腎臓の位置はどこ?人体における腎臓の位置とその機能
腎臓と尿路の病気

腎臓の位置はどこ?人体における腎臓の位置とその機能

 

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

はじめに

こんにちは、JHO編集部です。皆さんは、日常生活の中で「腎臓」という臓器について、どの程度ご存知でしょうか。腎臓は体内の老廃物をろ過し、電解質バランスや水分量を調整し、さらには血圧を整えるなど、多岐にわたる重要な役割を担っています。一方で、その正確な位置や構造、各機能の詳細については意外に知られていないことが多く、腎臓の健康管理が後回しになりやすい側面があります。

しかし、腎臓の機能が損なわれると、慢性腎臓病や腎不全、腎結石、腎盂腎炎など、さまざまな病気につながる恐れがあります。しかもこれらの疾患は初期段階では自覚症状が乏しい場合が多く、「気づいたときには既に症状が進んでいる」というケースも少なくありません。

本稿では、腎臓の位置や構造、機能を基本から詳しく解説したうえで、代表的な腎臓病の種類や、その予防方法を深掘りしていきます。また、日本国内外の信頼できる医療情報や、近年発表された研究論文などのエビデンスも交えて、腎臓を守るための具体的な実践法・日常生活のポイントをお伝えします。さらに、定期的な健康診断の重要性などもわかりやすく解説し、医療専門家や一般の方がともに参考にできるよう配慮しました。

本記事は多様な読者層を想定し、専門的な内容をなるべく噛み砕いて説明しつつ、科学的根拠に基づく正確性や最新の知見も盛り込むことを目指しています。お子さんから高齢者まで幅広い世代、あるいは医療関係者の方々も含め、「腎臓の健康を理解し、適切に守るための基礎知識」をしっかり身につけられる構成になっています。ぜひ最後までお読みいただき、健やかな日常生活を送るための手がかりとしてご活用ください。

専門家への相談

本記事で取り上げる情報は、日本国内外の信頼性の高い医療情報を参照しながらまとめています。たとえば、National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases (NIDDK) や Cleveland Clinic といった国際的に権威ある専門医療機関が提供している資料を参考にし、腎臓の仕組みや慢性腎臓病(CKD)、腎不全などの病態に関する最新の知見を反映しています。

また、慢性腎臓病(CKD)や腎不全に関する情報については、特に過去5年ほどの間に公表された信頼性の高い研究成果(大規模コホート研究やメタアナリシス、ランダム化比較試験など)を中心に確認しました。これらは国際的に著名な医学専門誌(The Lancet、NEJM、JAMAなど)に掲載された研究や、学会のガイドラインなどを含んでおり、エビデンスレベルの高い情報を選別することで、可能な限り正確な内容をお届けできるよう努めています。

ただし、本記事の内容は一般的な健康情報を提供するものであり、個々人の症状や既往歴に応じた医療アドバイスを行うものではありません。高血圧や糖尿病などを含む生活習慣病の有無や、腎機能に関して具体的に不安を感じる場合には、必ず専門医の診察や医療機関での検査を受けるようにしてください。腎臓の働きや病気のリスク要因を知ることは非常に重要ですが、そのうえで専門家の指導や治療を受けることで、最適な予防策・治療法を見出すことができます。

腎臓の位置と構造

腎臓の位置

腎臓は背中側の腰骨付近、いわゆる腰のあたりに左右一対で存在しています。右腎は肝臓の大きさと位置の影響により、左腎よりもやや下がった位置にあることが特徴です。肋骨の最下部あたりから少し下方に位置し、形状はそら豆のような形で、おおむね拳程度の大きさ(長さ約12cm、幅約6cm、厚さ約3cm)になります。

腎臓を支える周囲組織としては、脂肪組織や筋肉などが存在し、外部からの衝撃や揺れに対してクッションのように働くことで腎臓を守っています。これは腎臓が重要な排出・調整機能を担う臓器であると同時に、外力でダメージを受けやすい可能性を持つことに対する、生体の保護機構の一つといえるでしょう。

腎臓の構造

腎臓は非常に精巧なろ過システムを備えており、大きく分けて「皮質」と「髄質」という2つの領域から構成されます。

  1. 皮質
    腎臓の外側部分であり、色はやや濃い傾向にあります。ここにはネフロン(腎単位)と呼ばれる多数の小さなろ過装置が集まっています。ネフロンは血液から老廃物と水分をろ過し、一方で必要な成分は再吸収するという非常に複雑かつ精密な機能を担っています。
  2. 髄質
    腎臓の内側部分で、色は皮質より少し明るく、腎錐体(髄錐)と腎柱によって構成されています。ここでろ過・再吸収を経た尿は最終的に腎盂(じんう)に集まり、尿管を通って膀胱に運ばれ、最終的に体外へ排出されます。

ネフロンは腎臓機能の最小単位で、主に以下の要素によって構成されています。

  • 糸球体(しきゅうたい): 毛細血管が球状に絡み合った構造で、高圧の血液から水分や小分子成分をろ過する重要な入口です。
  • ボーマン嚢: 糸球体でろ過された液体(原尿)が一時的に溜まるスペースで、ここから尿細管へと液体が送られます。
  • 尿細管: 原尿が流れる管状構造で、水分・電解質・栄養素の再吸収や不要物質の分泌などを行い、最終的に尿を濃縮していきます。

腎臓はこの複雑なネットワークを通じて体液の恒常性を維持し、必要に応じて電解質や水分を調整するというきわめて重要な働きを担っています。

腎臓の機能

腎臓は老廃物の排出だけでなく、体内の生理機能を多角的に支える役割を担っています。以下では、その代表的な機能を詳しくみていきましょう。

  1. 血液のろ過
    腎臓は1日あたり約180リットルもの血液をろ過するといわれています。この過程で老廃物や過剰な水分が尿として排出され、血液環境は常にクリーンな状態が保たれます。もし腎機能が低下すると、有害物質が体内に蓄積し、倦怠感や多臓器への影響が生じやすくなります。
  2. 電解質・水分バランスの維持
    ナトリウム、カリウム、カルシウムなどの電解質は、細胞の代謝や神経・筋肉の機能調節に不可欠な要素です。腎臓は不要な電解質を排出しつつ、必要量を再吸収することで一定の濃度を保っています。また、体の水分量をコントロールするため、過剰な水分は尿として排出し、不足時には水分の再吸収を高めて血液量を一定に保ちます。
  3. 血圧の調整
    腎臓はレニンというホルモンを分泌し、血圧調節系であるレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)を介して血圧をコントロールしています。血圧が低下するとレニンが分泌され、血管収縮やナトリウムの再吸収強化を促し、結果的に血圧を上昇させます。逆に、ナトリウムや水分を排出させることで血圧を下げる方向にも作用します。
  4. 赤血球生成のサポート
    腎臓が産生するエリスロポエチンは、骨髄における赤血球の生成を促進します。赤血球は体全体へ酸素を運搬するために欠かせない存在です。腎機能が低下してエリスロポエチンの産生が不十分になると、貧血の原因となることがあります。
  5. ビタミンDの活性化
    食事や日光によって得られるビタミンDは、腎臓において活性型ビタミンDに変換されることで初めて骨やカルシウム代謝に寄与します。腎機能が低下するとこの活性化がうまくいかず、骨密度の低下や骨粗鬆症のリスクが高まります。

こうした複数の機能が相互に関わり合いながら、腎臓は身体の恒常性(ホメオスタシス)を守っているのです。

腎臓機能の臨床的裏付け

近年、腎臓機能と全身的健康の関係について多くの研究が発表され、腎疾患が生活習慣病や心血管疾患と深くリンクしていることが明らかになってきました。たとえば、慢性腎臓病(CKD)は世界的に増加傾向にあり、これは糖尿病や高血圧など生活習慣病の拡大と密接に関連していると指摘されています。

  • 2020年に医学誌「The Lancet」に掲載された大規模研究(Bikbov Bら, 2020, doi:10.1016/S0140-6736(20)30045-3)では、1990年から2017年までの全世界的データを用いてCKDの有病率・死亡率を解析し、CKDが多くの国や地域で増加傾向にあることを示しました。これは食事やライフスタイルの変化が世界的規模で進行している現代社会にとって、CKDが重大な公衆衛生上の課題であることを再認識させる内容です。
  • さらに2021年には、JAMA Netw Openに掲載されたWouters OJらによる研究(doi:10.1001/jamanetworkopen.2021.10883)が、米国における腎機能の低下と死亡リスク・急性期医療利用の増加リスクとの関連を示しました。大規模データを解析した結果、腎機能が低い人ほど心血管系のトラブルや総死亡リスクが上昇するという事実が示唆されており、腎臓の健康管理が全身に与える影響の大きさを改めて示す有力な証拠とされています。
  • 治療面でも、2021年にNew England Journal of Medicine(NEJM)で公表されたAgarwal Rらの研究(doi:10.1056/NEJMoa2110956)は、CKDと2型糖尿病を併存する患者を対象としたランダム化比較試験の結果、Finerenoneという薬剤が腎臓保護作用を示す可能性を報告しています。これはCKDに対する治療選択肢の一つとして注目されており、特に糖尿病性腎症を合併している患者において意義深いと考えられています。

また、慢性腎臓病と糖尿病が合併する患者向けの臨床ガイドラインでは、食事療法や降圧薬・血糖降下薬の適切な使い方が重視されています。2022年にKidney International Supplementsに掲載されたKDIGO(Kidney Disease: Improving Global Outcomes)のガイドライン(Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) 2022 Clinical Practice Guideline for Diabetes Management in Chronic Kidney Disease, Kidney Int Suppl 12(1):S1–S127, doi:10.1016/j.kisu.2021.12.001)では、血糖管理やRAA系阻害薬(ACE阻害薬やARBなど)の適正使用、食塩制限、そして体重管理の必要性が強調されており、特に日本のように塩分摂取量が多い食文化をもつ地域では有用性が高いと考えられています。

これらの情報は、腎臓機能を守る上でどのような生活習慣が重要か、あるいは腎機能が低下した場合にどのような医療的アプローチが考えられるかを理解するうえで大いに参考になります。日本でも今後、高齢化や糖尿病の増加が続くと予測されるため、腎臓への負担を極力減らすよう意識しながら、定期検査による早期発見と適切な治療を心がけることが不可欠といえるでしょう。

腎臓の病気と予防

腎臓は多くの疾患に罹患し得る臓器であり、しかも初期は症状が乏しく見過ごされやすいのが特徴です。知らないうちに病態が進行し、慢性腎臓病(CKD)や腎不全など重大な状態に至る例も少なくありません。以下では、代表的な腎臓病とその予防策・対策を詳しく取り上げます。

代表的な腎臓の病気

  1. 慢性腎臓病(CKD)
    腎機能が長期的に低下していく疾患で、初期には自覚症状がほとんどないまま静かに進行します。糖尿病や高血圧などが主要な原因として知られており、適切な治療や生活習慣の改善が行われないまま症状が進むと、腎不全に至り透析や腎移植を要するケースもあります。
  2. 腎臓がん
    腎臓内部に発生する悪性腫瘍です。初期には痛みなどの症状が少ないため、検診や画像診断などで偶然発見される場合もあります。早期に治療を開始すれば予後は比較的良好ですが、放置すれば周囲臓器への浸潤や転移が進むリスクがあります。
  3. 腎不全(急性・慢性)
    腎機能が大幅に低下し、本来のろ過機能を十分に発揮できなくなった状態です。急性腎不全は原因が除去され、適切な治療が行われれば回復する可能性がありますが、慢性腎不全は一般的に不可逆的であり、進行度合いに応じて透析や移植が必要となる場合があります。
  4. 腎盂腎炎
    細菌感染による炎症が腎盂から腎実質にまで広がった病態で、発熱や腰痛、全身倦怠感などを伴います。放置すれば慢性化し、腎臓の機能低下を引き起こすリスクがあります。早期の抗生物質投与と十分な水分補給が治療の基本です。
  5. 腎結石
    尿中のミネラル成分や老廃物が固結して形成される結石で、激しい疝痛(せんつう)発作や血尿を引き起こすことがあります。水分摂取量の不足や特定のミネラルを多く含む食事などが原因となることが多いです。
  6. 多嚢胞腎
    遺伝性の要因で腎臓内に多数の嚢胞が生じる疾患です。進行すると腎不全に至るリスクがあり、定期的な超音波検査やCT検査で経過観察を行いながら、必要に応じて症状に合わせた治療を行います。

腎臓を健康に保つ方法

腎臓病は一度進行すると回復が難しいことが多く、日常生活で予防を心がけることが大切です。以下に挙げる方法は、いずれも実行しやすく、腎臓だけでなく全身の健康にも寄与します。

  1. 定期的な健康診断
    血液検査や尿検査によって、腎機能の指標(クレアチニン値、推算GFR、尿蛋白など)を定期的にチェックすることが重要です。異常を早期に発見し、医師の指導により適切な生活習慣・治療に取り組むことで、腎機能の低下を抑制できます。
  2. 禁煙
    喫煙は血管を収縮させ、腎臓への血流を減少させるだけでなく、高血圧や動脈硬化のリスクを高めます。腎臓保護の観点からも禁煙は大変有効であり、可能な限り早期に実行することが望ましいでしょう。
  3. 塩分制限
    食塩過多は血圧上昇につながり、腎臓への負担を増加させます。日本は伝統的に塩分が高めの食文化をもつため、調味料の使い方や加工食品の摂取に注意が必要です。最近は減塩調味料や塩分オフのレシピなども普及しており、意識的に塩分をコントロールできる環境が整いつつあります。
  4. 十分な水分補給
    水分をしっかりと摂取することで、老廃物の排出をスムーズにし、腎臓内に滞留する有害物質を減らす効果が期待できます。ただし、すでに腎機能が低下している場合は医師の指示に従って水分量を調整する必要があります。
  5. 適度な運動
    ウォーキングや軽い有酸素運動は血圧をコントロールし、血管や心肺機能を健康に保ちます。過度な運動はかえってストレスや怪我につながるため、無理のない範囲で定期的に体を動かすことが理想的です。
  6. 薬物乱用の回避
    鎮痛薬や一部のサプリメントを長期間にわたって大量に服用すると、腎臓に負担をかけることがあります。特にNSAIDs系の鎮痛薬は腎血流を低下させ、腎機能を悪化させる可能性があるため、自己判断で常用するのは危険です。必ず医療従事者の指導のもと、用法・用量を守りましょう。
  7. 体重管理
    肥満は腎臓への負担を増大させ、高血圧や糖尿病などの生活習慣病リスクも高めます。バランスの良い食事と適度な運動で適正体重を維持することは、腎臓保護だけでなく全身の健康維持にも効果的です。
  8. 血圧・血糖値の管理
    高血圧や糖尿病はCKDの主原因となるケースが多いです。定期的な血圧測定や血糖値チェックを行い、数値が基準から外れている場合は早期に医師の診察を受けるとともに、薬物療法や食生活改善を行うことで腎機能を守ることができます。

これらの対策は、腎疾患のみならず循環器疾患やその他の生活習慣病の予防にもつながります。特に食塩摂取量の多い食習慣や、高齢化が進む日本では、これらの方法を継続的に実行する意義は大きいといえます。

腎臓に関するよくある質問

ここでは、腎臓や腎臓病に関してしばしば寄せられる疑問点を取り上げ、簡潔に回答します。早期に正しい知識を得ることで自己管理がしやすくなり、万が一症状が出たときに迅速な対応が可能となります。

1. 腎臓の病気の兆候にはどんなものがありますか?

回答: 初期には目立った症状が出にくいのが腎疾患全般の特徴ですが、次のような徴候が見られることがあります。

  • 疲れやすさ: 以前より疲労を感じやすくなる
  • 尿の色の変化: 尿が濁る、茶褐色になるなど
  • むくみ: 特に足や顔周辺にむくみが出やすい
  • 排尿異常: 頻尿、尿量の極端な減少、尿が出にくい感覚など

説明とアドバイス: これらの症状は必ずしもすべてが腎臓病に直結するわけではありませんが、気になる変化がある場合には早期に医師の診察を受けるのが賢明です。定期的な健康診断や、血液・尿検査で腎機能をチェックし、異常が疑われる場合は専門医の指示に従って詳しい検査を受けましょう。

2. 腎臓の健康に良い食べ物は何ですか?

回答: 腎臓の健康維持には、低塩分・適度なたんぱく質・バランスの取れた電解質摂取が重要です。

  • 新鮮な野菜や果物: カリウム、ビタミン、食物繊維が豊富。余分なナトリウム排出も助けます。
  • : 良質なたんぱく源であり、オメガ3脂肪酸が血圧や炎症のコントロールに寄与します。
  • 全粒穀物: 食物繊維やミネラルが多く、血糖値の安定や体重管理に役立ちます。
  • ナッツ類: 適量であれば良質な脂肪酸やビタミンEを摂取でき、加工食品の代替としても有効です。

説明とアドバイス: 一方で、加工食品やインスタント食品などは塩分やリンを過剰に含む場合が多いため、注意が必要です。腎機能がすでに低下している人の場合、カリウムの摂取制限が必要になるケースもありますので、主治医や管理栄養士の指導のもと適切な摂取量を調整しましょう。

3. 腎臓病になった場合、どのような治療が行われますか?

回答: 腎臓病の種類や進行度によって治療法は異なりますが、以下のアプローチが一般的です。

  • 薬物療法: 血圧や血糖値のコントロール薬、利尿薬、エリスロポエチン製剤など
  • 食事療法: 塩分・たんぱく質・カリウム・リンなどの摂取量を管理
  • 透析: 腎機能が著しく低下した場合、血液ろ過(血液透析)または腹膜透析によって体外で老廃物を除去
  • 腎移植: 末期腎不全(ステージ5)まで進行した場合、ドナーからの腎臓移植が選択肢となる

説明とアドバイス: 治療方針は患者の背景や腎機能の状態に応じて変わります。早期発見により、食事療法や薬物療法のみで進行を抑制できる場合もありますが、末期腎不全に至った場合は透析や移植など大掛かりな手段を選択せざるを得ません。糖尿病や高血圧など、もともとの原因疾患への適切な対応もきわめて重要です。

より深い理解のための補足

腎臓病は一見すると「自分には関係ない」と考えがちですが、食習慣や生活習慣病の広がり、高齢化などの要因からリスクは年々増大しています。特に日本人は塩分摂取量が多く、これが高血圧や心血管疾患のリスクを高め、それに伴って腎疾患への影響も懸念される状況にあります。早めに腎臓の役割を理解し、生活習慣を見直していくことが、将来的な健康を保つうえで欠かせない段階になっています。

さらに、海外では若年層においても不適切なダイエット法や過剰なサプリメント摂取などによる腎機能障害が増えていると指摘する研究もあります。特定の栄養素を極端に制限する、または逆に大量に摂取するなど、バランスを欠いた食生活は腎臓に不要なストレスを与える可能性があります。この点を踏まえ、若い世代でも「腎臓を疲れさせない」生活習慣の意識が重要です。

結論と提言

結論

腎臓は老廃物のろ過から電解質のバランス調整、血圧管理、ホルモン分泌(エリスロポエチンや活性型ビタミンDなど)まで、私たちの体を多方面から支える要です。一度機能が大きく損なわれると、慢性腎臓病や末期腎不全など重篤な状態に陥り、透析や腎移植が必要になるリスクが高まります。しかも腎疾患は初期症状が乏しく、無自覚のまま進行する「サイレントキラー」であるため、日頃からの予防・早期発見が何よりも大切です。

高血圧や糖尿病のような生活習慣病は、腎臓病の主要な誘因となります。また、塩分・リン・たんぱく質を過剰に摂取する食事や、喫煙、薬剤の乱用、ストレスフルな生活習慣なども腎機能に悪影響を及ぼします。こうした要因を総合的に把握して生活習慣を改善し、さらに定期的な検診や早期治療を徹底することが、腎臓の健康寿命を伸ばすカギになるといえます。

提言

  • 定期検診の実施
    腎臓の機能は血液検査や尿検査で比較的容易に把握できます。定期検診を習慣化し、クレアチニン値やeGFR、尿蛋白などの指標を把握することが早期発見・早期介入の第一歩です。
  • 生活習慣の改善
    禁煙、減塩、適度な運動、体重管理は、腎臓のみならず全身の健康維持のために欠かせません。特に日本人の場合、食事の塩分量が多くなりやすいので、塩分計や減塩調味料の利用など具体的な手段を用いて意識的にコントロールしましょう。
  • 血圧・血糖値管理
    高血圧や糖尿病はCKD発症の強いリスク要因です。医療機関での診断や薬物療法を怠らず、家庭での血圧測定や血糖値モニタリングを行い、医師と連携して適切な治療計画を遂行することが望まれます。
  • 適切な医療リソースの活用
    症状がなくてもリスクがある方、あるいは検査でわずかな異常が見つかった方は、放置せず専門医に相談を行いましょう。腎臓内科や泌尿器科など、腎疾患の診療実績が豊富な医療機関を活用し、正確な診断と個別化された治療・予防計画を立てることが理想的です。
  • ストレスマネジメント
    慢性的なストレスはホルモンバランスを崩し、血圧上昇や生活習慣の乱れにつながることで間接的に腎臓に負担をかけます。十分な睡眠、適度な休息、自分に合ったリラックス法を身につけ、ストレスをできるだけ軽減することも大切です。
  • 水分摂取の調整
    健康な人は1日に1.5〜2リットル程度の水分補給が目安といわれますが、心不全やCKDステージが高い場合などでは医師から水分制限を指示される場合もあります。自己判断で「大量に水を飲めば良い」と考えるのは危険なため、あくまで主治医のアドバイスを優先しましょう。
  • 地域社会での予防意識向上
    日本における高齢化や食生活の変化に伴い、自治体や医療機関、保健センターなどが積極的に腎臓病予防の啓発活動を行っています。健康講座や無料検診、減塩セミナーなどの地域の取り組みに参加することで、自らの腎臓リスクを客観的に知り、同時に同じ悩みを持つ人と情報共有しながら対策を強化することが可能です。

腎臓の健康は、単に透析や移植といった「末期的」な対策を防ぐだけでなく、人生全体の生活の質(QOL)を高めることにも大きく寄与します。食事や運動、薬物療法など、多面的に働きかけるアプローチが必須であり、その総合的な成果として「腎臓が元気」であることは身体全体の健やかさにつながります。

参考文献

追加参考文献(研究例示):

  • Bikbov B, et al. “Global, regional, and national burden of chronic kidney disease, 1990–2017: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2017.” Lancet. 2020;395(10225):709-733. doi:10.1016/S0140-6736(20)30045-3
  • Wouters OJ, et al. “Association of Kidney Function Decline With Premature Mortality and Acute Care Utilization in the US.” JAMA Netw Open. 2021;4(5):e2110883. doi:10.1001/jamanetworkopen.2021.10883
  • Agarwal R, et al. “Finerenone in Patients with Chronic Kidney Disease and Type 2 Diabetes.” N Engl J Med. 2021;385:2252-2263. doi:10.1056/NEJMoa2110956
  • Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) 2022 Clinical Practice Guideline for Diabetes Management in Chronic Kidney Disease. Kidney Int Suppl. 2022;12(1):S1-S127. doi:10.1016/j.kisu.2021.12.001

※本記事は医療・健康情報を一般的な視点から提供するものであり、個別の診断・治療を目的としたものではありません。具体的な症状やリスクがある場合には、専門の医師・医療機関にご相談ください。情報の正確性には努めていますが、最新のガイドラインや研究によるアップデートもありますので、定期的に信頼できる情報源や医療従事者と連携を図ることをおすすめします。

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