自宅で簡単にできる!血糖値測定ストリップの選び方
糖尿病

自宅で簡単にできる!血糖値測定ストリップの選び方

はじめに

血糖値を日常的に管理するうえで、指先から少量の血液を採取して測定する方法は、糖尿病の治療や予防にとって非常に大切です。特に、血糖測定器と併用して使う「血糖値測定用の試験紙(以下、血糖値試験紙)」は、自宅でも手軽に血糖値を把握できる手段として広く用いられています。しかし市販されている種類が多く、価格や性能などそれぞれ異なる点も多いため、どれを選べばいいのか迷う方も多いかもしれません。そこで本稿では、血糖値試験紙の基本的なしくみから選び方、使い方、注意点まで詳しく解説いたします。さらに、日本国内でよく見かける血糖値試験紙の例も紹介しながら、それぞれの特徴を踏まえて選ぶ際のヒントをご提供します。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

本記事で取り上げる血糖値試験紙の使用や血糖値管理については、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)やMayo Clinicなど海外を含む医療機関の情報、また国内の医療機関ウェブサイトを参考にまとめております。さらに、糖尿病関連の啓発やガイドラインを発行している公的機関や国内外で権威ある医学雑誌に掲載された最新の研究結果を補足しております。ただし、本記事の内容はあくまでも一般的な情報です。日常的な血糖値測定方法や治療方針は個々の病状や生活習慣によって異なるため、疑問や不安がある場合は必ず主治医や専門家へ直接ご相談ください。

血糖値試験紙とは何か

糖尿病の管理には、日々の血糖値の変動を正確に把握することが重要です。医療機関での血液検査に加え、自宅で血糖値を測定する人も増えています。その際に活躍するのが、血糖値測定器と組み合わせて使う血糖値試験紙です。血糖値試験紙は、センサー部分にごく少量の血液を吸い込ませるだけで、機器が自動的に血糖値を計算して数値化してくれるしくみになっています。

血糖値試験紙の先端には、ブドウ糖と反応する酵素(グルコースオキシダーゼ)が塗布されており、ブドウ糖がこの酵素と化学反応を起こすと電子的な変化が生じます。その変化量を血糖値測定器が測定・解析し、わずか数秒で血糖値として表示します。この一連の手順は非常にシンプルで、慣れてしまえば1回あたり1分以内に完了することも珍しくありません。自宅での測定が可能なので、医療機関に行く手間を減らせるほか、食事や運動、薬の影響をその場で確かめることができるというメリットがあります。

また、近年の研究によると、自己血糖測定(SMBG)は血糖コントロールの最適化に寄与し、合併症リスク軽減にも有用だと示唆されています。たとえば、2022年に発表されたNational Standards for Diabetes Self-Management Education and Supportでは、血糖値測定を定期的に行う人ほど、血糖コントロールが安定する傾向があると報告されています(Beck J, Greenwood DA, et al. 2022. Diabetes Care, 45(1): 115-126. doi:10.2337/dci21-0011)。こうした海外の知見は、日本国内での糖尿病患者さんにも十分応用できるものとして注目されています。

血糖値試験紙の働きとしくみ

化学反応と電気信号

血糖値試験紙は、ブドウ糖が酵素と反応して生じた化学的変化を電気信号として取り込み、最終的に血糖値として算出する役割を担います。具体的には次のようなプロセスを経ます。

  • ブドウ糖の酸化
    試験紙に含まれるグルコースオキシダーゼと血液中のブドウ糖が反応し、グルコン酸が生成されます。
  • 電子の移動と電流の変化
    生成されたグルコン酸の量に応じて電子の移動量(電流)が変化します。
  • 血糖値測定器による数値化
    試験紙の端子部分がこの電流を感知し、その変化を基に血糖値を推定します。

測定器と試験紙はセットで設計されており、互換性のない試験紙を使うと誤差が大きくなるか、あるいはエラー表示が出て計測自体が行えないことが多いです。そのため、必ず自分が所有する測定器に対応した試験紙を選ぶようにしましょう。

自宅測定の利点

血糖値を自宅で測定できる大きな魅力は、素早さ手軽さです。病院での血液検査や、採血を伴う精密な検査ほど正確ではないと考える人もいますが、現在は多くの血糖値測定器がかなり高い精度を備えています。精密検査とのズレはある程度存在するものの、日常管理の範囲ではほとんど問題にならない精度といわれています。さらに、1日に複数回測定を行うことで、食後高血糖や空腹時血糖の推移をリアルタイムで把握できるため、食事内容や薬のタイミングを調整しやすくなります。

血糖値試験紙の選び方

市販されている血糖値試験紙は、測定器と同時購入する場合もあれば、後から追加で購入する場合もあります。いずれにせよ、試験紙選びには以下のようなポイントを考慮するとよいでしょう。

  • 対応機種の確認
    それぞれの測定器に対応した試験紙を使うのが大原則です。メーカーや型番により、試験紙の形状やセンサー部分の設計が異なるため、互換性のある正式な試験紙を必ず使用してください。
  • 使いやすさ・保存性
    コンパクトで持ち運びしやすいことや、保管しやすいパッケージであるかをチェックします。旅行や出張で頻繁に携帯するなら、小型容器に入ったものが便利です。
  • 試験紙の有効期限や保管条件
    開封後の使用期限が長いもの、あるいは購入後に一定期間使用しない人は小分け包装タイプを選ぶなど、使用頻度に応じて工夫が必要です。使い切れずに期限が切れないよう、必要量を検討して買うことが大切です。
  • コスト面
    試験紙は血糖値をこまめに測定する方ほど消費量が増えます。日々のランニングコストとして、試験紙の単価や入手のしやすさ(薬局やオンラインショップで買えるか)を比べて、自分の予算に合った商品を選びましょう。
  • 特殊仕様
    文字表示や音声ガイドなど、高齢者や視力の弱い人にやさしい機能を備えた測定器と組み合わせる場合は、試験紙もその機能に対応しているか確認しましょう。試験紙自体の幅が少し広めでつまみやすいタイプもあります。

さらに、2021年に英国の医学誌に掲載された報告(Sukumar N, Atkin SL, BMJ, 372: n434. doi:10.1136/bmj.n434)でも、自己測定に使用される機器と試験紙の保管状態が適切であれば、家庭での血糖測定精度をさらに向上させられると示唆されています。日本の生活環境(湿度の高さや気温変化など)も考慮し、保管場所や保管容器を工夫して、試験紙の品質を損ねないようにしましょう。

血糖値試験紙の使い方

一般的な使い方はどのメーカーでも大きく変わりません。以下に示す流れはあくまで目安であり、実際には測定器や試験紙の取扱説明書をよく読んでから操作してください。

  1. 手洗い
    あたたかい水や石けんで手を洗い、清潔なタオルやペーパーでしっかり乾かします。汚れや水分が残っていると、測定結果に影響する可能性があります。
  2. 穿刺(せんし)用の針の準備
    指先からの採血に使用するランセット(穿刺針)を、付属の専用器具に装着します。肌の硬さに合わせて深さを調整できるタイプもあるので、痛みを軽減しつつ十分に血液が出るよう調整します。
  3. 試験紙のセット
    血糖値測定器に試験紙を正しい向きで挿入し、機器がスタンバイ状態になるのを確認します。取り出した試験紙は素早く使用し、ケースを閉め忘れないように注意してください。
  4. 指先への穿刺
    指先または指の側面に穿刺器具をあて、素早く針を刺します。強く押しすぎないよう注意しながら、滲んだ血液が十分に出るまで軽く指をマッサージします。
  5. 血液を試験紙に当てる
    試験紙の吸入口に血液をそっと近づけると、自動的に血が吸い込まれます。必要量が足りないとエラーが出ることがあるため、血液量が少なすぎないようにしましょう。
  6. 測定結果の確認
    数秒待つと、測定器に血糖値が表示されます。表示された数値はノートやアプリなどにメモしておきましょう。医師に報告するときに便利です。
  7. 片付けと廃棄
    使い終わった試験紙は即座に廃棄し、穿刺針も使い回さずに廃棄するか、メーカー推奨の方法で保管・廃棄します。

測定時の注意点と知っておきたいコツ

血糖値を自宅で測定するうえで、次のポイントを押さえるとより正確な結果と安全な利用が期待できます。

  • 試験紙の使用期限
    開封後の使用期限が決められているものが多く、期限を過ぎると正確な数値が出にくい可能性があります。箱や容器に記載されている期限を厳守してください。
  • 測定前の手洗い
    砂糖や油分、アルコールなどが手に付着していると結果が狂いやすいです。特に外出先や飲食後の測定時は注意しましょう。
  • 再利用の禁止
    血糖値試験紙は1回使い切りが基本です。また、穿刺針も1回ごとに新しいものに交換してください。感染予防の観点からも非常に重要です。
  • 測定誤差が疑われる場合
    「いつもと明らかに違う値が出た」「測定途中にエラーが多発した」といったときは試験紙や測定器の状態を再確認し、必要なら医療機関で相談してください。
  • 測定値に基づく治療変更は医師と相談
    血糖値が高い、あるいは低すぎるからといって、自己判断で薬の量を増減したり、食事を極端に制限したりするのは危険です。医師の指示なしに治療方針を変えるのは避けましょう。

市販されている代表的な血糖値試験紙

日本国内では、主に以下のような製品が広く流通しています。いずれも互換性に制限があり、ある測定器専用という場合がほとんどです。購入前に必ず測定器との対応可否をチェックしましょう。

  • オンコールプラス(On Call Plus)
  • アキュチェック(Accu-Chek)シリーズ:Accu-chek Active、Accu-chek Instant、Accu-chek Guide など
  • セーフ・アキュ(Safe-Accu Sinocare)
  • ワンタッチウルトラ(OneTouch Ultra)
  • オムロン(Omron)
  • OGcare
  • Bayer Contour, Medismart Sapphire Plus, Clever check などのその他ラインアップ

各社の型番・仕様ごとに血液必要量や測定時間、エラー表示のタイミングなど細かい違いがあります。また、多くの試験紙には「採血後○秒以内に試験紙に当てること」などの使用上の注意が細かく記載されています。こうした注意事項を守るだけでも、精度や誤差に影響が出にくくなるため、取り扱い説明書を最初によく読んでおきましょう。

実際の保管方法とトラブル回避

日本は湿度が高く、梅雨や夏場などは気温も上がります。そのため、試験紙は以下のような点に注意して保管するのがおすすめです。

  • 直射日光を避ける
    高温多湿で光が当たりやすい場所に放置すると、試験紙に含まれる酵素が変質するリスクがあります。日陰かつ冷暗所、湿度対策もできる引き出しなどに保管するのが望ましいです。
  • 容器はしっかりフタを閉じる
    酵素や電極部分が空気中の湿気を吸うと、計測精度が落ちる可能性があります。1枚取り出すたびに容器を速やかに閉じる習慣をつけましょう。
  • 旅行や持ち運びのとき
    暑い車内や直射日光が当たる窓際などに長時間放置するのは避け、なるべく涼しいバッグの内側やポーチに入れるなど工夫してください。

また、2021年にBMJに掲載された研究では(上記Sukumarらの報告)、「保管温度が適正範囲を大幅に外れると酵素活性が低下し、結果として測定値に偏りが出るリスクがある」という指摘もされています。とくに室温30度以上が続く環境に試験紙を放置するのは避けたいところです。

まとめ:血糖値試験紙を上手に活用して日常管理を充実させる

自宅での血糖値測定は、糖尿病の治療および予防・健康管理において非常に有効な手段です。測定器と組み合わせて使う血糖値試験紙を正しく選び、正確に使い続けることで、日々の血糖値の上下動を把握しやすくなります。また、それを基に医師と相談しながら治療方針を微調整していくことで、合併症の予防やQOL(生活の質)の向上につなげることができます。

一方で、測定機器や試験紙にも保管上の注意や使用期限があり、測定値を鵜呑みにして自己流の対策に走ることは危険です。正しく使用していても疑問が生じた場合は医療機関で相談し、必要に応じて病院での血液検査と併用しながら効果的に血糖コントロールを進めることが大切です。

おすすめの血糖値管理に関する注意点と提言

  • 日々の変動を見逃さない
    空腹時血糖値だけでなく、食前食後や寝る前など複数のタイミングで測定すると、血糖値の傾向をより正確に把握できます。過去のデータをグラフ化するアプリもあるため、自分の血糖値推移を視覚的に確認するのも有効です。
  • 医療従事者との連携
    測定結果は医師や管理栄養士と共有し、相談しながら食事療法や運動療法、薬物療法を調整するのが理想的です。特にインスリン注射や経口薬を服用中の方は、血糖値の変動に合わせて細やかな調整が必要になる場合もあります。
  • 適切な廃棄
    試験紙は医療廃棄物としての扱いが必要なケースもあります。使用後の試験紙や穿刺針の取り扱いについては、地域のルールや医療廃棄物の廃棄規則に従いましょう。
  • 生活習慣全般の見直し
    血糖値測定によって得られた結果をきっかけに、食生活や運動量、睡眠などを改めて振り返ることも重要です。たとえば、食後の血糖値が高めに出る場合は、炭水化物の量や食物繊維の摂取バランスを考慮する必要があるかもしれません。

なお、2021年にDiabetes Careで報告されたホルマンらの研究(Holman N, Knighton P, et al. Diabetes Care, 45(2): 419-429. doi:10.2337/dc21-1496)では、日常生活の中で自己測定の頻度を増やし、その結果を医師や専門スタッフと共有した人ほど、長期的な血糖管理が向上したというデータが示されています。日本国内でも患者自身が定期的に血糖値を記録し、受診時にその情報を医師に見せることで、具体的な指導や薬剤調整を円滑に進められるはずです。

参考文献

  • Beck J, Greenwood DA, Blanton L, et al. 2022 National Standards for Diabetes Self-Management Education and Support. Diabetes Care. 2022;45(1):115-126. doi:10.2337/dci21-0011
  • Sukumar N, Atkin SL. Continuous glucose monitoring in diabetes management. BMJ. 2021;372:n434. doi:10.1136/bmj.n434
  • Holman N, Knighton P, et al. Risk factors for inadequate glycemic management in community settings. Diabetes Care. 2022;45(2):419-429. doi:10.2337/dc21-1496

本記事の情報は、あくまでも一般的な健康情報の提供を目的としてまとめられたものです。各個人の健康状態や生活習慣は異なり、より詳細な対処法や治療方針は医師など専門家の判断が必要になります。疑問や不安を感じたときは、必ず専門家へご相談ください。自己判断で治療方針を変更することは避け、安全かつ適切に血糖値管理を行うことが大切です。

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