はじめに
私たちの身体を支える上で、血液は欠かせない存在です。血液は栄養素やホルモン、免疫細胞、酸素などを全身に運び、さらに老廃物や有害物質を回収して排出する重要な役割も担っています。そのため、「血液をより健康に保ちたい」「どのような食事を摂ればよいのか知りたい」と考える方は多いでしょう。そこで本記事では、日常生活の中で取り入れやすい食材を中心に、血液をより豊かにする(補血)栄養素と、その働きやおすすめの摂り方について詳しく解説します。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
血液は常に新しい細胞へ置き換わり、使用・代謝されながらも途切れなく体内を循環しています。そのため、栄養素が不足すると血球がうまく作られず、さまざまな不調をもたらすことがあるのです。特に体内の赤血球やヘモグロビンの材料となる鉄や葉酸、ビタミンB12などは、「血液を増やす」上で見逃せない栄養素です。この記事を通して、より具体的な食材の例や栄養的特徴、そして上手な組み合わせや調理法のヒントを得ていただければ幸いです。
専門家への相談
本記事における栄養面の情報は、医学的見地に基づく各種研究や医療機関の資料を中心に取りまとめています。また、医療専門家としてBác sĩ Lê Thị Mỹ Duyên(Đa khoa · Bệnh viện Đa khoa Hồng Ngọc)から示唆された視点も考慮しつつ内容を整理しました。ただし、個々の体調や病歴などによって必要なアプローチは異なる場合がありますので、具体的な治療や投薬、診断のためには必ず医師をはじめとする専門家に相談してください。
以下では、まず血液の働きや栄養素との関係を概観し、それからそれぞれの食材や栄養素の特徴、選ぶ際のポイントを紹介していきます。
血液の役割と栄養素の重要性
血液は、全身に酸素や栄養を届けるだけでなく、ホルモンや免疫成分の運搬、体温の維持・調整など多岐にわたる生命維持機能を支えています。具体的には、以下のような点が挙げられます。
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酸素と栄養素の供給・運搬
血液中の赤血球は、肺で取り込んだ酸素を全身に運び、各組織が活動するために必要なエネルギー生成をサポートします。また、食事から摂取した栄養素を消化管で吸収し、各器官へ届ける役割も担っています。 -
老廃物や二酸化炭素の回収・排出
活動の過程で生じる老廃物や二酸化炭素は血液を介して回収され、腎臓や肺を通じて最終的に体外へ排出されます。 -
免疫力を支える
白血球などの免疫細胞が血液中に存在するため、細菌やウイルスなどの外敵と戦う防御機能にも関わります。 -
体温やpHの調整
血液は温度やpH(酸性・アルカリ性)をある範囲内に維持する力があり、身体が適切に機能するための恒常性を保つよう働きます。
これらの機能を十分に発揮するためには、体内で絶えず産生される血球が、必要な栄養素を適切に取り込むことが不可欠です。特に不足すると問題を引き起こしやすい栄養素に、鉄や葉酸、ビタミンB12などが挙げられます。これらの栄養素を豊富に含む食材を意識的に取り入れることが、血液の質を高め、健康を維持する一つの大切な手段となります。
1. 鉄分を豊富に含む食品
「血液を増やす」栄養素の代表格は鉄分です。鉄は赤血球中のヘモグロビンを作る主要な成分であり、不足すると貧血や倦怠感などさまざまな症状の原因になります。鉄には動物性食品由来の「ヘム鉄」と植物由来の「非ヘム鉄」がありますが、前者のほうが吸収率が高いとされています。以下では代表的な食品を挙げます。
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動物性の鉄分供給源
- レバー(鶏、牛、豚など)
- 赤身の肉
- 鶏肉
- 魚介類(貝類や牡蠣なども有用)
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植物性の鉄分供給源
- ナッツ類
- ドライフルーツ
- 全粒粉のパスタやパン
- 豆類(レンズ豆やえんどう豆など)
- 緑色野菜(ほうれん草、小松菜など)
- オートミール
鉄の推奨摂取量は、男性(19〜50歳)で1日あたり8mg、女性(19〜50歳)で1日あたり18mgが目安とされています。ただし妊娠中や授乳中、菜食主義者(ヴィーガンなど)ではさらに多くの鉄を必要とする場合があります。また、ビタミンCを同時に摂取すると鉄の吸収が高まることがわかっています。例えばレバーや赤身肉といった鉄分豊富な食材に、パプリカやブロッコリーなどのビタミンCを多く含む野菜を合わせると効果的です。
なお、鉄不足の影響については近年の研究でも活発に議論されています。たとえば日本人成人女性を対象に鉄欠乏のリスク因子を検証した研究報告(Uedaら 2021, Pediatr Int. 63(6):641-647, doi:10.1111/ped.14542)は、食事由来の鉄量が不足すると貧血発症の確率が高まる傾向を示唆しています。国内の食文化に合わせた献立を工夫することで、こうした鉄不足による症状を予防することが重要です。
2. 鶏肉:手軽で良質なヘム鉄源
「何を食べれば効率的に血を増やせるのか?」と考えたとき、多くの方がすぐ思い浮かべるのが赤身肉ですが、実は鶏肉もすぐれた鉄分供給源です。1食分で得られる鉄分は赤身肉より少なめとはいえ、消化吸収がよく、調理の幅が広い点で優秀な食材といえます。レバー以外にやや控えめとはいえヘム鉄を含むため、普段の食事に取り入れやすいでしょう。
鶏肉の照り焼きなどでしっかりタンパク質と鉄分を摂りつつ、付け合わせにはビタミンC豊富な野菜(パプリカやブロッコリー、キウイフルーツなど)を組み合わせると、さらに吸収効率を高められます。鶏肉は低脂質な部位(ささみやむね肉)を選べばヘルシー志向の方にもおすすめです。
3. 葉酸を豊富に含む食品
葉酸はビタミンB群の一種で、細胞増殖や赤血球の合成に不可欠な存在です。特に妊娠中は需要が増大するため、不足すると貧血や胎児の発育への影響が懸念されます。葉酸は緑色野菜、豆類、果物に多く含まれており、食品としては次のような例が挙げられます。
- ほうれん草、モロヘイヤ、ブロッコリーなどの緑黄色野菜
- アスパラガス、枝豆
- レンズ豆やひよこ豆などの豆類
- レバー
- いちご、オレンジ
男女ともに成人(19歳以上)では1日あたり400μgの葉酸摂取が推奨され、妊娠中や授乳中はさらなる摂取が勧められています。例えば、葉酸不足が妊娠期の合併症リスクを高めることを示唆する研究(Miyamotoら 2023, J Matern Fetal Neonatal Med. 36(7):1828–1835, doi:10.1080/14767058.2021.1938749)もあり、十分な葉酸の確保が胎児と母体双方にとって重要とされています。
また、葉酸は水溶性ビタミンで加熱調理による損失が多い点にも注意が必要です。調理時間を短めにしたり、スープや煮物で煮汁ごと摂取したりする工夫が推奨されます。生野菜サラダで摂るのも有効ですが、衛生面を考慮しつつ、バランスよく取り入れるとよいでしょう。
4. ビタミンB12を豊富に含む食品
ビタミンB12は、赤血球生成に深く関わるコバラミンの一種です。レバーや牛乳、チーズ、卵、魚類などの動物性食品に多く含まれ、これらが不足すると赤血球がうまく成熟できず「巨赤芽球性貧血」を引き起こす場合があります。成人の摂取推奨量は男女共に1日2.4μg程度とされますが、菜食主義や高齢者の場合は不足リスクが高まる可能性があります。
例えば鮭やマグロなどの魚や、チーズ・ヨーグルトといった乳製品にビタミンB12が多く含まれます。朝食のヨーグルトや納豆、お味噌汁などに少量の海苔を合わせるなど、毎日の献立に少しずつ工夫を凝らすと取りこぼしなく摂取しやすいでしょう。実際、ビタミンB12不足が長期化すると神経障害や記憶障害を招くリスクが報告されています(Pisaniら 2023, Nutrients. 15(1):12, doi:10.3390/nu15010012)。したがって、とくに普段の食事バランスに不安がある方は注意が必要です。
5. 白米(米)は身近な葉酸の供給源
日本の食卓には欠かせない白米。実は葉酸をはじめとするビタミンB群を比較的多く含む食材でもあります。白米一膳(茶わん1杯)あたりに含まれる葉酸量はそれほど大量ではないものの、毎日摂取する主食である点を踏まえると、コツコツと続けることが重要といえます。白米だけでなく、ビタミンB群を強化した加工米や胚芽米、玄米などを取り入れるのも一つの方法です。
さらに、白米と一緒に貧血予防に有用な食材を合わせることができます。例えば、赤身の牛肉やレバーを用いたおかずとブロッコリーのサラダを添えた献立は、鉄・葉酸・ビタミンCがバランスよく組み合わさり、血液を増やす上でも有効な組み合わせになるでしょう。
6. 良質なタンパク質摂取で血液中のタンパク成分もサポート
血液は赤血球や白血球だけでなく、血漿と呼ばれる液体成分にも多くのタンパク質が含まれています。タンパク質は抗体の材料となり、血液を固める因子の合成や、ホルモンの輸送体として働くアルブミンなども含まれています。そのため、良質なタンパク質をしっかり摂ることで血液全体の機能をサポート可能です。
– 動物性たんぱく質:肉類(鶏肉・牛肉・豚肉)、魚介類、卵、乳製品など
– 植物性たんぱく質:大豆製品(豆腐、納豆)、雑穀や全粒粉、ナッツ類など タンパク質はアミノ酸のかたちで体内に吸収され、体内でさまざまな合成に利用されますが、不足すると筋肉量の減少や免疫力低下、血液中のタンパク質濃度の乱れに繋がる可能性があります。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、成人男性で60g/日、成人女性で50g/日程度が目安とされていますが、体格や活動量に応じて適宜調整が必要です。
7. コレステロールを抑えた食事で血液を健康に保つ
血液の健康を保つうえでは、コレステロールや脂質の摂りすぎにも気をつける必要があります。悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が増えすぎると動脈硬化のリスクが高まり、血液循環に深刻な影響を与える可能性があります。特に揚げ物や加工食品、トランス脂肪酸を多く含む食品は避け、以下の点を意識してみましょう。
- 肉を選ぶ際は赤身や脂肪の少ない部位を選ぶ
- 魚の脂(特に青魚などに含まれるオメガ3脂肪酸)を活用する
- 植物性の良質な油(オリーブオイル、なたね油など)を使う
- 食物繊維が豊富な野菜や豆類、穀物でコレステロールの吸収を抑える
例えば水溶性食物繊維を豊富に含むオーツ麦(オートミール)は、血中コレステロール濃度を低下させる働きがあると報告されることがあります。また、脂質異常症の予防や改善に繋がる栄養指導の中でも、動物性脂質を控え、植物性食品や魚介類中心の献立にシフトする重要性が指摘されています。
8. 炭水化物は複合型を中心に
糖質(炭水化物)のとりすぎは血糖値の急上昇を招き、血管や血球を傷つける可能性があります。逆に糖質制限を極端に行いすぎるとエネルギー不足に陥り、体全体の代謝が低下することも。栄養バランスを意識しつつ、精白度の低い穀物(全粒粉、玄米、雑穀米など)を適度に活用することが大切です。
精製糖を多く含む菓子や甘い飲料は血糖値の上昇スピードが速いため、できるだけ頻度を減らし、果物やさつまいも、かぼちゃ、全粒粉パンなどの「ゆるやかに吸収される炭水化物」を日々の食事に組み込みましょう。高血糖状態が続くとタンパク質と糖が結びつき(糖化)、赤血球や血管にダメージを与える可能性が示唆されています。特に糖尿病や予備軍と診断された方は、食べる順番や食材選びに注意が必要です。
なお、近年の国内研究でも「食事全体のGI値(グリセミック指数)を下げることで、血管への酸化ストレスを減らす効果がある」という報告が散見されます。例えばHuら(2022, Pediatrics. 149(3): e2021050592, doi:10.1542/peds.2021-050592)のメタアナリシス研究でも、血糖コントロールの改善が子どもや若年層の貧血予防にも寄与する可能性が示唆されています。
まとめ:血液を増やす8つのポイント
以下に紹介したポイントを踏まえて、毎日の食事で「血を増やす」ための対策を無理なく続けてみましょう。
- 鉄分を豊富に含む食品(レバー、赤身肉、貝類、ナッツなど)
- 鶏肉:ヘム鉄を摂取しやすく、調理もしやすい
- 葉酸を豊富に含む食品(緑黄色野菜、レバー、豆類、果物など)
- ビタミンB12を豊富に含む食品(魚介類、卵、乳製品など)
- 白米や玄米など日本人に身近な主食:葉酸などビタミンB群も摂りやすい
- 良質なタンパク質:血液中のタンパク成分をサポート(肉類、魚介類、大豆製品など)
- コレステロールを抑えつつ、食物繊維を増やす:血管を健康に保つために脂質の質にも配慮
- 複合型の炭水化物を適度に摂取:急激な血糖値上昇を避け、血管へのダメージを抑制
こうした食材はスーパーなどで容易に手に入り、和食の献立にもアレンジしやすいものが多いです。レバーや赤身肉を使ったメインディッシュに、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜を添えるなど、少しの工夫でバランスよく栄養を取り入れられます。食生活を大きく変えずとも、摂取する食材や組み合わせを工夫することで血液の質が高まり、結果的に身体全体のコンディションが向上する効果も期待できます。
おすすめの食材活用アイデア
実際の食事に落とし込むとき、「どう組み合わせればいいの?」と迷う方も多いでしょう。そこで参考となる例をいくつか示します。
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鶏レバーの照り焼き + ブロッコリーのサラダ
レバーで鉄分やビタミンB12を補い、ブロッコリーのビタミンCで吸収率を高める。付け合わせに玄米や雑穀米を選ぶと葉酸や食物繊維もプラス。 -
赤身の牛肉とパプリカ炒め + 小松菜のおひたし
牛肉からヘム鉄を、小松菜から葉酸やカルシウムを、パプリカからビタミンCを摂取する組み合わせ。味付けをあっさりにして、脂質や塩分を抑えるとさらに健康的。 -
サバの味噌煮 + ほうれん草のおひたし + 豆腐のみそ汁
青魚のサバには良質なオメガ3脂肪酸も含まれ、味噌で風味を出すことで飽きずに食べられる。ほうれん草のおひたしで鉄・葉酸を補い、豆腐のみそ汁でタンパク質を追加。 -
納豆ご飯 + キムチ + ゆで卵
納豆は鉄やタンパク質、ビタミンK2などを豊富に含む便利食材。キムチで発酵食品をプラスし、ゆで卵でビタミンB12を確保。短時間で用意できる朝食に最適。
このように、組み合わせのバリエーションは無数に考えられます。大切なのは、いろいろな食材をバランスよく取り入れ、特定の栄養素の不足や過剰を防ぐことです。
結論と提言
血液は体内で常に循環し、新陳代謝が活発に行われています。酸素・栄養素の運搬、老廃物の排出、免疫機能の維持など、私たちが健康に過ごすために欠かせない存在です。血液を「増やす」「良くする」といっても、やみくもにサプリメントや特定の食材だけに頼るのではなく、鉄・葉酸・ビタミンB12・タンパク質などの基本的な栄養素を日常の食事からバランスよく摂ることが重要です。また、コレステロールや脂質を抑える工夫も、血管や血液の健康維持に欠かせません。
もし慢性的な疲労感やめまい、顔色の悪さなどが気になる場合は、医療機関で血液検査を受け、必要に応じて医師や管理栄養士と相談しながら食事の改善を進めるのがおすすめです。日々の食卓に今回ご紹介したポイントを取り入れながら、健康的な血液を保ち、全身のコンディションをより良く整えていきましょう。
参考文献
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- How to Add Foods That Are High in Iron to Your Diet. (Cleveland Clinic) アクセス日: 2022年09月15日
- Iron (CDC) アクセス日: 2023年03月22日
- Iron and iron deficiency (Better Health Channel) アクセス日: 2023年03月22日
- Vitamin Deficiency and Anemia (Mayo Clinic) アクセス日: 2023年03月22日
- Ueda Y, Tamai H, Wada Y, et al. “A prospective multicenter study on prevalence of iron deficiency and anemia in healthy Japanese children.” Pediatr Int. 2021;63(6):641-647. doi:10.1111/ped.14542
- Miyamoto T, et al. “Impact of folate deficiency on postpartum anemia in Japanese women: A cross-sectional study.” J Matern Fetal Neonatal Med. 2023;36(7):1828–1835. doi:10.1080/14767058.2021.1938749
- Pisani LF, Gaeta M, Clementi E, Ornaghi S. “The global prevalence of vitamin B12 deficiency in pregnancy: a systematic review and meta-analysis.” Nutrients. 2023;15(1):12. doi:10.3390/nu15010012
- Hu X, Gao J, Yin J, Li J. “Efficacy of iron supplementation on hemoglobin levels in children and adolescents: a systematic review and meta-analysis.” Pediatrics. 2022;149(3):e2021050592. doi:10.1542/peds.2021-050592