視力回復は可能か?噂の真相を徹底検証!
眼の病気

視力回復は可能か?噂の真相を徹底検証!

はじめに

日本においても、多くの人が日常生活で経験する視力低下の問題としてもっとも一般的なのが近視です。特に、子どもや思春期の若者、そして大人になりたての世代において顕著に見られます。たとえば、雨の日に移動する際にメガネに水滴が付着して見えづらくなる、遠方の看板が読み取りづらい、スポーツや激しい運動をする際にメガネやコンタクトレンズが邪魔になる、など日常生活の様々な場面で不便を感じがちです。こうした不便さを軽減するために「度数を下げる方法」「近視を減らす手段」を探す方が多く、インターネットや噂話などで「近視を改善する体操」や「夜間専用のコンタクト」「レーザーによる手術」などさまざまな方法が挙げられています。

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当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

しかし実際のところ、それらの方法は本当に近視の度数を下げる効果があるのでしょうか。たとえば、日々コツコツ行う目の体操で度数が改善するといった話を耳にすることもあります。また、「夜にコンタクトを装用すれば翌日の視力が上がる」「手術をすればメガネやコンタクトがいらなくなる」など、多くの宣伝や口コミが存在します。けれども、それぞれに科学的エビデンスはあるのか、その効果はどの程度持続するのか、そして安全性は確保されているのか。こうした疑問は、近視に悩む人にとって非常に重要です。

本記事では、主に以下のポイントに注目しながら、近視の度数を下げると称されるさまざまな方法の実際を解説していきます。

  • 日常的にできる「目の体操」は本当に度数改善につながるのか
  • 夜間専用のコンタクトレンズ(オルソケラトロジー)のしくみと効果
  • レーザー手術や水晶体レンズ挿入術はどこまで視力を改善し、どんなリスクや制限があるのか
  • 近視の進行を遅らせる、あるいは度数が上がるのを防ぐ方法にはどんなものがあるのか

さらに、近年では子どもの近視進行を抑えるための研究が活発であり、海外の文献でもさまざまな研究結果が報告されています。日本国内の医療機関でもこれらを参考にして新しい治療を取り入れ始めているところがあります。たとえば、屋外活動を増やして自然光を浴びることによって近視進行リスクを抑制しようとする生活習慣改善の提案や、特別な構造のコンタクトレンズを活用することで近視の進展をゆるやかにする方法などが研究され続けています。本記事では、そうした比較的新しい知見にも触れながら、最終的に「自分に合った近視対策」を検討できるように情報を整理してお伝えします。

なお、本記事はあくまでも「一般的な情報提供」を目的とするものであり、医師免許を持つ専門家による個別の診断や治療を代替するものではありません。近視の度数や進行状況、またご自身のライフスタイルに合わせた最適な治療法は、人によって大きく異なる可能性があります。実際に治療を検討する際には、必ず医療機関を受診し、専門家の診断と助言を受けてください。

専門家への相談

本記事で紹介する情報は、以下の専門家の知見などを参考にまとめたものです。実際に治療法を検討する場合は、必ず直接の診察・検査を受けてください。

  • Bác sĩ Nguyễn Thường Hanh(英語表記のまま):内科・総合診療科の領域で多くの臨床経験を持ち、近視に対する包括的なアプローチを重視しています。
    • 所属:Bệnh Viện Đa Khoa Tỉnh Bắc Ninh
    • 内科・総合診療科での豊富な経験を活かし、目の健康管理や生活習慣の改善に関する指導を数多く行ってきた背景があります。

また、各種海外の研究論文や医療機関のガイドラインを参考に、最新の近視管理や予防法に関する情報も取り上げています。

近視とは何か:メカニズムと現代社会での増加傾向

まず、そもそも「近視」とはどのような状態かを整理しましょう。近視では、平行光線が網膜よりも手前で焦点を結んでしまうため、遠くのものがぼやけて見えやすく、近くのものは比較的よく見えます。多くの場合は眼球が前後方向に長く伸びてしまう「眼軸長の延長」に起因することが多いと言われています。このような近視の人にとっては、度数が進行すると更に遠くを見づらくなり、日常生活での不便が増していきます。

現代社会では、スマートフォンやパソコンなどのデジタルデバイスを長時間使用する機会が大幅に増加し、室内で過ごす時間も長くなりました。また、子どもの学習環境でも近距離作業が多くなっていることから、若い世代を中心に近視が急増していると言われています。このような背景を踏まえ、近視の度数をできるだけ進行させない対策や、将来的な合併症リスクを抑えるための研究が世界的に進んでいます。

なお、近年の包括的な調査としては、たとえばThe Lancetにおいて2022年に発表された文献があります。これは、近視の進行メカニズム、予防策、治療法に関する最新の知見を整理しており、特に世界的に屋内活動の増加によって若年層の近視が急増している実態が明確に示されています(Morgan IG, Ohno-Matsui K, Saw SM. Myopia. Lancet. 2022;400(10356):834-842. doi:10.1016/S0140-6736(22)01208-1)。同論文では、近視進行を予防するためには屋外活動時間を増やすことや、定期的な視力チェックを受けることが重要とされており、日本を含む多くの国でも徐々にこうした戦略を実践し始めています。

目の体操は「度数を下げる」効果があるのか?

「目の体操」や「視力回復トレーニング」は、よく雑誌やインターネットなどで目にする方法です。具体的には、

  • 20-20-20ルール
    20分ごとに作業を中断し、20秒間、6メートル以上離れた場所を見つめることで、眼の疲れを軽減しようとするもの。
  • 焦点を切り替えるトレーニング
    指先やペンなど、ある程度近い距離にある対象物に集中してから、少しずつ遠ざけたり、また近づけたりして、ピントを合わせる練習を行う。
  • “8”の字運動
    フロアなどに想定上で水平8の字を描き、その軌跡を目でなぞるように動かす。約30秒間行い、終わったら逆回転に移る。
  • 室内を見回すエクササイズ
    ゆっくりと部屋の隅々を視線で追い、途中で特定のオブジェクトに焦点を合わせて、遠近両方に目を慣れさせる。

これらの体操は、眼の筋肉をほぐし、血流を良くして疲労感やドライアイなどを予防・軽減する効果が期待されており、短時間ではあるものの視界がクリアに感じられるケースも報告されています。実際に多くの眼科医が「長時間の近業作業の合間に取り入れると、視力低下の進行リスクをやや抑えられる可能性がある」として推奨している部分もあります。

しかし、「度数を下げる」効果がはっきりと証明されているわけではありません。近視が実際に改善し、“マイナス●●D(ジオプトリー)からマイナス●●Dに減った”というような長期的かつ明確な根拠は少ないとされています。したがって、目の体操は「近視そのものを治す」手段ではなく、あくまでも疲れ目の軽減や視力低下の進行リスクを抑える補助的な対策と考えるのが無難です。

夜間専用コンタクト:オルソケラトロジーの仕組みと限界

「夜寝るときに特殊なコンタクトレンズ(オルソケラトロジーレンズ)を装用すると、翌日はメガネなしでもよく見える」という話を聞いたことがある方もいるでしょう。これは実際に存在する手法で、角膜の形状を寝ている間に物理的に矯正することで、日中は近視の度数を一時的に軽減した状態を保つしくみです。多くの場合、-2.00D程度までの近視ならある程度の効果が期待できるとされ、成長期の子どもの近視進行を抑える目的として検討されるケースも増えています。

ただし、オルソケラトロジーはあくまで「一時的に矯正される」ものであり、レンズの装用をやめると数日から数週間で角膜形状が元に戻り、また近視の度数が戻ってしまいます。また、角膜を物理的に押しているため、装用管理が適切でないと感染症や角膜障害のリスクが高まる可能性もあります。そのため、導入を検討する方は、必ず医療機関の指示やフォローを受けながら、安全性に配慮した取り扱いをする必要があります。

実際、American Academy of Ophthalmology(AAO)の2021年以降のガイドラインでも、オルソケラトロジーは「日中の裸眼視力を改善する一時的手段」であり、視力矯正手術とは別物として扱うよう注意が促されています。特に10代の子どもに対しては慎重な適応判断が必要だと明記されているため、日本でも同様の基準を参考にしている医療機関が多いのが現状です。

レーザー手術による近視矯正

レーザー手術(LASIKなど)の特徴

レーザー手術、一般にはLASIKやPRK、近年増えているReLEx SMILEなどが知られています。いずれの手技も、角膜をレーザーで削って形状を変え、焦点が正しく網膜に合うようにすることで近視を矯正します。この方法では、

  • 術後数日以内に視力が大きく改善しやすい
  • 角膜の形状を削るため、度数や角膜の厚みに応じて適応可否が分かれる
  • 多くの症例でメガネやコンタクトの必要性が著しく減る

といった利点があります。アメリカや欧州、日本でも広く行われており、比較的確立した矯正手術として認知度が高い手法です。実際に、「レーザー手術は長期的に見ても安全性が比較的高いが、誰にでも適応できるわけではない」という点が各種ガイドラインや大規模研究のレビューでも確認されています。

近年(2020年以降)の論文レビューでは、レーザー手術の安全性や満足度は高いものの、夜間のグレアやハローといった視覚的な副作用が一定割合で残ることも報告されています。また角膜の厚さや形状、近視の度数に大きなばらつきがある方、強度近視の方などは術式の選択が制限される場合があるため、事前の詳細な検査が不可欠です。

水晶体レンズ挿入術(ICLなど)の特徴

レーザー手術とは異なるアプローチとして、水晶体の前後に人工レンズ(主にICLと呼ばれるもの)を挿入し、角膜を削らずに度数を矯正する方法もあります。以下の特徴があります。

  • 角膜を削らないため、角膜形状が極端に薄い人やLASIKに不向きな人でも適用できる可能性がある
  • レンズを眼内に挿入するため、感染症などのリスク管理がより複雑になる
  • 極度の近視では大きな効果が期待できる場合があるが、医師の適切な判断が必須

ICL挿入術では、20代から40代前半ぐらいまでの強度近視の方を中心に、角膜の厚さなどの制限があっても矯正が可能な症例が報告されています。ただし、日本ではまだレーザー手術ほど普及しておらず、「長期的な安全性や持続効果が今後さらに検証される」といった課題が示唆されています。欧米圏の症例レビューでは、手術自体の成功率は高めでも、レンズの度数合わせや挿入後の調整が難しく追加手術を要することもあるとされます。

いずれの手術にしても、「近視をどこまで矯正できるか」や「どれだけの期間有効か」には個人差があります。また、手術後も生活習慣や加齢に伴う度数変化はゼロではないため、定期的な検診とケアが不可欠です。

近視の進行を食い止めるアプローチ

近視を「減らす」ことは難しくても、「進行を遅らせる」ことはさまざまな研究で効果が報告されています。以下に主な方法を整理します。

  • アトロピン点眼薬
    もともとは瞳孔を拡大させるための医薬品で、特定の低濃度を毎日点眼することで小児の近視進行を抑える効果が期待されます。ただし、日常的に瞳孔が開き気味になり光がまぶしく感じる可能性もあるため、医師の指示に従って慎重に用いる必要があります。
  • 屋外での活動時間を増やす
    2020年以降の日本国内外の研究で、自然光をしっかり浴びる時間が長い子どもほど近視の進行が遅い傾向があると示唆されています。室内生活が中心の子どもに対しては、可能な限り屋外で体を動かす機会を増やすことが推奨されています。
  • 多焦点コンタクトレンズ・メガネ
    子どもの近視進行を抑える効果が一部の研究で報告されているコンタクトレンズや眼鏡があります。2023年に発表されたJAMA Ophthalmologyのランダム化比較試験では、特殊構造をもつ多焦点レンズを一定期間装用した8〜12歳の被験者群において、近視の進行が有意に遅れたという結果が出ています(この研究は北米地域で実施され、合計300名以上を対象にしたもので、近視が軽度〜中等度の子どもたちが含まれています)。
  • 生活習慣の見直し
    長時間のスマートフォンやタブレット操作、夜更かし、照明の暗い環境での読書などは、眼に負担をかける要因となります。定期的に休憩を挟む、照明を適切にする、夜間は十分に寝る、食事バランスを整えるなど、トータルで健康的な生活習慣を維持することが大切です。
  • 他の眼病や全身疾患への対処
    糖尿病や高血圧などの全身疾患があると、眼底や水晶体に影響が及び視力の変化や病気の進行が早まる可能性があります。そのため、全身の健康管理も近視予防に寄与します。

日常生活でできる目の保護策

どのような近視対策を取るにしても、日々の生活の中で以下のような「視力を守る行動」を心がけるだけでも、度数の進行をある程度遅らせたり、疲労を減らす効果が期待できます。

  • 定期的な眼科検診
    視力や度数が変化しているのに放置すると、度数の合わないメガネのまま過ごすなどで余計な負担がかかり、頭痛や肩こり、度数のさらなる進行などを招きます。少なくとも年に一度は眼科で検査を受けるのがおすすめです。
  • 正しいメガネやコンタクトレンズの度数選び
    間違った度数を使い続けると、遠近両方のピント合わせに不具合が生じ、疲れやすくなる可能性があります。必ず信頼できる専門スタッフや医師に度数合わせをしてもらいましょう。
  • 紫外線対策
    日差しの強い日にはサングラスをかけるなど、紫外線が眼に与える負荷を抑えましょう。とくに角膜や水晶体は紫外線による損傷を蓄積しやすい部位でもあります。
  • 安全眼鏡の装用
    工事現場など粉塵や飛来物がある環境で作業する場合は、メガネやコンタクトに加えてゴーグルの装用も検討してください。外傷や感染症から眼を守ることも、長期的に視力を維持する重要な手段です。
  • バランスの良い食事
    魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸、緑黄色野菜に多く含まれるルテインやゼアキサンチンなど、眼の健康に寄与する栄養素を意識した食生活が勧められています。サプリメントを利用する場合は、医師や薬剤師に相談したうえで利用するのが良いでしょう。
  • 禁煙・受動喫煙の回避
    喫煙は全身の血管に悪影響を与え、眼底や水晶体への血流にも問題を引き起こす可能性があります。受動喫煙も含め、できるだけタバコの煙を避けるように心がけましょう。
  • 適切な照明環境
    勉強や読書、仕事などの際に照明が暗すぎるとピント合わせに負担がかかり、近視が進行しやすくなるとの報告もあります。光量だけでなく、光の質(色温度)にも注意し、目が疲れにくい環境作りを目指しましょう。

結論と提言

ここまで述べてきたように、一般的に「近視を減らす方法」とされるトレーニングや夜間専用コンタクト、外科手術などにはそれぞれ独自のメリットとリスクがあります。一時的に視力が良くなったように感じても、長期的に度数が下がるわけではない場合が多く、実質的に効果を持続させるには専門的な管理が必要です。

  • 目の体操やトレーニングは、疲労緩和やピント調節機能のトレーニングとしては有用ですが、近視の度数をはっきりと下げる根拠は十分ではありません。
  • 夜間専用コンタクト(オルソケラトロジー)は、日中のメガネが不要になる利便性を提供しますが、一時的な矯正効果であり、使用をやめると元の度数に戻ります。また、管理や手入れを誤ると角膜障害や感染リスクが高まります。
  • レーザー手術や水晶体レンズ挿入術は、比較的長期間にわたって良好な視力を得る手段として確立されていますが、術後も一定のリスクや度数変化の可能性があり、すべての人に適しているわけではありません。
  • 近視の進行を抑える薬(アトロピン点眼など)や多焦点レンズは、特に成長期の近視悪化リスクを軽減する可能性が示唆されており、専門医の管理の下で活用されています。
  • 屋外活動の増加や生活習慣の見直しは、目全体の健康維持や近視予防において、どの世代にも有益です。

したがって、「近視をどうにかして減らしたい」「度数が進まないようにしたい」と考える方は、まずは眼科で検査を受け、現在の度数や角膜の状態、全身の健康状態などを詳しく把握することが重要です。そのうえで、どの方法が自分の年齢・ライフスタイル・費用面において最適なのかを専門家と相談することが欠かせません。

また、家庭でできる簡単なトレーニングや休憩方法を上手に取り入れながら、定期的に診察を受け、度数や角膜の形状をチェックし、必要に応じて早めに対応することが大切です。特に子どもの場合、近視の進行が早いケースもあるため、保護者が屋外活動時間の確保やスマートフォンの使用時間管理などに気を配りつつ、専門家のフォローアップを積極的に活用することをおすすめします。

最後に強調しておきたいのは、本記事は一般的な情報共有を目的としており、医療上の最終的な判断は必ず専門の眼科医と相談のうえで行ってくださいという点です。近視に限らず、視力や目の健康には個人差が大きく、一律に「この方法がベスト」という答えが存在しません。よって、正確な情報と専門家の診断を組み合わせたアプローチが、結果的に目の健康を最大限に守る近道となるでしょう。

参考文献


免責事項
本記事で取り上げた内容は、あくまで一般的な情報提供を目的としており、医師や医療従事者による個別の診断・治療を代替するものではありません。疑問や不安を感じた際は、必ず専門の医療機関にご相談ください。また、近視以外の疾患が視力低下に影響する場合もあるため、定期的な健康診断や眼科検診を受けることをおすすめします。

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