はじめに
皆さん、こんにちは。JHO編集部です。
日常生活の中で突然襲ってくる脳卒中は、常に私たちの健康を脅かす重大な病気の一つです。特に日本においても多くの人々が影響を受ける深刻な病気として広く知られ、その発症は一瞬にして人生を大きく変えてしまう可能性があります。
脳卒中の中でも、とりわけ軽度脳卒中(TIA)は、症状が一時的に収まることから見過ごされがちですが、将来の重度脳卒中を防ぐ重要な「予兆」として捉えられます。実際に脳卒中の重症化を回避するためには、TIA段階での速やかな受診や適切な予防策の実行が鍵となります。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
本記事では、脳卒中、特に軽度脳卒中の原因・症状・対処法について、さらに深く掘り下げて解説します。さらに、日々の暮らしの中で無理なく実行できる具体的な予防のアドバイスを提示し、読者の皆様が健康を維持する上で役立つ実践的な情報を提供していきます。少しの予兆も見逃さず、早期に対応するためには何が必要か、そしてその背景にある医療知識をどのように日常に取り入れていくか、分かりやすくお伝えしていきます。
脳卒中は突発的に発生するイメージが強いかもしれませんが、実は初期症状が現れる場合もあり、見逃さないことが極めて重要です。そうした予兆に気づいていち早く対処できるかどうかで、その後の回復度や後遺症の程度が大きく変わることがわかっています。万が一のときに慌てず行動するためにも、脳卒中の基本的な知識やTIAの重要性を正しく理解することは、自分自身のみならず家族や周囲の人々にも大きな助けとなるでしょう。
専門家への相談
本記事の執筆にあたり、JHO編集部はDr. Nguyen Ba Thang(Nguyen Ba Thang Brain Institute, Hanoi, Vietnam)の協力を得ました。彼は脳神経外科分野において長年にわたり研究と臨床を続け、脳卒中の病態生理や治療法に関する多岐にわたる研究成果を積み重ねてきた専門医です。その専門的見解と、日々蓄積される研究結果や最新のガイドラインに裏打ちされた情報をもとに、内容の正確性と信頼性を高めるよう配慮しています。
なお、本記事に記載している情報は医療機関を受診する際の参考としてご利用いただくものであり、最終的な診断や治療方針については必ず医師をはじめとする専門家にご相談ください。脳卒中は一歩間違えば生命に関わる重大な病気である一方、迅速な対応や正確な知識の活用が予後を良好に導く鍵となります。
脳卒中とは何か?
脳卒中とは、脳への血液供給が突然遮断される、あるいは脳内の血管が破裂することによって、脳細胞が損傷または死滅に至る病態を指します。こうした急性の血行障害は、身体機能や認知機能に大きな影響を及ぼし、重度の場合は生死にかかわるケースも珍しくありません。
多くの場合、症状は突然現れます。本人はもちろん、周囲の人も予期せぬ事態に戸惑いがちですが、そこで焦らずに対処するためには、脳卒中の全体像を理解し、事前に兆候を把握しておくことが重要です。
軽度脳卒中(TIA)の重要性
特に軽度脳卒中(TIA)は、脳への血液供給がごく短時間だけ遮断され、数分から1時間程度で症状が消失する状態を指します。24時間以内に症状が完全に消えるという特徴から、一見すると大事に至っていないように見えます。
しかし、TIA発症後90日以内に脳卒中が再発する確率が17%という報告が示すように、TIAを「一時的な不調」として軽視してしまうことは非常に危険です。ちょっとしためまいや頭痛、腕のしびれを「疲れのせい」と思い込み放置してしまうと、その数日後や数か月後に深刻な脳卒中が起こるリスクが高まる可能性があります。
このため、TIAと思われる症状が出現した場合は、症状がすでに消えていてもすぐに医師の診断を受けることが推奨されます。こうした早期受診と必要な検査・治療の実施によって、重篤な発作や後遺症を大幅に低減することが期待できるためです。
脳卒中の流行と社会的影響
脳卒中は、世界的に重大な健康課題として広く認知されています。World Stroke Organizationの推計によると、毎年約1,220万件の新規脳卒中症例が発生しているとされ、人口高齢化や生活習慣の変化により、今後も増加傾向が続く可能性があります。
日本国内では、年間およそ200,000件の脳卒中が報告されています。これは社会全体に対して大きなインパクトを与える数字です。脳卒中患者の増加に伴い、医療費の負担増大や介護・リハビリの長期化、労働力の低下など、経済面や社会保障面への影響が多方面にわたって懸念されています。
健康保険制度を活用しつつ、国や自治体が進める定期健康診断を積極的に受診する、あるいは個人レベルで生活習慣の見直しを行うなど、日頃からの予防策が必要不可欠です。脳卒中は誰にでも起こりうる身近な病気だからこそ、個々人の心がけが社会全体の安定を支える要素になります。
男性と女性の脳卒中リスク
統計的に見ると、男性のほうが女性よりも脳卒中リスクが高いとされる傾向があります。特に喫煙や飲酒習慣、高血圧の管理不足、脂質異常といった生活習慣要因が背景にある場合、そのリスクは加齢とともに上昇しやすいといわれています。
一方で、女性の場合でも、更年期以降のホルモンバランスの変化や妊娠・出産を経た身体の変化など、特有のリスク因子が存在します。妊娠中・産後の高血圧や血液凝固異常が脳血管に悪影響を及ぼす場合があるため、妊産婦健診での血圧測定や生活習慣の管理は重要です。
家庭や職場でのストレスや食生活の乱れなどもリスク因子の一つとして考えられ、男女問わず、日常生活の中でのちょっとした改善が大きな予防効果につながります。定期的な血圧測定や塩分・脂質コントロールを意識した食事、適度な運動は、男女共通の脳卒中予防策として広く推奨されます。
脳卒中による後遺症
脳卒中は第二の死因であり、また障害の主要原因ともされています。統計によれば、脳卒中を経験した患者のうち80%前後が何らかの後遺症を抱え、そのうち約30%が完全な回復が難しい状態に陥ると報告されています。
後遺症としては、運動麻痺(片麻痺や歩行障害など)、言語障害(失語症や構音障害など)、認知機能障害、嚥下障害など多岐にわたります。これらは日常生活の自立や社会復帰を著しく困難にする要因です。また、介護やリハビリを必要とする状態になると、本人だけでなく家族の生活にも大きな影響が及びます。
こうした後遺症のリスクを可能な限り抑え、患者および家族の生活の質(QOL)を向上させるためには、早期発見と迅速な治療、適切なリハビリテーションが極めて重要です。さらに、退院後のフォローアップと地域社会の支援体制の整備も欠かせません。
若年層における脳卒中の増加傾向
近年、特に18歳から45歳の若年層における脳卒中発症率の増加が指摘されています。若年層での発症は、社会的・経済的な影響が大きく、仕事や学業への支障、家庭や育児への負担が急増するなど多方面で深刻な課題をもたらします。
若年層は、健康への意識がまだ十分に高まっていない場合も多く、不規則な生活リズムや高ストレスな仕事環境、過度な飲酒や喫煙など、複合的な生活習慣が脳卒中の発症リスクを高める要因として考えられています。また、若年層の脳卒中では、遺伝的要因や先天的な血管異常が背景にある場合もあるため、より早い段階からの定期的な健康チェックが推奨されています。
たとえ若くても、慢性的な頭痛やめまい、異常な倦怠感などが続く場合は、脳卒中のリスクを完全に排除できないことを意識し、早めに医療機関に相談する習慣を身につけることが大切です。
脳卒中の兆候と予兆
脳卒中は「突然起こるもの」という印象が強いため、前触れなく発症すると考えられがちですが、実際には初期兆候や予兆を把握することで対処を早めることが可能です。なかでも軽度脳卒中(TIA)の症状は数分から数時間で消えるため見逃されがちですが、警告のサインとして非常に重要です。
こうした初期兆候を直感的に理解するための合言葉としてBEFASTのルールが広く知られています。
BEFASTのルール
BEFASTは、
- B – Balance(バランス)
- E – Eye(目)
- F – Face(顔)
- A – Arm(腕)
- S – Speech(言語)
- T – Time(時間)
これらの頭文字をとったもので、脳卒中の兆候を確認する基本的なチェック法として推奨されています。
- B(バランス): 突然の強いめまいやバランス感覚の喪失、激しい頭痛は脳の血流異常を示唆します。ふだんの立ち上がり時の軽い立ちくらみ程度なら一過性の場合もありますが、激しいめまいが急に生じた場合は要注意です。
- E(目): 片目だけ、あるいは両目にわたる視野欠損や視力低下が急に起こる場合は、脳卒中特有の症状として認識されます。いつもは問題なく見えるはずの物が片側だけ見えにくくなる、視野が部分的に欠けるなどの変化は、脳血管の閉塞や出血を示唆することがあります。
- F(顔): 顔の片側が垂れ下がる、笑顔がゆがむなど、表情筋をうまくコントロールできない状態は脳の特定部位に問題が起こっている兆候です。鏡を見たり、左右対称に口角を上げられるかどうかをチェックすることで、簡易的に確認できます。
- A(腕): 片腕や片脚に力が入りにくい、しびれを感じる、同じ高さで腕を保てないなどの症状が典型的です。こうした片側性の麻痺は脳卒中の典型例であり、早期発見のためには日頃のセルフチェックが有効です。
- S(言語): 言葉が出にくくなる、発音が不明瞭になる、話の内容を理解しにくくなるなど、言語面の異常が現れることがあります。家族や友人と会話しているときに返答が遅れたり、思ったとおりに話せない状態を周囲が確認した場合は要注意です。
- T(時間): 上記のような症状が現れたら一刻も早く救急車を呼ぶことが大切です。脳卒中は時間とともにダメージが拡大しやすく、早期対応によって後遺症を最小限に抑えられる可能性が高まります。
特にTIAの場合は、症状が数分から数時間で消失してしまうため、落ち着いた頃に「もう治った」と見過ごされることも多いです。しかし、この一時的な異常は重大な発作の前触れである可能性が否定できません。症状が消えた場合でも、必ず医療機関を受診し、専門家による検査を受けることが将来のリスクを大幅に下げるポイントとなります。
脳卒中の際の行動指針
脳卒中が疑われる状況では、いかに迅速かつ適切に対処できるかが患者の生死、さらには後遺症の重篤度を左右します。ここでは、脳卒中が疑われる際に取るべき具体的な行動と、逆に避けるべき行動を整理します。
適切な対処法
- 症状を迅速に確認し救急車を要請
BEFASTのような簡易チェックで脳卒中の可能性があると判断したら、迷わずに救急車を呼びましょう。一刻を争う病気であるため、専門医による治療開始までの時間を最短化する必要があります。 - 患者が意識を失った場合は横向きに寝かせる
この姿勢をとることで気道の確保がしやすくなる上、嘔吐物や唾液による誤嚥を予防できます。いわゆる「回復体位」と呼ばれる横向き姿勢を維持し、頭部を少し後ろに反らせて呼吸しやすいようにしておきます。 - 「ゴールデンタイム」は発症から4.5時間以内
特に虚血性脳卒中の場合、この時間内に治療を開始できるかどうかで予後が大きく変わると考えられています。血栓溶解療法(tPA療法)などの急性期治療が適応となるケースでは、早期に病院へ搬送されることが極めて重要です。 - 心肺蘇生が必要な場合は訓練を受けた者が行う
もし心肺停止状態が疑われる場合は、周囲に心肺蘇生の知識がある人がいれば協力を仰ぎましょう。自動体外式除細動器(AED)が利用できる環境であれば迅速に使用し、同時に救急隊にも連絡を行います。
避けるべき行動
- 民間療法的な応急処置に頼らない
血を抜いたり油を塗ったり、体を強く摩擦するなどの行為は、科学的な根拠がなく、症状を悪化させるリスクがあります。 - 飲食物や薬を安易に与えない
誤嚥や薬物の相互作用を引き起こす可能性があります。必ず医療従事者の指示を仰いでください。 - 自家用車で運ぶより救急車を呼ぶ
救急車の利用により、移送中でも専門的な応急処置を受けられる可能性が高まり、時間も正確に短縮できます。 - 一時的な回復に安心しない
症状が改善しても、それは一時的なものである場合があります。必ず専門医の精密検査を受け、今後の予防策や治療方針を確認することが重要です。
脳卒中の診断と治療
患者が病院に到着してからは、CTスキャンやMRIによって脳卒中が出血性か虚血性か、あるいは他の疾患かを迅速に判別します。次に、血液検査や心臓検査(心電図やエコーなど)、血管造影検査を行い、より詳しい原因や血管の状態を把握します。これらの総合的な情報に基づいて治療方針が決定されます。
主な治療法
- 血栓溶解療法
虚血性脳卒中で血管の閉塞が生じている場合、血栓を溶かす薬剤(tPA)を用いて血流の再開通を図る方法が代表的です。発症から時間が経ちすぎると適応外になるので、早期発見と早期治療が欠かせません。 - 抗血小板薬の使用
血小板の凝集を抑え、再度の血栓形成を防ぐために用いられます。再発予防として長期的に内服管理が求められる場合もあります。特に軽度脳卒中(TIA)経験者では、継続的な抗血小板薬の服用が再発リスク低減に寄与するとされています。 - 血栓除去
カテーテル治療によって、血管内にできた血栓そのものを直接除去する方法です。近年は医療技術の進歩により、大血管閉塞に対してもカテーテルを使った血栓回収療法が可能となり、重症例でも回復の可能性が大幅に高まっています。
再発防止のための予防策
一度脳卒中を起こした患者の場合、再発予防が最重要課題のひとつです。治療が終わって退院しても、定期的な検診やリハビリを行いながら、次のような生活習慣の改善を徹底する必要があります。
- 薬物療法の継続
抗血小板薬や降圧薬、脂質異常症治療薬などの内服は、医師の指示を守り正しく継続することが大切です。勝手に自己判断で休薬すると、血栓ができやすくなるなどリスクが高まる恐れがあります。 - 食事療法
食塩・脂質・糖質の過剰摂取を控え、野菜や果物、魚などをバランスよく取り入れた食生活を続けることが推奨されます。過度なアルコール摂取は血圧変動を大きくし、脳血管を傷つける要因にもなり得るため、適度または禁酒を目指すことも一案です。 - 適度な運動
血圧や血糖値、体重をコントロールするうえで、軽い有酸素運動を定期的に行うことは効果的です。ウォーキングや自転車、スイミングなど、自分の体力に合った運動を継続することが望まれます。 - 喫煙の中止
喫煙は血管の内皮機能を著しく損ね、脳卒中のリスクを高めると考えられています。禁煙外来など専門的なサポートを利用しながらでも、できる限り早期に禁煙することが推奨されます。
こうした多角的な取り組みを継続することで、脳卒中の再発リスクを低減し、後遺症の重篤化を防ぐことが期待できます。
より深い理解と補足:生活習慣やストレスの影響
脳卒中の要因には、高血圧や脂質異常、糖尿病といった代表的な生活習慣病のほか、ストレスや睡眠不足なども大きく関与すると考えられています。特に現代社会では、仕事や家庭での責任が増す中で、睡眠が不足しやすく、食事の時間や内容が乱れ、慢性的にストレスが蓄積する方が増えています。
高血圧と脳卒中
高血圧は脳卒中の最大のリスク因子といわれています。血管に強い圧力がかかり続けると、血管壁に負担が蓄積し、動脈硬化や小さな動脈瘤の形成につながります。結果として、血管破裂や血管の詰まりが起こりやすくなり、脳出血や脳梗塞のリスクが一気に高まります。
高血圧の管理には、食塩摂取量の削減や適度な運動、降圧薬の継続服用が欠かせません。特に日本人は塩分の多い食生活になりがちであり、外食や加工食品の塩分量にも注意を払う必要があります。
ストレスマネジメント
慢性的なストレスは交感神経を過度に刺激し、血圧上昇や心拍数の増加、ホルモン分泌の乱れなどを引き起こします。これらが長期間続くことで、血管への負担が増し、脳卒中の誘因となる可能性があります。
ストレスを適切にコントロールするためには、適度な休息や趣味の時間を確保すること、呼吸法やリラクゼーション法、心理カウンセリングなど専門家のサポートを活用することが考えられます。加えて、十分な睡眠を確保し、規則正しい生活リズムを整えることも重要な要素です。
睡眠不足の影響
睡眠不足は体内のホルモンバランスを乱し、血圧や血糖値のコントロールを難しくすると考えられています。また、夜間に十分な休息を取れないと、身体が慢性的に緊張状態を維持しやすくなり、血管内皮機能が低下することがあります。
質の高い睡眠を確保するためには、寝る前のスマートフォン利用を減らす、寝室の照明や温度・湿度を整える、決まった時刻に起床・就寝するなどの生活習慣が推奨されます。睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われる場合は早めに医療機関で検査し、必要に応じて治療を受けることも大切です。
研究・ガイドラインの進展と近年の動向
脳卒中の予防や治療に関しては、近年さまざまなガイドラインや研究成果が公表されており、治療法がより精密かつ多角的に発展しています。
アメリカ心臓協会(American Heart Association: AHA)およびアメリカ脳卒中協会(American Stroke Association: ASA)による2021年版ガイドライン(参考文献リスト内にも掲載)では、脳卒中およびTIAの予防のために、
- 抗血小板薬や経口抗凝固薬を必要に応じて使用する
- 高血圧、脂質異常症、糖尿病の一貫した管理を行う
- 食生活と運動習慣を含むライフスタイルの改善を徹底する
- 早期介入による脳血管イベントの重症化防止
といった要点が強調されています。特に、TIA経験者の再発防止については、専門家による定期フォローと厳密なリスク管理が不可欠であると強調されています。
加えて、新しい治療技術としては血管内治療の高度化や、より早期に血栓除去を行うための診断システムの整備が進められていることが挙げられます。救急搬送体制の整備や、遠隔医療(テレメディシン)の活用により、遠隔地の病院でも高度な神経学的診断が可能となり、治療開始までのタイムラグを最小化できる体制が徐々に構築されつつあります。
脳卒中に関する大規模な追跡研究では、生活習慣の改善が脳卒中発症率を顕著に下げるという結果も報告されています。特に、長期にわたるフォローアップに基づく大規模調査では、高血圧や喫煙などの危険因子が複数重なるほど発症率が飛躍的に高まる一方で、禁煙や適度な運動、栄養バランスに配慮した食生活を行うことで、発症リスクが大幅に低減することが示唆されています。
リハビリテーションと社会復帰へのプロセス
脳卒中を発症した後、患者の生活の質(QOL)を向上させるためには、リハビリテーションが極めて重要な役割を担います。
リハビリテーションの種類
- 運動機能回復リハビリテーション
片麻痺や歩行障害、筋力低下などを改善するため、理学療法士の指導のもと、ストレッチや筋力トレーニング、歩行訓練などを行います。 - 作業療法
日常生活動作(ADL)の向上を目的に、食事や着替え、入浴などの動作を再学習するリハビリです。手先の器用さを取り戻すための訓練や、生活に必要な道具の使い方を学ぶプログラムが組まれます。 - 言語聴覚療法
失語症や構音障害など言語機能に問題がある場合、言語聴覚士の指導のもと、発声訓練や読み書きの練習、コミュニケーション技術の習得などを行います。 - 心理・認知面のサポート
記憶力や注意力、判断力などが低下するケースや、病気による喪失感やうつ状態を伴うケースもあります。臨床心理士や精神科医との連携のもと、必要に応じて心理療法や薬物療法が行われます。
社会復帰と長期フォローアップ
脳卒中後の社会復帰には、職場復帰プログラムや地域リハビリテーションなど、多方面でのサポート体制が欠かせません。職場の理解や柔軟な勤務形態の提供、家族や地域コミュニティとの連携がスムーズに進むことで、再発リスクの低減とQOLの改善が期待できます。
また、一度脳卒中を経験した場合、再発リスクを抱え続けることになるため、退院後も定期的な外来受診やリハビリテーションの継続、生活習慣の見直しを怠らないことが重要です。医療チームとの協力のもと、薬の服用状況や血圧・血糖・コレステロールの管理状況、運動・食事の継続状況を確認しながら、段階的に社会復帰の度合いを高めていくことが理想的です。
家族や周囲のサポートの重要性
脳卒中は患者本人だけでなく、家族や周囲のサポートが非常に重要な病気です。特に重度の後遺症が残る場合には、日常生活での介助が必要となり、家族に大きな負担がかかることがあります。介護疲れや経済的な問題も生じやすく、家族側のメンタルヘルスケアや、社会的・経済的な支援制度の活用も不可欠です。
地域によっては、訪問看護や訪問リハビリテーション、デイケア、ショートステイといった介護サービス、あるいは地域包括支援センターの相談窓口を利用できる体制が整備されてきています。これらの仕組みを活用することで、家族の負担を軽減しながら、患者本人の自立やリハビリの継続を支えることができます。
予防意識を高めるための日常的アプローチ
脳卒中を未然に防ぐ、あるいは軽度のうちに対応するためには、日頃からの健康管理が何よりの土台となります。以下に、具体的なアプローチをいくつか挙げます。
- 定期的な健康診断の受診
血圧・血糖値・コレステロール値などを定期的にチェックし、異常値がある場合は早期に対策を講じる必要があります。会社や自治体で行われる健康診断を活用しましょう。 - 血圧の家庭測定
高血圧は脳卒中の最大リスク因子であるため、自宅で定期的に血圧を測定し、日々の変化を把握することが重要です。異常値が続く場合は早めに受診し、医師と相談して生活習慣や薬の調整を行いましょう。 - 塩分・脂質・糖質の摂取制限
日本の食生活は塩分過多になりやすい傾向があるため、醤油や味噌などの使用量を見直し、外食ではスープを残すなどの工夫が効果的です。脂質や糖質も摂り過ぎると生活習慣病のリスクを高めるので、バランスを保った食事を心がけましょう。 - 禁煙・節酒
喫煙は脳卒中リスクを大幅に高めることが多数の研究で示されています。可能であれば完全禁煙が理想的ですが、難しい場合は禁煙補助薬や禁煙外来の利用を検討しましょう。飲酒も適量を守り、アルコール度数の高い酒類は控えるなどの工夫が必要です。 - 適度な運動習慣の確立
ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリングなど、個人の体力レベルに合わせた有酸素運動を継続することで、血圧や体重の管理、ストレス発散に役立ちます。週に3~5回、1回30分程度を目安に行うと効果的といわれています。 - ストレスマネジメント
現代社会ではストレスが蓄積しやすい環境にあります。趣味の時間やリラクゼーション法、カウンセリングなどを取り入れ、長期的なストレスを緩和する努力が必要です。
結論と提言
結論
脳卒中は生命を脅かす重大な健康問題であり、その予兆や初期症状を見逃さず、早期に対処することが予後を大きく左右します。特に軽度脳卒中(TIA)は、一時的に消失する症状だからこそ見落とされやすいものの、実は将来的な重症化を防ぐための重要な警告信号です。この段階での対応が、命を守り、後遺症を最小限に抑える鍵になります。
日本では毎年20万件を超える脳卒中が報告され、世界的にも約1,220万件の新規発症例が見られるなど、脳卒中は決して他人事ではなく、誰にでも起こりうる病気といえます。そのため、正しい情報を得て、日常生活において予防意識を高めることが重要です。
提言
- TIAの兆候を決して軽視しない
数分から数時間で改善する軽微な症状ほど油断しがちですが、その後に重度の脳卒中が発生する可能性が高まることを常に念頭に置きましょう。症状が消えたとしても、一度疑いが生じたら専門医の診断を受けてください。 - 日頃から生活習慣を見直す
高血圧や脂質異常、糖尿病などのリスク因子管理は、脳卒中予防の最重要項目です。塩分・脂質・糖分のコントロール、禁煙、適度な運動、ストレスマネジメントを継続しましょう。 - 定期検診と早期受診
健康診断や血圧測定などで異常値が出た場合、専門家に早期に相談しましょう。脳卒中の「ゴールデンタイム」は4.5時間以内といわれていますが、TIAを含めた軽度症状の段階で対処することで、重症化を大きく防げます。 - 周囲との協力体制を整える
家族や職場の同僚が脳卒中の基礎知識を持っていることは、緊急時の行動を円滑にします。少なくともBEFASTのような簡易チェックや、救急車の呼び方などの基本的な手順を共有しておくことが重要です。 - 再発予防のためのフォローアップ
一度脳卒中を発症した場合、再発リスクは高まります。リハビリや定期検査、薬物療法を続けつつ、生活習慣の改善を徹底する必要があります。
脳卒中予防は、多くの場合「分かってはいるけれど、忙しくて実践できない」という理由で後回しにされがちです。しかし、脳卒中が起こってしまうと、本人のみならず家族や社会へも大きな影響が及びます。わずかな対策でも早めに始めることが将来の健康を左右します。
本記事は情報提供を目的としており、医師や医療従事者による公式の診断や治療方針に代わるものではありません。何らかの異変に気づいた場合は速やかに専門家に相談し、適切な医療を受けることが大切です。
参考文献
- 毎年200,000件の脳卒中が発生(アクセス日: 2023年2月24日)
- About Stroke(アクセス日: 2023年2月24日)
- Treat and Recover from Stroke(アクセス日: 2023年2月24日)
- Risk factors of transient ischemic attack: An overview(アクセス日: 2023年2月24日)
- Current State of Stroke Care in Vietnam(アクセス日: 2023年2月24日)
- Chăm sóc bệnh nhân đột quỵ tại Việt Nam(アクセス日: 2023年2月25日)
- Stroke Signs and Symptoms(アクセス日: 2023年2月25日)
- If Someone is Having a Stroke: 3 Things To Do and 3 Things Not To Do(アクセス日: 2023年2月25日)
- Nguy cơ đột quỵ ở người tăng huyết áp và cách sơ cứu(アクセス日: 2023年2月25日)
- Stroke – Diagnosis & Treatments(アクセス日: 2023年2月25日)
- Antiplatelet Drugs(アクセス日: 2023年2月27日)
- Transient Ischemic Attack (TIA) or Mini Stroke(アクセス日: 2023年2月27日)
- Transient ischemic attack (TIA)(アクセス日: 2023年2月27日)
- Quy tắc BE FAST: Dấu Hiệu Nhận Biết Sớm Về Đột Quỵ(アクセス日: 2023年3月14日)
- Hướng dẫn chẩn đoán và xử trí đột quỵ não(アクセス日: 2023年2月27日)
- Antiplatelet therapy in populations at high risk of atherothrombosis(アクセス日: 2023年2月27日)
- Đột quỵ có xu hướng gia tăng ở người trẻ tuổi(アクセス日: 2023年2月27日)
- 2021 Guideline for the Prevention of Stroke in Patients With Stroke and Transient Ischemic Attack: A Guideline From the American Heart Association/American Stroke Association(アクセス日: 2023年3月13日)
- 80% bệnh nhân sau đột quỵ chịu những di chứng, nhu cầu phục hồi chức năng để nâng chất lượng sống(アクセス日: 2023年3月14日)