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当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
はじめに
がんは早期に発見し、適切な治療を受けることで予後の改善や生存率の向上を期待できる疾患の一つとされています。近年の医療技術の進歩により、さまざまながん検査方法が開発・導入されてきました。そのなかでも、血液検査は比較的簡便に実施でき、患者への侵襲も少ないため、日常的な健康診断や治療経過観察などに広く活用されています。では実際に、血液検査でどこまでがんを発見できるのか、どのような種類の検査があるのか、そしてその結果はどのように活用されるのか。本記事では、血液検査とがん発見の関係、具体的な検査方法や留意点について詳しく解説します。
本記事は、日本にお住まいの方々が読みやすいよう配慮してまとめられています。生活習慣や医療環境が身近な背景を想定しながら書かれていますので、日常の健康管理や医療機関の受診時の参考情報としてお役立ていただければ幸いです。また、記事後半では最新の研究知見も交えつつ、どのように血液検査が治療計画や術後経過観察に結びつくかを説明いたします。
専門家への相談
本記事では、血液検査とがんに関する一般的な知識を幅広く取り上げておりますが、実際には疾患の種類や患者さんの体質によって必要な検査や診断プロセスは異なります。国内外の医療機関や研究機関によって出されているガイドラインや推奨事項、たとえば厚生労働省がん検診ガイドラインや各学会の指針など、専門家による検証を経た情報を適切に参照することが大切です。また、記事中に引用している海外の医療機関や研究論文も、信頼性の高い査読プロセスを経ています。
日本国内で受診できる検査や治療法は施設ごとに異なる場合があり、学会や自治体の健康診断制度も年々アップデートされることがあります。したがって、疑わしい症状があったり、検査結果が気になる場合は必ず専門医の診察を受けてください。なお、本記事は医療上の判断や治療の最終決定を下すためのものではありません。必ず医師や専門医療スタッフにご相談ください。
血液検査でがんが発見できるのか?
血液検査が果たす役割
血液検査は、貧血や感染症の有無などを調べる基本的な目的だけでなく、がんの早期発見や病態評価にも活用されています。特に、がんの種類や進行度合いによっては、血液中に特有の物質(腫瘍マーカーや異常タンパク質など)が増加する場合があります。これらの情報を総合することで、疑わしい場合には画像検査(CT、MRI、PETなど)や病理検査(生検)の精査につなげることが可能です。ただし、血液検査単独でがんの確定診断を行うことは難しく、他の検査との組み合わせが必須です。
代表的な血液検査でわかること
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一般的な血液検査(CBC:Complete Blood Count / 全血球計算)
ヘモグロビン値、赤血球数、白血球数、血小板数などを測定します。異常値が見られるときには、感染症や貧血だけでなく、血液がん(白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫など)の可能性も考慮されます。 -
腫瘍マーカー(Tumor Markers)
がん細胞や特定の疾患で上昇しやすいタンパク質や酵素類を測定する検査です。例として、AFP(肝細胞がんなど)、CEA(消化器系がんや肺がんなど)、PSA(前立腺がん)、CA125(卵巣がん)などが挙げられます。しかしながら、腫瘍マーカーはがん以外の良性疾患でも上昇する場合があり、検査結果のみでがんを断定するわけではありません。 -
血清タンパク分画(Protein Electrophoresis / 電気泳動法)
特定の免疫グロブリン(たとえば多発性骨髄腫で上昇しやすいタンパク質)などを評価します。血液腫瘍やその他疾患の状態把握に使われます。 -
循環腫瘍細胞・循環腫瘍DNA(ctDNA)
がん細胞が血中へ流れ出しているかどうかを調べる検査です。主要ながん組織から離脱した細胞や遺伝子変異断片(DNA)が血液中に検出される場合、がんの進行や転移リスクをより詳細に評価できる可能性があります。とくに近年の研究では、乳がんや大腸がん、前立腺がんなどの診断や治療効果の判定にctDNA検査が役立つ可能性が示唆されています。
血液検査で発見されやすいがんの種類
血液検査だけで「確定診断」できるがんは限られていますが、特に血液がん(白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫など)は、血球数や免疫グロブリン濃度の変化が顕著に出るため、初期スクリーニングとしてCBCや血清タンパク分画が大きな手がかりとなります。
また、腫瘍マーカーを用いることで、以下のようながんの疑いを高めることができます。
- 肝臓がん(AFP)
- 卵巣がん(CA125 ほか)
- 乳がん(CA15-3、CA27-29)
- 前立腺がん(PSA)
- 大腸がん・肺がん(CEAなど)
- 甲状腺がん(カルシトニンなど)
- 膵がん(CA19-9などの補助指標となる場合あり)
- 精巣がん(HCGなど)
これらのマーカーはあくまで補助的な位置づけですが、組み合わせによっては有用な情報を得られます。ただし、たとえばAFPが高値だからといって必ずしも肝臓がんとは限らず、肝硬変や慢性肝炎などでも上昇する可能性がある点を踏まえる必要があります。また、健康診断などで腫瘍マーカーに異常が見られた場合は、医師と相談して追加の画像検査や生検を検討することが推奨されます。
血液検査だけでは不十分な場合の追加検査
画像検査の組み合わせ
- X線撮影やCTスキャン
胸部や腹部領域で腫瘍や転移病変の有無を確認するために用いられます。 - MRI
主に軟部組織の観察に優れるため、脳腫瘍や肝腫瘍、脊椎への転移などの有無を詳しく調べます。 - PET-CT
がん細胞がブドウ糖を多く取り込む特性を利用し、体内の腫瘍分布や活動性を把握できます。
生検(バイオプシー)
- 針生検(Core biopsy、FNAなど)
組織あるいは細胞を直接採取し、病理医が顕微鏡でがん細胞の存在を確定します。 - 内視鏡検査
胃や大腸、気管支など、粘膜組織にアプローチして直接検体を採取します。
その他
- 尿検査
尿中に排出されるタンパクや血液、がん細胞由来の物質があるかどうかを確かめることがあります。 - 便潜血検査
大腸がんのスクリーニングとして広く行われています。 - 細胞診(子宮頸部など)
パップテスト(子宮頸部細胞診)や喀痰細胞診など、特定部位の細胞形態を見る検査があります。
血液検査による異常結果が得られた場合、画像検査や生検・内視鏡検査などを組み合わせることで、がんの有無・種類・進行度を総合的に判断します。
血液検査の具体的な手順と留意点
検査前の準備
検査内容によっては、数時間から半日程度の絶食が求められる場合があります。また、一部の薬剤が結果に影響を与える可能性があるため、処方薬やサプリメントの服用状況を事前に医師へ相談しておきましょう。
採血の流れ
- 腕の上部に止血帯を巻き、血管を浮き出させる。
- アルコール綿などで皮膚を消毒する。
- 採血用の針を血管へ刺入し、真空管またはシリンジで所定量の血液を採取する。
- 針を抜いた後、ガーゼでしばらく圧迫し止血を行う。
- 必要に応じて絆創膏を貼付して終了。
この手順はわずか数分で終わることが多く、侵襲性が低いのが特徴です。採血後の腫れや内出血は通常軽度で収まりますが、気になる場合は医療スタッフに相談してください。また、一時的にめまいや貧血感を生じる方もいるため、採血後は少し休憩をとると安心です。
検査結果と注意点
血液検査の結果が出るまでの所要時間は検査内容によって異なり、数時間から数日、長い場合は1週間程度かかることもあります。結果の解釈は専門知識を要するため、数値に異常があるからといってすぐにがんと決まるわけではありません。必ず医師や臨床検査技師の説明を受け、必要があれば追加検査を受けることが重要です。
最新の研究動向と臨床応用
近年、血液中の微量な分子情報を解析する「リキッドバイオプシー」と呼ばれるアプローチが注目されています。がん細胞から放出されるDNA断片(cfDNAまたはctDNA)やエクソソームなどを検出・解析することで、従来の腫瘍マーカー検査よりも高感度かつ包括的にがんの存在やタイプ、遺伝子変異を把握しようとする技術です。
リキッドバイオプシーの可能性
- 早期発見
症状が出にくい早期段階でも血液中に変化が表れる可能性があり、画期的なスクリーニング技術として期待されています。 - 治療効果のモニタリング
化学療法や放射線療法などの治療によって血中のがん関連分子量がどの程度減少するかを追跡することで、治療方針をより早期に調整しやすくなります。 - 再発リスクの予測
手術や治療後にctDNAが再び増加してくる場合、再発の可能性を示唆できる可能性があります。
最近の研究事例(日本国内でも応用可能な範囲)
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Liuら (2021, Annals of Oncology, doi:10.1016/j.annonc.2021.09.015)
乳がんや大腸がんなど、複数種のがんを対象として、メチル化パターンを解析するマルチキャンサー早期検出法の有用性が報告されています。日本国内の症例でも同様の有用性を示唆する初期データが得られており、今後さらに大規模臨床研究が進む見込みです。 -
Okamuraら (2021, The Lancet Oncology, 22(2):153–154, doi:10.1016/S1470-2045(20)30791-9)
血中のcfDNAを用いた複数のがん検出手法のレビュー論文で、リキッドバイオプシーによるスクリーニングが将来的にがん検診の一部として導入される可能性があると指摘しています。まだ保険適用が限られている検査もありますが、国内でも試験的に導入されつつあります。
これらの技術は、まだ研究段階または臨床応用の一部にとどまるものが多いですが、近い将来、血液検査一つで複数のがんをスクリーニングできる時代が到来するかもしれないと期待が高まっています。
血液検査結果をめぐる誤解と注意点
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数値の異常=がん確定ではない
血液検査結果で腫瘍マーカーが高値であっても、炎症や良性疾患、生活習慣の影響などさまざまな要因が考えられます。追加検査をせずに自己判断するのは危険です。 -
スクリーニングとしては有用だが“確定診断”にはさらなる検査が必要
血液検査で異常所見が出た場合、画像検査や生検、内視鏡などより精度の高い検査が必須です。これらのステップを経てはじめて診断が確定します。 -
定期検査が大切
がんは症状がはっきり出にくいものも多いため、特にリスク要因(家族歴、喫煙、飲酒など)がある方や、一定の年齢以上の方は、定期的に血液検査や画像検査を受けることで早期発見を目指すことが推奨されます。 -
研究中の手法(リキッドバイオプシーなど)は汎用化までに時間がかかる
最新技術は魅力的ですが、保険適用や大規模臨床試験が進むまで確立には時間を要します。現時点では、標準的な血液検査や画像検査、病理検査の組み合わせが重要となります。
がん検査における推奨事項(参考まで)
以下は一般的ながん検診や血液検査に関する推奨事項をまとめたものです。いずれもあくまで目安であり、個人のリスクや基礎疾患などにより異なります。必ず医師や専門家の指示を仰いでください。
- 定期健康診断
一般的には年1回程度の血液検査が行われることが多く、異常値が見られた場合に追加精査を行います。 - 腫瘍マーカー測定
遺伝的要因や家族歴、過去の疾患歴がある方は、定期的に腫瘍マーカーを測定し、経過を追う場合があります。 - 画像検査や内視鏡検査の併用
大腸内視鏡や胃カメラ、マンモグラフィなど年齢や性別に合わせて推奨される検査を適宜行うと安心です。 - 生活習慣の見直し
喫煙や過度の飲酒、偏った食事などはがんのリスクを高める要因となる可能性があるため、改善を検討します。
まとめと提言
血液検査は、がんの早期発見や経過観察における重要なツールの一つです。特に血液腫瘍や一部の固形がんでは、腫瘍マーカーや血球数の異常が比較的早期に検出されることがあります。さらに近年ではリキッドバイオプシーをはじめとした技術革新が進み、血液検査による多種多様ながんの検出や治療効果モニタリングが期待されています。ただし、血液検査のみでがんの確定診断を行うことは難しく、画像検査や生検などの追加検査と組み合わせることで最終的な診断に至ります。検査結果に不安がある場合や異常値が見られた場合は、専門の医療機関へ早めに相談し、適切な診断・治療を受けることが大切です。
加えて、生活習慣の改善や定期的な健診受診は、がんだけでなく多くの生活習慣病の早期発見・予防にもつながります。一度の検査結果に一喜一憂するのではなく、長いスパンで健康状態を把握し続ける習慣を身につけることが、将来的な健康リスクの低減につながるでしょう。
参考文献
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アクセス日: 2022年11月3日 - Can Blood Work Detect Cancer?
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アクセス日: 2022年11月3日 - Tumor Marker Tests
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アクセス日: 2022年11月3日 - Liu MC, Oxnard GR, Klein EA, et al. (2021). Sensitive and specific multi-cancer detection and localization using methylation signatures in cell-free DNA. Annals of Oncology, 32(11), 1361–1370.
doi: 10.1016/j.annonc.2021.09.015 - Okamura R, Kato S, Lee S, et al. (2021). Cell-free DNA analysis for early detection of cancer. The Lancet Oncology, 22(2), 153–154.
doi: 10.1016/S1470-2045(20)30791-9
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