腎う積水症(水腎症)の治療法完全ガイド:原因から最新手術、費用まで徹底解説
腎臓と尿路の病気

腎う積水症(水腎症)の治療法完全ガイド:原因から最新手術、費用まで徹底解説

腎う積水症(水腎症)は、単なる病名ではなく、尿路のどこかに潜む異常を知らせる重要な「警報」です。この状態は、尿の流れが妨げられることで腎臓内部の圧力が上昇し、放置すれば腎機能に回復不能なダメージを与えかねません。特に、症状を伴わない慢性的な水腎症は、静かに腎臓を蝕む危険性をはらんでいます。この記事では、JapaneseHealth.org編集委員会が、最新の研究データと日本の診療ガイドラインに基づき、腎う積水症の根本原因、正確な診断プロセス、そして緊急時の対処法から根治を目指す最先端の治療法まで、包括的かつ詳細に解説します。本稿を通じて、患者様とそのご家族が病状を深く理解し、適切な治療選択を行うための一助となることを目指します。


この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書に明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源の一部と、提示された医学的ガイダンスとの直接的な関連性を示したものです。

  • 複数の臨床研究および統計データ: 本記事における腎う積水症の定義、原因(例:結石が54.1%を占める1)、および病態生理に関する記述は、StatPearls2やPMCに掲載された複数の査読付き論文1などの情報源に基づいています。
  • 日本泌尿器科学会(JUA)診療ガイドライン: 尿路結石の治療選択肢、特に薬物による結石排出療法(MET)3や、各種手術(ESWL, TUL, PNL)の適応に関する推奨事項4は、JUAが発行する「尿路結石症診療ガイドライン」に準拠しています。
  • 日本感染症学会(JAID)/日本化学療法学会(JSC)ガイドライン: 閉塞性腎盂腎炎などの緊急介入が必要な状態を鑑別するためのCT検査の有用性に関する記述5は、これらの学会が共同で作成した感染症治療ガイドラインを根拠としています。
  • 国際的な系統的レビューおよびメタアナリシス: 骨盤臓器脱(POP)に伴う水腎症の有病率(3.5%~30.6%)6や、妊娠中の症候性水腎症に対する外科的介入の必要性を予測する因子7など、特定の状況に関するデータは、国際的な医学雑誌に発表された系統的レビューの結果を反映しています。

要点まとめ

  • 腎う積水症(水腎症)は病気そのものではなく、尿路の閉塞を示す「兆候」であり、放置すると腎機能に永続的な障害を引き起こす可能性があります。
  • 感染症の併発、急激な腎機能の低下、または耐え難い痛みを伴う場合は、尿管ステント留置や経皮的腎瘻造設術による緊急の尿路確保(ドレナージ)が最優先されます。
  • 根本的な治療は原因によって異なり、尿路結石に対しては体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や内視鏡手術(TUL)が、構造的な狭窄や前立腺肥大症には外科手術が選択されます。
  • 診断から治療、回復までのプロセスは原因や病状によって大きく異なります。日本の高額療養費制度を利用することで、治療にかかる経済的負担を軽減できます。
  • 腰背部痛、血尿、発熱、排尿困難などの症状に気づいた場合は、自己判断せず、速やかに泌尿器科専門医を受診することが極めて重要です。

腎う積水症(水腎症)とは何か?その全体像

腎う積水症、または水腎症(すいじんしょう)は、多くの人が耳慣れない言葉かもしれません。しかし、これは腎臓の健康を守る上で見過ごすことのできない重要なサインです。その本質を理解することが、適切な対応への第一歩となります。

医学的定義と重要性

医学的に、腎う積水症とは、尿を溜めて排出する腎臓内部の空間(腎盂および腎杯)が、尿の流れが滞ることによって拡張した状態を指します1。重要なのは、これが独立した病気ではなく、尿路のどこかで起きている「閉塞」や「通過障害」の結果として現れる画像上の所見であるという点です1。この拡張が腎臓から膀胱へ尿を運ぶ管である尿管にまで及ぶ場合、水腎尿管症と呼ばれます1。超音波検査などでこの所見が見つかった場合、それは診断の終わりではなく、「なぜ腎臓が腫れているのか?」という原因究明の始まりを意味する警鐘なのです8

病態生理:腎臓への圧力とその影響

水腎症のメカニズムは、尿の排出路が塞がれることから始まります。正常に排出されない尿は閉塞部より上流に溜まり、腎盂内の水圧(静水圧)を上昇させます2。この高まった圧力は、単に尿路を広げるだけでなく、腎臓の機能単位であるネフロンにまで逆流し、血液をろ過する糸球体の働きを直接妨げます。これにより、腎機能の重要な指標である糸球体濾過量(Glomerular Filtration Rate – GFR)が低下します2。この状態が続くと、腎臓の組織は血流不足に陥り、腎皮質の萎縮や線維化といった回復不能なダメージを受け、最終的には腎機能の永久的な喪失に至る可能性があります2

急性型と慢性型の違い

水腎症は、その発症様式から急性と慢性に大別されます。

  • 急性水腎症: 尿路結石が尿管に詰まるなど、突然の閉塞によって発生します。激しい腰背部痛(疝痛発作)が特徴で、吐き気や嘔吐を伴うこともあります9。迅速に閉塞が解消されれば、腎機能は完全に回復する可能性が高いです2
  • 慢性水腎症: 先天的な尿路の狭窄や、ゆっくりと増大する腫瘍、前立腺肥大症などが原因で、数週間から数年かけて徐々に進行します。このタイプの危険性は、痛みが全くないか、あっても鈍い腰痛程度で、自覚症状に乏しい点にあります910。気づいた時にはすでに腎機能が著しく低下していることも少なくなく、「静かなる腎機能の破壊者」とも言えるでしょう。

日本における現状と慢性腎臓病(CKD)との関連

日本における水腎症の正確な有病率は不明ですが、国民病ともいわれる慢性腎臓病(CKD)との関連は無視できません。日本の成人のおよそ8人に1人、約1330万~1480万人がCKDに罹患していると推定されています11。CKDの主な原因は糖尿病性腎症や慢性糸球体腎炎ですが12、水腎症のような閉塞性疾患もCKDを引き起こしたり、悪化させたりする重要な要因です。したがって、水腎症を早期に発見し、適切に治療することは、回復不能な腎障害への進行を防ぎ、日本の医療システムにおけるCKDの負担を軽減するために不可欠な医療目標となっています。


腎う積水症を引き起こす多様な原因

水腎症の治療戦略を立てる上で、その根本原因を特定することが最も重要です。原因は大きく分けて、尿路の内部に問題がある「内因性」、外部からの圧迫による「外因性」、そして機能的な問題による「機能的障害」の3つに分類されます。

内因性閉塞:尿路内部からの原因

  • 尿路結石: 全年齢層において最も一般的な原因です1。ある研究では、水腎症の原因の54.1%を占めたと報告されています1。結石は腎盂尿管移行部(PUJ)、総腸骨動脈との交差部、膀胱尿管移行部(VUJ)という3つの生理的狭窄部で詰まりやすいとされています1
  • 尿路狭窄: 尿路が狭くなる状態で、先天性と後天性があります。先天性の腎盂尿管移行部狭窄症は、乳幼児で発見される水腎症の主要な原因の一つです9。後天性の狭窄は、感染、外傷、放射線治療、過去の手術による瘢痕などが原因で起こり得ます2
  • 尿路の腫瘍: 腎細胞がん、腎盂・尿管がん、膀胱がんなどの悪性腫瘍が尿路を塞ぐことがあります9。特に上部尿路がん(UTUC)患者における水腎症の存在は、病期が進行していることを示唆し、予後不良因子と関連しています13
  • 前立腺肥大症(BPH): 高齢男性における下部尿路閉塞の極めて一般的な原因です。肥大した前立腺が尿道を圧迫し、膀胱からの尿の排出を妨げます。この状態が続くと、膀胱内の圧力が両側の腎臓にまで及び、両側性の水腎症を引き起こします9

外因性圧迫:尿路外部からの原因

  • 妊娠: 妊娠女性の約80%に生理的な水腎症が見られます2。これは増大する子宮による尿管の物理的な圧迫と、ホルモン(プロゲステロン)による尿管の平滑筋弛緩作用が組み合わさった結果です。通常は無症状で、産後6~12週で自然に解消します2が、強い痛みや感染を伴う場合は治療が必要となることもあります7
  • 婦人科疾患・骨盤臓器脱(POP): 子宮筋腫や卵巣嚢腫、子宮頸がんなどの大きな骨盤内腫瘍が尿管を圧迫することがあります。また、重度の骨盤臓器脱(子宮脱など)も尿管を屈曲させ、水腎症を引き起こす可能性があります。ある系統的レビューでは、POP患者における水腎症の有病率は3.5%から30.6%と報告されています6
  • 後腹膜線維症: 後腹膜腔に硬い線維組織の塊が形成される稀な炎症性疾患で、この塊が尿管を締め付けることで両側性の水腎症を引き起こすことがあります。悪性腫瘍を除外した後、ステロイド治療が有効な場合があります14
  • その他の原因: 腹部大動脈瘤、後腹膜腫瘍(リンパ腫など)、あるいは腰部脊柱管狭窄症のような脊椎疾患も、間接的に排尿障害を引き起こし、水腎症の原因となることがあります215

機能的障害:物理的閉塞ではない原因

  • 膀胱尿管逆流症(VUR): 排尿時などに尿が膀胱から尿管、腎臓へと逆流する状態で、小児における先天性尿路異常として最も一般的なものの一つです。再発性尿路感染症と水腎症の重要な原因となります16
  • 神経因性膀胱: 脊髄損傷、多発性硬化症、糖尿病などによる神経障害が原因で、膀胱の収縮機能や括約筋との協調性が失われる状態です。尿が完全に排出されずに慢性的に滞留し、結果として両側性の水腎症に至ります2

これらの原因を鑑別することは臨床上非常に重要です。例えば、片側性の水腎症は尿管や腎盂レベルの問題(結石など)を、両側性の水腎症は膀胱より下流の問題(前立腺肥大症など)や全身性の機能障害を示唆します2。このロジックが、診断の初期段階における医師の思考を導きます。


症状の認識と診断プロセス

水腎症の診断は、症状の認識から始まり、基本的な検査を経て、専門的な画像診断で確定するという論理的なプロセスをたどります。

臨床症状:急性型と慢性型のサイン

水腎症の臨床像は、閉塞が急性か慢性かによって大きく異なります。

  • 急性症状:
    • 痛み(疝痛発作): 最も特徴的な症状で、腰背部に突然生じる、締め付けられるような激痛です。痛みは前方、下腹部、鼠径部へと放散することがあります2
    • 消化器症状: 激痛に伴い、吐き気や嘔吐が頻繁に見られます9
    • 血尿: 尿がピンク色や赤色になることがあります。
    • 感染症状: 閉塞に感染が加わると(閉塞性腎盂腎炎)、38℃以上の高熱、悪寒、震えといった全身症状が現れ、これは緊急事態です9
  • 慢性症状:
    • 慢性水腎症は、はっきりとした症状なく進行することが多く、漠然とした腰の鈍痛を感じる程度か、全く無症状の場合もあります10
    • 排尿困難、頻尿、夜間頻尿など、原因となっている疾患(例:前立腺肥大症)の症状が唯一のサインであることもあります2
    • 重症化すると、倦怠感、食欲不振、浮腫、高血圧といった慢性腎不全の症状が現れることもあります。

初期評価:問診から検査まで

患者が来院した際、医師はまず以下の初期評価を行います。

  • 問診と診察: 痛みの特徴や既往歴を詳しく聞き取ります17。診察では、腰背部の叩打痛(こうだつう)の有無や、腹部の腫瘤を確認します。
  • 尿検査: 血尿、白血球や細菌(感染の兆候)、異常細胞(腫瘍の可能性)の有無を調べます9
  • 血液検査: 腎機能(クレアチニン、BUN)と炎症反応(白血球数、CRP)を評価します2。クレアチニンの上昇は腎機能低下の警告サインであり、治療の緊急度を決定する重要な要素です。

画像診断:原因を特定する「眼」

画像診断は、水腎症の存在を確認し、その程度と原因を特定する上で決定的な役割を果たします。

  • 超音波(エコー)検査: 初期診断における第一選択の検査です10。非侵襲的で放射線被曝がなく、安全性が高いため、妊婦や小児にも適しています。腎盂の拡張を非常に高い感度で検出できます1。ただし、約30%のケースでは原因まで特定できないという限界もあります1
  • CTスキャン: 水腎症の原因診断における「ゴールドスタンダード」とされています18
    • 単純CT: 尿路結石の検出に最適で、サイズ、位置、密度を正確に特定できます2
    • 造影CT: 腫瘍や尿管狭窄、血管異常などが疑われる場合に必須です。日本感染症学会(JAID)らのガイドラインによれば、緊急ドレナージが必要な状態の鑑別に最も有用なツールとされています5
  • その他の検査: MRI、KUB(腹部単純X線撮影)、膀胱鏡検査、逆行性腎盂尿管造影などが、必要に応じて行われます9

これらの診断プロセスは、単純なものから専門的なものへと段階的に進められ、臨床症状、検査結果、画像所見を統合して、患者一人ひとりにとって最適な治療計画を立てるための基礎となります。


アクションプラン:尿排出のための緊急介入

水腎症と診断された際、最も緊急性の高い問いは「今すぐ介入が必要か?」です。急性期における最優先事項は、腎機能を保護し、生命を脅かす合併症を制御することです。そのための手段が尿路ドレナージ(尿の排出路を確保する処置)です。

緊急介入が必要となる絶対的適応

すべての水腎症が即時介入を必要とするわけではありません。しかし、以下の状況では、ドレナージの遅れが致命的な結果を招く可能性があります。

  • 閉塞性尿路感染症(閉塞性腎盂腎炎): 最も重要かつ緊急性の高い適応です。尿のうっ滞と感染が組み合わさると、細菌やその毒素が血流に乗り、敗血症(urosepsis)やショックを引き起こす危険があります10
  • 急性腎機能障害: 血清クレアチニン値の急激な上昇がその証拠です。これは閉塞が腎機能に重大なダメージを与えているサインであり、不可逆的な損傷を防ぐために即時の介入が求められます2
  • 単腎または両側性の閉塞: 機能する腎臓が一つしかない患者や、両側の尿管が閉塞している場合、速やかに無尿状態となり、急性腎不全に陥るため、緊急の対応が必要です2
  • 薬剤でコントロール不能な激痛: 強力な鎮痛薬でも抑えられないほどの痛みがある場合、ドレナージによって腎臓の内圧を下げることが最も効果的な鎮痛手段となります2
  • 尿の尿路外への漏出(溢流): 腎盂内の圧力が極度に高まり、腎杯が破れて尿が腹膜後腔に漏れ出している状態です。尿性腹膜炎などの合併症を防ぐためにドレナージが必要です19

主要なドレナージ術の詳細分析

緊急介入が必要と判断された場合、主に3つのドレナージ方法があります。選択は、閉塞の原因、患者の状態、医療機関の設備などによって決まります。

尿管ステント留置術 (Ureteral Stenting)

尿道から内視鏡を挿入し、X線透視下で閉塞部を通過させて、腎盂と膀胱の間に「JJステント」と呼ばれる中空のチューブを留置する手技です。尿はこのステントの内側と外側を通って流れます2。体内に完全に収まるため、患者の日常生活への影響が少ないのが最大の利点です。しかし、ステントによる膀胱刺激症状(頻尿、血尿、痛み)が起きることがあります。また、閉塞が強固な場合は留置に失敗することもあります20

経皮的腎瘻造設術 (Percutaneous Nephrostomy, PNL)

超音波やX線で確認しながら、背中から直接腎臓に針を刺し、拡張した腎盂にカテーテルを留置する手技です。尿は体外の採尿バッグに排出されます2。局所麻酔で施行可能で、ステント留置が困難な場合でもほぼ100%成功します。特に、膿が溜まった重症感染症(膿腎症)では、膿を直接体外に排出できるため第一選択となります5。欠点は、体外に管とバッグを携帯する必要があり、生活の質が大きく損なわれること、出血や隣接臓器損傷のリスクがあることです20

尿道カテーテル留置 (Urethral Catheterization)

尿道から膀胱へカテーテル(フォーリーカテーテルなど)を挿入し、尿を排出させる最も単純な方法です。この手技は、前立腺肥大症や尿道狭窄など、膀胱より下流の閉塞が原因で両側性の水腎症が生じている場合にのみ有効です2。膀胱の圧力を下げることで、両側の腎臓への負担も軽減されます。

ドレナージ術の比較
項目 尿管ステント留置術 経皮的腎瘻造設術
主な適応 結石、狭窄、外部圧迫による尿管閉塞 ステント留置不能例、膿腎症、重症敗血症
手技 経尿道的内視鏡。通常、腰椎麻酔や全身麻酔。 経皮的穿刺。通常、局所麻酔。
長所 体内ドレナージで生活への影響が少ない。 成功率が高く、膿やデブリの排出に優れる。迅速に施行可能。
短所 高度な閉塞では失敗しうる。膀胱刺激症状。抜去に処置が必要。 侵襲的。出血リスク。体外にバッグを携帯する必要がある。
費用目安 (3割負担) 約10,200円 (手技料のみ)21 約41,580円 (手技料のみ)21

これらのドレナージ術は、あくまで腎臓を守り、症状を緩和するための「時間稼ぎ」の応急処置です。急性期を乗り越えた後には、閉塞の根本原因に対する治療(根治治療)が必要となります。


根本治療:原因疾患へのアプローチ

緊急ドレナージによって急性期の危機を脱した後は、水腎症を引き起こした根本的な原因を治療する段階に移ります。治療計画は、その「犯人」が何かによって全く異なります。

尿路結石の管理と治療

急性水腎症の最多原因である尿路結石の治療は、結石のサイズや位置によって選択肢が変わります。

  • 薬物による結石排出療法 (MET): 10mm未満の小さな尿管結石に対して、α1遮断薬(タムスロシンなど)を用いて尿管を弛緩させ、自然排石を促す方法です。日本泌尿器科学会(JUA)のガイドラインでも有効な保存的治療として推奨されています3
  • 体外衝撃波結石破砕術 (ESWL): 体の外から高エネルギーの衝撃波を当てて結石を砂状に砕き、尿と共に排出させる非侵襲的な治療法です4。日帰り治療も可能ですが、大きな結石や硬い結石には効果が低いという欠点があります4
  • 経尿道的尿路結石除去術 (TUL): 尿道から細い内視鏡を挿入し、レーザーで結石を砕きながらバスケットカテーテルで回収する方法です4。高い成功率を誇り、多くの尿管結石に対する標準治療(ゴールドスタンダード)と位置づけられています22
  • 経皮的腎結石砕石術 (PNL): 背中から腎臓へ直接内視鏡を挿入し、大きな腎結石を砕いて取り除く方法です4。20mmを超える大きな腎結石やサンゴ状結石に対する第一選択ですが、侵襲性が最も高い手術です22
結石の位置とサイズに応じた治療選択(JUAガイドライン22に基づく)
結石の部位・サイズ 第一選択 第二選択 備考
腎結石 <10mm 経過観察 / ESWL TUL(軟性鏡) 症状や腎臓内の位置による。
腎結石 10-20mm TUL / PNL / ESWL 腎下極ではTUL/PNLが優位。結石の硬さも考慮。
腎結石 >20mm PNL TUL ESWLは第一選択として推奨されない。
尿管結石 <10mm MET / TUL ESWL TULはESWLより成功率が高い。
尿管結石 >10mm TUL PNL(上部尿管) 中下部尿管結石ではTULが圧倒的に優位。

その他の構造的・内科的原因の治療

  • 腎盂尿管移行部狭窄症: 標準治療は、狭窄部を切除して尿管と腎盂を広く吻合し直す「腎盂形成術」です。現在では腹腔鏡手術やロボット支援手術といった低侵襲な方法が主流で、90%以上の高い成功率を誇ります9
  • 前立腺肥大症 (BPH): 薬物治療が第一選択ですが、効果不十分な場合や合併症がある場合は手術が適応となります。尿道から内視鏡を入れて前立腺の組織を削り取る「経尿道的前立腺切除術(TURP)」が最も一般的です23
  • 尿路腫瘍: 治療はがんの種類や進行度によって決まります。腎臓がんでは腎摘除術、上部尿路がんでは腎尿管全摘除術といった根治的な手術が必要となります9
  • 後腹膜線維症: 原因不明の特発性の場合、悪性腫瘍を除外した上で、ステロイドや免疫抑制剤による薬物療法が炎症と線維化を抑えるのに有効なことがあります14

これらの治療は、泌尿器科、腫瘍内科、放射線科、婦人科など、複数の専門科が連携する集学的アプローチを必要とすることが多く、患者中心の医療体制の重要性を浮き彫りにします24


特殊なケースと長期的展望

水腎症の管理は、新生児や妊婦といった特定の集団ではより複雑な配慮が求められます。また、患者の長期的な予後と回復に関する現実的な情報提供も、質の高い医療には不可欠です。

特定の患者群における水腎症

胎児・新生児

胎児期の超音波検査の普及により、出生前水腎症(ANH)は最も頻繁に発見される異常の一つで、全妊娠の1-5%に見られます16。出生後、多くは軽度で自然に軽快するため、慎重な経過観察が基本方針となります16。重症例や、膀胱尿管逆流(VUR)などの他の異常が疑われる場合は、より詳細な検査と専門的な管理が必要です。尿路感染症予防のための抗菌薬投与(CAP)については、その有効性を巡る議論が続いており、個々のリスクに応じて決定されます16

妊婦

前述の通り、妊娠中の生理的な水腎症は一般的で、通常は治療を必要としません2。しかし、コントロール不能な痛み、発熱を伴う尿路感染症、腎機能低下の兆候がある場合は、母体と胎児の安全のために、尿管ステント留置や経皮的腎瘻造設術による介入が検討されます。発熱、持続する痛み、高いCRP値や白血球数が、外科的介入の必要性を示唆する因子として報告されています7

予後、回復、および実用的な情報

予後と回復可能性

水腎症の予後は、原因、閉塞期間、閉塞の程度という3つの要素に大きく左右されます2。急性閉塞が早期に解消されれば、腎機能は良好に回復する可能性が高いです8。一方で、慢性的な閉塞が数週間から数ヶ月続くと、閉塞が解消された後でも腎臓に不可逆的な構造変化が生じ、機能が永久に失われることがあります2。また、悪性腫瘍が原因の場合、水腎症の存在は病期が進行していることを示し、一般的に予後不良のサインとなります13

再発予防

最も一般的な原因である尿路結石では、再発予防が非常に重要です。主な対策は以下の通りです。

  • 水分摂取: 尿を希釈するため、1日2リットル以上の水分を摂ることが最も重要です。
  • 食事療法: 結石の成分に応じて、塩分、動物性タンパク質、シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草、ナッツ類など)の摂取を控えるよう指導されることがあります。
  • 基礎疾患の管理: 高血圧、糖尿病、肥満といった生活習慣病を適切に管理することも、結石の再発リスクを下げることが示されています25

日本の患者様向け実用情報

治療に際しては、健康面だけでなく、時間や費用といった現実的な側面も大きな関心事です。

  • 入院期間の目安:
    • 経尿道的尿路結石除去術 (TUL): 4~5日程度26
    • 経皮的腎結石砕石術 (PNL): 1~2週間程度4
    • 経尿道的前立腺切除術 (TURP): 1週間程度27
  • 治療費の目安(3割負担の場合):
    • 体外衝撃波結石破砕術 (ESWL): 約80,000円27
    • 経尿道的尿路結石除去術 (TUL): 約120,000円27
    • 経尿道的前立腺切除術 (TURP): 約180,000円27
    • 脊椎関連の複雑な手術: 250,000円~850,000円程度28

幸いなことに、日本には「高額療養費制度」があります。この制度は、1ヶ月間の医療費の自己負担額に上限を設け、上限を超えた分は後で払い戻される仕組みです。これにより、高額な治療が必要な場合でも、患者の経済的負担が大幅に軽減されます21。手続きについては、病院の相談窓口などで確認することをお勧めします。


よくある質問

腎う積水症と診断されたら、必ず手術が必要ですか?

必ずしもそうではありません。治療法は、水腎症の原因、症状の有無、腎機能への影響の程度によって決まります。例えば、妊娠に伴う生理的な水腎症や、症状のない軽度の先天性水腎症は、手術をせずに経過観察することがほとんどです162。一方で、尿管結石や尿管狭窄が原因で痛みや感染、腎機能低下を引き起こしている場合は、根本原因を取り除くための手術(結石除去術や腎盂形成術など)が必要になります。緊急時のドレナージ術はあくまで応急処置であり、その後に根治手術を計画するのが一般的です。

尿管ステントは痛いですか?どのような副作用がありますか?

尿管ステントは異物であるため、一定の不快感や副作用を伴うことがあります。最も一般的なのは、ステントが膀胱を刺激することによる症状で、頻尿、尿意切迫感(急に強い尿意を感じる)、排尿時痛、血尿などが挙げられます20。また、排尿時に尿が腎臓へ逆流するため、脇腹に痛みや違和感を感じることもあります。これらの症状の程度には個人差が大きく、ほとんど気にならない人もいれば、日常生活に支障をきたすほど強く感じる人もいます。これらの症状は、ステントを抜去すれば解消します。

腎う積水症は自然に治りますか?

原因によります。妊娠中に見られる生理的な水腎症は、出産後に子宮が小さくなることで自然に解消されます2。また、新生児の軽度の水腎症も、成長に伴って自然に治ることが多いです16。しかし、尿路結石、腫瘍、手術後の瘢痕による狭窄などが原因の場合は、その原因が取り除かれない限り、自然に治ることはありません。放置すれば腎機能が徐々に悪化する危険性があるため、適切な治療が必要です。

治療費が高額になりそうで心配です。何か支援制度はありますか?

はい、日本には医療費の自己負担を軽減するための「高額療養費制度」があります。この制度は、同一月内に支払った医療費の自己負担額が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超えた金額が払い戻されるというものです21。手術や入院で医療費が高額になった場合でも、この制度を利用することで最終的な負担額を大幅に抑えることができます。事前に「限度額適用認定証」を申請しておけば、窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめることも可能です。詳しくは、ご加入の公的医療保険(健康保険組合、協会けんぽ、市町村の国民健康保険など)の窓口や、病院の医療相談室にお問い合わせください。


結論

腎う積水症(腎う積水症)は、単独の病気ではなく、尿路系に潜む根本的な問題を示す重要な警告サインです。その意味を正しく理解し、迅速かつ適切に対応することが、腎臓という貴重な臓器を守り、長期的な健康を維持するための鍵となります。

本記事で強調した要点を再確認します。

  • 水腎症は重大なサイン: 尿の流れが妨げられていることを示し、特に無症状の慢性型は、気づかぬうちに腎機能を損なう可能性があります。
  • 緊急時の最優先はドレナージ: 感染、急性腎不全、激痛を伴う場合、尿管ステントや腎瘻による尿路確保が、腎臓を保護し、患者の状態を安定させるために不可欠です。
  • 根治治療の必要性: ドレナージは一時的な解決策に過ぎません。急性期を乗り越えた後は、結石、狭窄、腫瘍といった根本原因を治療し、再発を防ぐことが必須です。
  • 早期発見・早期治療が予後を決める: 診断と介入が早ければ早いほど、腎機能が回復する可能性は高まります。

行動への呼びかけ

すべての読者の皆様へ、ご自身の体の声に耳を傾けることの重要性をお伝えします。脇腹や腰背部の痛み、原因不明の発熱、血尿、あるいは排尿困難、頻尿、尿の勢いが弱いといった排尿習慣の変化を決して軽視しないでください。

もし、ご自身やご家族にこれらの症状が見られた場合は、自己判断で様子を見ることなく、速やかに医療専門家の助言を求めてください。泌尿器科(泌尿器科)を備えた医療機関を早期に受診することが、正確な診断と時機を逸しない治療、そして最良の健康状態を取り戻すための、最も賢明で不可欠な一歩です。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康上の懸念や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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