赤ちゃんのごま油はいつから?管理栄養士が教える開始時期・量・選び方・アレルギー注意点
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赤ちゃんのごま油はいつから?管理栄養士が教える開始時期・量・選び方・アレルギー注意点

赤ちゃんの離乳食が始まると、使える食材や調味料について悩むお母さんは多いのではないでしょうか。中でも「ごま油」は栄養がありそうだけど、いつから、どのように使えばいいのか、アレルギーは大丈夫?など、気になることが多い食材の一つです。この記事では、管理栄養士の視点から、赤ちゃんのごま油利用に関する疑問を徹底解説。日本の公式ガイドラインや最新の研究に基づき、安全な開始時期、適切な量、選び方のポイント、そして最も心配なアレルギーについて、詳しくお伝えします。この記事を読むことで、赤ちゃんへのごま油の安全な使い方を理解し、離乳食の幅を広げるための一助となるでしょう。

要点まとめ

  • ごま油は、オレイン酸やリノール酸などの良質な脂質、ビタミンE、ビタミンK、セサミンなどのリグナン類を含み、赤ちゃんの成長と健康維持に貢献する可能性があります。
  • 離乳食へのごま油の導入は、厚生労働省のガイドラインに基づき、生後7~8ヶ月頃から他の食材に慣れた後に、ごく少量から始めるのが目安です。
  • 初めて使用する際は、アレルギー反応に注意し、赤ちゃんの体調が良い日に、他の新しい食材と混ぜずに試しましょう。
  • ごま油の種類では、香りが穏やかな「太白ごま油」や、ごま100%の「純正ごま油」を選び、添加物のないものが推奨されます。
  • ごまはアレルギー表示「特定原材料に準ずるもの」の一つであり、アレルギー症状(じんましん、嘔吐、咳など)に注意が必要です。疑わしい場合は速やかに医療機関を受診してください。

1. ごま油とは?赤ちゃんの成長に役立つ栄養素

ごま油は、古くから日本の食卓で親しまれてきた調味料の一つですが、その栄養価の高さから、近年では乳幼児の食事への利用も注目されています。特に、赤ちゃんの健やかな発育に欠かせない栄養素を含んでおり、適切に取り入れることで様々な恩恵が期待できます。

1.1. ごま油の主な栄養成分と乳幼児への貢献

ごま油には、赤ちゃんの成長に必要な様々な栄養成分が含まれています。主なものとしては以下の通りです。

  • 良質な脂質: ごま油の主成分である脂質には、オレイン酸やリノール酸(n-6系必須脂肪酸)が豊富に含まれています3, 8。これらは乳児の脳の発達、皮膚の健康維持、そして重要なエネルギー源として不可欠です。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、乳児(6~11ヶ月)のn-6系脂肪酸の目安量は4g/日とされています2。ごま油を少量使うことで、これらの脂質の摂取に貢献できます。
  • ビタミンE群: ごま油には、α-トコフェロールやγ-トコフェロールといったビタミンEが含まれています3, 8。ビタミンEは強い抗酸化作用を持ち、体内の細胞を酸化ストレスから保護する働きがあります。乳児(6~11ヶ月)のα-トコフェロールの目安量は3.0mg/日とされており2、ごま油からの摂取も期待できます。また、ごま油を焙煎することで抗酸化力が高まる可能性も指摘されています7
  • ビタミンK: ごま油にはビタミンKも含まれています3。ビタミンKは、血液の正常な凝固作用に不可欠な栄養素です。乳児(6~11ヶ月)のビタミンKの目安量は7μg/日です2
  • リグナン類: セサミンやセサモリンといったリグナン類は、ごま特有の抗酸化物質です8, 9。これらの成分は、健康維持に役立つ様々な効果が研究されており、ごま油の健康価値を高める要素の一つと考えられています。ただし、これらの研究は主に成人を対象としたものであり、乳幼児への直接的な効果についてはさらなる研究が必要です。

1.2. ごま油の種類と特徴:焙煎、太白(生搾り)の違いは?

一言にごま油といっても、いくつかの種類があり、それぞれ風味や特徴が異なります。

  • 焙煎ごま油: 一般的に「ごま油」として流通しているのはこのタイプで、ごまを焙煎してから搾油するため、特有の香ばしい風味が特徴です。料理の風味付けに適しています。
  • 太白ごま油(たいはくごまあぶら): ごまを焙煎せずに生のまま圧搾して作られます。そのため、色は薄く透明感があり、ごま特有の香りはほとんどなく、風味が穏やかです。素材の味を活かしたい料理や、お菓子作りなどにも使われます。
  • 玉締めしぼりごま油: 伝統的な製法である玉締め圧搾法で搾油されたごま油です。手間がかかるため比較的高価ですが、ごま本来の風味や栄養が活かされているとされています。

1.3. 赤ちゃんにはどの種類を選ぶべき?

赤ちゃんに初めてごま油を使う場合は、いくつか考慮すべき点があります。まず、アレルギーのリスクを最小限にするために、ごま100%で作られた「純正ごま油」を選びましょう。調合ごま油(ごま油と他の植物油を混ぜたもの)は、他の油に対するアレルギーの可能性も考慮する必要があるため、最初は避けた方が無難です。香りが気になる赤ちゃんには、風味が穏やかな太白ごま油から試してみるのも良いでしょう。いずれの種類を選ぶにしても、添加物が含まれていない、品質の良いものを選ぶことが大切です。

2. 赤ちゃんにごま油はいつから?開始時期と適切な量

ごま油を赤ちゃんの食事に取り入れるタイミングや量は、多くの保護者が気にするポイントです。ここでは、日本の公的ガイドラインや専門家の意見を基に解説します。

2.1. 厚生労働省のガイドラインに基づく開始時期

厚生労働省が発行している「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」によると、油脂類全般の導入は離乳中期(生後7~8ヶ月頃)から、他の食材(おかゆ、野菜、豆腐、白身魚など)に慣れた後に、風味付け程度にごく少量からとされています1。これは、赤ちゃんの消化機能が徐々に発達してくる時期に合わせるためです。
専門家の間でも、このガイドラインに沿った見解が一般的です。例えば、管理栄養士の太田百合子氏は、油脂類は8ヶ月頃から調理に少量使う程度としており6、同じく管理栄養士の高橋嘉名芽氏は、離乳食へのごま油の導入は離乳後期(9~11ヶ月頃)からを推奨しています5。これらの推奨時期は、いずれも厚生労働省のガイドラインの範囲内であり、大切なのは赤ちゃんの個々の発達状況や離乳食の進み具合に合わせて、焦らず慎重に進めることです。

2.2. 月齢別の使用量の目安と頻度

ごま油を初めて与える際は、まず耳かき1杯程度の本当にごく少量からスタートしましょう。アレルギー反応が出ないか、赤ちゃんの様子(機嫌、便の状態など)を注意深く観察しながら、問題がなければ徐々に量を増やしていきます。
一般的に、離乳食後期(9~11ヶ月頃)から完了期(1歳~1歳半頃)にかけて、1回の使用量は小さじ1/4~1/2程度までが目安とされていますが、これはあくまで一般的な目安であり、具体的な公的基準値が設けられているわけではありません。基本的には、料理の風味付けや、食材のパサつきを抑える目的で、少量に留めるのが賢明です。
使用頻度についても、毎日必ず使う必要はありません。週に数回程度、離乳食のメニューに変化をつけたい時や、風味のアクセントとして取り入れるのが良いでしょう。

2.3. 与えすぎの注意点

栄養価の高いごま油ですが、与えすぎには注意が必要です。主な注意点は以下の通りです。

  • 消化器への負担: 赤ちゃんの消化器官はまだ未熟です。脂質を一度に多く摂取すると、消化しきれずに胃腸に負担がかかり、下痢や嘔吐の原因となる可能性があります。
  • カロリーオーバー: ごま油は脂質が主成分であるため、少量でもカロリーが高い食品です。過剰な摂取が続くと、特に長期的に見て乳幼児期の肥満のリスクを高める可能性も否定できません。栄養バランスの取れた離乳食全体の中で、適切な量を守ることが重要です。

3. ごま油の赤ちゃんへの嬉しい効果(科学的根拠と専門家の見解)

ごま油には、良質な脂質やビタミン類、特有の成分であるリグナン類が含まれており、これらが赤ちゃんの健康維持に様々な形で貢献すると考えられています。ただし、効果を期待して過剰に摂取するのではなく、バランスの取れた食事の一部として適量を取り入れることが大切です。

3.1. 消化器系への働き:便秘改善効果は期待できる?

一般的に、油脂類は便の滑りを良くする働きがあるため、便秘気味の赤ちゃんに対して、離乳食に少量の油を加えることが推奨される場合があります。ごま油も油脂の一種として同様の効果が期待されることは考えられますが、赤ちゃんのごま油摂取による直接的な便秘改善効果を強く示す質の高い臨床研究は限定的です。もし赤ちゃんが便秘で悩んでいる場合は、ごま油に頼るだけでなく、食事全体の繊維質の量や水分摂取量を見直し、必要であれば小児科医に相談することが重要です。

3.2. 皮膚への効果:保湿や湿疹改善に役立つ?

ごま油に含まれるビタミンEやリノール酸は、皮膚の健康維持に関わる栄養素です3, 4, 9。これらの成分は、肌のバリア機能をサポートし、乾燥を防ぐ効果が期待されます。一部では、ごま油を赤ちゃんの保湿ケアや湿疹のケアに外用(塗布)する情報も見られますが11、注意が必要です。新宿駅前クリニックのブログでは、太白ごま油など食用油をベビーマッサージに使用することで、経皮感作(皮膚からアレルゲンが侵入し、アレルギーを獲得すること)を引き起こし、食物アレルギーを発症するリスクについて警鐘を鳴らしています13。皮膚への使用については、必ずしも国内の専門家が推奨しているわけではなく、赤ちゃんの肌は非常にデリケートなため、自己判断での使用は避け、小児科医や皮膚科医に相談することが賢明です。離乳食として経口摂取するごま油が、間接的に皮膚の健康に良い影響を与える可能性はありますが、あくまでバランスの取れた食事全体の中での役割と捉えましょう。

3.3. 免疫機能のサポート

ごま油に含まれるビタミンEやリグナン類(セサミンなど)は抗酸化作用を持ち4, 8、体の免疫システムを正常に機能させる上で間接的に役立つ可能性があります。また、必須脂肪酸であるリノール酸も免疫細胞の材料となるなど、体の防御システムに関わっています9。ただし、これらの効果はごま油単独で得られるものではなく、多様な食品から構成されるバランスの取れた食事が基本となります。ごま油を少量加えることで、食事全体の栄養価を高め、健康な体づくりをサポートする一助となると考えられます。

3.4. 心血管系・脳の発達への長期的な貢献

ごま油に含まれるオレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸は、長期的に見て心血管系の健康維持に役立つとされています4, 9。また、脂質は脳の主要な構成成分であり、特に乳幼児期の急速な脳の発達において非常に重要です。これらの良質な脂質を適切に摂取することは、赤ちゃんの神経系の発達や認知機能の発達に長期的に貢献する可能性があります。ごま油はこれらの脂質を供給する源の一つとなり得ますが、特定の油に偏らず、様々な食品からバランス良く脂質を摂取することが大切です。

4. 最も重要!ごまアレルギーの知識と安全な進め方

ごま油を赤ちゃんに与える際に最も注意すべき点は「ごまアレルギー」です。ごまは、食物アレルギーの原因となり得る食品の一つとして知られています。

4.1. 日本におけるごまアレルギーの現状

日本では、ごまは鶏卵、牛乳、小麦などに次いでアレルギー症例数が多い食品の一つとして報告されています。消費者庁の「食物アレルギー表示に関する情報」によると、ごまはアレルギー症状を引き起こす可能性のある食品として「特定原材料に準ずるもの」21品目の中に含まれており、食品表示が推奨されています12。近年、ごまアレルギーの報告は増加傾向にあるとも言われており、保護者の方々も注意が必要です。

4.2. ごまアレルギーの主な症状

ごまアレルギーの症状は、摂取後数分から数時間以内に現れることが一般的で、個人差があります。主な症状としては以下のようなものが挙げられます10, 16

  • 皮膚症状: じんましん、発疹、かゆみ、赤み、むくみ(特に口の周りや顔)
  • 消化器症状: 嘔吐、下痢、腹痛、吐き気
  • 呼吸器症状: 咳、ぜん鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)、鼻水、くしゃみ、呼吸困難
  • 粘膜症状: 口の中のかゆみや違和感、目の充血やかゆみ
  • アナフィラキシー: 上記の複数の症状が同時に、または急激に現れる重篤な状態。血圧低下、意識障害などを伴うこともあり、命に関わる危険性があるため、迅速な対応が必要です。

4.3. アレルギーが疑われた場合の対処法と診断

赤ちゃんにごま油を与えた後に上記のような症状が見られた場合は、まず赤ちゃんの状態をよく観察し、症状が軽度であっても自己判断せず、速やかに医療機関(小児科またはアレルギー科)を受診してください。特に、呼吸困難やぐったりしているなど、アナフィラキシーが疑われる場合は、救急車を呼ぶなど緊急の対応が必要です14
医師は、症状の詳細な聞き取り、食物アレルギー検査(血液検査や皮膚プリックテストなど)、そして必要に応じて食物経口負荷試験(原因と疑われる食物を少量ずつ摂取して症状の有無を確認する試験)などを行い、総合的に診断します16。自己判断で特定の食品を除去することは、赤ちゃんの栄養バランスを崩す可能性があるため避けましょう。

4.4. ごま油の安全な進め方:アレルギー誘発を防ぐために

ごまアレルギーのリスクを考慮し、ごま油を初めて赤ちゃんに与える際は、以下の点に注意して慎重に進めましょう5, 6

  • 開始時期と量: 生後7~8ヶ月以降、他の食材に十分慣れてから、耳かき1杯程度のごく微量から始めます。
  • 赤ちゃんの体調: 機嫌が良く、体調の良い日を選びましょう。
  • 他の新しい食材と混ぜない: アレルギー反応が出た場合に原因を特定しやすくするため、ごま油を試す日は、他の新しい食材は与えないようにします。
  • 加熱処理: 初めての場合は、加熱した料理に少量加えることから始めるのが一般的です。加熱によりアレルゲン性が多少低下する可能性がありますが、完全に除去されるわけではありません。
  • 記録: 与えた日時、量、赤ちゃんの様子(症状の有無など)を記録しておくと、万が一アレルギー反応が出た場合に医師に伝える際に役立ちます。
  • 医療機関の確認: アレルギー症状が出た場合にすぐに受診できるよう、近隣の医療機関の診療時間などを事前に確認しておきましょう。

近年では、アレルギー発症予防の観点から、医師の指導のもと、適切な時期にごく少量の原因食物の摂取を開始する「経口免疫療法」なども研究されていますが15、これは専門医の厳格な管理下で行われる治療法であり、自己判断で行うものではありません。

4.5. 食物アレルギー表示の確認

市販のベビーフードや加工食品を利用する際は、必ず原材料表示を確認し、「ごま」が含まれていないかチェックしましょう。前述の通り、ごまは「特定原材料に準ずるもの」として表示が推奨されています12。外食時や惣菜を購入する際も、ごまが使用されている可能性があるため、可能な範囲で確認することが大切です。

5. 赤ちゃんのためのごま油:選び方と使い方・保存のコツ

赤ちゃんに安心してごま油を使うためには、選び方、使い方、保存方法にも気を配りたいものです。

5.1. 品質と安全性を重視した選び方

  • 純正ごま油を選ぶ: ごま100%で作られた「純正ごま油」を選びましょう。調合ごま油は、他の油が混合されているため、アレルギーの観点からも最初は避けた方が無難です。
  • 添加物の有無を確認: 原材料表示を確認し、酸化防止剤などの添加物が含まれていない、できるだけシンプルな製品を選びましょう。
  • 容器の種類: 油は光や空気に触れると酸化しやすいため、遮光性のある瓶に入ったものがおすすめです。プラスチック容器の場合は、BPAフリーなど、安全性が確認されたものを選びましょう。
  • 焙煎度合い: 香りの強い焙煎ごま油と、香りの少ない太白ごま油があります。赤ちゃんには、香りが穏やかでクセのない太白ごま油から試してみるのも良いでしょう。
  • 少量タイプを選ぶ: 赤ちゃんの使用量はごくわずかなので、開封後の酸化を防ぐためにも、最初は少量サイズの製品を選ぶのがおすすめです。

5.2. 離乳食への取り入れ方・調理例

ごま油は、離乳食に風味やコクを加え、赤ちゃんの食欲を刺激するのに役立ちます。以下のような使い方があります。

  • 風味付けとして: おかゆ、うどん、野菜の和え物、スープなどに、ほんの数滴垂らして風味をプラスします。
  • 炒め油として: 離乳食後期以降、少量の炒め物を作る際に、ごくわずかな量の油として使用できます。ただし、焦げ付きやすいので火加減に注意しましょう。
  • 食材のパサつき防止: 鶏むね肉や白身魚など、加熱するとパサつきやすい食材に少量加えると、しっとり仕上がり、赤ちゃんが食べやすくなります。

注意点: ごま油の風味は比較的強いので、入れすぎると素材の味が損なわれたり、赤ちゃんが嫌がったりすることがあります。常に少量から試しましょう。

5.3. 適切な保存方法と賞味期限

ごま油は酸化しやすい食品ですので、保存方法には注意が必要です。

  • 保存場所: 直射日光を避け、冷暗所(戸棚の中など)で常温保存します。冷蔵庫に入れると、低温で白く固まったり、品質が劣化したりすることがあるため、基本的には常温保存が推奨されます。
  • 開封後の取り扱い: 開封後は、キャップをしっかりと閉め、できるだけ空気に触れないようにします。賞味期限に関わらず、開封後は1~2ヶ月を目安に使い切るのが理想的です。
  • 賞味期限の確認: 未開封の状態でも、製品に表示されている賞味期限を必ず確認しましょう。

古くなった油や、異臭・変色が見られる油は、絶対に使用しないでください。

健康に関する注意事項

  • ごま油はアレルギーの原因となることがあります。初めて与える際はごく少量からにし、赤ちゃんの様子をよく観察してください。
  • アレルギー症状(じんましん、嘔吐、呼吸困難など)が見られた場合は、直ちに使用を中止し、医師の診察を受けてください。
  • 与える量や開始時期は、赤ちゃんの月齢や発達に合わせて調整し、過剰摂取にならないよう注意しましょう。
  • ごま油の使用に関して不安がある場合や、赤ちゃんに食物アレルギーの既往歴がある場合は、事前に医師や管理栄養士にご相談ください。

結論

ごま油は、オレイン酸、リノール酸、ビタミンE、ビタミンK、セサミンなどの栄養素を含み、赤ちゃんの成長と健康維持に貢献する可能性のある食材です。離乳食への導入は、厚生労働省のガイドラインに基づき、生後7~8ヶ月頃から、他の食材に慣れた後にごく少量から始めるのが目安です。最も重要なのは、ごまアレルギーのリスクを理解し、赤ちゃんの体調が良い日に、他の新しい食材と混ぜずに少量から試し、慎重に進めることです。種類としては、香りが穏やかな「太白ごま油」や「純正ごま油」を選び、添加物のないものが推奨されます。適切な量と使い方を守り、アレルギーに注意しながら、赤ちゃんの離乳食の風味付けや栄養補助として、ごま油を上手に取り入れていきましょう。不安な点があれば、必ず医師や管理栄養士に相談してください。

よくある質問

加熱したごま油と生のごま油、赤ちゃんにはどちらが良いですか?
どちらも使用可能ですが、初めて与える場合は、アレルゲン性が多少低減される可能性を考慮し、加熱した料理に少量加えることから始めるのが一般的です。生で使う場合は、香りが穏やかな太白ごま油などが適していますが、いずれにしても赤ちゃんの反応をよく観察することが大切です。
ごま油でベビーマッサージをしても良いですか?
食用のごま油をベビーマッサージに使用することについては、専門家の間でも意見が分かれます。皮膚から食物成分が吸収されることでアレルギー感作(経皮感作)を引き起こし、食物アレルギー発症のリスクを高める可能性が指摘されています13。特にアトピー性皮膚炎など肌のバリア機能が低下している赤ちゃんには注意が必要です。基本的には、ベビーマッサージには専用のベビーオイルを使用し、食用油の使用は避けるか、事前に必ず小児科医や皮膚科医に相談しましょう。
ごま油以外の油(オリーブオイルなど)とどう使い分ければ良いですか?
ごま油とオリーブオイルでは、風味や含まれる主な脂肪酸の種類が異なります。オリーブオイルはオレイン酸が豊富で、独特の風味があります。一方、ごま油はリノール酸やビタミンE、セサミンなどが特徴です3, 4。料理の種類や風味の好みに合わせて使い分けるのが良いでしょう。また、様々な種類の油を少量ずつバランス良く取り入れることで、多様な栄養素を摂取できます。ただし、いずれの油もアレルギーの可能性を考慮し、初めて使う際は少量から試すことが大切です。
ごまアレルギーが心配です。予防のためにごま油を避けるべきですか?
食物アレルギーの予防のために、特定の食品の摂取開始を不必要に遅らせることは、必ずしもアレルギー予防に繋がらないという考え方が現在の主流です。ただし、自己判断でごま油を避けたり、逆に積極的に摂取したりするのは適切ではありません14。特に、家族にアレルギー体質の方がいる場合や、赤ちゃん自身に湿疹などのアレルギーを疑う症状がある場合は、ごま油の開始時期や進め方について、必ず事前に医師や管理栄養士に相談してください。医師の指導のもと、適切な時期に少量から試すことが推奨される場合もあります。
免責事項
この記事は医学的アドバイスに代わるものではなく、症状がある場合は専門家にご相談ください。

参考文献

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