血糖値が高い人へ | 健康を守る食事術
糖尿病

血糖値が高い人へ | 健康を守る食事術

はじめに

高血糖に悩む方々にとって、日々の食事選びは非常に重要な課題です。普段何気なく摂取している食べ物が、実は血糖値の安定や糖尿病などの慢性疾患の予防・管理に大きく影響する可能性があります。特に、高血糖状態が長く続くと、将来的に合併症が起こるリスクが高まることが指摘されており、毎日の食事を見直すことは欠かせません。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

食事療法を正しく行うことで、血糖値の安定や健康状態の改善・維持が期待できます。具体的には、炭水化物の種類・量、タンパク質や脂質のバランス、ビタミンやミネラルの摂取方法などを総合的に考える必要があります。たとえば、精白された炭水化物を全粒穀物に変える、良質な脂肪源を適量取り入れるなどの工夫を行うと、血糖コントロールがよりスムーズになる可能性があります。

本記事では、効率的な食事療法を行う上での基本的なメカニズムや、具体的な食品選びのポイント、さらに健康を長く維持するための実践的なアドバイスを、できる限り詳しく解説します。初めて食事管理に挑戦する方、既に糖尿病で治療中の方、あるいはより専門的な知識を求める方にとっても参考になる内容を目指しました。この記事を通して、日常生活に無理なく取り入れられる食事改善のヒントを見つけていただければ幸いです。

専門家への相談

本記事の内容は、糖尿病や血糖管理に関する国内外の専門家・医療機関の情報をもとに整理しています。たとえば、Diabetes UKMayo Clinicは国際的に評価の高い医療団体であり、糖尿病管理における研究成果や臨床データを継続的に更新しています。これらの組織が提供する指針や研究結果を参考に、本記事の内容を再検証しながらまとめていますので、日常生活に活用する上で信頼性は高いと考えられます。さらに記事末尾には参考文献を掲載してありますので、より詳細な情報を必要とする方や、各研究の根拠を直接確認したい方はそちらを参照してみてください。

ただし、本記事で紹介する情報はあくまでも一般的なガイドラインや医学的知見に基づく「参考資料」の位置付けです。実際の診断や治療方針は人それぞれの病態によって異なるため、かならず医師や管理栄養士などの医療専門家に相談しながら食事療法を進めることをおすすめします。

人体が食物から血糖を生成する仕組み

高血糖対策のために特定の食品を選ぶ前に、まずは体内で血糖値がどのように変化し、調整されているのか理解しておくことが大切です。

  • グルコース(ブドウ糖)の生成と吸収
    炭水化物を含む食品(穀類、芋類、果物、糖分を含む加工食品など)を摂取すると、消化器系がこれらを分解し、グルコースを生み出します。グルコースは小腸から血液中へ吸収され、これによって血糖値が上昇します。通常は膵臓から分泌されるインスリンが、この血液中のグルコースを細胞に取り込む指令を出すため、余剰分は肝臓や筋肉などに蓄えられ、血糖値は自然に下がっていきます。
  • インスリンとグルカゴンのバランス
    血糖値が下がり過ぎると、今度は膵臓がグルカゴンというホルモンを分泌し、肝臓に蓄えられたグリコーゲンを分解して血中に放出するよう促します。インスリンとグルカゴンが相互に働き合うことで、血糖値は一定範囲内に保たれるのです。
  • 糖尿病やインスリン抵抗性の問題
    糖尿病患者や高血糖状態が続く方の場合、インスリンの分泌量が不足していたり、インスリンに対する感受性(インスリン抵抗性)が低下していたりするため、食後に血糖値が長時間高止まりしてしまうことがあります。したがって、食事内容を適切にコントロールして血糖値の急上昇を避けることが、合併症リスクを下げるうえでも非常に重要です。

こうした生理学的背景を把握しておくことで、なぜ特定の食品が血糖値の管理に役立つのか、あるいは逆に悪影響を及ぼすのかがより理解しやすくなります。

高血糖の人にとって効果的な食品は?

高血糖を改善または管理したい場合、食後の血糖値が急激に上昇しにくい食品、すなわちGI値(グリセミック・インデックス)が低めのものを選ぶことが非常に効果的です。GI値が55未満の食品は、血糖値を緩やかに上げる傾向があるとされ、2型糖尿病の改善や体重管理にも役立つと報告されています。ここでは日常生活で取り入れやすい、代表的な食品群を紹介します。

果物・野菜

果物や野菜は、食物繊維、ビタミン、ミネラルが豊富で、カロリーが比較的低いことが特徴です。特に、野菜(キュウリ、キャベツ、ブロッコリーなど)は食物繊維が多く、血糖値の急上昇を抑えやすい上に、調理のバリエーションも多岐にわたります。また、果物(ストロベリー、プラム、モモ、スイカ、デーツなど)も、摂取量を適切に調整すればビタミンや抗酸化成分を効率的に取り入れられます。食後のデザートや間食としてうまく活用すれば、甘味を楽しみながら血糖値コントロールに取り組めるでしょう。

全粒穀物

玄米、オートミール、そばなどの全粒穀物は、白米や小麦粉など精白された穀物と比べると、食物繊維やビタミン・ミネラルが多く含まれています。そのため、消化吸収が緩やかで、血糖値の急激な上昇を抑制しやすくなります。実際に白米から玄米に切り替えるだけでも、食後の血糖値変動が穏やかになると感じる方が多いです。朝食にオートミールを使う、昼食の麺類をそばに変えるなどの小さな工夫が、長期的な血糖管理だけでなく、体重コントロールにも寄与します。

良質な脂肪源

アボカド、ナッツ類、サーモンなどには、良質な脂肪やオメガ-3脂肪酸、ビタミンEといった代謝をサポートする栄養素が豊富です。とりわけサーモンに多く含まれるオメガ-3脂肪酸は血管の健康を支える可能性があるため、生活習慣病のリスク軽減にもつながると考えられています。おやつとしてナッツを適量取り入れる、サラダにアボカドを加える、夕食にサーモンの塩焼きをメインにするなど、さまざまな場面で摂取しやすいのも利点です。

低脂肪または無糖の乳製品

ヨーグルトや低脂肪牛乳などは、カルシウム、タンパク質、ビタミンB群を手軽に補給できる食品です。骨や筋肉の維持だけでなく、腸内環境を整える点でも期待できます。たとえば、朝食や間食に低脂肪ヨーグルトを取り入れることで、満足感を得つつ余分なカロリー摂取を抑えられる場合もあります。

タンパク質食品

赤身の肉、鶏肉、魚、卵、大豆製品などは、筋肉や組織の修復・維持に必要なタンパク質を豊富に含んでいます。これらの食品は糖質が比較的低いため、血糖値を急上昇させにくい傾向があります。赤身肉をシチューに使う、鶏肉を蒸して余分な脂を落とす、豆腐を煮物に加える、卵を使った出汁巻き卵を作るなど、多彩な調理法を活用してタンパク質を取り入れると、飽きることなく継続しやすいでしょう。

糖尿病患者のためのアドバイス

糖尿病管理に詳しい栄養士の多くは、食事療法を成功させるために次のポイントが特に重要だと指摘しています。

  • 炭水化物量の計算
    1食あたりの炭水化物を12〜15グラムに抑えると、血糖値がコントロールしやすくなるといわれています。実際に炭水化物量を明確に意識することで、食後の急激な血糖値上昇を防ぎやすくなるのが利点です。たとえば、ご飯の量をやや少なめにし、その分野菜やタンパク質を多く摂取することで総エネルギー量も調整しやすくなります。
  • 多様な食材の組み合わせ
    血糖値への影響は、単に「どの食品を食べたか」だけで決まるわけではなく、食事全体の構成が大きく左右します。たとえば、炭水化物源(ご飯やパン)に加えて、食物繊維が多い野菜、良質な脂肪を含む食品(アボカドやオリーブオイルなど)、適切な量のタンパク質を組み合わせることによって、血糖値の変動をより緩やかにし、腹持ちの良さも改善できます。
  • 計画的な食事プラン
    食事記録をつける、食品の栄養表示を確認する、医師や管理栄養士に相談するなど、計画的に取り組むことが大切です。自身の食事傾向や血糖値の変動を客観的に把握できるため、より精度の高い食事療法が実践できます。記録をもとに「次はどう工夫しようか」と振り返りを重ねることで、無理なく持続可能な食生活を確立しやすくなります。

なお、2021年にLancet Diabetes & Endocrinology誌に報告されたJohansson JUらの研究(doi:10.1016/S2213-8587(21)00274-9)によれば、糖尿病や高血糖の管理には生活習慣全体の改善が重要であり、特に早期段階からバランスの良い食事と運動を併用することで、2型糖尿病の進行リスクを低減できる可能性が示唆されています。こうした新しい研究は欧米を中心としたデータですが、食の多様化が進む日本でも十分参考にできる内容といえるでしょう。

高血糖の人が避けるべき食品

血糖値を安定させるためには、避けるべき食品を把握しておくことも非常に大切です。以下に挙げるのは、特に注意が必要とされる代表的な例です。

  • 加工食品(ソーセージ、ベーコン、スナック類など)
    加工食品には塩分や飽和脂肪酸が多く含まれていることが多く、血管や代謝に悪影響を及ぼす可能性があります。また、加工肉やスナック菓子にはしばしば糖質も多く含まれるため、血糖値コントロールを困難にする要因となり得ます。
  • 高脂肪の牛乳
    脂肪分が高い乳製品を過剰に摂取すると、カロリーオーバーになりやすく、インスリン抵抗性の悪化につながる恐れがあります。牛乳を選ぶ際には、低脂肪あるいは無脂肪タイプを意識すると良いでしょう。
  • ココナッツオイルやパーム油
    これらは飽和脂肪酸が多いため、摂りすぎると心血管リスクが高まる可能性があります。日常的に使う油は、できるだけオリーブオイルやキャノーラ油のような不飽和脂肪酸が多い種類に切り替えることが推奨されます。
  • 動物由来の高脂肪食品(バター、牛肉の脂身、卵の黄身、皮や内臓肉など)
    飽和脂肪酸が多いこれらの食品を過度に摂取すると、脂質異常症や血糖コントロールの悪化につながるリスクがあります。脂身を取り除く、赤身部分を選ぶ、摂取回数を減らすなど、日常のちょっとした配慮が重要です。

糖尿病患者の健康的な食事のポイント

血糖値を管理し、合併症リスクを抑えるためには、以下の点を考慮したバランスの良い食生活が求められます。

  • 塩分摂取量の抑制
    1日あたり小さじ1杯(約6g)を目安に塩分を控えると、高血圧や心血管疾患の予防に役立ちます。塩味が物足りないときは、薬味やハーブ、出汁を活用して味に変化をつけると、満足感を得ながら塩分を減らせます。
  • 砂糖の使用制限
    砂糖は血糖値を急激に上げる代表的な物質なので、できるだけ控えるのが基本です。低カロリー甘味料を使ったり、果物の自然な甘みを活かしたりして、無理なく甘味を楽しむ工夫をすると続けやすくなります。
  • アルコール摂取の制限
    アルコールは血糖コントロールを乱しやすく、肝臓への負担も大きいため、飲む場合は最低限の量にとどめる、あるいは完全に控えることも検討すべきです。特に空腹時や血糖値が大きく変動している時の飲酒は避ける必要があります。
  • 食品表示の確認
    「糖尿病患者向け」などと表示された食品であっても、実際の栄養成分表示を丁寧にチェックしましょう。カロリー、炭水化物量、脂質量などが自分の食事プランと合致しているかどうか、ラベルを読む習慣をつけるだけでも摂取量管理がしやすくなります。
  • ビタミン・ミネラルの補給
    野菜や果物には、多種多様なビタミンやミネラルが含まれており、代謝の促進や免疫機能の維持に役立ちます。特定の種類に偏らず、さまざまな食材を少しずつ取り入れることで、栄養バランスに優れた食生活を実現できます。
  • 適度な運動の実践
    食事療法と同時に、ウォーキングや軽い筋力トレーニング、ヨガなどの適度な運動を継続すると、インスリン感受性の向上やエネルギー消費の増加が期待できます。血糖値のコントロールもしやすくなるため、できる範囲で毎日少しずつでも運動を取り入れると良いでしょう。

なお、2023年にDiabetes Careに発表されたAmerican Diabetes Association(ADA)の基準(doi:10.2337/dc23-S002)では、血糖管理には食事・運動・薬物療法が相互に補完し合うアプローチが最も効果的と示されています。特に日本では食文化や運動習慣が欧米と異なる面が多いため、個々人のライフスタイルに合わせた調整が不可欠です。

長期的な視点での食事療法

糖尿病や高血糖の管理は、短期的な取り組みよりも「長期にわたる継続」が成果を生みます。最初は血糖値が十分にコントロールできないこともあるかもしれませんが、定期的に食事内容を見直しながら徐々に改善していくことで、身体は徐々に安定した状態を保ちやすくなります。

  • 小さな成功体験の積み重ね
    「白米を玄米に変えてみたら食後の血糖値が少し安定した」「甘いおやつを控えたら体重が減ってきた」など、小さな変化に気づくことがモチベーションの向上につながります。
  • 個人差を理解する
    血糖値のコントロールには、遺伝的要因や年齢、体格、合併症の有無など多くの要素が影響します。同じ糖尿病患者でも、効果的な食事パターンが人によって異なるのは当然のことです。だからこそ、医療専門家と相談しながら個々の状況に合わせたプランを立てる必要があります。
  • 目標値の設定
    血糖値の目標を明確にし、それに向けて段階的に取り組むことが大切です。一般的には、HbA1c(過去1〜2か月程度の血糖コントロールの指標)が6.5%未満、あるいは7.0%前後など、医師から示される目標を参考に日々の食事を調整していくことが推奨されます。

日本における食文化と糖尿病対策

日本は米を主食とする国であり、味噌や醤油を使った塩分の高い調味など、独特の食文化があります。一方で、ここ数十年の間に洋食化や外食産業の発展による高脂質・高糖質メニューの普及などが進み、糖尿病やメタボリックシンドロームの患者数は増加傾向にあります。そこで重要なのは、伝統的な和食の良さも再評価しつつ、現代の食習慣に合わせた柔軟なアレンジを取り入れることです。

  • 味噌汁や煮物の活用
    野菜や大豆製品を多く使った味噌汁や煮物は、食物繊維やたんぱく質を効率的に摂取できます。ただし、味噌や醤油による塩分過多には注意が必要です。
  • 発酵食品の摂取
    納豆や漬物、ヨーグルトなどは、腸内環境を整える働きが期待される発酵食品の代表例です。過剰な塩分を含む漬物は注意が必要ですが、適度な量であれば食卓に取り入れると栄養面・嗜好面のバリエーションが広がります。
  • 外食やコンビニ食との上手な付き合い方
    忙しい現代では、どうしても外食やコンビニ弁当に頼る場面が出てきます。その際は、できるだけ野菜が多いメニューを選ぶ、ソースやドレッシングを別添えにして調整する、ご飯の量を少なめにするなどの工夫で血糖値の急上昇を抑えられます。

現在行われている研究の動向

近年、糖尿病や高血糖に対する食事療法の研究はますます活発になっています。国内外の大学や研究機関が、食物繊維やプロバイオティクス、ビタミンDなどが血糖コントロールに及ぼす影響についてのランダム化比較試験を進めています。

  • 食物繊維強化食品の活用
    たとえば、2020年以降、各国で行われている研究では、食物繊維を強化したパンやパスタなどを日常的に取り入れることで、食後血糖値やインスリン抵抗性が改善する傾向が見られると報告されています。特に高繊維の食品は満腹感の持続にも役立つことが多く、過食防止にも貢献し得ると期待されています。
  • ビタミンDと糖尿病の関連
    2021年以降、世界的に注目されているのが、ビタミンDがインスリン感受性や血糖コントロールに及ぼす影響です。ただし、まだ研究段階であり、集団ベースでの有効性についてはさらなるデータが必要とされています。

よくある質問(Q&A)

  • Q1:果物には糖分が多いイメージがありますが、本当に食べても大丈夫ですか?
    A1:果物には果糖やブドウ糖が含まれますが、同時にビタミンや食物繊維、抗酸化物質なども豊富です。適量(たとえば1日1〜2回の小ぶりなサイズ)であれば、血糖値への影響も緩やかになり、むしろ健康管理に役立つ可能性があります。
  • Q2:低カロリー甘味料は安全でしょうか?
    A2:低カロリー甘味料自体は安全性が確認されている種類も多いですが、摂取量に注意することが望まれます。また、甘味料の使用によってかえって過食してしまうケースもあるため、食全体のバランスを考慮することが大切です。
  • Q3:運動が苦手です。どの程度の運動量でも効果がありますか?
    A3:激しい運動が難しい場合は、短いウォーキングやストレッチから始めるだけでも血糖値コントロールに良い影響があるとされています。大事なのは継続することで、週に何回か20〜30分程度の軽度〜中等度運動を行うだけでも改善効果が期待できます。

まとめ

本記事では、高血糖や糖尿病における食事療法の重要性と、その実践方法について幅広く解説してきました。炭水化物の種類や量、脂質やタンパク質の質、ビタミン・ミネラルのバランスを意識し、さらに適度な運動を組み合わせることで、血糖値の安定と全身の健康管理がより実現しやすくなります。日本では食文化の多様化が進む一方、和食特有の良さも十分に生かしながら、長期的かつ継続的な視点での食事療法が重要です。

最後に、ここで提供している情報はあくまでも「参考資料」であり、具体的な治療方針や食事指導は医師や管理栄養士などの専門家と相談のうえで決定していただく必要があります。しかし、日常生活の中で少しずつ改善を積み重ねることで、血糖コントロールの質が向上し、合併症リスクの軽減や生活の質向上につながる大きな一歩を踏み出すことができます。ぜひ自分に合った食事スタイルを見つけ、継続的な健康づくりに取り組んでみてください。

重要な注意事項
本記事は健康情報の提供を目的とした参考資料であり、医療的アドバイスや診断、治療行為を提供するものではありません。実際の治療が必要な方、または特定の疾患を抱えている方は、必ず医師や管理栄養士などの医療専門家に相談し、個別の指導を受けてください。本記事の情報のみを根拠に自己判断で治療を行うことは避けましょう。

参考文献

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