【専門医・管理栄養士監修】腎臓結石の食事療法完全ガイド|再発させない具体的食品リストと最新治療のすべて
腎臓と尿路の病気

【専門医・管理栄養士監修】腎臓結石の食事療法完全ガイド|再発させない具体的食品リストと最新治療のすべて

ある日突然、脇腹から背中にかけて、経験したことのないような激痛に襲われる。冷や汗が止まらず、あまりの痛みに救急車を要請する人も少なくありません。これは「腎臓結石(尿路結石)」の典型的な症状です。日本の最新の全国疫学調査によれば、男性の約7人に1人、女性の約13人に1人が生涯に一度は経験するとされる、極めて身近な病気です915。治療を受けて一時的に痛みが治まっても、その恐怖は続きます。5年間で約半数が再発するともいわれ、「またあの痛みが来るのではないか」という不安を抱えながら、何を食べ、何を飲めば良いのか分からずに悩んでいる方が非常に多くいらっしゃいます。本記事は、そうした切実な悩みにお応えするため、JHO編集委員会が最新の科学的根拠を徹底的に調査し、日本における尿路結石治療の第一人者である専門医と、臨床現場で患者指導を行う管理栄養士の監修のもと、腎臓結石の再発を本気で防ぐための食事療法について、現在望みうる最も包括的で詳細な情報を提供するものです。

医学的監修:
山口 聡 医師(医療法人仁友会 北彩都病院 副院長・尿路結石センター長)
桝田 裕子 管理栄養士(原泌尿器科病院 主任管理栄養士・腎臓病療養指導士)


この記事の科学的根拠

この記事は、ご提供いただいた研究報告書に明記された、最高品質の医学的エビデンスのみに基づいています。以下は、本文中で言及される実際の情報源と、提示される医学的指導との関連性です。

  • 日本泌尿器科学会 (JUA), 日本尿路結石症学会 (JSUR):この記事における水分摂取、塩分、カルシウム、シュウ酸に関する推奨事項の根幹は、これらの学会が共同で発行した『尿路結石症診療ガイドライン 第3版』(2023年)に基づいています20
  • 米国泌尿器科学会 (AUA):DASH食の推奨やカルシウム摂取量に関する国際的な視点については、世界的に影響力のあるAUAの診療ガイドラインを参考にしています2
  • 米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所 (NIDDK):患者向けの食事療法、特にDASH食に関する質の高い情報を提供しているNIDDKの知見を、和食への応用提案の参考にしています25
  • 尿路結石症全国疫学調査:日本人の罹患率や結石タイプの統計など、国内の現状を示すデータは、日本尿路結石症学会による全国疫学調査報告に基づいています1013

要点まとめ

  • 腎臓結石の再発予防には食事が極めて重要であり、その基本は「十分な水分摂取」「塩分の制限」「動物性タンパク質の適量化」「肥満の是正」の4本柱です。
  • 日本の最新ガイドラインでは、1日2リットル以上の飲水、食塩6グラム未満、カルシウム600~800ミリグラムの摂取が強く推奨されています20
  • 最も多いシュウ酸カルシウム結石では、カルシウムを制限するのではなく、シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草など)と一緒に適量のカルシウムを摂り、腸内で結合させて排出することが鍵となります1
  • 尿酸結石では、プリン体を多く含む食品(レバー、魚の干物など)を控え、尿をアルカリ化する野菜や海藻を積極的に摂ることが有効です31
  • この記事は、科学的根拠に基づき、明日から実践できる具体的な食事の工夫、調理法、外食の注意点までを網羅的に解説します。

1. 腎臓結石(尿路結石)とは?急増する「現代病」の正体

腎臓結石は、腎臓の中で尿に含まれるミネラル成分などが結晶化し、石のように固まってしまう病気です。この石が尿管に移動し、詰まることで激しい痛みを引き起こします。これを総称して尿路結石症と呼びます14

1.1. 突然の激痛!結石ができるメカニズムと種類

私たちの尿には、カルシウム、シュウ酸、リン酸、尿酸といった様々な物質が溶けています。通常、これらの物質は尿に溶けきっていますが、水分不足や特定の物質の過剰摂取などによって尿が濃くなると、溶けきれずに結晶化を始めます。この小さな結晶が核となり、雪だるま式に大きく成長したものが結石です14。結石にはいくつかの種類があり、成分によって食事療法のポイントが異なります。日本のデータでは、結石の約90%以上がカルシウムを含む結石で、その中でも「シュウ酸カルシウム結石」が最も一般的です。その他に「リン酸カルシウム結石」、痛風と関連の深い「尿酸結石」、遺伝的な要因による「シスチン結石」などがあります9

1.2. 日本人の7人に1人が経験?食生活の変化と驚くべき罹患率

かつては稀な病気と考えられていた腎臓結石ですが、今や誰にでも起こりうる「現代病」となっています。2015年に行われた日本尿路結石症学会の全国疫学調査によると、日本人が生涯のうちに尿路結石を経験する確率は、男性で15.1%(6.6人に1人)、女性で7.5%(13.3人に1人)にも上ります1015。これは過去40年間で3倍以上に増加している計算になり、特に食生活の欧米化がその大きな要因と考えられています。肉類などの動物性タンパク質や脂肪の摂取量が増加し、食事が結石の形成に深く関わっていることが、『尿路結石症診療ガイドライン』の作成にも関わる専門家、山口聡医師らによって指摘されています16

2. 再発率50%以上!すべての結石に共通する「黄金の食事原則」

一度結石を経験した人が最も恐れるのが「再発」です。報告によっては5年で45%9、10年で50%以上ともいわれる高い再発率を防ぐ鍵は、日々の食事にあります。日本泌尿器科学会などがまとめた『尿路結石症診療ガイドライン 第3版』(2023年)では、結石の種類を問わず、すべての患者さんが守るべき最も重要な生活指導として、以下の4つの原則が挙げられています20。これらは再発予防の根幹をなす「黄金の食事原則」です。

2.1. 原則1:水分摂取 – 予防の礎

最も重要で、最も効果的な予防法は、十分な水分を摂ることです。水分を多く摂ることで尿量が増え、尿中の結石成分が薄まります。これにより、結晶ができにくくなり、たとえ小さな結晶ができても尿と共に排出されやすくなります17。日本のガイドラインでは「1日の尿量が2L以上になるよう、食事以外に1日2L以上の水分を摂取すること」が、科学的根拠が最も確かである**「推奨グレードA」**として強く勧められています12。何を飲むべきかについては、基本は「水」です。カフェインの少ない「麦茶」や「ほうじ茶」も良い選択肢です。一方で、糖分を多く含む清涼飲料水やジュースは避けるべきです。近年の研究で、添加糖の摂取が腎臓結石のリスクを有意に高めることが示されています19。また、お茶の中でも玉露や抹茶はシュウ酸を多く含むため、過剰な摂取は推奨されません1

2.2. 原則2:塩分(ナトリウム)の制限

塩分の摂りすぎは、尿中へのカルシウム排泄を促し、カルシウム結石のリスクを高めることが分かっています7。塩辛い食事が好きな方は特に注意が必要です。日本のガイドラインでは、1日の食塩摂取量を6g未満に抑えることが目標とされています20。これは、米国のAUAガイドラインが推奨するナトリウム摂取量2300mg/日(食塩相当量で約5.8g)とも一致しており2、国際的なコンセンサスとなっています。ラーメンのスープを全部飲む11、漬物をたくさん食べる、加工食品21やスナック菓子を頻繁に食べる、といった習慣は、無意識のうちに塩分過多につながるため見直しが必要です。

2.3. 原則3:動物性タンパク質の適量摂取

肉や魚などの動物性タンパク質は重要な栄養素ですが、過剰に摂取すると結石のリスクを高める複数の要因となります。具体的には、尿中のカルシウム、シュウ酸、そして尿酸の排泄量を増加させる一方で、結石形成を抑制するクエン酸の量を減少させてしまいます18。日本のガイドラインでは、1日の摂取量を体重1kgあたり1.0g以下にすることが一つの目安とされています9。例えば体重60kgの人であれば60gです。これは肉だけでなく、魚も含まれることを覚えておく必要があります。

2.4. 原則4:バランスの取れた食事と肥満の是正

肥満やメタボリックシンドロームも、腎臓結石の独立したリスク因子です。国内の疫学調査でも、結石患者は肥満者の割合が高いことが示されています10。特定の食品を制限するだけでなく、野菜や果物を十分に摂り、全体として栄養バランスの取れた食事を心がけることが、適正体重の維持と結石予防の両方につながります。国際的に評価が高く、結石予防効果も報告されている「DASH食」4の考え方は、この原則を実践する上で非常に参考になります。これについては後ほど詳しく解説します。

3. 【結石タイプ別】シュウ酸カルシウム結石の食事療法

日本で最も多いシュウ酸カルシウム結石の予防には、共通の原則に加えて、特に「シュウ酸」と「カルシウム」の管理が重要になります。

3.1. シュウ酸の過剰摂取を避ける – 含有量リストと調理の工夫

シュウ酸は、ほうれん草などの葉物野菜やナッツ類、お茶などに含まれる成分で、体内でカルシウムと結合しやすい性質があります。これが腎臓内で起こると、結石の主成分であるシュウ酸カルシウムとなります26。したがって、シュウ酸を多く含む食品の過剰な摂取は避けるべきです。

シュウ酸は水に溶けやすい性質があるため、調理法を工夫することで含有量を減らすことができます。特に「茹でこぼし」は有効で、ほうれん草などの葉物野菜は、茹でてその茹で汁を捨てるだけでシュウ酸を30~50%も減らすことができます6。たけのこなどのアク抜きも同様に重要です。

表1:シュウ酸を多く含む主な食品と調理による低減法2627
食品名 シュウ酸含有量目安 (mg/100g) 調理のコツ・注意点
ほうれん草 770 – 1090 必ず茹でこぼしてから調理する。生での摂取は避ける。
たけのこ(生) 490 – 720 米ぬかなどを使ったアク抜きを徹底する。
さつまいも 280 皮ごと食べる場合は、シュウ酸が皮の近くに多いため注意。
お茶(玉露、抹茶) 茶葉に多い 濃い緑茶の大量摂取は避ける。水分補給は麦茶やほうじ茶が推奨される。
チョコレート、ココア 含有量が多い 習慣的な大量摂取は控える。
ナッツ類(アーモンドなど) 含有量が多い 健康に良いイメージがあるが、食べ過ぎに注意。

3.2. 【最重要】カルシウム摂取のパラドックス:制限ではなく「適量」を

かつては「結石の成分にカルシウムが含まれるなら、カルシウムを制限すべきだ」と考えられていた時代がありました。しかし、現在ではこの考え方は明確に否定されています。むしろ、適量のカルシウムを食事から摂ることが、シュウ酸カルシウム結石の予防に繋がることが分かっています。これは「カルシウムパラドックス」とも呼ばれる重要なポイントです1

なぜカルシウムを摂るべきなのか。その理由は、食事で摂ったカルシウムが、腸の中でシュウ酸と結合し、便として体外へ排出してくれるからです。これにより、シュウ酸が体内に吸収されて尿中へ排泄されるのを防ぐことができます。これを専門的には「ブロック効果」と呼びます。食事中のカルシウムが不足すると、このブロック効果が弱まり、より多くのシュウ酸が吸収されて尿がシュウ酸過多の状態になり、かえって結石ができやすくなってしまうのです。

日本のガイドラインでは、1日600~800mgのカルシウム摂取が推奨されています12。これは、牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品、小魚、豆腐、緑黄色野菜などから意識的に摂る必要があります。一方で、米国のAUAガイドラインでは1000~1200mgの摂取が推奨されており2、日本人の平均摂取量が少ない現状からは、まず不足しないように心がけることが重要です。ただし、サプリメントによるカルシウムの過剰摂取は、かえって結石のリスクを高める可能性も指摘されているため、あくまで食事からの摂取を基本とし、サプリメントの使用は主治医に相談することが不可欠です24

4. 【結石タイプ別】尿酸結石の食事療法

尿酸結石は、高尿酸血症や痛風の患者さんに見られることが多いタイプの結石です。血液中の尿酸値が高い状態が続き、尿が酸性に傾くと形成されやすくなります。

4.1. プリン体の摂取を制限する

プリン体は、体内で分解されると最終的に尿酸を生成する物質です。そのため、尿酸結石の予防には、プリン体を多く含む食品の摂取を制限することが基本となります30。高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインでは、1日のプリン体摂取量を400mg以内に抑えることが推奨されています31。特にプリン体含有量が極めて多いレバーやあん肝、白子、そしてイワシやアジの干物などは注意が必要です。また、ビールなどのアルコール飲料は、プリン体の含有量に関わらず、それ自体が体内の尿酸産生を促進し、尿中への排泄を妨げるため、厳しく制限する必要があります。

表2:プリン体を多く含む主な食品3031
食品群 特に注意が必要な食品例 特徴
動物の内臓 鶏レバー、豚レバー、牛レバー、あん肝、白子 プリン体含有量が極めて高い。
魚介類 イワシ・アジの干物、カツオ、エビ、サンマ 特に干物は水分が抜けてプリン体が凝縮されている。
肉類 牛肉、豚肉、鶏肉の濃縮スープ 肉自体よりも、旨味の詰まったスープに注意が必要。

4.2. 尿をアルカリ化する食事の工夫

尿酸は酸性の液体に溶けにくい性質があります。尿酸結石は、尿のpHが5.5以下の酸性状態が続くことで形成されやすくなります。そのため、食事によって尿をアルカリ性に傾けることが、非常に有効な予防策となります6。尿をアルカリ化する作用のある食品は、野菜、果物、海藻類、きのこ類などです。これらの食品を積極的に食事に取り入れることで、尿酸が溶けやすい状態を保つことができます。また、レモンや梅干しなどに含まれるクエン酸も、体内でアルカリとして作用し、結石の形成を抑制する効果が知られています29

5. 実践編:明日からできる食事の工夫と和食への応用

理論を理解した上で、次はいかに日々の食生活に落とし込むかが重要です。ここでは、すぐに実践できる具体的な工夫をご紹介します。

5.1. 食材の選び方と調理のコツまとめ

これまでの情報を基に、結石タイプごとの食事療法の要点をまとめます。特に重要なのは「食べ合わせ」です。例えば、シュウ酸を多く含むほうれん草のおひたしには、カルシウムが豊富なかつお節やしらすをかける、紅茶には牛乳を入れてミルクティーにする、といった工夫で、シュウ酸の吸収を効果的に抑えることができます3233

表3:結石タイプ別食事療法の要点まとめ
結石タイプ 積極的に増やすべきもの 制限・注意すべきもの 調理のコツ
シュウ酸カルシウム結石 水分、カルシウム(牛乳、小魚、豆腐)、クエン酸(柑橘類) 塩分、動物性タンパク質、シュウ酸(ほうれん草、チョコ等)、糖分 葉物野菜は茹でこぼす。カルシウムとシュウ酸を一緒に摂る。
尿酸結石 水分、野菜、海藻、きのこ類(尿をアルカリ化する食品) プリン体(レバー、干物等)、アルコール、動物性タンパク質 肉や魚の出汁が効いたスープは控える。

5.2. 外食・コンビニ食で注意すべき点

忙しい現代人にとって、外食やコンビニ食は避けられないものです。しかし、少しの知識と工夫で結石のリスクを管理することは可能です。定食を食べる際は、塩分の多い漬物や味噌汁の汁は残すように心がけましょう。ラーメンのスープは、プリン体や塩分が凝縮されているため、飲み干さないことが賢明です11。コンビニエンスストアを利用する際は、加工食品やスナック菓子21を避け、サラダ、豆腐、ヨーグルト、牛乳などを組み合わせるようにしましょう。栄養成分表示を確認し、食塩相当量やタンパク質量をチェックする習慣をつけることも重要です。

5.3. 【管理栄養士提案】腎臓結石予防のための「和食版DASH食」献立例

DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)は、もともと高血圧予防のために開発された食事法ですが、腎臓結石の予防にも有効であることが米国のガイドラインなどで推奨されています25。その原則は、カリウム、マグネシウム、カルシウム、食物繊維を豊富に摂り、飽和脂肪酸やコレステロール、塩分を減らすというものです5。これは日本の伝統的な和食の考え方と非常に親和性が高く、無理なく実践できます。以下に、結石予防を考慮した「和食版DASH食」の一日献立例を提案します。

  • 朝食: 雑穀ごはん、納豆(ネギ・すりごま)、具沢山の減塩味噌汁(わかめ・豆腐・きのこ)、小松菜のおひたし(かつお節がけ)
  • 昼食: 焼き魚(サバなど)定食(大根おろし添え)、ひじきの煮物、ごはん(漬物は控える)
  • 夕食: 鶏むね肉と野菜の蒸し料理(ポン酢で)、きんぴらごぼう、冷奴
  • 間食: 牛乳、無糖ヨーグルト、果物(リンゴなどシュウ酸の少ないもの)

この献立は、減塩を意識しつつ、野菜、海藻、大豆製品、乳製品から結石予防に有効なミネラルや食物繊維をバランス良く摂取できるように工夫されています4

6. 腎臓結石と食事に関するよくある質問(FAQ)

Q1:ビールを飲むと石が流れるというのは本当ですか?

これは危険な俗説です。ビールを飲むと一時的に尿量が増えるため、石が流れやすくなるように感じられるかもしれませんが、長期的には逆効果です。アルコールには利尿作用の後に脱水作用があり、尿を濃くしてしまいます。また、ビールは尿酸値を上げるため、特に尿酸結石のリスクを著しく高めます。北彩都病院の山口聡医師も市民講演会でこの俗説に警鐘を鳴らしています34。水分補給は、水、麦茶、ほうじ茶で行うのが鉄則です。

Q2:ビタミンCのサプリメントは摂っても良いですか?

ビタミンCは体内で代謝される過程で一部がシュウ酸に変換されます。そのため、米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)などの専門機関は、サプリメントによる1日1000mgを超えるようなビタミンCの過剰摂取は、シュウ酸カルシウム結石のリスクを高める可能性があるため避けるべきだとしています25。通常の食事から摂取する分には全く問題ありません。

Q3:カルシウムのサプリメントは摂っても良いですか?

結石予防のためのカルシウム摂取は、食事から摂ることが大原則です。食事で摂るカルシウムは、腸管内でシュウ酸と結合し吸収を抑える効果が期待できますが、サプリメントで一度に大量に摂取した場合、その効果が確実でなく、かえって尿中カルシウム排泄を増やしリスクを高める可能性も指摘されています24。主治医や管理栄養士に相談なく、自己判断で摂取するのは危険です。

Q4:夕食は何時までに済ませるべきですか?

食後2~4時間で、食事に由来する結石成分(カルシウム、シュウ酸など)の尿中への排泄がピークに達します。就寝中は水分摂取ができず尿が濃縮されるため、このピーク時と就寝時間が重なるのは避けるべきです。そのため、就寝の4時間前までには夕食を済ませておくのが理想的とされています35

結論

腎臓結石の再発予防において、食事療法が中心的な役割を果たすことは間違いありません。本記事では、最新の科学的根拠に基づき、「水分摂取」「減塩」「タンパク質の適量化」といった共通の原則から、結石のタイプに応じた「シュウ酸」「カルシウム」「プリン体」の管理方法、そして日々の生活で実践できる具体的な調理の工夫や献立例まで、網羅的に解説しました。しかし、最も重要なことは、これらの情報を自己判断で適用するのではなく、必ず専門家の指導のもとで実践することです。結石の成分、体質、そして合併している他の病気など、個々の状況によって最適な食事療法は異なります。まずは泌尿器科を受診して正確な診断を受け、ご自身の結石タイプを把握してください。その上で、主治医や管理栄養士と相談しながら、ご自身の生活スタイルに合わせて継続可能な食事計画を立てていくことが、辛い痛みからの解放と、長期的な安心につながる唯一の道です。

免責事項本記事は、情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康に関する問題や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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