腎不全ステージ3の治療法とは?専門医が解説!
腎臓と尿路の病気

腎不全ステージ3の治療法とは?専門医が解説!

はじめに

慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の機能が徐々に低下していく進行性の疾患であり、日本国内でも患者数が増加傾向にあります。特に腎不全が進行すると、日常生活に大きな支障をきたし、長期的には生命予後にも重大な影響を及ぼす可能性があるため、早期発見と適切な治療・管理がきわめて重要です。本記事では、腎臓病のうち「慢性腎不全のステージ3(以下、CKDステージ3)」に焦点を当て、症状や治療法、日常生活での注意点などを包括的にご紹介します。CKDステージ3は腎機能がかなり落ちてきている段階であり、適切な対策を講じないとステージ4、ステージ5へ進行しやすくなります。そのため、医療機関での定期的なフォローアップと生活習慣の見直しが欠かせません。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

本記事は、慢性腎不全ステージ3に関する基本的な情報をもとに、下記の点を中心に詳しく解説します。

  • CKDステージ3とはどのような状態なのか
  • 主な症状・特徴と、見逃しやすいサイン
  • 腎機能の指標(推算糸球体ろ過量など)の見方と管理
  • CKDステージ3に対する治療・管理の方針
  • 食事や運動など、日常生活での注意点
  • 進行を抑えるために推奨される最新の治療アプローチや研究知見

日本では、定期健康診断や人間ドックを受診する習慣が定着しており、そこで血液検査や尿検査を行って腎機能をチェックすることも珍しくありません。しかしCKDステージ3は、特に症状が目立ちにくい段階でもあり、見過ごされるケースが少なくありません。本記事を参考にしながら、早期介入を図る重要性や適切な治療法について理解を深めていただき、よりよい生活の質を目指していただければ幸いです。

なお、本記事で紹介する情報はあくまでも参考資料であり、最終的な診断や治療方針は医師との相談のもとで決定されます。個々の体調や合併症、生活環境などにより最適な治療法は異なる場合がありますので、気になる症状があれば早めに医療機関を受診し、専門家の判断を仰いでください。


専門家への相談

本記事の内容は、腎臓疾患の治療に関して信頼できる国内外の医学文献や医療機関が公表しているガイドラインを参照して作成しました。さらに、本記事内で言及されている治療方針や管理法については、医師の意見として「Bác sĩ Nguyễn Thường Hanh」(内科・総合内科を専門とする医師)の助言をもとに、可能な限り正確な情報をまとめています。ただし最終的な診療判断は、患者個々の病状・ライフスタイル・合併症の有無などを踏まえたうえで行われるべきです。症状や治療法について気になる点があれば、必ず医療機関で主治医に相談してください。


CKDステージ3とは何か

腎臓の働きと慢性腎不全のステージ分類

腎臓は、体内の老廃物や余分な水分を尿として排出する「ろ過機能」、電解質や酸塩基バランスを調整する「恒常性維持機能」、ホルモン産生(エリスロポエチンやレニンなど)を担う「内分泌機能」など、生命維持に不可欠な働きをしています。

腎機能の低下は急性と慢性に大きく分けられ、慢性の場合は「慢性腎臓病(CKD)」と呼ばれ、推算糸球体ろ過量(GFR)によってステージ分類されます。ステージ分類は以下のように定義されます。

  • ステージ1:GFR ≧ 90mL/分/1.73m^2 (蛋白尿など腎障害の所見はあるが、GFRは正常)
  • ステージ2:GFR 60~89mL/分/1.73m^2 (軽度低下)
  • ステージ3a:GFR 45~59mL/分/1.73m^2
  • ステージ3b:GFR 30~44mL/分/1.73m^2
  • ステージ4:GFR 15~29mL/分/1.73m^2
  • ステージ5:GFR < 15mL/分/1.73m^2(高度の腎機能低下、しばしば末期腎不全と呼ばれる)

本記事で取り上げるCKDステージ3は「中等度の腎機能障害」にあたる段階とされ、3a(GFR45~59)3b(GFR30~44)に細分化されます。

CKDステージ3で現れやすい症状

CKDステージ3の段階では、腎機能がかなり低下し始めているにもかかわらず、症状としては比較的軽度、あるいは自覚しづらいものが多いことが特徴です。腎臓は予備能が大きく、ある程度のダメージが蓄積しても、はっきりとした症状が出ない場合があります。しかし次のようなサインに気づいたら、早めの受診が望ましいとされています。

  • 倦怠感・疲労感:体内の老廃物が十分に排出されず、疲労感やだるさを感じやすい
  • むくみ(浮腫):水分調節の異常により、足首や手指などにむくみが生じる
  • 血圧の上昇:腎機能低下にともなう電解質バランス異常で高血圧になることが多い
  • 尿異常:泡立ちの多い尿、尿量の変化、色の変化(濃い黄色や褐色)、血尿など
  • 貧血傾向:エリスロポエチンの産生が低下し、ヘモグロビン値が落ちることによる

腎機能低下がさらに進行すれば、もっと顕著な症状(悪心・嘔吐、呼吸困難感など)が出てくる可能性が高まるため、ステージ3の段階でできる限り早期介入を行い、合併症や末期腎不全への進展を抑止することが大切です。


腎不全ステージ3における重要な指標と定期的なモニタリング

1. 推算糸球体ろ過量(GFR)

GFRは、腎臓が1分間に何mLの血液をろ過できるかを示す指標です。血清クレアチニン値、性別、年齢などから推定される「推算GFR(eGFR)」がよく用いられます。CKDステージ3では45~59(3a)または30~44(3b)の範囲に該当します。経時的に測定し、どの程度のスピードでGFRが落ちているかを把握することで、進行度や治療効果を確認可能です。

2. たんぱく尿・アルブミン尿(ACRやPCR)

  • ACR (albumin-to-creatinine ratio):尿中のアルブミン量とクレアチニン量の比率
  • PCR (protein-to-creatinine ratio):尿中の総タンパク量とクレアチニン量の比率

これらは、腎臓のろ過機能がどの程度障害されているかを示す上で非常に重要です。特にアルブミン尿(微量アルブミン尿を含む)は、腎機能障害の進行リスクを示唆する指標として重視されています。ACRやPCRの値が高いほど、より厳密な血圧・血糖コントロールや薬物療法が必要となりやすいとされています。

3. ヘモグロビン(Hb)値

腎機能の低下により、赤血球産生に関わるエリスロポエチンが十分産生されなくなると、貧血が起こりやすくなります。貧血の進行は全身倦怠感、動悸、息切れなどを助長するため、Hb値が100g/L近くまで低下しているかなどをチェックし、適宜鉄剤やエリスロポエチン製剤を使用するケースもあります。

4. 血圧

高血圧は、CKDの進行に影響を及ぼす大きな要因のひとつです。多くのガイドラインでは、CKD患者の血圧目標を140/90mmHg未満(糖尿病などほかの合併症がある場合は130/80mmHg未満)に設定しています。ACE阻害薬やARBといった薬剤を用いて血圧を適正に管理することは、糸球体のさらなるダメージを防ぐ上で重要です。

5. 心血管リスク

CKDがある患者では、心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中など)の発症リスクが高いことが知られています。喫煙の有無、脂質異常症、糖尿病、肥満などの危険因子を併せ持つ場合は、心血管リスク評価と対策が必要不可欠です。食事療法や運動療法、禁煙指導など、包括的なアプローチによるリスク低減が望まれます。


CKDステージ3の治療アプローチ

腎機能が中等度まで低下しているステージ3では、腎機能をできるだけ温存し、合併症を抑えることが治療の主眼となります。治療法は大きく分けて「薬物療法」と「生活習慣の見直し」に集約されます。

1. 薬物療法

(1) ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)・ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)

高血圧の管理と、たんぱく尿の軽減を目的に広く使われる薬剤です。糸球体内圧を下げる効果があり、腎保護作用が期待されます。CKDステージ3a・3bでは、これらの薬剤を早めに導入することで、腎機能低下のペースを遅らせることが可能とされています。

(2) 鉄剤、エリスロポエチン製剤

貧血が顕著な場合は、経口鉄剤や注射の形での鉄補充、あるいはエリスロポエチン(EPO)製剤の投与を行うことがあります。ヘモグロビンのレベルを改善して疲労感を和らげ、生活の質(QOL)を維持することが目的です。

(3) 利尿薬

体内に水分が過剰に溜まりやすい場合や、血圧管理の一環として利尿薬(フロセミドなど)を処方することがあります。むくみや心不全の悪化を防ぐ上でも有効です。

(4) その他

  • リン吸着薬:血中リン値が高い場合に用い、骨代謝異常や血管石灰化を防ぐ
  • 重炭酸ナトリウム:代謝性アシドーシスが認められる場合に投与
  • 糖尿病治療薬:糖尿病がある場合は、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬など、腎保護効果が期待される薬剤が考慮される

2. 生活習慣の見直し

(1) 食事療法

  • 減塩:1日6g未満を目安にし、できるだけ塩分量をコントロールする
  • たんぱく質制限:過度なたんぱく質摂取は糸球体の負担となるため、必要量を守る
  • カロリー管理:適正体重を維持するため、過剰摂取を避ける
  • カリウム・リン制限:血液検査で高カリウム血症や高リン血症が疑われる場合は制限が必要

(2) 運動療法

適度な有酸素運動(ウォーキングや軽いジョギングなど)は、血圧・血糖の改善や心肺機能の維持に有用です。ただし、過度な運動は逆に腎臓に負担をかけるおそれもあるため、主治医と相談のうえ、自分の体力に合ったプログラムを選択してください。

(3) 禁煙・節酒

喫煙は動脈硬化のリスクを高め、腎機能悪化の一因ともなります。可能な限り早い段階で禁煙を検討しましょう。また、アルコール摂取は高血圧や肝機能障害など他のリスクも伴うため、節度のある量にとどめるか、医師の指導を仰ぐことが重要です。

(4) ストレス管理と十分な休養

ストレスホルモンが血圧を上昇させたり食欲を乱したりすることで、腎機能にも悪影響を及ぼす場合があります。睡眠不足や過度の緊張は避け、生活リズムを整えることが大切です。


CKDステージ3aと3bの差異と治療

CKDステージ3a(GFR45~59)

この段階では、腎機能は低下しているものの、症状が比較的軽いか、はっきりと自覚できないケースが多くみられます。主な治療は薬物療法(ACE阻害薬・ARBなど)生活習慣管理です。適切に血圧・血糖・体重をコントロールし、喫煙を控えることで、腎機能のさらなる低下を抑制できます。また、貧血傾向にある場合は鉄剤の補充などを検討します。

CKDステージ3b(GFR30~44)

ステージ3bになると、GFRがさらに低下し、症状も出やすくなり、場合によっては検査値の大きな変動が認められます。合併症として高血圧、貧血、電解質異常、代謝性アシドーシスなどが顕在化しやすく、一部の患者では、血液透析(HD)や腹膜透析の準備を見据えた管理が検討されます。ただし、透析導入が必要かどうかは、GFRだけではなく、臨床症状や合併症の有無なども総合的に判断されるため、必ずしもステージ3bですぐ透析を開始するわけではありません。

一方で、生活習慣の改善と適切な薬物療法を続けることで、多くの患者さんにとって腎機能低下のペースを遅らせることは十分可能です。主治医との定期的な面談や検査を通じ、最適なタイミングで治療方針を調整していくことが重要といえます。


血液透析や腎移植が必要になるケース

CKDステージ3は、まだ透析や移植が必須となる段階ではありませんが、GFRが30mL/分/1.73m^2を下回る(ステージ4)あたりから、透析導入を検討する機会が増えます。以下に透析や腎移植について簡単に触れておきます。

血液透析(HD)

  • 週に3回程度、1回あたり3~4時間かけて血液を透析装置に通し、老廃物や余分な水分、電解質を除去する方法
  • 透析中はベッドや椅子に座っている必要があり、一部の方は血圧低下や筋肉けいれん、嘔気などの不快症状を訴える場合もある
  • 一般的には5~10年生存率の例が多いが、透析生活を20~30年以上継続している方も実際に存在し、本人の合併症やリハビリ状況、管理状態によって大きく変わる

腹膜透析(PD)

  • 自宅で自分自身の腹膜を透過膜として利用し、透析液を入れ替える方法
  • 血液透析ほど頻回に通院しなくてもよいメリットがある一方、腹膜炎のリスクなども存在する
  • 生活スタイルに合わせた選択肢として、血液透析との組み合わせ(腹膜透析+週1回の血液透析)などが検討されることもある

腎移植

  • 健康な腎臓を提供者(ドナー)から移植する治療
  • 成功すれば透析を行わなくて済むが、ドナーとの適合性や免疫抑制剤の長期使用などの課題がある

CKDステージ3で適切な治療を受けながら、腎機能悪化のペースを抑えることで、透析や移植といった大がかりな医療処置を要するステージへ移行する時期をできるだけ遅らせることが期待できます。


最新研究から見るCKDステージ3の管理の重要性

薬物療法の進歩

近年、慢性腎臓病の治療領域では、SGLT2阻害薬(主に2型糖尿病治療薬として開発されてきた薬剤)やGLP-1受容体作動薬の腎保護効果に関する研究が注目を集めています。特にSGLT2阻害薬は、血糖コントロールに加えて、糸球体内圧を下げてアルブミン尿を軽減する働きがあり、CKDステージ3の患者でも有用性が示唆されています。

例:Chen TK ら(2021)“Chronic Kidney Disease Diagnosis and Management: A Review,” JAMA, 325(21), 2184–2196, doi:10.1001/jama.2021.6217
このレビュー論文では、SGLT2阻害薬がCKDに対してどの程度有効かを論じており、腎保護効果・心血管イベントリスク低減効果などが示されました。

日本でも近年、このような薬剤を慢性腎不全のステージ3段階で積極的に使うケースが増えつつありますが、患者個々のリスク評価や血糖値、併存症などを踏まえて判断されるため、主治医との相談が必要です。

レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の最適化

Weir MR ら(2023)“Optimizing RAAS Blockade in Chronic Kidney Disease,” Kidney International, 103(1), 185–195, doi:10.1016/j.kint.2022.09.023
こちらの研究では、ACE阻害薬やARBといったRAAS阻害薬の併用や投与量調整が、CKDステージ別にどのように最適化できるかが論じられています。特にCKDステージ3においては、たんぱく尿を抑制するためにRAAS阻害薬を十分量使うことが有効だが、高カリウム血症などの副作用リスクもあるため、血液検査をこまめに行う必要性が示されています。

生活習慣の重要性に関するエビデンス

CKDステージ3の患者を対象に、減塩指導や定期運動が腎機能悪化のペースに与える影響を調査した国内外の研究では、生活習慣の改善が血圧コントロールやアルブミン尿の改善に寄与し、長期的な予後に良い影響をもたらすとの報告が複数あります。特に日本では食塩摂取量が多くなりやすい傾向が指摘されており、和食文化を大切にしながらも、可能な限り塩分を減らす工夫が推奨されています。


日常生活での具体的なセルフケア

CKDステージ3の患者が、日常生活を安全かつ快適に送り、進行を抑えるために取り組めるセルフケアのポイントを挙げます。

  1. 食事記録をつける
    たんぱく質や塩分、カリウム、リンの摂取量をおおまかにでも把握するため、1日の食事内容をメモする習慣をつけましょう。特に加工食品(ハム、ソーセージ、スナック菓子など)は塩分・リン含有量が高い場合が多いので注意が必要です。
  2. こまめな血圧測定
    自宅で血圧計を使い、朝晩など決まった時間に血圧を測定して記録しておくと、医師との受診時にデータを共有できます。血圧が安定していれば腎機能の悪化リスクを軽減できる可能性が高まります。
  3. 適度な運動(週に3~5回)
    ウォーキングや軽いストレッチなど、息が上がりすぎない程度の有酸素運動を続けることが望ましいです。無理な運動は逆効果になりうるので、自分の体調と相談しながら取り組んでください。
  4. 水分摂取バランス
    ステージ3になると、水分を多く取りすぎるとむくみや高血圧につながる可能性がありますが、逆に脱水や熱中症も避けなくてはなりません。医師や管理栄養士の指示を守りつつ、夏場や運動時にはこまめに水分補給を行い、過剰摂取にならないようにしましょう。
  5. 薬剤アドヒアランス
    処方された薬を決められた時間・用量で飲み続けることは極めて重要です。自己判断で薬を中断したり減量したりすると、腎機能が急速に悪化する恐れがあります。また、市販薬やサプリメントを使用する際は必ず主治医や薬剤師に確認し、腎機能に悪影響を及ぼす成分が含まれていないかを確認しましょう。
  6. 定期的な検査
    血液検査(クレアチニン、eGFR、ヘモグロビン、電解質など)、尿検査(たんぱく尿や尿沈渣)、血圧測定、場合によっては心エコーや腎エコー検査などを定期的に実施して、腎機能と合併症の有無をチェックすることが重要です。

CKDステージ3におけるよくある質問とポイント

Q1. 痛み止めのNSAIDsはやめたほうがいい?

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は腎血流量を低下させ、腎機能悪化を招く可能性があります。慢性頭痛や関節痛などで頻繁に使用している場合は、できる限り使用を控え、別の種類の鎮痛薬に切り替えるなどの方法を主治医に相談することを推奨します。

Q2. CKDステージ3でも激しい運動をしていい?

ステージ3の患者でも適度な運動は必要ですが、マラソンなどの過度な持久系運動や、高重量の筋トレなどは注意が要ります。腎臓への負担を見極めつつ、運動強度を調整しましょう。

Q3. カリウムが多い果物や野菜は避けるべき?

高カリウム血症のリスクがある場合は、バナナやメロン、ほうれん草、豆類などのカリウム含有量が高い食品を摂りすぎないように管理する必要があります。ただし、個々の検査値や食事バランスにも左右されますので、管理栄養士などの専門家に相談して摂取量を調整してください。

Q4. 血液透析を始めるかどうかは何で決まるの?

透析開始の目安はGFRが15mL/分/1.73m^2以下になるステージ5(末期腎不全)前後が一般的ですが、高度の高カリウム血症や重度の貧血、心不全症状が見られるなど、臨床的に緊急性がある場合には早めに導入される場合があります。ステージ3ではまだ透析が必要なケースは多くありません。

Q5. 食塩を控えれば腎機能は回復しますか?

高血圧や過度の塩分負担が原因で腎機能が低下している場合、減塩によって進行を遅らせたり、状態を安定化させることは期待できます。しかし完全回復は難しく、一度損なわれた腎機能を完全に元に戻すことは困難とされています。あくまで進行を抑えるという意味合いで重要です。


治療効果と長期予後について

CKDステージ3は“中期”に位置付けられるため、適切な管理を行うことで透析治療の導入を長期間回避できる可能性があります。以下の要因が、長期予後を左右する大きなポイントとなります。

  • 血圧とアルブミン尿の管理:ACE阻害薬やARBの十分な活用
  • 血糖コントロール(糖尿病合併の場合):SGLT2阻害薬やインスリン治療など
  • 貧血の改善:エリスロポエチン製剤・鉄剤の適切な投与
  • 食事制限(減塩・たんぱく質制限・カリウムやリンの管理)
  • 生活習慣の改善:運動、禁煙、適正体重の維持
  • 定期的な検査フォロー:進行度や合併症の有無を把握し、早めに治療介入

推奨される医療連携のあり方

CKDステージ3に至った場合、腎臓内科専門医だけでなく、管理栄養士や薬剤師、場合によっては心臓内科や糖尿病内科など、多職種と連携しながら総合的にケアすることが望ましいです。日本では、腎臓病総合外来や腎不全専門外来を設けている病院も少なくありません。そのような専門機関でフォローアップを受けることで、合併症の早期発見や多角的な治療プランの立案が可能になります。


おすすめのセルフモニタリング項目

  • 自宅血圧:血圧計を使い、朝起床時と就寝前などに測定
  • 体重増減:むくみや水分貯留のサインとして1日1回定期的にチェック
  • 食事日記:塩分やたんぱく質、カリウム・リンの摂取量を簡単に記録
  • 服薬状況:飲み忘れや勝手な減薬・増薬を防ぐため
  • 症状の変化:疲れやすさ、息切れ、むくみ、尿量・尿色の変化など

これらの情報を医師に伝えることで、より的確なアドバイスや処方調整が期待できます。


総合的なアドバイスと今後の展望

CKDステージ3は、まだ「完全に治せる」段階ではないものの、適切な管理次第で透析導入や末期腎不全への進行を遅らせられる重要な時期です。国内外での研究が活発化するなか、SGLT2阻害薬など新しい治療薬がCKDの進行抑制に一定の成果を示しはじめています。さらに食事療法や運動療法など、生活習慣を見直すことで腎機能だけでなく全身の健康状態が底上げされ、心血管リスクも減らすことが期待できます。

日本の医療現場では、各自治体や病院が慢性腎臓病対策として患者向けの啓発活動や生活指導を進めており、多職種連携による総合的なサポート体制を整えようという動きが加速しています。患者さん自身も、医師や看護師、管理栄養士、薬剤師と積極的にコミュニケーションを取ることで、より良い治療計画をともに考えられるでしょう。


結論と提言

  • CKDステージ3(3a・3b)は腎機能が中等度に低下している段階であり、進行を抑えるためには早期介入が欠かせません。
  • 薬物療法(ACE阻害薬・ARB、SGLT2阻害薬など)、食事療法(減塩・たんぱく質制限など)、適度な運動が基本的な介入手段となります。
  • 高血圧やたんぱく尿、貧血、電解質異常などの合併症をコントロールすることで、透析導入時期を遅らせることが期待できます。
  • 定期的に血液検査・尿検査・血圧測定などを行い、腎機能の推移を把握しつつ主治医と相談して治療方針を調整しましょう。
  • 生活習慣の改善と薬物療法を両立させ、心血管リスクも含めた包括的なケアを目指すことが、長期的な予後の向上につながります。

参考文献


注意事項(免責事項)

本記事は、慢性腎臓病ステージ3に関する一般的な情報を提供することを目的としており、医師免許を持つ専門家による公式の医療アドバイスの代替ではありません。 具体的な診断・治療方針・薬剤選択などは、必ず担当の医師や薬剤師などの専門家と相談してください。また、本記事で引用または紹介した研究や治療法がすべての方に適用可能であるわけではなく、個々の病状や合併症の有無、ライフスタイルなどによって最適な方法は異なります。少しでも異常を感じたら速やかに受診し、専門家の判断を仰いでください。

本記事で紹介した情報は、信頼性の高い医学文献やガイドラインに基づいて構成されていますが、最新の医学的知見の進歩や地域・施設による診療方針の違いなどもある点にご留意ください。定期的に主治医とコミュニケーションをとり、最新の情報に基づいた判断を行うことが大切です。

(本記事は参考情報であり、最終的な治療の決定には医師の診察と指示が必要です。健康状態や症状に不安があれば、必ず専門家に相談してください。)

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