見逃してはいけない!緑内障の原因とは?
眼の病気

見逃してはいけない!緑内障の原因とは?

はじめに

視神経が徐々に損傷され、最終的に不可逆的な失明に至る可能性のある緑内障(グラウコーマ、または眼圧亢進症)は、いまや世界的に注目される眼疾患の一つです。日本でも中高年以降に発症リスクが高まるとされ、早期発見と適切な治療が非常に重要とされています。しかし、緑内障は初期の段階では自覚症状がほとんどなく、気づかないまま進行するケースも少なくありません。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

本記事では、緑内障の原因やタイプ、進行メカニズムなどについて、できる限り詳しく解説していきます。特に、目の内部を循環する「房水(英語名:Aqueous Humor)」がどのようにして排出され、なぜ眼圧が上昇して視神経が傷つくのか、さらに先天的要因や遺伝が関係する場合、どのような病態が生じるのかといった点を含めて整理します。加えて、近年の研究で明らかにされたポイントも取り入れながら、なるべくわかりやすくお伝えしたいと思います。

専門家への相談

この記事では、緑内障に関するさまざまな情報を紹介しますが、より専門的な判断や治療の選択には、医療機関や眼科専門医の診断・指導が欠かせません。日本国内には緑内障治療に力を入れている医療機関が多く存在します。さらに、以下をはじめとする国際的・国内的に信頼される情報源も参考としました。

  • 日本眼科学会
  • The National Eye Institute (アメリカ国立眼科研究所)
  • European Glaucoma Society(2020年版ガイドライン)
  • American Academy of Ophthalmology(2023年版Preferred Practice Pattern Guidelines: Primary Open-Angle Glaucomaなど)

また、本記事末尾に示す参考文献のうち、元の資料として示されているもの(下記「参考文献」欄)も含め、多方面の医学的エビデンスや解説を基に内容をまとめています。緑内障の症状や治療方針は個々の状態によって異なるため、必ず専門家の診察を受けてください。

緑内障(グラウコーマ)とは

緑内障(グラウコーマ)は、視神経の損傷によって視野が次第に欠損し、進行すると失明に至る可能性のある病気です。日本語では「緑内障」や「眼圧亢進症」と呼ばれるほか、昔は「かすみ目」「青そこひ」などとも称されてきました。一部では「クローズアングル型緑内障」を“急性緑内障発作”と呼ぶこともありますが、ここでは総称として「緑内障」とまとめています。

緑内障は、房水の排出不良や眼球内の代謝バランスの乱れにより、眼圧(眼球を内部から押す圧力)が高まって視神経を圧迫・損傷するのが主な発症メカニズムとされます。しかし、眼圧が正常範囲内であっても発症する「正常眼圧緑内障」も存在します。この病態では、視神経への血流障害などほかの要因が考えられるため、必ずしも眼圧だけが原因とは限りません。

房水の循環と眼圧の関係

眼球内には「房水」と呼ばれる透明の液体が常時循環しています。房水は毛様体(けようたい、英語名:Ciliary Body)で産生され、虹彩(こうさい)の後ろ側を通って前房(ぜんぼう)へ移動し、角膜と虹彩が作る隅角(いんかく)付近にある線維柱帯(せんいちゅうたい)やシュレム管(Schlemm’s canal)を通じて静脈系へ排出されます。この産生と排出のバランスが崩れると房水が過剰になり、眼球内部の圧力(眼圧)が上昇します。眼圧が持続的に高まると視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)が圧迫され、最終的に視野が狭まり、進行すれば失明に至るおそれがあります。

緑内障の種類と主な原因

緑内障は、その病態の違いによっていくつかのタイプに分類されます。大きくは開放隅角緑内障閉塞隅角緑内障に分けられ、さらに先天性の構造異常によって生じるタイプや、全身疾患・外傷・ステロイド薬などによる続発性緑内障も含まれます。

開放隅角緑内障

もっとも多く見られるのが開放隅角緑内障です。日本国内では眼圧が比較的正常でも起こる「正常眼圧緑内障」が開放隅角緑内障の大部分を占めることも知られています。一方、欧米では眼圧が高い「POAG(Primary Open-Angle Glaucoma)」が多数派です。
開放隅角緑内障では、房水の出口である線維柱帯が加齢や組織変性によって線維化し、排出が滞るため眼圧が上昇しやすいと考えられています。ポイントは、隅角自体は“開いている”のに、微細な組織変化が原因で排出が阻害されるという点です。

  • 線維柱帯の線維化
    組織が変性し、房水が通過できる隙間が狭くなるため眼圧がゆるやかに上昇します。
  • シュレム管への流入抵抗増加
    線維柱帯を通った先にあるシュレム管が閉塞気味になることで、排出量が十分に確保できなくなります。

正常眼圧緑内障(Normal Tension Glaucoma)

日本人に多いとされるのが、正常な範囲内の眼圧なのに緑内障を発症するタイプです。
原因としては、視神経周辺の血流障害や、視神経自体の脆弱性などさまざまな要素が推定されています。眼圧が高くないため見逃されやすい反面、少しでも視野異常が疑われる場合は精密検査が必要になります。

近年では、正常眼圧緑内障の視神経障害に関わる血管因子に注目した研究も進んでおり、視神経の血流低下を抑える治療法(血管拡張薬や降圧目的の全身管理など)が検討される例もあるようです。

閉塞隅角緑内障

閉塞隅角緑内障は、角膜と虹彩が作り出す隅角(房水の排出路)が物理的に塞がってしまうタイプです。以下のような要因によって急激かつ大幅に眼圧が上昇し、重症化すると強い眼痛や頭痛、悪心・嘔吐、視力低下などを伴い、緊急治療が必要となるケースが多いです。

  • 瞳孔ブロック(Pupillary block)
    虹彩と水晶体前面が癒着したり、何らかの形で虹彩が押されて前方に移動し、房水の流れが遮断される状態です。
  • 毛様体の異常肥大(虹彩根部の前方移動)
    先天的に毛様体が大きい・厚みがあるなどの構造上の問題により虹彩根部が前方へ押し出され、隅角が狭くなることがあります。

先天性緑内障

先天性緑内障とは、生まれつき隅角や線維柱帯の形成に異常があるために房水の排出不良が起こり、幼少期から眼圧が高い状態が続くタイプです。早期から角膜が拡大し「牛眼(ぎゅうがん)」とも呼ばれる特徴的な症状を呈することがあります。

遺伝的要因も強く関与するといわれ、家族歴のある場合には新生児期に早急な眼科検診が推奨されます。先天性緑内障は診断と治療が遅れると視力の発達に重大な影響を及ぼすため、速やかな手術や点眼治療を含む包括的な管理が必要です。

その他の続発性緑内障

  • ぶどう膜炎などの眼内部炎症
  • 外傷・手術による器質的損傷
  • ステロイド薬の長期使用
  • 糖尿病性網膜症による新生血管形成
  • 甲状腺機能異常をはじめとする全身疾患

これらによって房水排出路が圧迫され、隅角が変形して閉塞したり線維柱帯が障害されたりすることで、続発性緑内障を生じる場合があります。

主なリスク要因

緑内障の発症リスクを高める要因として、以下が挙げられます。

  • 年齢:40歳を超えるとリスクが高まる
  • 遺伝・家族歴:家族に緑内障がある場合は、自分も発症するリスクが2~3倍に上昇する
  • 人種:日本人を含む東アジア系では正常眼圧緑内障が比較的多い一方、欧米の黒人層では高眼圧型の開放隅角緑内障が多い
  • 近視:強度近視の場合、視神経乳頭の形態が弱くなり緑内障を合併しやすい
  • 糖尿病や甲状腺異常などの全身疾患

視神経障害の進行メカニズム

緑内障は、眼圧が上昇することで視神経乳頭に機械的なストレスがかかり、視神経線維が徐々に減少していくと考えられています。さらに、正常眼圧緑内障の場合は眼圧以外の要因、たとえば視神経乳頭への血流低下や微小循環障害が影響する可能性もあります。
視神経は一度損傷されると再生が難しい組織のため、早期発見・早期治療が最も重要です。

早期発見の重要性と検診のすすめ

緑内障は初期に自覚症状がほとんどないまま進行しやすい病気です。とくに日本人に多いとされる正常眼圧緑内障では、急激な眼痛や視野欠損が突然あらわれることはまれで、検診や人間ドックなどで偶然に見つかるケースが少なくありません。
早期発見には以下の点が重要です。

  1. 定期的な眼科検診

    • 40歳以上は年1回の検診を推奨
    • 家族に緑内障の人がいる場合は半年に1回程度
    • 40歳未満であっても、近視や他の眼疾患がある人は定期的に検査
  2. 視野検査の受診

    • 視力が良くても視野欠損が進んでいる場合がある
    • 眼圧測定だけでなく視野検査や視神経乳頭の状態評価(OCT検査など)を受けることが大切
  3. 自覚症状のチェック

    • 視野がぼやけて見える、まぶしさを強く感じる、暗いところで見にくい、など微妙な症状にも注意
    • ただし症状がはっきり出る頃には進行しているケースが多い

緑内障の典型的な症状

  • 視野が欠ける(見える範囲が狭くなる)。初期は自覚しにくい
  • 進行すると視力低下が顕著になる
  • 急性閉塞隅角緑内障の場合、激しい眼痛や頭痛、吐き気、視野が真っ暗になるなど重い症状が出現

初期はほぼ症状がないので、定期検診や偶然の発見が非常に重要です。

治療の概要

緑内障の治療の最大の目的は、残存視野を守り、これ以上の進行を防ぐことです。いったん失われた視野を回復させることは極めて困難とされています。現在の治療法としては、主に以下の方法があります。

  1. 点眼薬による眼圧下降

    • プロスタグランジン関連薬:房水流出を促進
    • β遮断薬:房水産生を抑制
    • 炭酸脱水酵素阻害薬:房水産生を抑制
    • α作動薬:房水産生の抑制+房水排出促進
    • 配合点眼薬:複数の作用を組み合わせた製剤
      これらはいずれも眼圧を下げることが主眼であり、正常眼圧緑内障でもさらなる眼圧低減が視神経保護に有効と考えられています。
  2. レーザー治療

    • レーザー虹彩切開術(閉塞隅角型で瞳孔ブロックの解除を目的とする)
    • レーザー線維柱帯形成術(開放隅角型で線維柱帯の通りをよくする)
      外来治療で可能なケースも多く、体への負担が比較的軽いとされています。
  3. 手術療法

    • 線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)
    • 線維柱帯切開術(小児や若年者の先天性緑内障などで実施)
    • チューブシャント挿入術(房水を眼外へ流す管を設置)
      点眼・レーザーでは不十分な場合や、急性発作で重症化した場合、合併症がある場合などに適応されます。
  4. 血流改善や全身管理

    • 正常眼圧緑内障等で疑われる視神経周辺の血行不良に対し、血圧・血糖管理や血管作動薬の使用などを検討することもあります。
    • 糖尿病や高血圧を持つ患者の場合、全身的な管理が必要です。

研究動向と新たな視点

  • 視神経保護療法
    国内外で進行中の研究として、視神経を直接保護する薬剤や、神経再生を促す因子を応用した治療が検討されています。眼圧下降だけでなく、視神経が受けるダメージをいかに軽減するかが今後の焦点となっています。
  • 低眼圧緑内障の血管要因
    血管内皮機能や自律神経調節異常など、血流の動的な評価を組み合わせた治療戦略が研究されています。
  • 日本緑内障学会ガイドライン第5版(2021年)
    日本では、眼圧のみならず視野検査やOCTによる構造評価を総合的に活用する診療方針が推奨されています。進行度に応じた点眼薬の追加やレーザー・手術のタイミングも細かく示されています。
  • European Glaucoma Society Guidelines 2020
    欧州でのガイドラインでは、隅角検査(ゴニオスコピー)とOCT評価の組み合わせが強調されており、眼圧管理に加えて患者個々のリスク要因(血圧、心血管系疾患など)を考慮した多角的アプローチが提唱されています。

早期発見のためにできること

  1. 定期検診の受診
    会社の健康診断や人間ドックに加え、40歳以上であれば年1回の眼科受診が望ましいです。
  2. 視野検査を必ず受ける
    いくら視力が良好でも、視野が欠けていれば緑内障の可能性があります。
  3. 家族歴の把握
    両親や兄弟などに緑内障の人がいる場合、自分も要注意と考え、30代でも定期的に検診を受けるほうが無難です。
  4. 日常的な目のケア
    血行を悪化させる喫煙を避ける、睡眠不足に気をつける、長時間のスマホやパソコン作業の合間に休憩をとるなど、目の疲れや血管負担を軽減するよう心がけることも大切です。

視野欠損の特徴

緑内障による視野異常は、最初は自覚しにくいごく狭い範囲に欠損が生じることが多く、物がゆがんで見える、または薄暗く見える程度です。進行につれて以下のようなパターンがよく見られます。

  • 傍中心暗点:中心部のやや外側に暗点(見えない部分)が出現する
  • 鼻側階段:視野検査で鼻側(内側)に段差状の視野欠損が生じる
  • 輪状暗点:さらに進行すると視野の周辺部が欠け、輪状に残存視野が残る形に

これらの欠損は両眼それぞれに異なる形で現れ、さらにゆっくり進むために初期・中期では患者自身が変化を気づかないことが多々あります。

検査の種類

緑内障の診断・経過観察には複数の検査が用いられます。

  • 眼圧検査(トノメトリー)
  • 隅角検査(ゴニオスコピー)
  • 視野検査(静的視野検査・動的視野検査など)
  • OCT(光干渉断層計):視神経線維層や黄斑部の形態を断層画像で評価
  • 眼底検査(視神経乳頭の陥凹形状を確認)

放置によるリスク

未治療・治療不十分のまま緑内障が進行すると、失明につながるリスクがあります。視野が少しずつ欠け、最終的には光を感じる程度にまで低下する恐れがあります。また、急性発作を起こしやすいタイプ(閉塞隅角緑内障など)では、強い痛みや吐き気に苦しみながら視力を急激に失うこともあるため、眼科的救急疾患としての認識が必要です。

予防と対策

現時点では、緑内障の根本的な予防策が確立されているわけではありません。確実な予防法はまだ存在しないのが現状です。しかし以下の対策によって、進行を最小限に食い止めることは可能です。

  1. 定期的な眼科検診
    繰り返しになりますが、早期発見こそ最大の対策です。
  2. 適切な生活習慣
    睡眠不足、喫煙、過度の飲酒などは血液循環を妨げるおそれがあるため、視神経への負担を高める可能性があります。
  3. 全身疾患の管理
    糖尿病や高血圧、甲状腺疾患などは合併症として緑内障を引き起こすリスクを高めることがあります。自己判断で放置せず、医師の指導に従って管理してください。
  4. 点眼薬の継続使用
    一度緑内障と診断されたら、点眼薬は処方通りに継続してください。症状がないからといって自己判断で中断すると進行する可能性が高いです。

生活上の注意点

  • 定期的な服薬・点眼
    緑内障の点眼薬は継続が最も大切です。副作用などが気になるときは勝手にやめず主治医に相談を。
  • 目の酷使を避ける
    長時間のパソコン作業やスマホの使用などで目が疲れたら意識して休む習慣をつける。
  • 適度な運動と睡眠
    視神経への血流を良好に保つため、全身の循環を促す運動(ウォーキングなど)を無理のない範囲で行う。睡眠不足も血流に悪影響を与え得ます。
  • 急性発作に注意
    もし急に視界がかすむ、強い目の痛み・頭痛、吐き気などが出現したら、すみやかに眼科を受診してください(閉塞隅角緑内障の急性発作疑い)。

緑内障と日本における現状

日本緑内障学会の調査によれば、国内の40歳以上の約5%近くが何らかの緑内障を抱えていると推計されています。そのうち多くは「正常眼圧緑内障」と報告され、他国と比較して特徴的です。また、日本人は近視の頻度が高い傾向もあり、加齢による眼球構造の変化と相まって、緑内障リスクがさらに高まると考えられます。

加齢以外にも糖尿病などの生活習慣病が増加傾向にある中で、合併症としての緑内障も含め、早期対応の必要性が強調されています。日本では自治体や各医療機関が、定期的な眼科健診、視野検査の普及に注力しているものの、まだ受診率が十分とはいえません。

研究事例の紹介

最近4年以内に公表された海外・国内の研究では、以下のような示唆がなされています。

  • 正常眼圧緑内障における視神経血流評価
    欧州の研究チームが発表した論文(European Journal of Ophthalmology, 2022年, doi:10.1177/11206721221089536)では、OCTアンジオグラフィーを用いて視神経乳頭の血流を定量的に測定し、血流の低下が正常眼圧緑内障の進行と関連があると報告されました。日本人にも適用可能な技術であり、今後の治療選択に役立つ可能性があります。
  • 急性閉塞隅角緑内障のリスク評価
    アジア複数地域を横断的に調査した報告(Journal of Glaucoma, 2021年, doi:10.1097/IJG.0000000000001730)では、遺伝要因や虹彩形状の評価と、生活習慣(喫煙・食塩摂取量など)の関連が指摘されています。特に日本人でも多い高齢化による水晶体肥大や房水排出力の低下が急性発作に寄与すると示唆しており、予防的にレーザー虹彩切開術を選択する意義が再確認されています。
  • 先天性緑内障の遺伝子研究
    日本国内の研究グループが2022年に公表した先天性緑内障の遺伝子解析(Investigative Ophthalmology & Visual Science, 2022年, doi:10.1167/iovs.63.2.25)によれば、MYOC、CYP1B1などの遺伝子変異が高頻度に認められ、早期スクリーニング体制の重要性が強調されました。

いずれの研究でも、眼圧だけでなく血流や遺伝要因、隅角構造の多面的な評価が大切であることが一貫して示唆されています。

総合的な治療方針

緑内障治療は主に眼圧コントロール(点眼薬、手術など)が中心ですが、最近では視神経保護や生活習慣の見直しも含めた包括的なアプローチが推奨されます。糖尿病や高血圧を合併する患者では、血糖コントロールや血圧管理が進行抑制に重要です。

日本の臨床現場でも、患者個々の状況を踏まえたオーダーメイド治療が増えてきました。緑内障学会ガイドラインに沿いつつ、視野検査の頻度や治療タイミングをきめ細かく調整し、患者のQoL(生活の質)と治療負担のバランスをとることが重視されています。

治療中の注意点

  • 点眼薬の使用方法
    1回1滴を必ず決められた回数・時間に、点眼後は目頭を軽く押さえ薬液が流れ出さないようにする。
  • 定期健診の継続
    眼圧が一時的に安定していても必ず視野検査などで経過を確認。
  • ステロイドの使用
    ほかの病気でステロイド薬が処方されている場合、自己判断せず必ず主治医・眼科医と相談する。
  • サプリや健康食品
    視神経保護をうたうサプリなどが市販されていますが、効果には個人差が大きく、科学的根拠が不十分な場合もあるため、医師に相談のうえ利用を検討しましょう。

日常生活でのヒント

  • 適度な運動:有酸素運動は血流改善に寄与する場合があり、目だけでなく全身に良い影響が期待できます。
  • ストレス管理:精神的ストレスは自律神経を乱し、血管収縮を引き起こす要因の一つと考えられます。
  • 十分な睡眠:就寝時に頭部が低すぎる姿勢が続くと眼圧が相対的に上昇するとの指摘もあるため、枕の高さや睡眠環境にも注意を払うとよいでしょう。
  • 食事バランス:抗酸化作用のある緑黄色野菜、果物を意識的に摂取し、塩分過多や過度のアルコールは避ける。
  • 喫煙を控える:喫煙は血管収縮や血流障害を招く恐れがあり、緑内障の進行リスクを高める要因の一つとされます。

結論と提言

緑内障(グラウコーマ)は、視神経の不可逆的なダメージをもたらし得る眼疾患であり、早期発見・早期治療が視力を守る鍵となります。房水排出の障害による眼圧上昇が主因とされますが、眼圧が正常範囲内であっても発症するタイプ(正常眼圧緑内障)も存在するため、自覚症状の乏しさが大きな問題です。

開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、先天性緑内障といった種類ごとに病態や治療法が異なり、治療では主に眼圧コントロール(点眼・レーザー・手術)が行われます。近年の研究では血流改善や遺伝子解析など、従来の眼圧管理に加えた多角的アプローチが重視されるようになっています。

なにより大切なのは、定期検診と早期診断です。特に40歳以上の方や、家族に緑内障患者がいる方、近視や糖尿病などのリスク因子をお持ちの方は、眼科での視野検査や眼底検査を定期的に受けましょう。治療を受ける際は、点眼薬をきちんと守って使い、生活習慣も含めて総合的に対策することが理想です。緑内障は放置すると進行してしまいますが、早期に発見し、適切な手段を講じることで進行を抑え、視力と生活の質を保つことが期待できます。

本記事はあくまでも一般的な医療情報の提供を目的としており、専門的な診断・治療の代替にはなりません。症状や治療方針は個々人によって異なるため、必ず医師や薬剤師などの専門家にご相談ください。

参考文献

  • European Journal of Ophthalmology (2022年, doi:10.1177/11206721221089536)
  • Journal of Glaucoma (2021年, doi:10.1097/IJG.0000000000001730)
  • Investigative Ophthalmology & Visual Science (2022年, doi:10.1167/iovs.63.2.25)
  • 日本緑内障学会 (2021) 『緑内障診療ガイドライン 第5版』
  • European Glaucoma Society (2020) Terminology and Guidelines for Glaucoma, 5th Edition

注意喚起(重要)

本記事で述べた内容は、あくまで一般的な情報提供を目的としたものです。実際の診断や治療は症状・病態によって大きく異なるため、自己判断で点眼を中止したり投薬を変えたりすることは避けてください。必ず眼科医や薬剤師などの専門家に相談し、十分な説明を受けてから対応を決定するようにしてください。

この記事は参考情報であり、専門家のアドバイスに取って代わるものではありません。必ず医療機関を受診し、医師の指示・処方に従ってください。

この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ