浣腸の正しい知識|便秘の基本から危険な副作用、安全な使い方と代替案まで徹底解説
消化器疾患

浣腸の正しい知識|便秘の基本から危険な副作用、安全な使い方と代替案まで徹底解説

つらい便秘に悩まされ、「今すぐこの苦しさから解放されたい」という思いで浣腸(かんちょう)を手に取ろうと考えている方は少なくないでしょう。浣腸は確かに即効性のある対処法ですが、その手軽さの裏には、見過ごすことのできない重大なリスクが隠されています。安易な使用は、時として命に関わる事態を引き起こす可能性さえあるのです。この記事は、JAPANESEHEALTH.ORG編集部が、日本の最新の医学的知見である「便通異常症診療ガイドライン2023」に基づき、浣腸に関する包括的で信頼性の高い情報を提供するために作成しました。単なる使い方ガイドではありません。あなたの健康を守るため、便秘という問題の根本的な理解から始め、浣腸が治療の選択肢の中でどのような位置づけにあるのか、そしてどのような危険性を伴うのかを、専門家の監修のもとで深く、そして誠実に解説します。この記事を読めば、あなたは浣腸を安全かつ適切に判断するための知識を身につけ、より健康的で持続可能な便秘解消法への道筋を見つけることができるはずです。

この記事の要点まとめ

  • 浣腸は慢性便秘の第一選択薬では**ありません**。あくまで緊急時・一時的な「頓用(とんよう)」の治療法です。22
  • 日本の最新の医学的指針「便通異常症診療ガイドライン2023」では、まず生活習慣の改善、次に酸化マグネシウムなどの「浸透圧性下剤」の使用が強く推奨されています。22
  • 浣腸の不適切な使用は、直腸を傷つけ、腹膜炎や敗血症といった生命を脅かす「直腸穿孔」を引き起こす重大なリスクを伴います。特に立ったままの使用は極めて危険です。11
  • 常用(連用)すると、自然な排便反射が弱まり、浣腸なしでは排便できない「クセになる」状態に陥る危険性があります。7
  • 妊娠中の方、高齢者、心臓や腎臓に持病がある方は、重篤な副作用のリスクが特に高いため、使用前に必ず医師に相談する必要があります。711

第1部:あなたの便秘を理解する(まず、敵を知る)

浣腸について語る前に、まず「便秘」そのものを正しく理解することが不可欠です。多くの人が悩むこの症状は、単なる不快感以上の、深刻な健康問題のサインである可能性があります。

1.1. 便秘の医学的定義とは?

便秘とは、単に「便が出ない」状態だけを指すわけではありません。「便通異常症診療ガイドライン2023」によると、便秘は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。5 つまり、回数だけでなく、排便時の困難さや残便感も重要な要素です。

国際的によく用いられる診断基準「ローマIV基準」では、以下の項目のうち2つ以上が過去3ヶ月間にわたって存在する場合に「慢性便秘症」と診断される可能性があります。25

  • 排便の4回に1回以上で、強くいきむ必要がある
  • 排便の4回に1回以上で、兎糞状便または硬便である
  • 排便の4回に1回以上で、残便感がある
  • 排便の4回に1回以上で、直腸肛門の閉塞感や詰まっている感じがする
  • 排便の4回に1回以上で、用手的な排便介助が必要である(指で便をかき出すなど)
  • 自発的な排便回数が週に3回未満である

1.2. なぜ便秘は「ただの不快感」ではないのか?

便秘は、多くの日本人にとって身近な問題です。厚生労働省の2019年の調査では、人口1000人あたり男性で25人、女性で44人が便秘の症状を訴えています。1 特に女性や高齢者でその割合は高くなります。しかし、この「ありふれた」問題の背後には、見過ごせない健康リスクが潜んでいます。

近年の研究では、慢性的な便秘が以下の深刻な疾患のリスクを高める可能性が指摘されています。2

  • 大腸がん
  • 心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中)
  • パーキンソン病
  • うつ病

さらに、便秘による労働生産性の低下がもたらす経済的損失は、ある日本の研究によると年間一人あたり約122万円にも上ると推計されています。6 このように、便秘は個人のQOL(生活の質)を著しく低下させるだけでなく、社会全体にも影響を及ぼす「静かなる流行病」と言えるのです。

第2部:治療の土台:下剤に頼る前にすべきこと

便秘治療の第一歩は、薬ではありません。日本の診療ガイドラインが最も強く推奨しているのは、生活習慣の改善です。22 これらは根本的な解決への最も安全で重要なアプローチです。

2.1. 食物繊維:便のかさを増やす

食物繊維は便の材料となり、水分を吸収して便を柔らかく、排出しやすくします。日本の食事摂取基準(2025年版)では、1日の摂取目標量が25gに引き上げられる見込みですが、多くの日本人はこの目標に達していません。3537 以下の食品を積極的に食事に取り入れましょう。38

  • ごぼう、こんにゃく、海藻類、納豆などの伝統的な和食の食材
  • プルーン、キウイフルーツ、サイリウム(オオバコ):これらはランダム化比較試験(RCT)で有効性が示唆されている食品です。540

2.2. 水分摂取:便を柔らかくする

食物繊維の効果を最大限に引き出すためには、十分な水分摂取が不可欠です。1日あたり1.5リットルを目安に、こまめに水を飲む習慣をつけましょう。ある調査では、日本人のうちこの目標を達成できているのはわずか16.6%でした。37

2.3. 運動と排便習慣

  • 適度な運動:ウォーキングや腹筋運動は、腸の蠕動(ぜんどう)運動を活発にします。31
  • 排便習慣の確立:便意を感じたら我慢しないことが最も重要です。20 また、毎朝食後など、決まった時間にトイレに座る習慣をつけることで、排便リズムが整いやすくなります。

2.4. 文化的なアプローチ:「梅流し」と「腸もみ」

民間療法として知られる「梅流し」は、大根(食物繊維・酵素)と梅干し(クエン酸・マグネシウム)を組み合わせたものです。39 一定の効果が期待できる可能性がある一方で、塩分が高いことから高血圧の方は注意が必要であり、胃腸が敏感な方には刺激が強すぎる場合があります。また、お腹を「の」の字にマッサージする「腸もみ」や、へその両脇にある「天枢(てんすう)」などのツボ押しも、リスクの低い補助療法として試してみる価値があるでしょう。41

第3部:便秘に対する現代医療のアプローチ(2023年ガイドラインに基づく)

生活習慣の改善だけでは効果が不十分な場合、医療機関では薬物治療が行われます。重要なのは、日本の専門家が合意した「治療の順番」が存在するということです。「便通異常症診療ガイドライン2023」は、その最新の地図です。22

公式治療フローチャートの要約

  1. ステップ1:生活習慣・食事療法(すべての患者の基本)
  2. ステップ2:第一選択薬 – 浸透圧性下剤(生活習慣改善で不十分な場合)
    • 酸化マグネシウム、ポリエチレングリコール(PEG)など
    • 推奨度:強、エビデンスレベル:A(高品質な証拠あり)22
  3. ステップ3:第二選択薬 – 新規作用機序薬(浸透圧性下剤で効果不十分な場合)
    • 上皮機能変容薬(ルビプロストン、リナクロチド)
    • 胆汁酸トランスポーター阻害薬(エロビキシバット)
    • 推奨度:強、エビデンスレベル:A22
  4. ステップ4:レスキュー(頓用)療法(上記で効果がない場合の緊急的使用)
    • 刺激性下剤(センナ、ビサコジルなど)と浣腸
    • これらは常用すべきではありません。22

出典:便通異常症診療ガイドライン2023522に基づく要約

このフローチャートが示す最も重要な点は、浣腸は決して最初の選択肢ではないということです。医療の現場では、まず安全性の高い浸透圧性下剤から治療を開始し、効果を見ながら段階的に薬を調整していくのが標準的なアプローチです。浣腸は、このプロセスの中で、あくまで一時的な症状緩和のための「最後の手段」の一つとして位置づけられています。

3.1. 漢方薬(Kampo Medicine)の役割

漢方薬も便秘治療の選択肢の一つですが、ガイドラインでは「代替・補助的」な治療法とされています。23 これは、質の高い臨床試験のデータがまだ少ないためです。26 使用される漢方薬には刺激性下剤成分である「大黄(だいおう)」を含むものが多く、長期使用には注意が必要です。

表1:診療ガイドラインで言及される主な便秘用漢方薬
漢方薬名 主な適応・対象者 主な生薬 ガイドライン上の注意・エビデンスレベル
大黄甘草湯 (Daio-kanzo-to) 一般的な便秘、基本処方 大黄、甘草 エビデンスの質:低(C)、推奨度:弱い(2)。大黄を含むため長期使用に注意。26
麻子仁丸 (Mashin-gan) 高齢者、硬くコロコロした便 麻子仁、大黄、杏仁 エビデンスの質:低(C)、推奨度:弱い(2)。便を潤す作用。26
潤腸湯 (Juncho-to) 高齢者、体液不足による乾燥した便 地黄、当帰、大黄 エビデンスは低いが、症例報告で症状改善が報告されている。26
大建中湯 (Daiken-chu-to) 腹部の膨満感を伴う便秘 乾姜、人参、山椒 エビデンスの質:低(C)、推奨度:弱い(2)。大黄を含まず、作用は穏やか。26

第4部:浣腸(浣腸)-「頓用」の道具として

【重要】このセクションを読む前に: これまでのセクションで解説した通り、浣腸は慢性便秘の根本的な治療法や第一選択薬ではありません。ここからの情報は、あくまで緊急的・一時的な使用を想定した場合の知識として提供するものです。

4.1. 浣腸はどのように作用するのか?

日本で市販されている浣腸のほとんどはグリセリンを主成分としています。7 その作用機序は主に2つです:

  1. 浸透圧作用:グリセリンが直腸の壁から水分を便の中に引き込み、硬い便を柔らかくします。
  2. 刺激作用:グリセリン液そのものが直腸の粘膜を刺激し、腸の蠕動運動を誘発して便意を引き起こします。

この二重の作用により、浣腸は使用後数分から数十分という迅速な効果を発揮します。10

4.2. 日本の市販浣腸薬の種類

日本の薬局では、様々な種類の浣腸が販売されています。これらは主に容量、対象年齢、ノズルの形状によって区別されます。

表2:日本の市販浣腸薬の概要
メーカー 商品名 容量/用量 対象年齢 ノズルタイプ・長さ 主な特徴
イチジク製薬 イチジク浣腸30/40 30g / 40g 12歳以上 イチジク型 最も一般的なブランドの一つ。8
ムネ製薬 コトブキ浣腸10/20/30/40 10g, 20g, 30g, 40g 1歳未満は半量から(年齢による) イチジク型 (約3.2cm) 乳幼児から大人まで幅広いラインナップ。10
ムネ製薬 ひとおし30/40 30g / 40g 12歳以上 ジャバラ型 (約3.8cm / 4.2cm) 容器を押しつぶしやすく、薬液を最後まで出しやすい。10
ムネ製薬 L40 40g 12歳以上 医療向けロングタイプ (約6.0cm) ノズルが長く、在宅介護などでの使用に適している。10
健栄製薬 ケンエー浣腸 20g, 30g, 40g 6歳以上(容量による) イチジク型 大手医薬品メーカーによる標準的な製品。8

第5部:【最重要警告】浣腸のリスクと危険性

浣腸の利便性の裏には、深刻なリスクが存在します。このセクションは、あなたの安全のために最も重要な情報です。競合サイトが軽視しがちなこれらのリスクを、私たちは医学的根拠に基づいて詳細に解説します。

表3:浣腸のリスクプロファイル:危険性・副作用・禁忌の要約
リスク分類 具体的な危険性・副作用 影響を受ける対象者・条件 根拠資料
機械的損傷(高リスク) 直腸穿孔(腸に穴が開く)→腹膜炎、敗血症性ショック、死亡 特に立位での使用は危険。高齢者、腸壁が脆弱な人。 1112
機械的損傷 ストッパー(首の部分)の体内遺残 使用者の技術的ミス 11
全身性リスク 溶血(赤血球の破壊)とそれに続く腎不全 肛門・直腸に傷や炎症がある場合、グリセリンが血管に吸収される 11
全身性リスク 血圧変動、心臓への負担 重篤な心疾患を持つ患者 11
特定集団のリスク 子宮収縮を誘発し、流産・早産のリスク 妊娠中の方 7
特定集団のリスク 過量投与、脱水症状、電解質異常 乳幼児、小児、高齢者 11
長期使用のリスク 自然な排便反射の減弱(クセになる)、依存 長期間、頻繁に使用する人 7
絶対禁忌(使用禁止) 腸管出血、急性の腹部炎症、腸閉塞、直腸穿孔の疑い 症状を急激に悪化させ、生命の危険があるため 7

5.1. 致死的なリスク:直腸穿孔

浣腸における最も重篤な合併症は、物理的な直腸穿孔です。これは、浣腸の硬い先端が直腸の壁を突き破ってしまうことで発生します。厚生労働省は、医療機関での検査前に浣腸を使用した患者が直腸穿孔を起こした事例を報告し、注意喚起を行っています。11

警告:立ったまま(立位)での浣腸は絶対に行わないでください。立った状態では、直腸が鋭角に曲がり、腹圧も高まるため、ノズルが腸壁を傷つけ、穿孔を起こす危険性が劇的に高まります。11 直腸穿孔は、糞便が腹腔内に漏れ出すことで致死的な腹膜炎や敗血症性ショックを引き起こす、極めて危険な状態です。12

5.2. 「クセになる」という依存のリスク

「浣腸はクセになる」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。これは医学的にも真実です。浣腸の強い刺激に頼り続けると、体本来が持つ「便が直腸に溜まったことを感じて便意を催す」という自然な反射が鈍くなってしまいます。7 その結果、浣腸の助けなしでは自力で排便することが困難になり、精神的にも「浣腸がないと出ない」と思い込む依存状態に陥ってしまうのです。専門家は、浣腸の使用は週に2回程度までにとどめるべきであり、決して長期的な解決策ではないと強調しています。20

第6部:浣腸を絶対に使ってはいけない人、特に注意が必要な人

特定の健康状態や状況下では、浣腸の使用は固く禁じられているか、極めて慎重な判断が求められます。

【絶対禁忌】使用してはいけない方

  • 腸管内に出血がある、またはその疑いがある方7
  • 腹部に急性の炎症(虫垂炎など)がある方7
  • 腸閉塞(イレウス)またはその疑いがある方7

【慎重投与】使用前に必ず医師に相談が必要な方

  • 妊娠中または妊娠の可能性がある方:子宮収縮を誘発し、流産や早産につながる危険があります。7
  • 高齢者:脱水症状や血圧の急な変動を起こしやすく、心臓への負担が大きくなります。11
  • 乳幼児・小児:体の大きさに比べて薬液の量が多くなりがちで、過量投与や電解質バランスの乱れを引き起こすリスクが高いです。11 用量を厳密に守る必要があります。
  • 重篤な心臓病や腎臓病のある方:血圧や体液バランスの変動が命に関わる可能性があります。11
  • 肛門や直腸に傷や炎症(痔など)がある方:グリセリンが血管内に吸収され、溶血や腎不全を引き起こすリスクがあります。11

第7部:それでも浣腸を使う場合の安全な使用法

免責事項:以下の手順は、メーカーの指示14と厚生労働省の警告11に基づき、リスクを最小化するための情報提供です。しかし、リスクがゼロになるわけではありません。自己判断での使用には常に危険が伴うことをご理解ください。

図解:安全な姿勢 vs 危険な姿勢

【推奨される安全な姿勢:左側臥位】

体の左側を下にして横になり、膝を軽くお腹の方へ曲げます。この姿勢は直腸の走行に沿っており、ノズルがスムーズに、そして安全に入りやすくなります。

【禁止される危険な姿勢:立位】

立ったまま前かがみになる姿勢は、直腸が鋭角に曲がり、ノズルの先端が腸壁を突き破る「穿孔」のリスクが非常に高くなります。絶対に避けてください。

安全な使用手順

  1. 準備:トイレの近くで、タオルなどを敷いた上で行います。すぐにトイレに行けるように準備しておきましょう。
  2. 姿勢をとる:上記の「安全な姿勢(左側臥位)」をとります。
  3. キャップを外す:浣腸のキャップを外します。先端に薬液を少量塗布すると滑りが良くなります。
  4. 挿入する:体の力を抜き、リラックスした状態で、ノズルを肛門からゆっくりと、直腸の走行(おへその方向)を意識して挿入します。抵抗を感じたら、無理に押し込まないでください。
  5. 薬液を注入する:容器をゆっくりと、しかし確実に押しつぶし、薬液を全て注入します。
  6. 待機する:ノズルを抜いた後、ティッシュペーパーなどで肛門を押さえながら、3分から10分程度、便意が十分に強くなるまで我慢します。すぐに排便してしまうと、薬液だけが出てしまい効果が得られないことがあります。
  7. 排便する:十分に便意が強くなったら、トイレで排便します。

第8部:医療機関を受診するタイミング

便秘は多くの場合、セルフケアで改善可能ですが、以下のような場合は、自己判断を中止し、速やかに医療機関を受診してください。

【緊急】すぐに受診が必要な「レッドフラッグ」サイン

  • 激しい腹痛、嘔吐を伴う
  • 便に血が混じる(黒い便、血便)
  • 発熱がある
  • 急激な体重減少がある

これらの症状は、腸閉塞や大腸がんなど、重篤な疾患のサインである可能性があります。

慢性的な便秘で受診を検討すべき場合

市販の便秘薬(浸透圧性下剤)を1週間試しても改善しない、または便秘と下痢を繰り返す、長年にわたって便秘に悩んでいるといった場合は、消化器内科や便秘外来464748などの専門医に相談することをお勧めします。専門医は、あなたの便秘のタイプを正確に診断し、2023年のガイドラインに基づいた最新かつ最適な治療法を提案してくれます。

よくある質問 (FAQ)

毎日浣腸を使っても大丈夫ですか?

いいえ、絶対にやめてください。浣腸の毎日の使用は、自然な排便反射を著しく低下させ、浣腸なしでは排便できない身体的・心理的依存状態(クセになる)を引き起こす非常に高いリスクがあります。7 診療ガイドラインでも、浣腸はあくまで緊急時・一時的な使用(頓用)に限るべきとされています。22

妊娠中に便秘で苦しいのですが、浣腸を使ってもいいですか?

自己判断での使用は極めて危険です。浣腸の刺激が子宮収縮を誘発し、流産や早産のリスクを高める可能性があります。7 妊娠中の便秘は非常に多い悩みですが、安全な対処法があります。必ずかかりつけの産婦人科医に相談してください。

浣腸を使っても便が出ません。どうすればいいですか?

浣腸を使用しても排便がない場合、あるいは激しい腹痛や吐き気などの他の症状が現れた場合は、腸閉塞など別の問題が隠れている可能性があります。自己判断で追加の浣腸を使用したりせず、速やかに医療機関を受診してください。

長年、刺激性下剤(センナやビサコジルなど)を飲んでいます。やめたほうがいいですか?

刺激性下剤の長期連用も、浣腸と同様に自然な排便機能を損なうリスクがあります。しかし、急にやめるとかえって便秘が悪化することがあります。現在の便秘治療では、酸化マグネシウムや新しいタイプの下剤など、より安全で効果的な選択肢が主流となっています。22 依存状態から安全に離脱し、適切な治療に切り替えるために、ぜひ一度、消化器内科の専門医にご相談ください。

結論

浣腸は、つらい便秘の症状を迅速に和らげる強力なツールです。しかし、その力は諸刃の剣であり、誤った使い方や安易な依存は、あなたの健康を深刻に脅かす可能性があります。この記事を通じて、私たちは浣腸が便秘治療の主役ではなく、あくまで脇役、それも慎重に扱うべき「最後の手段」の一つであることを、最新の医学的根拠に基づいてお伝えしてきました。あなたの便秘との戦いにおける真の解決策は、日々の生活習慣を見直し、安全な治療法を段階的に試み、そして必要であれば専門家の助けを借りることにあります。どうかこの情報を、あなた自身とあなたの大切な人の健康を守るための一助としてください。

免責事項この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康上の問題や症状がある場合は、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 便秘. EAファーマ株式会社. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.eapharma.co.jp/hubfs/patient/material/pdf/GOF-J-3-PM-00193.pdf
  2. 便秘について – 静岡市立清水病院. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.shimizuhospital.com/organ/13690/
  3. 高齢者における慢性便秘症に関する 患者実態調査. 診療と新薬. 2018;55(12):970-984. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.shinryo-to-shinyaku.com/db/pdf/sin_0055_12_0970.pdf
  4. 「便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症」のポイント グーフィス®とモビコール®の紹介を含めて – EAファーマ. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.eapharma.co.jp/medical/constipation-useful/video/point-of-guideline2023
  5. 日本消化管学会. 便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症. 南江堂; 2023. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.amazon.co.jp/%E4%BE%BF%E9%80%9A%E7%95%B0%E5%B8%B8%E7%97%87%E8%A8%BA%E7%99%82%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B32023%E2%80%95%E6%85%A2%E6%80%A7%E4%BE%BF%E7%A7%98%E7%97%87-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%B6%88%E5%8C%96%E7%AE%A1%E5%AD%A6%E4%BC%9A/dp/4524210059
  6. 日本研究:便秘者每年为日本带来122万日元经济损失 – 中国青年网. [インターネット]. 2019年6月11日. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: http://news.youth.cn/jk/201906/t20190611_11979076.htm
  7. 厚生労働省. 医薬品のリスクの程度の評価と情報提供の内容等. [インターネット]. 2005年1月17日. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/01/s0117-9d16.html
  8. 浣腸取扱商品一覧 | ファミリー薬局. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.natural-pharmacy.jp/topics/enema
  9. 便秘薬・浣腸薬 製品一覧 – 価格.com. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://kakaku.com/medicine/laxative/itemlist.aspx
  10. 浣腸って何?を徹底解説 実は優秀な便秘薬|ムネ製薬株式会社. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.mune-seiyaku.co.jp/useful/enema-what.html
  11. グリセリン浣腸の取扱い時の注意について. 厚生労働省. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000022381.pdf
  12. Jeong YS, Kim TY, Lee JK, Jo YJ. Rectal perforations caused by cleansing enemas in chronically constipated patients: Two case reports. World J Clin Cases. 2020 Jul 6;8(13):2844-2850. doi: 10.12998/wjcc.v8.i13.2844. PMID: 32685514; PMCID: PMC7346698. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7346698/
  13. Tantigate P, Pungpapong S, Dhepyasuwan T, Pithprathunkit N, Angkathunyakul N. Perforation and mortality after cleansing enema for acute constipation are not rare but are preventable. World J Gastrointest Surg. 2013 Apr 27;5(4):97-101. doi: 10.4240/wjgs.v5.i4.97. PMID: 23671732; PMCID: PMC3641812. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3641812/
  14. 浣腸薬の正しい使い方をご紹介|ムネ製薬株式会社. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.mune-seiyaku.co.jp/useful/enema-treatment.html
  15. Kedia S, Vuyyuru S, Panda N, et al. Systematic review: the adverse effects of sodium phosphate enema. Aliment Pharmacol Ther. 2007;26(1):9-20. doi: 10.1111/j.1365-2036.2007.03356.x. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17555417/
  16. Jorgensen LS, Center SA, Randolph JF, et al. Clinical, biochemical, acid-base, and electrolyte abnormalities in cats after hypertonic sodium phosphate enema administration. J Am Vet Med Assoc. 1985;46(4):980-8. Available from: https://avmajournals.avma.org/view/journals/ajvr/46/4/ajvr.1985.46.04.980.xml
  17. Korkut S, Tüzün A. Does sodium phosphate enema use cause electrolyte disorder?. J Surg Med. 2024;8(2):107-109. doi: 10.28982/josam.1408800. Available from: https://jsurgmed.com/article/view/7440/6463
  18. Korkut S, Tüzün A. Does sodium phosphate enema use cause electrolyte disorder? Sodium-phosphate enema poisoning. ResearchGate. [インターネット]. 2024年2月. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.researchgate.net/publication/379040185_Does_sodium_phosphate_enema_use_cause_electrolyte_disorder_Sodium-phosphate_enema_poisoning
  19. Kondoh M, Kida M, Yamane M, et al. Effects of a 250-mL enema containing sodium phosphate on electrolyte concentrations in healthy volunteers: An open-label, randomized, controlled, two-period, crossover clinical trial. Clin Ther. 2014;36(3):426-33. doi: 10.1016/j.clinthera.2014.01.006. PMID: 24529940; PMCID: PMC3965995. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3965995/
  20. 【医師監修】浣腸を使う際の注意点3つ!適切な使い方や便秘改善の…. 健栄製薬. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.kenei-pharm.com/ebenpi/column/column_142/
  21. Haddad D, Khan U, Mack D, et al. The Risks of Phosphate Enemas in Toddlers: A Life-Threatening Unawareness. Cureus. 2024 Apr 18;16(4):e58525. doi: 10.7759/cureus.58525. PMID: 38766124; PMCID: PMC10968950. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10968950/
  22. 小笠原尚・他. 慢性便秘症. 愛知県医師会報. 2023;71(1):63-67. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.aichi.med.or.jp/webcms/wp-content/uploads/2023/06/71_1_p063_Special2-Ogasawara.pdf
  23. 慢性便秘症の治療薬 – 小金井つるかめクリニック. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://koganei.tsurukamekai.jp/blog/constipation_medicine.html
  24. (旧版)慢性便秘症診療ガイドライン2017. Mindsガイドラインライブラリ. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00431/
  25. 慢性便秘症の 診断と治療. 健栄製薬. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.kenei-pharm.com/cms/wp-content/uploads/2018/04/13b2c4a30c57df49b25ebdd300772f07.pdf
  26. 慢性便秘症診療ガイドライン 2017. 日本東洋医学会. [インターネット]. 2017年10月10日. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: http://www.jsom.or.jp/medical/ebm/cpg/pdf/Issue/TypeA/20171010.pdf
  27. 便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症: 書籍 – 南江堂. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524210053/
  28. 便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症 – Mindsガイドラインライブラリ. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00812/
  29. 慢性便秘症ガイドライン改訂、非専門医向けに診療フローチャート – ケアネット. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.carenet.com/news/general/carenet/57168
  30. 慢性便秘症について – 小金井つるかめクリニック. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://koganei.tsurukamekai.jp/blog/constipation.html
  31. Constipation – Diagnosis and treatment – Mayo Clinic. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/constipation/diagnosis-treatment/drc-20354259
  32. Chronic Constipation in Adults – AAFP. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.aafp.org/pubs/afp/issues/2022/0900/chronic-constipation-adults.html
  33. 便秘治療についてまとめてみました。〜内服治療編〜 – 福岡天神内視鏡クリニックブログ. [インターネット]. 2025年3月17日. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.fukuoka-tenjin-naishikyo.com/blogpage/2025/03/17/15398/
  34. とくながクリニック 便秘に. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.tokunaga-cl.jp/wp-content/uploads/2024/08/%E3%81%A8%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%81%8C%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E3%80%80%E4%BE%BF%E7%A7%98%E3%81%AB-%E9%96%A2%E3%81%97%E3%81%A6-%E3%81%BE%E3%81%A8%E3%82%81.pdf
  35. 食物繊維の摂取目標と不足しがちな現状|センイラボ|ファイブ…. 大塚製薬. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.otsuka.co.jp/fib/labo/02/
  36. 食物繊維の働きと1日の摂取量 | 健康長寿ネット. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/shokumotsu-seni.html
  37. 食事摂取基準(2025年版)で食物繊維がより重要視!1日25g以上の…. PR TIMES. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000069.000049031.html
  38. 【コラム】便秘解消にとっておきの食べ物とは?お通じが良くなる…. ロート製薬. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://jp.rohto.com/learn-more/gastrointestinal/benpi/food/
  39. 便秘におすすめの食べ物や飲み物は?便秘に効く即効性の高いもの…. ひまわり医院. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://soujinkai.or.jp/himawariNaiHifu/constipation-food/
  40. 「便通異常症診療ガイドライン2023」にプルーンの便秘改善効果の論文が引用されました。. ミキプルーン. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.mikiprune.co.jp/news_topics/prune-guidline/
  41. 【便秘解消!】マッサージ・ツボなど便秘改善に効果が期待できる方法を解説! – わかもと製薬. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.wakamoto-pharm.co.jp/tips/intestine-body/relieve-constipation/
  42. 便秘 もっと詳しく:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://ganjoho.jp/public/support/condition/constipation/ld01.html
  43. 一般的な使い方 | 便秘解消にイチジク浣腸 | イチジク製薬株式会社. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://ichijiku.co.jp/enema/use/use01
  44. 便秘とは? | 失敗しない便秘薬選びのための便秘解消講座 – 健栄製薬. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.kenei-pharm.com/ebenpi/course/index2/
  45. 酸化マグネシウムE便秘薬|健栄製薬 | 便秘は医薬品で解決しま…. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.kenei-pharm.com/ebenpi/
  46. 【2025年最新】東京都の便秘外来におすすめのクリニック10選. マイナビクリニック. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://clinic.mynavi.jp/article/tokyo_constipation-outpatient/
  47. 排便機能外来 | 自治医科大学附属病院 外科学講座 消化器一般移植外科部門. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.jichi.ac.jp/usr/surg/patient/%E6%8E%92%E4%BE%BF%E6%A9%9F%E8%83%BD%E5%A4%96%E6%9D%A5/
  48. 便秘外来|さいたま市で消化器の専門医に便秘の相談ができる消化器内科 – 里村クリニック. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://satomura-clinic.com/constipation-specialist/
  49. 研究者詳細 – 伊原 栄吉. 九州大学. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/html/100019090_ja.html
  50. 伊原 栄吉 (Eikichi Ihara) – マイポータル – researchmap. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://researchmap.jp/eikichi
  51. 慢性便秘症診療の実際 尾高健夫 先生 | ブログ. 川村内科診療所. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: http://kawamura-cl.plimo.jp/kawamura-cl-blog/e/post_369.php
  52. 便秘治療についてまとめてみました。その1 – 福岡天神内視鏡クリニックブログ. [インターネット]. 2025年3月10日. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://www.fukuoka-tenjin-naishikyo.com/blogpage/2025/03/10/15378/
  53. 便秘症 | 健康によい食事療法-管理栄養士監修. あまが台ファミリークリニック. [インターネット]. [引用日: 2025年6月19日]. Available from: https://amagadai-fc.com/syokuji/constipation_20240420/
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ