術後の傷跡を最小限に。医師・管理栄養士が科学的根拠に基づき解説する「瘢痕予防」食事術
皮膚科疾患

術後の傷跡を最小限に。医師・管理栄養士が科学的根拠に基づき解説する「瘢痕予防」食事術

手術を受ける多くの人が抱く共通の懸念、それは「傷跡が残ること」です。最先端の医療技術をもってしても、切開を伴う手術において傷跡を完全にゼロにすることは困難です。しかし、その傷跡が目立たない美しいものになるか、あるいは肥厚性瘢痕やケロイドといった問題のある状態になるかは、術後のケアに大きく左右されます。術後のケアには、シリコーンテープによる保護や圧迫療法など様々なアプローチが存在しますが1、本稿では、患者自身が主体的に取り組める最も根源的な要素、すなわち「栄養」に焦点を当てます。栄養は、魔法の治療薬ではありません。しかし、手術という大きな侵襲(ストレス)を受けた身体が、自らの治癒能力を最大限に発揮するための「土台」を築く上で、不可欠な役割を担います。適切な栄養摂取は、身体の内部から創傷治癒プロセスを力強く後押しし、最終的な傷跡の質を向上させる可能性を秘めています。本記事は、PubMedなどに収載される最新の国際的な学術論文23、米国国立衛生研究所(NIH)などの公的機関の見解4、そして厚生労働省5、日本創傷治癒学会、日本形成外科学会6、日本褥瘡学会といった日本の公的機関や主要医学会が示す科学的根拠とガイドライン7を網羅的に分析し、再構成したものです。単なる情報の羅列ではなく、なぜその栄養素が必要なのかという科学的メカニズムから、日々の食事で何をどう食べるべきかという具体的な実践プランまで、一気通貫で解説します。本稿の構成は以下の通りです。まず第1章で、傷跡ができる基本的なメカニズムを理解します。次に第2章では、創傷治癒を促進する個々の栄養素の役割を科学的根拠と共に徹底的に掘り下げ、第3章では傷跡を悪化させる隠れたリスク「糖化」について解説します。そして第4章で、それらの知識を実生活に落とし込むための具体的な食事プランを提示し、第5章でよくある疑問に専門的見地から回答します。最後に、本稿が依拠した専門家の知見と参考文献を明示し、情報の透明性と信頼性を担保します。この情報が、手術後の回復期を過ごす方々にとって、確かな道標となることを目指します。

この記事の科学的根拠

この記事は、最新の科学的知見と国内外の診療ガイドラインに基づき作成されています。特に、創傷治癒と栄養管理の分野における日本の第一人者である、京都大学医学部附属病院の和田啓子先生(日本褥瘡学会理事89)、淑徳大学の飯坂真司先生(創傷疫学10)、京都大学の佐藤健司先生(コラーゲン科学1112)らの研究成果や、所属学会が示す指針を参考に、専門的なコンセンサスを反映しています。これにより、読者が信頼できる、質の高い情報を提供することを目指しています。ただし、本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療相談に代わるものではありません。具体的な治療や食事療法については、必ず主治医や管理栄養士にご相談ください。

  • 日本形成外科学会: この記事における肥厚性瘢痕やケロイド、一般的な創傷ケアに関する記述は、同学会の公開情報に基づいています16
  • 日本皮膚科学会: 肥厚性瘢痕とケロイドの発生要因や定義に関する解説は、同学会のQ&A情報を参照しています1314
  • 日本褥瘡学会: 術後創傷の栄養管理の基本原則(エネルギー、タンパク質の優先度など)は、同学会の褥瘡管理ガイドラインの考え方を応用しています7
  • 国際的な学術論文 (O’Cleirigh, C., et al., JPRAS Open, 2024): ビタミンやミネラル、アミノ酸などの各栄養素が創傷治癒に与える影響に関する詳細な科学的根拠は、主にこの包括的なレビュー論文に基づいています2

要点まとめ

  • 創傷治癒には「炎症期」「増殖期」「成熟期」の3段階があり、最終的な傷跡は成熟期のコラーゲン代謝バランスで決まる。
  • 術後の回復には、まず十分な「エネルギー」と「タンパク質」の摂取が全ての土台となる。
  • コラーゲン合成には「ビタミンC」と「亜鉛」が必須。ビタミンA、鉄、銅なども治癒プロセスを多角的に支える。
  • 高血糖による「糖化(AGEsの生成)」はコラーゲンの質を劣化させ、炎症を慢性化させるため、傷跡を悪化させる大きなリスクとなる。砂糖や精製炭水化物は厳格に避けるべきである。
  • サプリメントの自己判断での摂取は危険な場合もある(特にビタミンE)。栄養管理の基本は食事であり、必要に応じて医師や管理栄養士に相談することが重要である。

第1章:なぜ傷跡はできるのか?創傷治癒と瘢痕形成のメカニズム

効果的な栄養サポートを実践するためには、まず身体がどのようにして傷を治すのか、その基本的なプロセスを理解することが不可欠です。この章では、正常な創傷治癒の過程と、それが逸脱することで生じる肥厚性瘢痕やケロイドといった問題のある傷跡について、そのメカニズムを解説します。

1.1 創傷治癒の3つのフェーズ

皮膚に傷ができると、身体は精巧なプログラムに従って修復作業を開始します。東京理科大学の研究で示されているように、このプロセスは、大きく分けて3つの連続した、しかし部分的に重なり合うフェーズで進行します15

  • 炎症期 (Inflammatory Phase)
    手術直後から始まる最初の段階です。まず、血管が収縮し血小板が集まることで出血を止める「止血」が行われます。その後、血管が拡張し、白血球(特に好中球やマクロファージ)が創部に集まってきます。これらの免疫細胞は、壊死した組織や侵入した細菌を貪食・除去し、創部を清浄化する役割を担います。この時期には、発赤、腫脹、熱感、疼痛といった典型的な炎症反応が見られます。この炎症反応は治癒に必須のプロセスですが、過剰であったり遷延したりすると、後の瘢痕形成に悪影響を及ぼすことがあります。
  • 増殖期 (Proliferative Phase)
    炎症期に続いて、傷を埋めるための新しい組織が作られる段階です。このフェーズの主役は「線維芽細胞」と呼ばれる細胞で、コラーゲン線維を活発に産生し、創部を埋めるための土台(細胞外マトリックス)を構築します。同時に、新しい毛細血管が作られ(血管新生)、酸素や栄養素を創部に供給します。こうして形成される赤く柔らかい組織が「肉芽組織」です。また、創の表面では、皮膚の最も外側にある表皮細胞が遊走・増殖し、創面を覆っていきます(上皮化)。この増殖期が順調に進むかどうかが、治癒のスピードと質を大きく左右します。
  • 成熟期 (Maturation/Remodeling Phase)
    増殖期に作られた未熟な組織が、より強く成熟した組織へと再構築されていく最終段階です。このフェーズは数週間から始まり、時には1年以上にわたって続きます。増殖期に過剰に作られたコラーゲンは分解され、残ったコラーゲン線維はより規則正しく配列し直されることで、創部の張力強度が増していきます。肉芽組織にあった毛細血管は減少し、創部の赤みも徐々に薄れていきます。この成熟期におけるコラーゲンの代謝バランス(合成と分解のバランス)が、最終的な傷跡の見た目、すなわち柔らかく平坦で目立たない瘢痕になるか、硬く盛り上がった瘢痕になるかを決定づける最も重要な時期です。栄養状態は、この繊細なリモデリング過程に深く関与します。

1.2 正常な瘢痕と問題となる瘢痕

創傷治癒の結果として残るのが「瘢痕」ですが、すべての瘢痕が同じではありません。正常な治癒の帰結である「成熟瘢痕」と、治癒過程の異常によって生じる「肥厚性瘢痕」「ケロイド」には明確な違いがあります。

  • 肥厚性瘢痕 (Hypertrophic Scar)
    これは、創傷治癒の過程でコラーゲンが過剰に産生された結果、傷跡が赤く盛り上がった状態を指します。重要な特徴は、その盛り上がりが元の創の範囲を越えて広がることはない点です。日本皮膚科学会によると、肥厚性瘢痕が発生する最大の要因は、創周囲の皮膚にかかる物理的な「力(張力)」とされています13。関節部や胸部など、体の動きによって皮膚が常に引っ張られる部位にできやすいです。また、感染や異物反応による炎症の遷延も、コラーゲンの過剰産生を招き、リスク因子となります13
  • ケロイド (Keloid)
    ケロイドは、肥厚性瘢痕よりもさらに病的な状態であり、コラーゲンの産生がコントロールを失い、元の創の範囲を大きく越えて周囲の正常な皮膚にまで浸潤するように拡大していきます。その見た目がカニの足のように見えることから、日本語では「蟹足腫(かいそくしゅ)」とも呼ばれます14。ケロイドは、痛みや強いかゆみを伴うことが多く、自然に消退することは稀です。遺伝的素因(ケロイド体質)が関与していると考えられており、些細な傷(ニキビやピアス穴など)からでも発生することがあります。

肥厚性瘢痕とケロイドは、どちらも「コラーゲンの過剰産生と不適切なリモデリング」という共通の病態基盤を持ちます。これは、栄養戦略を考える上で極めて重要な示唆を与えます。つまり、術後の食事に求められるのは、単にコラーゲンの「材料」を供給することだけではありません。むしろ、治癒過程における「炎症を適切にコントロール」し、コラーゲンの「合成と分解のバランスを整え」、過剰な産生を抑制するような栄養的アプローチが、問題となる瘢痕の予防につながるのです。

第2章:創傷治癒を支える必須栄養素【徹底解説】

手術という大きな侵襲を受けた身体は、いわば「大規模な修復工事」に入った状態であり、その工事を遂行するために特定の栄養素の需要が劇的に増加します。この章では、創傷治癒という複雑なプロセスを支えるために、どの栄養素が、なぜ、どのように重要なのかを、最新の科学的知見に基づいて一つひとつ詳細に解説します。
栄養管理の考え方には、明確な優先順位が存在します。これは、慢性創傷である褥瘡(床ずれ)の管理ガイドラインにおいて特に強調されている点であり、術後創傷にも通じる重要な原則です。日本褥瘡学会などが示すその優先順位とは、(1)十分なエネルギー、(2)十分なタンパク質、(3)ビタミン・ミネラル、そして最後に(4)特定の機能性栄養素(アルギニンなど)の補給です716。この階層構造を理解することが、効果的な栄養戦略の鍵となります。土台がなければ、高機能な建材をいくら投入しても意味がないのと同じです。

2.1 エネルギーとタンパク質:回復の土台

エネルギー(カロリー)
創傷治癒は、細胞の増殖、タンパク質の合成、免疫機能の維持など、膨大なエネルギーを消費するプロセスです2。手術後は安静にしているからといって、必要なエネルギー量が減るわけではありません。むしろ、治癒のために基礎代謝が亢進するため、通常時よりも多くのエネルギーが必要となります。国際的な研究では、治癒期のエネルギー必要量は体重1kgあたり30~35 kcalが目安とされています2。日本の褥瘡管理ガイドラインでも同様の数値が推奨されており7、これは術後創傷にも適用できる考え方です17。エネルギーが不足すると、身体は筋肉を分解してエネルギー源として利用しようとするため、体力低下や免疫力低下を招き、治癒が遅れる原因となります。まずは、食事全体量を確保し、十分なエネルギーを摂取することが全ての基本です。
タンパク質
タンパク質は、エネルギーと並ぶ最も重要な栄養素であり、新しい皮膚、血管、筋肉を構築するための「主たる建築資材」です4。特に、創傷治癒の増殖期に大量に必要とされるコラーゲンは、タンパク質の一種です。また、細菌と戦う抗体や免疫細胞もタンパク質から作られるため、感染予防の観点からも極めて重要です18。研究によれば、タンパク質が不足すると、線維芽細胞の増殖やコラーゲン合成が著しく損なわれ、炎症期から増殖期への移行が遅延することが示されています2。術後のタンパク質必要量は、体重1kgあたり1.2~2.0gと、通常時(約0.8~1.0g/kg)の1.5倍から2倍以上にもなると考えられています19。十分なエネルギー摂取を前提とした上で、質の高いタンパク質を豊富に摂ることが、スムーズな治癒と良好な瘢痕形成の土台となります。

2.2 特別なアミノ酸:アルギニン、グルタミン、オルニチン

タンパク質を構成するアミノ酸の中には、創傷治癒において特に重要な役割を果たすものがいくつか知られています。

  • アルギニンとグルタミン
    アルギニンは、コラーゲン合成の材料となるプロリンの前駆体であると同時に、血管を拡張させて血流を改善する一酸化窒素(NO)の産生にも関わります2。血流の改善は、創部への酸素や栄養素の供給を促進します。また、免疫細胞であるT細胞の活性化にも寄与します2。グルタミンは、免疫細胞の主要なエネルギー源であり、感染リスクの低減や炎症反応の調節に関与することが報告されています2。いくつかの研究では、アルギニンやグルタミンを含む栄養補助食品が、術後合併症の減少や入院期間の短縮に寄与したことが示されていますが20、これらのアミノ酸の補充効果についてはまだ議論があり、前述の通り、まずは十分なエネルギーと総タンパク質量を確保した上での付加的な手段として考えるべきです16
  • オルニチン
    オルニチンは、アルギニンと同様に体内で重要な役割を果たすアミノ酸です。特に注目すべきは、腎不全などでタンパク質(窒素)負荷を制限する必要がある患者における有用性を示唆した日本の症例報告です21。この報告では、慢性腎不全で透析中の高齢男性が腹部手術後に重度の創部感染を起こし、治癒遅延が懸念されました。そこで、窒素負荷の少ないオルニチン含有食品を投与したところ、局所陰圧閉鎖療法(NPWT)との併用により、安全かつ早期の創傷治癒が達成されたとされています21。これは、特定の病態を持つ患者において、オルニチンが有用な選択肢となり得ることを示す貴重な国内の知見です。

2.3 コラーゲンペプチド:直接的なアプローチ?

コラーゲンそのものを摂取することが、体内のコラーゲン産生に直接的に寄与するのではないか、という考え方があります。食品として摂取されたコラーゲンは、消化管でアミノ酸や、2~3個のアミノ酸が結合したペプチドの形に分解されて吸収されます。近年の研究では、特に「プロリルヒドロキシプロリン(Pro-Hyp)」などの特定のジペプチドが血中に移行し、皮膚の線維芽細胞に直接働きかけてコラーゲンやヒアルロン酸の産生を促進する可能性が示されています12。この分野における日本の第一人者が、京都大学大学院農学研究科の佐藤健司教授です。佐藤教授の研究グループは、長年にわたり食品由来のコラーゲンペプチドの吸収・代謝・機能に関する研究をリードしており、経口摂取したコラーゲンペプチドが皮膚の損傷部位に到達し、創傷治癒を促進するメカニズムの解明に取り組んでいます1222。このアプローチは、必要な構成要素を直接的に標的部位へ届けるという点で非常に合理的であり、今後のさらなる研究が期待される分野です23

2.4 ビタミンC:コラーゲン合成の必須パートナー

ビタミンC(アスコルビン酸)は、創傷治癒における「必須の補酵素」です。線維芽細胞がコラーゲン線維を合成する際、アミノ酸を水酸化する酵素反応が不可欠ですが、ビタミンCはその酵素が働くために絶対に必要なパートナー(補因子)なのです2。ビタミンCが欠乏すると、正常なコラーゲンが作れなくなり、血管がもろくなる壊血病を発症することは古くから知られています。術後の身体では、コラーゲン合成が活発になるためビタミンCの需要が増大します。さらに、ビタミンCは強力な抗酸化作用を持ち、治癒過程で発生する活性酸素から細胞を保護する役割も担います3。豊富な食品には、ピーマン、ブロッコリー、キウイフルーツ、柑橘類などがあります4

2.5 ビタミンA:皮膚と免疫の守護神

ビタミンAは、皮膚や粘膜の健康を維持するために不可欠なビタミンです24。創傷治癒においては、表皮細胞の増殖や分化を促進し、創の上皮化をサポートします2。また、コラーゲンを産生する線維芽細胞の活性化にも関与します。さらに重要な役割として、炎症反応の調節機能が挙げられます。ビタミンAは、治癒の初期段階である炎症期において、免疫細胞(B細胞やT細胞)の機能を正常に保つために必要であり、不足すると感染リスクが高まります2。豊富な食品には、レバー、うなぎ、にんじん、かぼちゃ、ほうれん草などの緑黄色野菜があります4

2.6 亜鉛:細胞増殖のアクセル

亜鉛は、体内の多くの酵素の構成成分として、細胞の代謝に深く関わるミネラルです。創傷治癒においては、新しい細胞を次々と作り出す「細胞分裂」と、コラーゲンをはじめとする「タンパク質合成」に不可欠な役割を果たします3。つまり、肉芽組織の形成や上皮化といった増殖期のプロセスを加速させる「アクセル」のような存在です。亜鉛が欠乏すると、これらのプロセスが停滞し、創傷治癒が著しく遅延することが多くの研究で示されています25。特に日本では、褥瘡(床ずれ)患者の多くが亜鉛欠乏状態にあることが指摘されており26、その補充の重要性がガイドラインでも強調されています7。さらに、ケロイドの病態である「細胞の過剰増殖」を、亜鉛が抑制する可能性があるという興味深い研究報告もあり27、瘢痕形成のコントロールという観点からも注目されるミネラルです。豊富な食品には、牡蠣、牛肉(赤身)、レバー、豆類、ナッツ類があります4

2.7 鉄と銅:酸素運搬とコラーゲンの強化


鉄の最も重要な役割は、赤血球のヘモグロビンの構成成分として、全身に酸素を運搬することです19。創傷治癒はエネルギー多消費プロセスであり、そのためには大量の酸素が必要とされます。鉄が不足して貧血状態になると、創部への酸素供給が滞り、細胞のエネルギー産生やコラーゲン合成が阻害され、治癒が遅れる原因となります2。手術による出血で鉄が失われることも考慮し、十分な補給が重要です。

銅は、コラーゲン線維を強固にするために必須のミネラルです。コラーゲン線維は、作られた後に「架橋」という化学反応によって互いに結びつき、網目構造を形成することで強度を得ます。銅は、この架橋反応を触媒する酵素の活性中心として働きます28。銅が不足すると、作られたコラーゲンが脆弱になり、治癒した創の張力強度が低下する可能性があります。鉄はレバーや赤身肉、魚(カツオ、マグロ)、あさりなどに、銅はレバーや魚介類、ナッツ類に多く含まれます19

2.8 【注意】ビタミンEに関する最新の知見

ビタミンEは、強力な抗酸化作用を持つことで知られ、一般的には健康に良いイメージがあります。しかし、創傷治癒、特に瘢痕形成に関しては、その効果に注意が必要です。複数の研究をまとめた系統的レビューにおいて、ビタミンE(特にサプリメントによる高用量摂取や局所塗布)がコラーゲン合成を阻害し、最終的な傷跡の美容的な見た目をむしろ悪化させた可能性が報告されています2。このメカニズムは完全には解明されていませんが、ビタミンEが治癒に必要な炎症反応やコラーゲン代謝のプロセスに何らかの形で干渉する可能性が考えられます。現時点での科学的コンセンサスとしては、「創傷治癒を目的としたビタミンEの積極的な補充を推奨する十分な根拠はない」というものです2。したがって、術後の瘢痕予防を目的として、自己判断でビタミンEのサプリメントを摂取することは避けるべきです。アーモンドなどのナッツ類や植物油、アボカドといった食品から、通常の食事の範囲で摂取するに留めるのが賢明と言えます。

第3章:傷跡を悪化させる「糖化」のリスク

これまでの章では、創傷治癒を「助ける」栄養素について解説してきました。しかし、同様に重要なのは、治癒を「妨げる」要因を避けることです。その中でも、現代の食生活において特に注意すべきが「糖化」のリスクです。高血糖の状態が続くことで引き起こされるこの化学反応は、創傷治癒のプロセスを根底から覆し、質の悪い瘢痕を形成する大きな原因となり得ます。この章では、この「糖化」のメカニズムと、それがなぜ傷跡に悪影響を及ぼすのかを科学的に解説します。

3.1 「糖化」とは何か?

「糖化(Glycation)」とは、体内のタンパク質や脂質が、食事などから摂取した過剰な「糖」と結びつき、変性・劣化して「終末糖化産物(Advanced Glycation End-products、略してAGEs)」という悪玉物質を生成する反応のことです29。この反応は、体温下で誰の身体でも常に少しずつ起きているが、血糖値が高い状態が続くと爆発的に進行します。パンをトーストすると褐色に硬くなる「メイラード反応」が、体内で起きているとイメージすると分かりやすいでしょう。AGEsは一度生成されると分解されにくく、体内に蓄積していきます。そして、その蓄積した部位で様々な悪影響を及ぼすのです。特に、皮膚の主成分であるコラーゲンは、糖化の影響を非常に受けやすいタンパク質です。

3.2 AGEsが創傷治癒を妨げるメカニズム

AGEsが体内に蓄積すると、創傷治癒の各段階で多岐にわたる妨害作用を示します。そのメカニズムは、複数の研究によって明らかにされつつあります。

  • コラーゲンの質の低下とリモデリングの阻害
    糖化したコラーゲンは、本来のしなやかさを失い、硬くもろくなります。さらに、AGEsはコラーゲン線維間に異常な架橋(クロスリンク)を形成し、ガチガチに固めてしまいます30。治癒の最終段階である成熟期には、一度作られたコラーゲンが分解・再配列される「リモデリング」が不可欠ですが、糖化によって硬化したコラーゲンはこのプロセスに強い抵抗性を示します。その結果、コラーゲンの代謝回転が滞り、古く質の悪いコラーゲンが分解されずに蓄積し、整理されないままの不規則な瘢痕組織が形成されてしまいます。これは、肥厚性瘢痕やケロイドに見られるような、硬く盛り上がった傷跡の一因となります。研究では、高血糖状態が線維芽細胞によるコラーゲン産生を過剰に促進することも示されており3132、質の悪いコラーゲンが量的に増えるという二重の悪影響が懸念されます。
  • 慢性的な炎症の誘発
    AGEsは、それ自体が炎症を引き起こす物質として作用します。体内の免疫細胞(マクロファージなど)は、AGEsを異物と認識し、これに反応して炎症性サイトカインという物質を放出します33。糖尿病患者の創傷で治癒が遅れる一因として、AGEsの受容体(RAGE)を介した炎症反応の増強が関与していることが示唆されています34。創傷治癒の初期における炎症は必要不可欠な反応ですが、AGEsによってこの炎症がだらだらと慢性的に続くと、コラーゲンの過剰産生が刺激され続け、結果として肥厚性瘢痕のリスクを高めることになります。
  • 治癒に関わる細胞機能の低下
    AGEsは、創傷治癒の現場で働く重要な細胞の機能をも直接的に低下させます。例えば、創部の清掃役であるマクロファージは、糖化によってその貪食能力(異物を食べる能力)が低下します33。また、感染防御の最前線に立つ好中球は、AGEsによって遊走能力(創部へ駆けつける能力)や接着能力が損なわれることが報告されています35。これらの細胞機能の低下は、創部の清浄化や感染防御が不十分になることを意味し、治癒の遅延や合併症のリスクを高めます。

3.3 糖化を防ぐ食生活

この深刻な「糖化」のリスクを回避するための食生活の原則は、極めてシンプルです。それは、「血糖値を急激に、そして高く上げないこと」に尽きます。具体的には、以下の点が重要となります。

  • 砂糖や果糖ぶどう糖液糖を徹底的に避ける
    清涼飲料水、菓子類、デザートなど、精製された糖を多く含む食品や飲料は、血糖値を最も急激に上昇させます。これらを日常的に摂取する習慣は、体内の糖化を著しく促進するため、術後の回復期においては特に厳しく制限することが望ましいです29
  • 精製された炭水化物を控える
    白米、白いパン、うどんなどの精製された穀物は、食物繊維が取り除かれているため消化吸収が速く、血糖値を上げやすいです。主食は、玄米、全粒粉パン、そばなど、食物繊維が豊富な未精製の穀物を選ぶことが推奨されます。
  • 超加工食品を避ける
    高温で加工された食品(揚げ物、スナック菓子、加工肉など)には、食品が作られる過程で生成されたAGEsそのものが多く含まれていることがあります。これらの摂取を減らすことも、体内のAGEs蓄積を抑える上で有効です。

糖化のリスクを理解することは、術後の栄養管理を新たな視点から捉え直すことにつながります。つまり、良い栄養素を「足し算」するだけでなく、糖化という悪い要因を「引き算」することが、美しい傷跡を目指す上で同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのである。

第4章:【実践編】術後の傷跡をケアする食事プラン

これまでの章で解説した科学的根拠を、日々の食生活にどう活かせばよいのか。この章では、術後の傷跡ケアを目的とした具体的な食事プランを、時期別に、そして実践的に提案します。科学を食卓の上で実現するための、行動計画です。

4.1 術前から始める栄養最適化

手術は、身体にとって計画された「侵襲」です。したがって、その日に向けて最高のコンディションを整えておくことが望ましいです。栄養状態も例外ではありません。可能であれば、手術の1~2週間前から、身体の栄養備蓄を高めておくことを推奨します28

  • タンパク質の先行摂取: 筋肉や免疫システムの材料となるタンパク質を意識的に多めに摂取し、体内のタンパク質貯蔵を充実させておきます。
  • ビタミン・ミネラルの補給: 抗酸化作用や免疫機能に関わるビタミン・ミネラルを豊富に含む、色とりどりの野菜や果物を積極的に食べます。
  • 生活習慣の調整: カフェインやアルコール、過剰な糖分など、身体にストレスをかける可能性のあるものの摂取を控え、十分な休養をとります36

このように術前から準備しておくことで、手術という大きなストレスに対する身体の抵抗力を高め、術後のスムーズな回復のスタートを切ることができます。

4.2 術後急性期(~数日)の食事

手術直後から数日間は、身体が炎症期にあり、痛みや食欲不振、消化機能の低下が見られることが多いです。この時期の食事は、無理をせず、身体への負担を最小限に抑えることが最優先されます。

  • 水分補給を最優先に: 脱水は血行を悪化させ、治癒を妨げます。水やお茶、具のないスープなどで、こまめに水分を補給します37
  • 消化しやすく柔らかいものを: 胃腸に負担をかけず、噛む力がほとんど必要ない食事が望ましいです。おかゆ、ポタージュスープ、ヨーグルト、豆腐、茶碗蒸しなどが適しています38
  • 少量頻回食: 一度にたくさん食べられない場合は、1日5~6回に分けて少量ずつ食べる工夫をします4
  • 刺激物を避ける: 香辛料の強いものや、極端に熱い・冷たいものは、消化管や創部への刺激となる可能性があるため避けます39

この時期は、栄養を完璧に摂ることよりも、「口から食べる」という行為自体が、身体と心の回復を促す重要なステップとなります37

4.3 回復期(抜糸後~)の食事戦略

抜糸も済み、体力が少しずつ回復してくるこの時期からが、本格的な「傷跡ケア」のための栄養戦略を開始するフェーズです。第2章で述べた「栄養の階層構造」に基づき、以下のステップで食事を組み立てていくことが最も効果的です。

創傷治癒をサポートする主要栄養素と豊富な食品リスト40
栄養素 創傷治癒における主な役割 豊富な食品例
エネルギー 治癒プロセス全体のエネルギー源。細胞増殖、タンパク質合成に必須。 全粒穀物(玄米、全粒粉パン)、いも類、果物
タンパク質 皮膚、血管、免疫細胞の主原料。コラーゲンの材料となる。 鶏肉(皮なし)、魚(鮭、たら)、卵、大豆製品(豆腐、納豆)、乳製品(ヨーグルト)4
ビタミンC コラーゲン合成に必須の補酵素。抗酸化作用。 ピーマン、ブロッコリー、キウイフルーツ、いちご、柑橘類4
ビタミンA 皮膚・粘膜の再生、上皮化の促進。免疫機能の調節。 レバー、うなぎ、にんじん、かぼちゃ、ほうれん草4
亜鉛 細胞分裂とタンパク質合成の促進。免疫機能の維持。 牡蠣、牛肉(赤身)、レバー、豆類、ナッツ類4
ヘモグロビンの構成成分として、創部への酸素供給を担う。 レバー、赤身肉、カツオ、あさり、小松菜19
コラーゲン線維の強度を高める「架橋」反応に必要。 レバー、魚介類、ナッツ類、大豆28
ビタミンB群 エネルギー代謝の補酵素。細胞機能の維持。 豚肉、レバー、魚類(カツオ、サンマ)、納豆、卵24
オメガ3系脂肪酸 炎症反応の適切なコントロールを助ける。 青魚(サバ、イワシ、サンマ)、亜麻仁油、えごま油28

上記の食品例は、「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」などを参考に、日本で入手しやすいものを中心に選定しました40

回復期の食事戦略4ステップ

  1. 十分なカロリーと水分を確保する: まずは食事全体の量をしっかりと食べ、体重1kgあたり30~35 kcalのエネルギーを確保します2。また、水分は1日に1.5~2リットルを目安に、こまめに摂取します。
  2. 質の高いタンパク質を毎食摂る: 毎回の食事で、手のひら一枚分(約80~100g)を目安に、上記の表にあるような良質なタンパク質源を取り入れます19。特に、脂肪の少ない鶏むね肉や白身魚、豆腐などは消化も良く、優れた選択肢です28
  3. 「虹を食べる」ようにビタミン・ミネラルを: 特定のサプリメントに頼るのではなく、様々な色の野菜や果物をバランス良く食べることで、上記の表にあるような多種多様なビタミンやミネラルを網羅的に摂取します。「虹を食べる(Eat the Rainbow)」という言葉を意識すると良いでしょう。
  4. 砂糖と加工食品を徹底して避ける: 第3章で詳述した「糖化」のリスクを避けるため、甘い菓子類や清涼飲料水、インスタント食品などの加工食品は極力食卓から排除します29。これは、良いものを加えることと同じくらい重要です。

4.4 モデル献立例(回復期・1日)

これらの原則を具体化した1日の献立例を以下に示します。

  • 朝食
    主食: 玄米ごはん or 全粒粉パン
    主菜: 納豆(ネギ・ゴマを添えて) or スクランブルエッグ
    副菜: ほうれん草と人参のおひたし
    汁物: わかめと豆腐の味噌汁
    果物: キウイフルーツ
    ポイント: タンパク質(納豆/卵、豆腐)、ビタミンA(人参、ほうれん草)、ビタミンC(キウイ)、ビタミンB群、鉄などをバランス良く摂取。
  • 昼食
    主食: 具沢山のスープパスタ(鶏肉、ブロッコリー、パプリカ、きのこ入り)
    副菜: グリーンサラダ(亜麻仁油ドレッシング)
    デザート: 無糖ヨーグルト
    ポイント: 一皿でタンパク質(鶏肉)、ビタミンC(ブロッコリー、パプリカ)、オメガ3系脂肪酸(亜麻仁油)を効率的に摂取。
  • 夕食
    主食: もち麦ごはん
    主菜: 鮭の塩焼き(大根おろし添え)
    副菜: かぼちゃの煮物
    副菜: 小松菜と油揚げの煮浸し
    ポイント: 良質な脂質(鮭のオメガ3)、タンパク質、ビタミンA・E(かぼちゃ)、鉄・カルシウム(小松菜)を補給。

この献立はあくまで一例です。重要なのは、上記の4つのステップと栄養素のリストを参考に、自身の体調や好みに合わせて、多様な食材を組み合わせ、楽しみながら継続することです。

よくある質問と専門家からのアドバイス

ここでは、術後の栄養管理に関して患者やその家族が抱きがちな疑問について、専門的な見地から回答します。

Q: サプリメントは摂るべきですか?
A: 基本的には「食事からの摂取(Food First)」が原則です24。多様な食品を組み合わせたバランスの良い食事は、特定の栄養素だけでなく、まだ解明されていない微量栄養素や食物繊維なども同時に摂取できるという大きな利点があります。ただし、術後の食欲不振が続く、あるいは特定の食事制限により、食事だけでは明らかに必要量を満たせない場合には、サプリメントの利用が有効な選択肢となり得ます4。例えば、タンパク質摂取量が不足している場合のプロテインパウダーや、褥瘡患者で有効性が示唆されている特定の栄養素(亜鉛、アルギニンなど)を強化した栄養補助食品などが考えられます41。重要なのは、自己判断で安易にサプリメントに頼るのではなく、必ず医師や管理栄養士に相談することです。特に、第2章で述べたように、ビタミンEのように過剰摂取が治癒に悪影響を及ぼす可能性のある栄養素も存在します2。専門家は、血液検査などで栄養状態を評価した上で、本当に必要な栄養素と適切な量を判断してくれます。複数の栄養素を配合したフォーミュラの効果については、まだ研究途上の部分も多いことを理解しておく必要があります20
Q: お酒やタバコは?
A: 術後の回復期においては、アルコールとタバコは厳禁と考えるべきです。
アルコール: アルコールには利尿作用があり、体内の水分を奪い脱水状態を引き起こす可能性があります。脱水は血行不良を招き、創部への酸素や栄養素の供給を妨げます42。また、アルコールは肝臓での代謝にビタミンB群などを消費するため、治癒に必要な栄養素を無駄遣いすることにもなります。さらに、鎮痛剤を服用している場合、アルコールとの併用は予期せぬ副作用や肝障害のリスクを著しく高めるため、絶対に避けなければなりません42
タバコ(喫煙): ニコチンは血管を強力に収縮させる作用を持ちます。これにより、創部への血流が著しく低下し、治癒に不可欠な酸素が届かなくなります4。酸素不足は、コラーゲン合成の阻害、感染への抵抗力低下など、創傷治癒のあらゆるプロセスに深刻な悪影響を及ぼします。喫煙は、創傷治癒の遅延、創部感染、瘢痕の質の悪化の最大のリスク因子の一つです。禁煙は、美しい傷跡を目指す上で必須の条件です。
Q: ケロイド予防に特化した食事はありますか?
A: 残念ながら、「これを食べればケロイドが絶対にできない」という魔法のような食事は存在しません。ケロイドの発生には、遺伝的素因や創部への張力といった、食事だけではコントロールできない要因が大きく関わっているからです。しかし、栄養面から最大限の予防策を講じることは可能です。その基本戦略は、本稿で一貫して述べてきた内容、すなわち「炎症の適切なコントロール」と「糖化の防止」に集約されます。抗炎症作用のあるオメガ3系脂肪酸を積極的に摂取し、炎症を促進する飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を避ける。そして、AGEsの産生を抑えるために、糖質の摂取を厳格に管理することが、コラーゲンの異常増殖を抑制する上で最も合理的な栄養的アプローチと言えます。また、日本国内では、ケロイドの治療および予防に対して、抗アレルギー薬であるトラニラスト(商品名:リザベン®)という内服薬が保険適用で認められています43。これは、肥満細胞からの化学伝達物質の放出を抑制することで、ケロイドの増殖や、それに伴う痛み・かゆみを抑える効果が期待される薬です。さらに、研究レベルでは、亜鉛が細胞の異常増殖を抑制する可能性が示唆されており27、今後の展開が注目されます。これらの治療法については、形成外科や皮膚科の専門医に相談することが重要です。
Q: 胃や腸の手術後で、食べられるものが限られています。どうすれば良いですか?
A: 消化器系の手術後は、消化吸収能力が一時的に低下するため、食事内容に特別な配慮が必要となります。この場合、最優先すべきは、本稿で紹介した一般的な原則よりも、担当の医師や管理栄養士から指示された個別の食事療法(術後食)を厳密に守ることです5。胃切除後の場合は、胃の貯留機能が低下しているため、「ゆっくり、よく噛んで、少量ずつ(ちょこちょこ食い)」が基本となります44。また、胃酸の分泌が減少し、殺菌能力が落ちているため、食中毒のリスクが高まります。刺身などの生ものは新鮮なものを選び、加熱不十分な肉類は避けるなど、食品衛生には細心の注意が必要です44。腸の手術後も同様に、消化しやすく、腸管への負担が少ない食事から開始し、徐々に常食へと移行していきます。いずれの場合も、栄養指導で示された「食べてよいもの・避けるべきもの」のリストを遵守し、焦らず段階的に食事を進めることが、安全な回復への近道です。栄養摂取量が不足しがちな場合は、経腸栄養剤や栄養補助食品の活用について、積極的に医療スタッフに相談することが推奨されます。

結論

手術後の傷跡は、多くの人にとって単なる美容上の問題ではなく、心理的な負担にもなり得るものです。本稿では、その傷跡を可能な限り目立たなく、質の良いものにするための一つの強力な手段として「栄養」の重要性を、科学的根拠に基づいて詳細に解説しました。重要なのは、特定の栄養素を単独で摂取することではなく、創傷治癒という複雑なプロセスを全体として理解し、多角的なアプローチをとることです。回復の土台となるエネルギーとタンパク質を確保し、コラーゲン合成のパートナーであるビタミンCや亜鉛などを補い、そして傷跡を硬くする「糖化」というリスクを徹底的に避ける。この「足し算」と「引き算」の組み合わせが、身体が持つ本来の治癒能力を最大限に引き出す鍵となります。この記事で得た知識を日々の食生活に取り入れ、主体的にケアに取り組むことが、より良い回復と、未来のあなた自身の満足につながることを心から願っています。

免責事項
本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康に関する懸念がある場合や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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