免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
はじめに
中高年を中心に、膝の痛みや関節の腫れによって日常生活に支障が出る方が増えています。その原因のひとつとして挙げられるのが、いわゆる「膝関節に余分な関節液がたまってしまう状態」、つまり膝の関節水腫(いわゆる「膝に水がたまる」状態)です。膝の違和感や痛みをそのまま放置すると、関節の機能が低下し、運動能力や生活の質が大きく損なわれるおそれがあります。本記事では、膝関節水腫(以下「膝の水腫」)とは何か、どのような症状があり、原因や治療法にどんな選択肢があるのか、さらに進行を放置するとどのような合併症が起こり得るのかについて、医療現場の知識や実際の臨床事例を踏まえて詳しく解説します。日常生活での注意点やリハビリテーションの重要性にも触れますので、膝の痛みや腫れでお悩みの方はぜひ参考になさってください。
専門家への相談
本記事で解説する膝の水腫については、整形外科をはじめとする医療機関で専門的な検査・診断を受けることが推奨されます。とくに、重度の痛みや腫れがある場合や、糖尿病などの持病をお持ちの方は感染リスクも含め十分に考慮する必要があります。本記事では、膝関節の診療経験をもつNguyen Thuong Hanh(内科・内科全般担当、Bệnh Viện Đa Khoa Tỉnh Bắc Ninh)による医学的な視点の一部も踏まえ、一般的な情報を整理しています。なお、実際の治療方針は担当医と十分相談したうえで決定してください。
膝関節水腫とは
膝関節水腫の基本的な概要
健康な膝関節には、摩擦を減らすための少量の滑液(関節液)が存在しています。しかし、外傷や炎症などによって関節の内面が刺激を受けると、滑液が過剰に分泌されてしまいます。その結果、関節内または関節周囲に余分な液体がたまる状態が「膝関節水腫」です。単に「膝に水がたまった」と表現することも多いですが、専門的には「関節水腫」「関節液貯留」などと呼ばれます。初期には「少し膝が腫れぼったい」「曲げにくい」程度の違和感で済むケースもありますが、放っておくと痛みが強くなり、活動範囲が狭まりやすくなります。
膝の水腫そのものは命に関わる病気ではありませんが、慢性化すると軟骨が傷つき、関節変形や運動機能の低下を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。早めに気づき、適切な治療を受けるほど、回復もスムーズに進みやすいと考えられています。
主な症状
初期段階でよく見られる症状
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腫れ
膝周辺が腫れぼったくなり、左右を比べると患側(痛みや水腫のある側)の膝が明らかに大きく見えることがあります。 -
痛み
動かしたときの鋭い痛みや、じっとしていても続く鈍い痛みなど、程度や感じ方はさまざまです。階段の上り下りや歩行時に痛みが強くなるケースが多いです。 -
熱感・発赤
関節に炎症が起きている場合、皮膚が赤みを帯び、触れると熱っぽさを感じることがあります。 -
動かしづらさ(可動域制限)
膝の曲げ伸ばしがしづらくなることで、歩行時の足の踏み出しや正座などの日常動作に支障が出ることも珍しくありません。 -
圧痛
腫れた膝を触ると、押したときに鋭い痛みを感じる場合があります。とくに事故やスポーツなどの外傷で靭帯や半月板を痛めているときには強い圧痛が出やすいです。
これらの症状は、あらゆる膝の病気にも共通する要素が含まれるため、「膝が痛い=すべて水腫」とは限りません。ただし、関節に余分な液体が貯留すると、たいていの場合は腫れや違和感など、目で見たり触ったりしてわかる変化が起こります。自覚症状がなくとも、何となく膝の太さが左右で違うなど、軽度のむくみに気づくこともあるので、早期に医療機関で相談することが大切です。
原因
なぜ膝に水がたまるのか
膝の水腫が起こる原因は複数あり、大きく以下のように分けられます。
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外傷(スポーツ障害や転倒など)
急激な負荷が膝にかかると、靭帯や半月板が損傷することがあります。その損傷を補おうと体が関節液を過剰に分泌するため、膝が腫れやすくなります。サッカーやバスケットボールなど、急なストップ・ターンが多い競技では特に起こりがちです。 -
過度な膝への負荷(職業的要因・肥満など)
日常的に膝に大きな負担をかけている場合(重量物を運ぶ仕事やしゃがみこむ姿勢が多い作業など)、あるいは体重過多(肥満など)により膝への負担が慢性的に高まっている場合も、滑液が増えやすくなり関節水腫が生じるリスクが上がります。 -
感染(関節内への細菌・ウイルスなどの侵入)
特に免疫力が低下している方や、高齢者、糖尿病などの持病がある方、または最近膝関節の手術を行った方は要注意です。関節内に菌やウイルスが侵入すると炎症が起き、急性の水腫が発生することがあります。 -
膝関節の変性疾患(変形性膝関節症、リウマチなど)
加齢や長年の酷使によって軟骨がすり減る「変形性膝関節症」や、自身の免疫機能が関節を攻撃してしまう「リウマチ性関節炎」などによって関節が慢性的に炎症を起こし、滑液が過剰に分泌されるケースもあります。また、高尿酸血症や痛風(gout)などの代謝性疾患でも関節炎が起こり、水腫を引き起こすことがあります。 -
その他の要因
血液凝固異常など、血液学的な問題で関節内に出血が起きやすい方も、膝の水腫を起こすリスクが高まる場合があります。
診断と経過
膝の腫れや痛みがある場合、まず医師は視診や触診を行い、過去のケガの有無や日常生活の状況などをヒアリングします。必要に応じて、レントゲン撮影、超音波検査、MRI検査、あるいは関節穿刺による滑液の検査などを実施し、外傷の程度や感染の有無、関節内の炎症マーカーなどを確認します。
こうした検査結果によって、膝の水腫が外傷によるものなのか、炎症性疾患によるものなのか、それとも感染が疑われるのかなど、おおよその原因を特定します。原因がはっきりすれば治療の方向性も明確になりますが、はっきり断定できない場合でも、痛みと炎症を抑えるための対処を優先的に行います。
治療法
保存療法(内科的治療)
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痛み止めや消炎鎮痛薬の投与
軽症の段階や急性期の痛みを抑えるために、抗炎症作用をもつ薬剤(NSAIDsなど)が処方される場合があります。強い炎症があるときには、ステロイド(副腎皮質ホルモン)の投与が行われることもありますが、副作用もあるため、必ず医師の管理のもとで行われます。 -
抗生物質の使用
感染が疑われるときには細菌の種類を特定し、適切な抗生物質を用いて炎症をコントロールします。培養検査で菌が検出された場合は、その菌に合わせた薬を選択することが必要です。 -
リハビリテーション・物理療法
患部に過度な負担をかけないようにしつつ、血流や関節の動きを改善するための物理療法(温熱療法や超音波治療など)やリハビリテーションを行います。筋力を強化し、膝への負荷を減らすことが長期的な改善につながると考えられています。
侵襲的治療(外科的治療)
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関節穿刺(穿刺吸引)
強い腫れと痛みがある場合、関節内の液体を注射器で吸引し、圧迫感や痛みを緩和します。その液を検査に回すことで、炎症の程度や感染の有無を調べることも可能です。また、吸引後にステロイドを注入することがありますが、繰り返し行うと感染リスクが高まるため、慎重に検討されます。 -
鏡視下手術(関節鏡検査・鏡視下手術)
半月板の損傷や靭帯の断裂など、外傷による膝構造の破綻が疑われる場合には、関節鏡による観察および修復が検討されます。大きな切開をせずに手術できる利点があり、術後のリハビリも比較的早期に開始しやすいです。 -
人工関節置換術
変形性膝関節症などで軟骨が大きく破壊され、保存的治療では改善が見込めない場合、人工関節に置き換える手術が選択されることもあります。術後のリハビリを適切に行えば、強い痛みから解放され、歩行機能が改善することが期待できます。
リハビリテーションと日常生活の注意点
膝の水腫の治療では、痛みや炎症を抑えるだけでなく、再発や悪化を防ぐための筋力強化や正しい歩行動作の獲得も非常に大切です。物理療法や運動療法では、太ももの大腿四頭筋やハムストリングスといった大きな筋肉をはじめ、膝を支える周辺組織を鍛えます。急性期の強い痛みがある間は安静を保ちますが、痛みが落ち着いたら少しずつ動きを増やすようにするのが一般的です。
日常生活では、以下の点に留意するとよいでしょう。
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急激な方向転換や膝への過度な負荷を避ける
スポーツを再開する場合も、急に激しく動かずにウォーミングアップやストレッチを入念に行ってください。 -
体重管理
肥満傾向の方は、適正体重を維持することで膝の負荷を減らすことが期待できます。栄養バランスのよい食事や適度な有酸素運動が推奨されます。 -
膝を冷やしすぎない・適度に温める
痛みが強い急性期は、アイシングが症状を和らげる場合もありますが、慢性的な炎症やこわばりがある場合は、入浴や温熱療法で血流を良くするほうが有効なことがあります。 -
足の高さを調整する
寝るときや座るときに膝の下にクッションを入れ、心臓よりやや高い位置におくと血液やリンパ液の循環が促され、むくみや腫れを軽減できることがあります。
放置するとどうなる? 合併症とリスク
膝の水腫を長期間放置すると、慢性的に炎症や痛みが続き、軟骨や半月板がさらに傷んで変形性膝関節症を進行させるリスクがあります。また、関節内への細菌感染(化膿性関節炎)が起こると、強い痛みに加え、膝が破壊される可能性があるため注意が必要です。
さらに、関節穿刺を何度も繰り返すと感染リスクが高まるだけでなく、組織の損傷を引き起こすおそれもあります。したがって、症状を繰り返す方は根本的な原因(半月板損傷やリウマチなど)を明らかにし、その治療をきちんと行うことが重要です。
回復期間と予後
膝の水腫がどのくらいで改善するかは、原因や程度、治療法、そして患者さんご本人の体調や既往症に大きく左右されます。
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軽度・外傷性の場合
適切に安静や投薬を行い、リハビリを取り入れれば、数週間程度で日常生活に復帰できるケースもあります。 -
変形性膝関節症やリウマチなど、慢性疾患がベースの場合
完全に痛みや腫れを抑え込むには時間がかかります。状況によっては外科的治療を検討する必要もあり、数カ月単位のリハビリを要する場合があります。 -
感染を伴う場合
早期に抗生物質などで確実に治療を行わないと、膝の破壊が急速に進むことがあるため、入院管理が必要になるケースもあります。適切な治療を行えば回復は見込めますが、ほかの患者さんより経過が長引く傾向があります。
いずれのケースでも、医師の指示に従って適切な治療を継続し、無理のない範囲で筋力を高めることが再発予防や症状改善のカギとなります。
結論と提言
膝関節に水がたまる原因は、外傷や関節の使いすぎ、肥満、感染症、変形性膝関節症など多岐にわたります。症状としては腫れや痛み、熱感、可動域の制限などが代表的で、悪化させると膝の変形や運動機能の低下を招くおそれが高まります。治療は薬物療法からリハビリテーション、必要に応じた外科的アプローチなど幅広く、根本原因を突き止めて適切な治療を行うことが大切です。特に、慢性的な膝の痛みや繰り返す腫れを抱えている場合は、自己判断で放置せず早期に専門医に相談してください。
また、膝の負担を軽減するには体重管理や適度な運動が効果的です。急な痛みがあるときは医師の指導のもとで安静を保ち、急性期を過ぎたら少しずつ運動を再開することが推奨されます。膝の水腫は、早期発見・早期治療が予後の改善に大きく寄与します。違和感や腫れを感じたら、無理をせず専門家に相談するよう心がけましょう。
重要なご案内
本記事は医学的情報を提供する目的で作成されたものであり、医師などの専門家による診察・診断・治療に代わるものではありません。症状や状態には個人差があり、本記事の内容がすべての方に当てはまるわけではありません。とくに糖尿病などの持病のある方や高齢の方、既往症をお持ちの方は、必ず専門医にご相談ください。
参考文献
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本記事で挙げた情報は、複数の信頼できるデータベースおよび医療機関の資料をもとにまとめています。膝の水腫は早期対応が重要であり、放置すると痛みや変形、感染など大きな合併症を引き起こす可能性があります。気になる症状がある場合は、なるべく早く医療専門家に相談し、正確な診断を受けてください。なお、治療法や経過は個人差がありますので、必ず担当医の指示を仰ぐようにしましょう。
最終的な注意喚起
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、医療行為の最終判断は医師による診察・検査が不可欠です。症状の程度や背景疾患、体質によって最適な治療法は変わりますので、必ず専門医にご相談ください。早期発見と適切な治療が、膝の機能を守るための第一歩です。