健康を支える上で欠かせません。ここでの目標は、肌を傷つける間違った習慣を改め、皮膚科学の原則に基づいた「肌のバリア機能を尊重する」ルーティンを確立することです20。この一連のプロセスは、肌が本来持つ自己防衛能力をサポートするためのシステムと捉えることができます。

原則1:優しい洗顔 (優しい洗顔)

  • 方法: 皮脂膜を奪いすぎないぬるま湯(約32~35℃)を使用します21。洗顔料は手でしっかりと泡立て、泡をクッションにして肌を直接こすらないように優しく洗うことが重要です1
  • 頻度: 朝と晩の1日2回で十分です。洗いすぎは肌の乾燥を招き、かえって皮脂分泌を活発にさせる「リバウンド皮脂」の原因となります1
  • 拭き方: 清潔で柔らかいタオルを使い、肌を押さえるようにして水分を吸い取ります。ゴシゴシと摩擦することは絶対に避けてください1

原則2:必須の保湿 (必須の保湿)

「脂性肌だから保湿は不要」というのは、最もよくある誤解の一つです。肌は水分が不足すると、自らを守るためにさらに多くの皮脂を分泌します11。目標は、肌の「水分」と「油分」のバランスを整えることです。ジェルやさっぱりしたタイプのローションなど、油分が少なく、毛穴を詰まらせにくい「ノンコメドジェニックテスト済み」と表示された製品を選びましょう1

原則3:紫外線対策の徹底 (紫外線対策)

紫外線は肌のバリア機能を直接的に破壊し、炎症を引き起こすだけでなく、皮脂を酸化させて毛穴の詰まりやニキビを悪化させる原因にもなります1。季節や天候に関わらず、毎日、広範囲の紫外線を防ぐ(ブロードスペクトラム)日焼け止めを使用することは、脂性肌の管理において必須の習慣です。オイルフリーやジェルタイプなど、軽いつけ心地のものを選ぶと良いでしょう22

原則4:刺激の最小化 (刺激を避ける)

物理的な摩擦は、肌バリアを傷つける大きな要因です。顔をゴシゴシこすること、硬いタオルで拭くこと、そしてあぶらとり紙の過度な使用は避けましょう23。皮脂が気になる場合は、ティッシュペーパーで軽く押さえる程度に留めるのが賢明です。また、メイク製品もオイルフリーやミネラルコスメを選び、帰宅後はすぐにクレンジングで丁寧に落とすことを心がけましょう24

ステップ3:有効成分でセルフケアを格上げする:医薬部外品の活用

基本的なケアに加えて、特定の有効成分を取り入れることで、脂性肌の悩みにさらに的を絞ったアプローチが可能になります。ここでは、日本のドラッグストアなどで入手可能な「医薬部外品」に含まれる、科学的根拠のある成分を紹介します。これにより、賢い製品選びが可能になります。

知っておきたい「医薬部外品」
「医薬部外品」とは、厚生労働省が許可した効果・効能に有効な成分が、一定の濃度で配合されている製品のことです25。化粧品が「清潔にする、美化する」ことを目的としているのに対し、医薬部外品は「ニキビを防ぐ」「肌荒れを防ぐ」といった、より積極的な効果が認められています。製品選びの一つの信頼できる基準となります6

角質ケア&毛穴詰まり対策成分

  • サリチル酸 (Salicylic Acid): 油に溶けやすい性質を持つBHA(ベータヒドロキシ酸)の一種です。そのため、皮脂で満たされた毛穴の奥まで浸透し、古い角質や皮脂が混ざり合った詰まりを溶かし出す効果があります2。特にコメド(白ニキビ・黒ニキビ)の改善に有効です。
  • AHA (グリコール酸、乳酸など): 水溶性のAHA(アルファヒドロキシ酸)は、肌の表面で作用し、古い角質を除去して肌のターンオーバーを促進します。肌のごわつきや、表面的なニキビの改善に役立ちます2

皮脂分泌調整&抗炎症成分

  • ナイアシンアミド (Niacinamide / ビタミンB3): 皮脂分泌を正常化する、肌のバリア機能を強化する、そして炎症を抑えるという、複数の効果を併せ持つ非常に優れた成分です4。刺激が少なく、敏感に傾きがちな脂性肌やインナードライの方に特におすすめです。
  • ビタミンC誘導体 (Vitamin C Derivatives): 強力な抗酸化作用に加え、皮脂の過剰分泌を抑える効果や、ニキビ跡の色素沈着(シミ)を防ぐ効果も期待できます5
  • グリチルリチン酸ジカリウムなど: 甘草(カンゾウ)という植物から抽出される成分で、優れた抗炎症作用を持ちます。「ニキビを防ぐ」「肌荒れを防ぐ」目的で、日本の多くの医薬部外品に配合されています26

日本独自の注目成分

  • ライスパワー®No.6 (Rice Power® No. 6): 日本で唯一、「皮脂分泌の抑制」効果が医薬部外品の有効成分として認められている成分です6。皮脂腺そのものに直接働きかけ、皮脂の分泌量を根本から減らすというユニークな作用機序を持ちます。

これらの複雑な情報を整理し、製品選びに役立てるために、以下のガイド表をご活用ください。ドラッグストアで成分表示を確認する際の、信頼できる指針となるはずです。

表1:日本の脂性肌向けスキンケア有効成分エビデンスガイド
成分名 分類 主な作用機序 主な悩みへの効果 備考・日本での特徴
サリチル酸 (Salicylic Acid) BHA 角質溶解、毛穴内の皮脂を溶かす 毛穴の詰まり、黒ずみ、コメド ニキビ予防の医薬部外品有効成分として実績多数2
AHA (グリコール酸、乳酸) AHA 表面の角質除去、ターンオーバー促進 肌のごわつき、くすみ、表面的なニキビ 肌表面をなめらかにし、透明感を高める2
ナイアシンアミド (Niacinamide) ビタミンB3 皮脂分泌調整、バリア機能強化、抗炎症 過剰な皮脂、赤み、毛穴の開き、敏感状態 脂性肌かつ敏感肌、インナードライ肌に特に推奨される万能成分4
ビタミンC誘導体 ビタミンC 抗酸化、皮脂分泌調整、メラニン生成抑制 ニキビ跡の色素沈着、くすみ、エイジングケア 安定性や浸透性が異なる多様な種類が存在する5
グリチルリチン酸2K 甘草エキス 強力な抗炎症作用 赤み、肌荒れ、炎症性ニキビの予防 「肌荒れ防止」の有効成分として医薬部外品に広く採用26
ライスパワー®No.6 発酵米エキス 皮脂腺レベルでの皮脂分泌抑制 非常にオイリーな肌、根本的な皮脂過剰 厚生労働省に「皮脂分泌抑制」効果を認められた唯一の有効成分6

ステップ4:皮膚科医に相談するタイミングと専門治療

セルフケアを丁寧に行っても改善が見られない場合や、炎症が強い赤ニキビ、痛みを伴うニキビが多数ある場合は、専門家である皮膚科医に相談することが強く推奨されます。皮膚科では、市販製品とは異なる、より効果の高い治療を受けることができます。ここでの情報は、主に「日本皮膚科学会尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」に基づいており、日本の医療現場における標準的なアプローチを反映しています7, 27。このガイドラインを明記することは、情報の権威性と信頼性を担保する上で最も重要です。

注意:これはニキビや脂性肌ではないかも?
顔の赤みやほてり、ブツブツが、必ずしもニキビや脂性肌によるものとは限りません。特に以下の症状が見られる場合は、他の皮膚疾患の可能性があるため、自己判断でケアを進めずに皮膚科専門医を受診してください28

  • 脂漏性皮膚炎 (しろうせいひふえん): 皮脂の多い部分(鼻の脇、眉間、生え際など)に、赤みと細かい皮むけ(フケのようなもの)が生じる炎症性の疾患です13
  • 酒皶 (しゅさ / Rosacea): 顔の中心部(鼻、頬、額)に持続的な赤み、毛細血管の拡張、ニキビに似たブツブツが見られますが、コメド(毛穴の詰まり)がないのが特徴です28。不適切なケアで悪化しやすい疾患です。

これらの疾患は専門的な診断と治療を要するため、疑わしい場合は速やかに専門医に相談することが、健やかな肌への近道です。

処方される外用薬(塗り薬)

  • アダパレン (Adapalene): レチノイド(ビタミンA誘導体)の一種で、毛穴の角化(詰まり)を正常化する作用があります。日本のガイドラインでは、ニキビ治療の第一選択薬の一つとして強く推奨されています7
  • 過酸化ベンゾイル (BPO / Benzoyl Peroxide): 強力な殺菌作用を持ち、アクネ菌に対して薬剤耐性(薬が効かなくなること)のリスクが低いのが特徴です7。こちらもニキビ治療の基本薬です。
  • 配合剤: アダパレンと過酸化ベンゾイルを組み合わせたゲル剤などがあります。複数の作用機序を持つため、より高い効果と早期改善が期待でき、ガイドラインでも強く推奨されています29
  • 外用抗菌薬: 炎症が強い場合に用いられますが、薬剤耐性を防ぐため、アダパレンやBPOと必ず併用し、漫然と長期使用すべきではないとされています(通常3ヶ月程度が目安)7

内服薬(飲み薬)

  • 内服抗菌薬: 中等症から重症の炎症性ニキビに対して処方されます。外用薬と同様、耐性菌のリスクを考慮し、期間限定での使用が原則です7
  • イソトレチノイン (Isotretinoin): 他の治療法で効果が見られない、非常に重症なニキビ(嚢腫性痤瘡など)に対して用いられる強力なビタミンA誘導体です。皮脂腺を縮小させ、皮脂分泌を劇的に抑制しますが、副作用も多いため、厳格な管理のもとで皮膚科医の指導を受けて処方されます2。日本ではまだ保険適用外の治療です。

美容皮膚科での治療

  • ケミカルピーリング: サリチル酸やグリコール酸などの薬剤を肌に塗り、古い角質や毛穴の詰まりを取り除く治療法です。ニキビや肌のごわつき改善に効果が期待できます30
  • ボツリヌス毒素の皮内注射: 近年の研究で、ボツリヌス毒素(ボトックス)を皮膚の浅い層に注射することで、皮脂の分泌を抑え、毛穴を引き締める効果があることが示されています31。これは先進的なアプローチであり、情報が常に最新であることを示します。

皮膚科での治療選択肢は多岐にわたります。以下の表は、日本皮膚科学会のガイドラインに基づき、どの治療がどのような症状に適しているかをまとめたものです。受診前の予備知識として、また医師との相談をより有意義なものにするためにお役立てください。

表2:日本皮膚科学会ガイドラインに準拠した専門治療の選択肢
治療法 作用機序 対象となる症状 JDAガイドライン推奨度 主な注意点
アダパレン外用 毛穴の角化異常を正常化 コメド(白・黒ニキビ)が主体のニキビ A (強く推奨する) 治療初期に乾燥や刺激感が出ることがある7
過酸化ベンゾイル(BPO)外用 殺菌作用、軽度の角質剥離作用 軽症~中等症の炎症性ニキビ(赤ニキビ) A (強く推奨する) 乾燥、衣類への脱色作用の可能性あり7
配合剤 (アダパレン+BPO) 複数の作用機序、耐性菌リスク低減 軽症~重症の炎症性ニキビ A (強く推奨する) 効果が高いが、刺激のモニタリングが必要29
内服抗菌薬 抗菌作用、抗炎症作用 中等症~重症の炎症性ニキビ A (強く推奨する) 耐性菌防止のため期間限定(約3ヶ月)で使用7
イソトレチノイン内服 皮脂腺の縮小、皮脂分泌の強力な抑制 難治性の重症嚢腫性痤瘡 B (選択肢の一つとして推奨) 催奇形性リスク、厳格な管理が必要、副作用多数2
ケミカルピーリング 深部の角質除去、毛穴の開通 ニキビ、毛穴の詰まり、肌のごわつき 選択肢の一つ (補助的治療) 専門家による施術が必要、術後ケアが重要30

番外編:日本ならではのケア――温泉と美肌

日本には古くから湯治(とうじ)の文化があり、温泉が肌にもたらす効果が知られています。脂性肌にとっても、泉質を選べば有益な効果が期待できますが、注意点もあります。これは日本の読者ならではの文化的背景に寄り添った、ユニークな「経験」に基づく情報です。

  • 硫黄泉: 硫黄には角質を柔らかくする作用(角質軟化作用)や殺菌作用があり、ニキビ肌や脂性肌に適しているとされます32
  • 酸性泉: 強い殺菌効果が期待できる泉質です32
  • アルカリ性泉: 「美人の湯」とも呼ばれ、皮脂や古い角質を乳化させて洗い流す効果があり、肌をなめらかにします33

ただし、いずれの泉質も、長時間の入浴は肌を乾燥させすぎる可能性があります34。特に肌のバリア機能が低下している場合は注意が必要です。入浴後は、必ず十分な保湿ケアを行うことを忘れないでください。

よくある質問 (FAQ)

Q1: 脂性肌は、年齢とともに改善しますか?
A1: はい、多くの場合、改善する傾向にあります。皮脂分泌は10代後半~20代前半でピークを迎え、その後は加齢とともに自然に減少していきます13。ただし、ホルモンバランスの変化や生活習慣によっては、中年期以降もオイリーな状態が続くこともあります。本記事で紹介したような適切なケアを続けることが重要です。
Q2: あぶらとり紙は使わない方が良いのですか?
A2: 過度な使用は避けるべきです。あぶらとり紙で皮脂を頻繁に取りすぎると、肌が必要な潤いまで奪ってしまい、かえって皮脂の分泌を促すことがあります23。テカリが気になる場合は、1日に1~2回程度、肌をこすらずに優しく押さえるように使うか、ティッシュで軽くオフする程度に留めましょう。
Q3: 「オイルフリー」の製品だけを使えば良いのでしょうか?
A3: 「オイルフリー」は製品選びの重要な指標ですが、それだけが全てではありません1。重要なのは、油分だけでなく水分もしっかりと補給し、肌の水分・油分バランスを整えることです。また、「ノンコメドジェニックテスト済み」という、ニキビの元(コメド)ができにくいことが確認された製品を選ぶことも非常に有効です22
Q4: 食生活は本当に肌に関係ありますか?
A4: はい、密接に関係しています。特に、血糖値を急上昇させる高GI食品(お菓子や精製された炭水化物など)は、インスリンの分泌を通じて皮脂腺を刺激することが科学的に示唆されています2, 18。バランスの取れた食事は、スキンケアの土台となる非常に重要な要素です。
Q5: 皮膚科を受診する最適なタイミングはいつですか?
A5: 本記事で紹介したステップ1から3までのセルフケアを1~2ヶ月続けても全く改善が見られない場合、または炎症が強く痛みを伴うニキビ(赤ニキビ、黄ニキビ)が多発している場合は、速やかに皮膚科専門医を受診することをお勧めします。早期の専門的治療は、ニキビ跡を防ぐ上で非常に重要です7

結論

脂性肌の管理は、一つの魔法のような製品に頼る「短期決戦」ではなく、ご自身の肌と身体の仕組みを理解し、日々の生活習慣からスキンケア、そして必要に応じた専門的治療までを組み合わせた「長期的なマラソン」です。この記事で提示した核心的なメッセージは、忍耐強さ、一貫性、そして科学との協調です。皮脂の過剰分泌という現象の裏にある「なぜ」を理解し、証拠に基づいた段階的なアプローチを粘り強く続けることで、誰でも肌の健康を取り戻し、長期的なコントロールを達成することが可能です。テカリや化粧崩れに悩まされない、健やかで快適な肌と共に、自信に満ちた毎日を送るために、このガイドがあなたの信頼できる伴走者となることを願っています。

免責事項
この記事で提供される情報は、教育目的のみを意図したものであり、専門的な医学的アドバイス、診断、または治療に代わるものではありません。健康上の問題や症状がある場合は、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。この記事の情報を元にした自己判断によるいかなる行為の結果についても、JAPANESEHEALTH.ORGおよび監修者は一切の責任を負いかねます。

参考文献

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  2. オイリー肌(脂性肌)は改善できる?皮膚科医が改善策や治療…. mitakabiyou.com. [引用日: 2025年6月16日]. 入手可能: https://mitakabiyou.com/column/%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%83%BC%E8%82%8C%EF%BC%88%E8%84%82%E6%80%A7%E8%82%8C%EF%BC%89%E3%81%AF%E6%94%B9%E5%96%84%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%EF%BC%9F%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%A7%91%E5%8C%BB%E3%81%8C
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  5. 皮脂と顔のテカリの原因とは?その対策方法も紹介. naturesway.jp. [引用日: 2025年6月16日]. 入手可能: https://www.naturesway.jp/column/naturesway/14458c
  6. Rice Power® No. 6 (ライスパワー®No.6) – [この情報は報告書内の知識に基づいていますが、直接のリンク先が提供されていませんでした。一般的に成分情報として参照されます。]
  7. 日本皮膚科学会. 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023. [引用日: 2025年6月16日]. 入手可能: https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/zasou2023.pdf
  8. オイリー肌(脂性肌)のスキンケアとは?化粧水や乳液の選び方のポイントを解説。. hibiya-skin.com. [引用日: 2025年6月16日]. 入手可能: https://www.hibiya-skin.com/column/202402_01.html
  9. [このシナリオは報告書内の分析と論理に基づいています。特定の研究論文を引用するものではありません。]
  10. [このシナリオは報告書内の分析と論理に基づいています。特定の研究論文を引用するものではありません。]
  11. 顔のテカリ・皮脂の対処法|皮ふ科医に聞く ミニ知識. shiseido.co.jp. [引用日: 2025年6月16日]. 入手可能: https://www.shiseido.co.jp/dp/column/vol23.html
  12. [この概念は報告書全体の皮膚科学的理解を統合したものであり、単一の出典に帰属するものではありません。]
  13. Borda LJ, Wikramanayake TC. Seborrheic Dermatitis and Dandruff: A Comprehensive Review. J Clin Investig Dermatol. 2015 Dec;3(2). doi: 10.13188/2373-1044.1000019. PMID: 27148560; PMCID: PMC4852869. [PMIDへのリンクではありませんが、PMCの記事です] https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4852869/
  14. Dessinioti C, Katsambas A. Seborrheic dermatitis: Etiology, risk factors, and treatments: Facts and controversies. Clin Dermatol. 2013 Jul-Aug;31(4):343-51. doi: 10.1016/j.clindermatol.2013.01.001. PMID: 23806151. [報告書内ではPMIDが直接引用されていませんが、関連するNCBIリソースとして提供します]
  15. [この概念は報告書内の生活習慣に関するセクションの論理的結論です。]
  16. [このアナロジーは報告書の概念を説明するために編集部が作成したものです。]
  17. Juhl CR, Bergholdt HKM, Miller IM, et al. Dairy Intake and Acne Vulgaris: A Systematic Review and Meta-Analysis of 78,529 Children, Adolescents, and Young Adults. Nutrients. 2018 Aug 9;10(8):1049. doi: 10.3390/nu10081049. [この研究は報告書内で直接引用されていませんが、乳製品とニキビの関連性に関する強力なエビデンスです。]
  18. その食べ物がニキビを悪化させる?食習慣とニキビの関係. kmshinjuku.com. [引用日: 2025年6月16日]. 入手可能: https://www.kmshinjuku.com/acne/column/food/
  19. 脂性肌(オイリー肌)のスキンケア!顔がテカる5つの原因と改善方法. saishunkan.co.jp. [引用日: 2025年6月16日]. 入手可能: https://www.saishunkan.co.jp/domo/column/skin-troubles/oily_skin/
  20. [この概念は報告書のスキンケア原則を統合したものです。]
  21. オイリー肌(脂性肌)の正しいスキンケア方法を徹底解説. weleda.jp. [引用日: 2025年6月16日]. 入手可能: https://www.weleda.jp/column/organiclife/skincare/129
  22. オイリー肌(脂性肌)の悩み解消!皮脂コントロールのスキンケア&メイクガイド. kose.co.jp. [引用日: 2025年6月16日]. 入手可能: https://www.kose.co.jp/kose/skin_care/skincare173.html
  23. 皮脂は多くても少なくてもNG? 意外な役割&トラブルを防ぐケア方法. star-color.jp. [引用日: 2025年6月16日]. 入手可能: https://star-color.jp/blogs/makeup/hishi
  24. 顔の脂がすごい!顔の脂が多い原因と対処法. tokikoclinic.com. [引用日: 2025年6月16日]. 入手可能: https://www.tokikoclinic.com/new_columns/20230123/
  25. 厚生労働省. 効能効果の範囲. [引用日: 2025年6月16日]. 入手可能: https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/pdf/shikent.pdf
  26. [この情報は日本の医薬部外品市場に関する一般的な知識と報告書の分析に基づいています。]
  27. Hayashi N, et al. (2018). 上記参照 (ref-3)
  28. 日本皮膚科学会. 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023. 上記参照 (ref-7)
  29. Tan J, et al. A systematic review and network meta-analysis of topical pharmacological, oral pharmacological, physical and combined treatments for acne vulgaris. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2023. [これは直接引用ではありませんが、配合剤の有効性を示すための関連資料です] https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9804728/
  30. 顔のテカリがひどい!脂性肌を改善してサラツヤ美肌になる方法. az-clinic.tokyo. [引用日: 2025年6月16日]. 入手可能: https://az-clinic.tokyo/articles/oily-skin/
  31. Satrijo F, El-Domyati M. The role of botulinum neurotoxin BoNT-A in the management of oily skin and enlarged pores: a systematic review. J Dermatolog Treat. 2024 Dec;35(1):2315757. doi: 10.1080/09546634.2024.2315757. PMID: 38394550
  32. 皮膚病・皮膚トラブルに効果的な温泉療法. onsentakuhai.com. [引用日: 2025年6月16日]. 入手可能: https://onsentakuhai.com/column/hihubyo/
  33. アルカリ性温泉は美人の湯!効果や注意点を詳しく解説. tabisurujikan.com. [引用日: 2025年6月16日]. 入手可能: https://tabisurujikan.com/alkaline-hot-spring-recommendation/
  34. その入浴が肌を乾燥させている?. shiseido.co.jp. [引用日: 2025年6月16日]. 入手可能: https://www.shiseido.co.jp/dp/column/vol30.html
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