はじめに
視界がぼんやりしていたり、目が疲れやすかったり、遠近にかかわらず物がはっきり見えずに頭痛やめまいを感じたりする場合、それは乱視の症状かもしれません。乱視は日本でも多くの方が経験する屈折異常のひとつで、角膜や水晶体の形状がわずかにゆがむことで光がうまく網膜上に焦点を結ばず、ものが見えにくくなる状態を指します。こうした乱視の初期症状を早期に発見し、対策を取ることは、将来的な合併症や日常生活への悪影響を減らすためにもとても大切です。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
この記事では、代表的な乱視の症状として挙げられる5つのサインをご紹介し、それぞれが起こるメカニズムや注意点などを詳しく解説します。乱視は他の屈折異常(近視や遠視など)と混同されやすい傾向があり、放置すると視力低下により生活の質が下がる場合もあるため、まずは正しい知識を得ることが重要です。
専門家への相談
本記事の内容は、水晶体や角膜の屈折異常について検討した国内外の医学文献をもとにまとめたものですが、実際に診断や治療方法を決定する際は、医療機関を受診し専門家の判断を仰ぐことが不可欠です。また、内容の正確性を高めるために複数の医学雑誌・学会の資料を参照し、専門医にも助言をいただきました。本記事で言及されている医学的情報はあくまでも参考としてご活用ください。なお、最終的な個々人の治療方針は担当の医師が症状や生活背景を考慮して決定するため、必ず主治医の指示に従ってください。
(参考:本記事内容の確認にあたり、内科・総合診療の分野で多くの患者を診療している Bác sĩ Nguyen Thuong Hanh の助言を含んでおります。)
乱視とは何か
乱視は角膜または水晶体の形状が球面ではなく楕円に近い形状となることで、目に入る光が網膜上の一点に正確に結ばれず、視界が歪んだりぼやけたりする状態を指します。乱視はほかの屈折異常、例えば近視(遠くが見えづらい)や遠視(近くが見えづらい)と合併して起こることが珍しくありません。なかには生まれつき乱視傾向がある人もおり、また角膜に外傷を負ったり、何らかの眼病や手術後に角膜形状が変化して乱視が進んだりするケースもあります。
なぜ早期発見が大切なのか
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生活の質の低下を防ぐ
視界のブレやかすみ、目の疲れなどが続くと、勉強や仕事、家事などの日常活動がスムーズに行えなくなる場合があります。早期に適切な矯正を行うことで、こうした生活の質(QOL)の低下を防ぎやすくなります。 -
重篤な合併症のリスクを抑える
乱視が強くなると、のちに角膜がさらに変形する「円錐角膜(けんすいかくまく)」などの進行リスクが高まったり、重度の場合には弱視につながる恐れがあります。 -
その他の屈折異常との見分け
乱視は近視や遠視と合併することが多いため、自覚症状だけでは見分けがつきにくい側面があります。定期的に眼科を受診することで、それぞれの度合いを正しく把握し、適切な矯正方法を選択できます。
こうした理由から、まずは自分の視界における「おかしいな」というサインを見逃さず、早めに検査・診断を受けることが大切だといわれています。
5つのよく見られる乱視の症状
以下に挙げる症状は、乱視がある人によく現れるとされる代表的な5つのサインです。もちろん個人差はありますが、日頃からこれらの症状を感じる方は、一度眼科で検査を受けることを検討してみてください。
1. ものがぼやけて見える(視界のぼやけ)
角膜や水晶体の角度が均一でないため、光が網膜上で一点に集まらず、遠近問わずすべての対象がぼやけたり歪んだりして見えることがあります。これは乱視の典型的な症状で、近視や遠視のように「遠くだけ」「近くだけ」が見えにくいという特徴的パターンとは異なり、常に全体的にスッキリと焦点が合わない感覚が起こりやすい点がポイントです。
なぜぼやけるのか
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角膜/水晶体の曲率異常
角膜や水晶体が一定の湾曲を保っていれば、光は網膜上の一点に合焦します。乱視では、角膜や水晶体の一部分が通常よりも急峻だったり、逆に平坦だったりして、複数の異なる焦点が形成されるため、複像や歪みが発生します。 -
軽度から重度まで幅広い
乱視は軽度のものから重度のものまで様々で、視力検査で数値化することができます。軽度であっても日常生活に支障をきたす場合もあれば、重度なのに本人が慣れてしまって自覚症状が出にくいケースもあり、個人差が大きい点も特徴です。
2. 目の疲れ(眼精疲労)
ものが常にくっきり見えないために、視覚情報を脳が補正しようとし、無意識に目の筋肉を過度に使い続けることで眼精疲労を起こしやすくなります。特に以下のようなシーンで疲れを感じやすいと報告されています。
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パソコン作業やスマートフォンの長時間使用
近くの画面を集中して見る場合、より一層ピントを合わせようと目が酷使されるため、乱視があると疲れを感じるまでの時間が短くなることがあります。 -
長時間の読書や車の運転
書籍や道路標識の文字が歪んだりぼやけたりすると、長時間同じ視野を保つこと自体が負担となるため、頭痛や目の奥の痛みを引き起こす方も少なくありません。 -
ドライアイなどとの併発
乱視の人が目を見開いた状態で見ようとすると、まばたきの回数が減り、ドライアイのリスクが増す場合があります。目の乾燥が進むと更に見えづらさが増し、疲れを自覚しやすくなる悪循環に陥りやすいのです。
また、Stanford Health Care(2021年6月29日参照)でも、乱視による目の疲れは見落とされがちであり、早期発見・適切な矯正が必要だと報告されています。
3. 物が二重に見える(複視/単眼性複視)
重度の乱視になると、単眼で見ても二重に物が見える「複視(ふくし)」が生じることがあります。これは、1つの対象物が左右や上下にずれたように見える状態で、いわゆる「ダブって見える」症状です。日常生活では文字が二重に見えて読みにくくなる、階段の段差や床の凹凸がわからず転倒リスクが高まる、といった問題を引き起こすことがあります。
複視には、両眼の視軸のズレによって起こる両眼性複視と、片眼に原因がある単眼性複視とがあります。乱視による場合は主に単眼性複視に分類されますが、同じ単眼性複視を引き起こす原因として白内障(水晶体の混濁)や斜視なども挙げられるため、早めの専門的検査が望ましいとされています。
4. 頭痛(特に前頭部や目の奥の痛み)
乱視があると、しっかり物を見ようとして無意識に瞳孔や水晶体、外眼筋をフル稼働させる時間が増えます。その結果、長時間の緊張状態が続き、頭痛や首・肩こりの原因となることが少なくありません。もし頭痛の頻度や程度が増してきた、あるいは視力の低下や目の疲れが強いと感じるようになった場合は、単なる疲労やストレスだけでなく屈折異常の進行を疑う必要があります。
また、日本では過労や睡眠不足、スマートフォンの長時間使用に起因する眼精疲労型の頭痛が若者から高齢者まで増えており、その背後に乱視が潜んでいる場合もあるとされています。乱視による視界の不鮮明さを放置すると、脳が常に“ピント合わせ”に負荷を強いられ、結果として慢性的な頭痛に悩まされる可能性が高まります。
5. 夜間の視力低下(暗い場所での見づらさ)
暗い場所で人間の瞳孔は開き、より多くの光を取り込もうとしますが、乱視がある場合は広がった瞳孔を通過する光がいっそう不規則に屈折し、視界のブレが増大しやすくなります。特に夜間運転や夕方以降の外出など、暗所で光源を捉える必要があるシーンで困難を感じ、ライトがにじんで見える、信号の輪郭がハッキリしない、対向車のヘッドライトがまぶしく感じられるなどの症状が起こりやすいです。
夜盲症や他の眼疾患も夜間視力低下の原因となり得ますが、乱視が背景にある場合も珍しくありません。暗い環境下でこそ乱視の度合いを強く自覚することがあるため、夜間運転や暗所で視界に不安がある方は眼科検診を受けてみると良いでしょう。
乱視は放置すると危険か
乱視自体は日本人に幅広くみられる屈折異常であり、「必ずしも恐ろしい病気」というわけではありません。しかし、放置すると生活のしづらさや目の疲れを生むだけでなく、以下のような状態に進むケースも考えられます。
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角膜が突出する「円錐角膜(けんすいかくまく)」になる恐れ
乱視の変化が長期的に進行すると、角膜が円錐状にとがってしまうリスクが高まる場合があります。円錐角膜になると屈折異常がますます大きくなり、重度の視力障害につながることもあります。場合によっては角膜移植が必要なレベルに至る事例も報告されています(Mayo Clinic, 2021年6月29日参照)。 -
弱視(じゃくし)を引き起こす
子どもの頃から乱視が強いまま放置されると、ピントが合わない状態の目を脳が「使えない」と認識し、映像情報の処理を拒絶することで「弱視」を発症する可能性があります。日本語では「片方の目が使われなくなる=なまけ目」と呼ばれることもありますが、正式には視覚発達の問題であり、できるだけ幼少期のうちに矯正を行うことが重要です。アメリカ国立衛生研究所(NIH)の報告(2021年6月29日参照)によれば、乱視による視覚入力の不均衡が弱視の一因となり得るため、小児期の早期発見・早期治療が推奨されています。
乱視を予防・改善するための日常的な工夫
乱視は遺伝的要因や角膜の形状変化など様々な要因が絡むため、完全な予防は難しいとされています。しかし、症状の進行を遅らせたり、日常の眼精疲労を軽減したりする対策は存在します。
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適切なメガネやコンタクトレンズの使用
乱視用に設計されたトーリックレンズなどを処方することで、歪んでいた光の焦点を整え、視界をくっきりさせることが可能です。特に度数の変化や見え方の不調を感じたら、こまめに眼科で再検査を受け、処方し直すことが大切です。
なお、2023年4月発表の論文(Alharthi Kら, 2023)によると、トーリック眼内レンズなども含めた乱視矯正は、軽度~中等度の乱視患者に対して比較的良好な視力向上効果をもたらすとの研究結果が報告されています。研究では計数千名規模の患者データを含むシステマティックレビューおよびメタアナリシスが行われ、世界各地の臨床データも検討されています。日本国内でも同様のレンズが導入されているため、担当医と相談しながら最適な矯正法を選ぶとよいでしょう。 -
定期的な眼科検診
乱視の有無や進行度合いは、視力検査や角膜形状の検査(角膜トポグラフィなど)で正確に測定できます。年齢や目の使い方にもよりますが、年に1回程度は眼科で視力や角膜の状態をチェックし、度数が合わないレンズを使っていないか確認しましょう。 -
日常の目のケア
1時間以上のパソコン作業をするときは、意識的に数分間休憩を取る「20-20-20ルール(20分ごとに20秒遠くを見て目を休めるなど)」を実践するのも眼精疲労の軽減に有効とされています。また、部屋の照明やデスクライトを適切な明るさに調整し、文字や画面を見やすい環境を整えることも大切です。 -
生活習慣の改善
睡眠不足や栄養不良、喫煙習慣などは全身の血流や健康状態に悪影響を及ぼし、目の回復力も落ちやすくなる可能性があります。最近では乱視と他の慢性疾患の関連が研究対象にもなっていますが、まだ十分なデータが揃っていないことも多いです。ただし、健康的な生活習慣を維持することはあらゆる疾患の予防につながると考えられているため、バランスの良い食生活や適度な運動、禁煙などの生活習慣改善は目の健康のためにも有効です。
乱視の治療方法
いったん乱視と診断された場合でも、程度や原因によっては選べる治療や矯正手段が複数存在します。
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メガネ・コンタクトレンズ
最も一般的かつ手軽な方法です。乱視矯正用(トーリック)のメガネやコンタクトレンズは、角膜のゆがみを補正するよう特別に設計されています。度数やレンズの種類によっては慣れるまでに時間がかかることもありますが、専門家の指示のもと適切な度数を合わせれば、日常生活の不便を大幅に改善できます。 -
レーシックなどの屈折矯正手術
レーザーで角膜を削り、角膜曲率の異常を矯正する手術です。適応可能かどうかは角膜の厚みや形状、年齢、全身状態などを含めた医師の評価が必要となります。近年はフェムトセカンドレーザーによるより精密な施術など、手術技術も進歩しています。ただし、手術に伴う合併症リスクや長期的な安定性など、不確定要素がないわけではないため、十分なカウンセリングと検査を受けて判断しましょう。 -
フェイキックIOL(有水晶体眼内レンズ)
自分の水晶体を残したまま眼内レンズを挿入する矯正法で、レーシックが向かない角膜の状態でも適用される場合があります。乱視にも対応したトーリックIOLの選択肢が増えており、より広範囲の屈折異常を矯正できるようになっています。ただしこの手術も高度な技術を要し、合併症リスクや費用面での問題もあるため、専門医と十分に相談してください。
日本国内での乱視事情と研究動向
日本でも乱視は一般的な屈折異常として認知されており、学校や企業の健康診断などで見つかることも少なくありません。国内外を含む大規模調査では、近視と遠視に比べて乱視単独の有病率はそれほど高くないとする報告と、やや高めであるとする報告があり、地域や年齢層によっても結果が異なると考えられています。また、最新の研究では、スマートフォンやパソコンの普及にともなう「近業作業」の増加が視機能に及ぼす影響が注目されており、若年層を中心に乱視を含む屈折異常が増える可能性が指摘されています。
たとえば2022年に実施された国際的メタアナリシス研究(Hashemi Hら, J Curr Ophthalmol, 2022)では、世界各地域の屈折異常の有病率が詳細に解析されており、日本をはじめ東アジアでは特に近視の割合が高い一方で、乱視についても一定の割合で見られることが示されました。研究者らは都市部と農村部、長時間の学習やデジタルデバイス使用の度合いなどが視力に関係する可能性を指摘しており、日本国内でも同様の傾向があると推測されます。
おすすめのケア・習慣
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こまめな休憩
スマホやパソコンを1時間以上連続で見る場合、意図的に休憩を挟みましょう。20秒ほど遠方を見たり、軽く目を閉じたりするだけでも疲労回復に役立ちます。 -
照明環境の最適化
文字や画面が映りこみにくく、まぶしさを感じにくい照明を心がけます。暗い部屋でスマホやテレビを見続けると、瞳孔が開き乱視の影響を強く感じる場合があります。 -
定期的なコンディションチェック
目だけでなく、首や肩のこり、頭痛などがあれば、早めに対処することで悪化を防ぐことができます。必要に応じて整形外科や理学療法士など他科のサポートも検討してみるといいでしょう。 -
子どもの視力検査の重要性
学校での視力検査や自治体の乳幼児健診で、乱視や弱視の疑いが指摘された場合、必ず眼科専門医の精密検査を受けることをおすすめします。早期発見・早期治療が子どもの視力発達において決定的に重要です。
結論と提言
乱視は多くの人が経験する屈折異常の一種であり、軽度の場合は日常生活で見過ごされることも少なくありません。しかしながら、進行すると視界が二重になる、慢性的な頭痛や眼精疲労が続く、夜間運転が困難になるなど、生活の質を大きく下げるリスクがあります。さらに、放置によって角膜が変形する「円錐角膜」や弱視に発展するケースも考えられるため、気になる症状がある場合は早めの眼科受診が望ましいです。
治療や矯正方法にはメガネやコンタクトレンズ、レーシックをはじめとする屈折矯正手術、フェイキックIOLなど多彩な選択肢が存在します。角膜や目の状態によって適切な手段は異なり、また年齢やライフスタイルに応じてメリット・デメリットも違うため、専門家の判断と相談のうえで最適な方法を選ぶことが重要です。
日常生活では、作業時間を区切って目を休ませる、暗い場所での作業を最小限に抑える、栄養バランスに配慮した食事や十分な睡眠を確保するといった基本的な健康管理が、乱視の進行や眼精疲労を軽減するうえで大きな効果をもたらします。小さなサインを見逃さず、視界に少しでも違和感を覚えたら早めに検査・診断を受けるよう心がけましょう。
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