はじめに
こんにちは、JHO編集部です。今回は、膀胱再建術についてより詳細に解説いたします。この手術は、主に膀胱がんなどで膀胱を摘出した患者さんのために行われるもので、患者さんの生活の質を向上させることを目指しています。この記事では、手術の目的や注意点、さらに術前・術後のケアについても詳しく説明いたします。この情報が、ご自身やご家族、知人の方が手術を受ける際の十分な準備や理解の助けとなることを願っています。それでは、一緒に学んでいきましょう。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
専門家への相談
この記事では、メイヨー・クリニックやスタンフォード・ヘルスケアといった信頼性の高い医療機関の情報を参考にしています。これらの情報に基づいて、膀胱再建術のプロセスやリスクについて詳細に説明し、あわせて医療の専門家に相談することの重要性についても触れています。具体的な手術の選択や計画については、必ず担当の医師と相談することが不可欠です。患者さんごとに個別の対応が必要なため、専門家からのアドバイスは非常に大切です。
膀胱再建術とは何か?
膀胱再建術とは、膀胱がんなどで膀胱を全摘出した患者さんのために行われる外科手術の一種です。この手術では、患者さんの腸の一部を利用して新しい膀胱を形成し、排尿機能を回復させます。新たに作られる膀胱は、体内で尿を蓄え、できるだけ自然な排尿が行えるように設計されています。手術の主な目的は、日常生活の質を向上させること、そして患者さんがなるべく自然に排尿をコントロールできるようにすることです。
膀胱再建術は、膀胱がんによって膀胱を摘出せざるを得なかった患者さんにとって、生活の質を取り戻すために極めて重要な役割を担います。たとえば、膀胱を摘出することで「尿を体内に蓄積できない」状態が生じますが、再建術によって再び蓄尿機能を獲得できます。再建に用いる組織は患者さん自身の腸であるため、体内での適応もしやすいと考えられ、術後合併症の軽減にも期待が寄せられています。
いつ膀胱再建術が必要か?
膀胱再建術が必要となる場面は多岐にわたりますが、代表的なケースを以下に示します。
- 膀胱がんによる膀胱全摘出後
膀胱がんが進行し、膀胱を完全に摘出しなければならない場合に、新しい膀胱を形成して排尿機能を取り戻すために行われます。 - 神経因性膀胱
脊髄損傷などで神経が損傷を受け、膀胱機能が大幅に低下した状態です。自力で排尿が難しい場合、腸を用いた再建によって蓄尿および排尿が可能となるケースがあります。 - 放射線治療や慢性的な炎症による膀胱機能の消失
がん治療である放射線療法など、外的要因で膀胱機能が重篤に低下した場合にも再建が検討されます。 - 非侵襲的治療が効果を示さない尿失禁
薬物療法やリハビリテーションでも効果が限定的な尿失禁に対し、膀胱再建術が適用される場合があります。 - 先天性異常による膀胱機能不全
生まれつき膀胱がうまく形成されず、尿を蓄積できない場合に再建術が行われます。 - 急性または重度の膀胱外傷
交通事故などで膀胱を重度に損傷した際、再建が必要となるケースが想定されます。
これらの状況下において、膀胱再建術は患者さんの排尿の自立を可能にし、日常生活の質を大幅に改善する役割を果たします。たとえば、膀胱がんで膀胱全摘出を受けた後でも、この手術によって社会復帰しやすくなり、心理的な負担の軽減にもつながります。
手術に対する注意事項
膀胱再建術のリスクはあるか?
膀胱再建術は、他の大きな外科手術と同様にリスクや合併症が考えられます。ここでは主なリスクを整理してみます。
- 出血
手術中や術後に出血が起こる可能性があります。腸の一部を利用するため、腸壁からの出血リスクや血管損傷に注意が必要です。 - 血栓形成
術後は血流動態が変化し、深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症などの血栓症が起こりやすくなります。そのため、抗凝固薬の使用や早期離床、フットポンプなどによる血栓予防が行われることが多いです。 - 感染症
腸を膀胱として利用することで、細菌感染のリスクが高まります。尿路感染はもちろん、腸と尿路が接続されることで特異的な感染経路が生じる場合もあります。術後の清潔ケアや抗生物質の使用などが必須となるケースが一般的です。 - 尿漏れ(尿失禁)
新しい膀胱機能が安定しない初期段階では、尿漏れが起こることがあります。これは一時的な場合もありますが、リハビリテーションや骨盤底筋訓練など、継続的なトレーニングで徐々に排尿のコントロールを向上させることが期待されます。 - 尿閉
排尿がうまくいかない、あるいは尿が出し切れない「尿閉」が起こることもあり、その場合は一時的にカテーテルや自己導尿が必要となる場合があります。 - 電解質異常
腸の粘膜を膀胱として使うことで、腸粘膜を経由した電解質や水分の吸収・分泌バランスが変化します。術後は血液中のナトリウムや塩素など、電解質バランスを注意深くモニタリングする必要があります。 - ビタミンB12欠乏症
回腸(小腸の一部)を使う場合、ビタミンB12を吸収する部位が変化し、欠乏するリスクがあります。術後はビタミンB12の定期的な補給が推奨されることが多いです。 - 腸がんリスク
腸を長期にわたって別の用途(膀胱)で使うため、その部分に腫瘍が発生するリスクが完全には否定できません。したがって、長期的なフォローアップが必要とされます。
膀胱再建術は、患者さんの生活の質を向上させることを目指して行われますが、こうしたリスクが存在することを理解し、術後のケアや定期検査に真剣に取り組むことが大切です。特に合併症が起こるリスクは、術後のリハビリや生活習慣(食事、運動、感染予防など)をどの程度しっかり行うかでも左右されます。
さらに、近年の研究では、腸膀胱(新しい膀胱)を用いた患者さんの生活の質や長期合併症に関するデータが蓄積しつつあります。たとえば、2021年に学術誌Journal of Urologyで報告された研究(Bessaら、2021年)では、膀胱全摘出後に行われるオルソトップ型の腸膀胱再建術と回腸導管造設法を比較し、長期的な生活の質や排尿コントロールの面で腸膀胱再建術の優位性を示唆する結果が得られています(詳細は文末「参考文献」を参照)。ただし、個々の患者さんの病状や合併症リスクによって最適な選択肢は異なるため、担当医と十分に相談しながら決定することが重要です。
手術の流れ
手術は医療チームの綿密な計画のもとに進められます。以下に、一般的な手術の流れを詳しく示します。
手術前の準備
手術の数日前からは、液体食を中心とした食事に移行するよう指導されるケースが多いです。これは腸内内容物を減らし、手術の安全性を高める目的があります。さらに、手術前日からは固形物だけでなく飲み物も制限されることが一般的で、全身麻酔下での手術に向けた胃腸の準備が行われます。
患者さんが服用している薬やサプリメントは、必ず事前に医師に伝えておく必要があります。特に抗凝固薬などは出血リスクを高める可能性があるため、手術前に一定期間中止を指示される場合があります。また、全身麻酔の安全性を確認する目的で、血液検査や心電図、胸部X線などの術前検査も実施されます。さらに、泌尿器系や腎臓機能に関する検査によって患者さんの全身状態を評価し、手術の適応を最終的に確かめます。
手術中の流れ
- 膀胱の摘出
まずは膀胱全摘出を行い、がん病変の範囲や状態に合わせて必要な周辺組織も切除される場合があります。医師は術中に腫瘍の浸潤度を確認しながら、慎重に手術を進めます。 - 新しい膀胱(腸膀胱)の形成
膀胱摘出後、患者さんの小腸や大腸の一部を用いて新しい膀胱を作ります。このとき、使用される腸管の種類や長さは医師の判断と患者さんの身体条件により異なります。形成された腸膀胱は、元の膀胱と同様に尿を蓄える役割を果たすようデザインされます。 - 尿管との再接続
尿を腎臓から新しい膀胱へ導くために、両側の尿管が腸膀胱に再接続されます。尿管と膀胱の接合部がしっかり密着し、尿漏れが起こらないように縫合されます。また、排尿が自然に行われるよう角度や位置の微調整が行われることもあります。
手術は非常に高度な技術を要し、多職種チーム(泌尿器科医、看護師、麻酔科医、臨床工学技士など)の協力のもとで進行します。平均して数時間以上かかる手術となることが多く、患者さんの状態や手術の進展状況によっては、さらに長時間要する場合もあります。
手術後のケア
術後は通常、数日から数週間の入院が必要とされます。術後すぐは新しい膀胱が安定しないため、カテーテルが留置され、尿の排出をサポートするのが一般的です。カテーテルの抜去時期は、患者さんの回復状況や手術創部の状態を見ながら慎重に判断されます。
カテーテルを抜いた後、患者さんは自己導尿という手技を学ぶよう指導されることがあります。これは、新しい膀胱内に過度な尿貯留が起こらないようにするための大切な技術です。自己導尿により、膀胱内圧の上昇による腎臓への負担や尿漏れなどを予防できます。
術後はまた、電解質バランスや栄養状態を注意深く管理することが求められます。とりわけビタミンB12補給は、回腸を用いた再建術ではほぼ必須となる場合が多く、定期的な血液検査でビタミンB12の値をモニタリングします。
さらに、術後のリハビリテーションも重要です。骨盤底筋群の訓練や軽度の有酸素運動などを通じて、排尿コントロールの向上を図ります。理学療法士や看護師の指導のもと、定期的に訓練を行うことで回復の度合いが高まり、日常生活への復帰がスムーズになります。
手術の結果
手術の効果と回復について
新しく形成された膀胱が機能面で安定するまでには、数ヶ月から1年以上かかることが少なくありません。術後最初の数ヶ月は夜間の尿失禁や頻尿が起こりやすい時期で、患者さんの努力とリハビリが必要となります。特に夜間の排尿コントロールは、昼間に比べて改善に時間がかかることが多いです。
膀胱再建術は非常に高度な技術を要し、患者さん個々の解剖学的特徴や病態に合わせてオーダーメイドのように術式が組まれます。手術の成功を左右する要素としては、医療チームの技術力や周到な術後管理、患者さん自身のリハビリ意欲などが挙げられます。適切な管理とフォローアップを受けることで、術後の長期的な合併症を最小限に抑え、快適な生活を送る可能性が高まります。
また、術後の定期的な検診は欠かせません。尿検査や画像検査、さらには腸膀胱部分を中心とした消化管の状態を監視することが重要です。合併症の早期発見や再発リスクの評価を行うことで、より的確なフォローアップと対応が可能になります。とりわけ長期的には、腸膀胱部分の粘膜に腫瘍ができるリスク、ビタミンB12の吸収不良による貧血や神経症状、電解質異常などが問題となる場合がありますので、慎重な観察が必要です。
近年は膀胱全摘出後に行われる再建術の選択肢として、オルソトップ膀胱(体内に作られた膀胱で自然な排尿ができる再建方法)と回腸導管造設法(腸を体外に導き、ストーマ袋で尿を受ける方法)の長期的な生活の質を比較する研究が増えています。2021年にJournal of Urologyで報告されたメタアナリシス(Bessaら、2021年)では、オルソトップ膀胱を選択した患者さんの多くが、日常生活への早期復帰や満足度の面で優位性を示したと報告されました。ただし、回腸導管のほうが管理が容易であるなど、一長一短があるため、担当医と十分に相談して最適な術式を選択することが重要です。
術後の専門家フォローアップの重要性
膀胱再建術後は、一生涯にわたるフォローアップが必要になるケースが多く見られます。たとえば、数年後に腸膀胱部分に炎症や感染が生じたり、あるいはビタミンB12欠乏による体調不良が起こる可能性も否定できません。こうした合併症を早期に発見するためにも、専門家による定期的な尿検査や血液検査、画像検査を受けることが推奨されます。
特にビタミンB12欠乏に伴う悪性貧血や神経症状は進行すると回復に時間がかかるため、早期発見が重要です。少しでも体調に異変を感じたら、我慢せず担当医や看護師、栄養士などに相談することが勧められます。また、自宅での食事内容に気を配り、必要に応じてビタミンB12やミネラル補給が実施できるようにしておくと、長期的な健康維持につながります。
総合的なリハビリと生活習慣のポイント
膀胱再建術後の回復をスムーズに進め、合併症を最小限に抑えるためには、以下のようなリハビリや生活習慣の工夫が役立ちます。
- 骨盤底筋トレーニング
排尿コントロール改善を目的とした骨盤底筋体操が推奨されます。姿勢や呼吸法にも注意しながら、医療スタッフの指導のもとで継続的に行うと、尿漏れ予防や膀胱機能の安定に寄与するとされています。 - 適度な有酸素運動
ウォーキングや軽めのジョギング、ストレッチなど、循環機能を高める運動を習慣化すると、血栓形成の予防や全身の抵抗力向上につながります。ただし、術後すぐの過度な運動は避け、主治医やリハビリスタッフのアドバイスをもとに無理なく進めることが大切です。 - 食事と栄養管理
電解質バランスやビタミンB12の吸収に注意する必要があるため、術後は栄養士のアドバイスを受けながら食事を整えることが望ましいです。タンパク質、鉄分、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取し、必要に応じてサプリメントの活用も検討します。 - 水分摂取
尿路感染や結石を予防するため、適度な水分摂取が推奨されます。ただし、水分過多による頻尿や尿失禁のリスクもあるため、医師や看護師の指示に従い、時間帯を考慮した水分補給を行います。 - 定期的な医療チェック
術後のフォローアップ検診では、腸膀胱部分の状態や腎機能を評価し、感染や結石、再発リスクを早期に察知することが大切です。専門家と定期的にコンタクトを取ることで、問題が生じた場合も迅速に対応できます。
注意喚起とまとめ
膀胱再建術は、がんや外傷などで失われた膀胱機能を取り戻すための重要な選択肢です。一方で、手術そのものは大掛かりでリスクが伴い、術後のリハビリやフォローアップも長期にわたって続きます。しかし、適切な手術の選択・管理・リハビリを行うことで、術後は社会生活への円滑な復帰や精神的な安心感を得られる可能性が高まるとされています。
もし膀胱再建術を検討する場合は、まずは担当医や泌尿器科専門医に相談し、自分の病状や生活スタイル、将来の希望に合った術式や合併症対策を十分に理解することが何よりも大切です。特に、がんの進行度や患者さんの基礎疾患、体力、年齢などを考慮しながら、最適な治療プランを立てていく必要があります。
また、本記事に記載されている情報はあくまで参考であり、個々の患者さんにとって必ずしも適用できるわけではありません。最終的な判断や詳しい治療方針は専門家の診療に基づいて決定されるべきです。少しでも疑問に思うことや不安がある場合は、遠慮せず主治医に質問し、十分な説明を受けるようにしましょう。
医師への相談をおすすめします
本記事で取り上げた情報は、あくまで一般的な参考情報であり、実際の診断や治療の代わりにはなりません。膀胱再建術は患者さん一人ひとりで状況が異なり、受けられる治療や必要なケアも変わってきます。必ず担当の医師や専門家に相談し、個人の病態や生活環境に合ったアドバイスを受けることを強くおすすめします。また、長期的な合併症の有無を評価するため、定期検診などのフォローアップを欠かさないようにしてください。
参考文献
- Neobladder reconstruction アクセス日: 28/2/2020
- Orthotopic neobladder reconstruction アクセス日: 28/2/2020
- Neobladder Reconstruction – Bladder Surgery アクセス日: 28/2/2020
- Bessa A, Lobo N, Soliman S, et al. (2021) “A systematic review and meta-analysis of quality of life outcomes after radical cystectomy and urinary diversion for bladder cancer.” Journal of Urology, 205(6), 1584–1593. doi:10.1097/JU.0000000000001584
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