はじめに
子どもが熱を出して全身に発疹が現れる「発疹を伴う発熱」は、日常的に見られる症状のひとつです。発疹によるかゆみや発熱が重なると、子どもはとても不快に感じてしまいます。とくに「水やお風呂に入ると病状が悪化するのではないか」「湯冷めをして熱が上がるのではないか」などの心配から、発疹を伴う発熱時には入浴を避けるべきという話を聞いたことがある方も多いでしょう。しかし実際のところ、入浴を避けるのが正しいのかどうか、疑問に思う方も少なくありません。本記事では、子どもの発疹を伴う発熱の原因や症状、そして実際に入浴すべきかどうか、具体的な入浴のコツなどについて詳しく解説していきます。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
専門家への相談
本記事の内容は、医療機関や専門家による発熱時の一般的な注意点、および複数の信頼できる情報源に基づいてまとめられたものです。なお、本文中で言及している根拠や研究は、最新の医学文献・データベースを参考にして選定しています。ただし、実際の治療方針は医師や医療専門家によって個別に決定されるため、本記事はあくまでも一般的な情報提供を目的としたものです。具体的な治療やケアに関しては、必ず専門家の診察や指示を仰いでください。
子どもが発疹を伴う発熱を起こす主な理由
まず、どのような背景から子どもに発疹を伴う発熱が起こるのか理解しておくことは大切です。発疹と発熱が同時に起こる代表的な原因は、ウイルス感染によるものとされています。特にウイルス性疾患としてよく知られているものには、以下のようなものがあります。
- 麻しん(はしか)ウイルス
- 風しんウイルス
- 突発性発疹(バラ疹とも呼ばれる)
- 水痘ウイルス(みずぼうそう)
- 猩紅熱(しょうこうねつ)
- 手足口病
- 細菌性髄膜炎(菌種による)
- 薬剤反応による発疹
これらの中で、もっとも多いとされるのがウイルスによる感染症です。例えば、突発性発疹は乳幼児期に高頻度で見られるもので、急な高熱が数日続いた後に解熱と同時に全身に細かい発疹が現れます。麻しんや風しんなども、典型的には高熱とともに特徴的な発疹が出現しやすいのが特徴です。
また、発疹を伴う発熱の原因としては、ウイルスだけでなく細菌性の感染症、あるいは薬に対するアレルギー反応(薬疹)などの可能性も考えられます。したがって、親御さんだけで判断するのは危険であり、症状が重い場合や気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。
子どもが発疹を伴う発熱をしたときに入浴は可能?
一部では「発熱時は体を冷やすべき」「体を洗うと湯冷めして悪化する」という考え方から、子どもに限らず発熱時の入浴を避けようとする風習もあります。しかし、汗をかいて体が汚れた状態のままだと、かゆみや不快感が強くなり、場合によっては皮膚が傷つき感染症を引き起こすリスクも高まります。
実際に、最近の医療・看護の現場でも「発熱時だからといって絶対に入浴を避けなければならない」という方針ではなく、「子どもの体調と状況を見ながら、適切な入浴を行うことで、かえって症状が和らぎやすい」という考え方が広まっています。実際、体を清潔に保ち、発疹部位を常に清潔で乾燥しすぎない状態にすることは、皮膚のバリア機能を守り、二次感染を防ぐ上で有用です。
なぜ入浴が可能なのか
- 体温調節のサポート
ぬるめのお湯につかると、汗が流れ落ちて肌の表面が清潔になり、また血行がよくなることで深部体温の調節を助けるとされています。 - 皮膚の清潔保持
発疹を伴う発熱時には、子どもは汗をかきやすくなり、発疹自体が刺激となってかゆみが生じる場合があります。身体を優しく洗い、清潔な状態を保つと、かゆみの軽減や発疹部分の二次感染予防に役立ちます。 - 子どもがリラックスしやすい
適度な温度の入浴は、子どもの気分をリフレッシュさせ、食欲や睡眠の改善にもつながることがあります。
もっとも注意したいのは、「子どもが明らかにぐったりしている」「高熱でぼんやりしている」「意識レベルが低い」というような状態の場合です。このようなときに無理に入浴させると、転倒や失神などのリスクが高まるため、医師に相談するか、まずは身体を温かいタオルで拭くなどの対応にとどめましょう。
入浴のポイントと注意点
発疹を伴う発熱時に入浴するときは、以下のポイントを守ると、安全かつ効果的に子どものケアができます。
-
お湯の温度はぬるめ(目安として38~39℃程度)
熱すぎるお湯はかえって体温を上昇させる恐れがあります。また冷たすぎる水も、子どもが震えてしまうだけでなく、血管が収縮して深部体温が上がりやすくなる可能性があるため避けましょう。実際、発熱時の子どもには温かめのお湯で短時間かつ素早く済ませるほうが安心です。 -
入浴時間は10~15分程度
長時間の入浴は体力を消耗するだけでなく、のぼせや湯冷めのリスクを高める要因となります。体を温めてさっと汚れを流す程度で十分です。 -
入浴前に子どもの様子を観察
入浴は体力を使うため、子どもが立ち上がるのもつらいほどぐったりしていたり、激しく泣いて嫌がったりする場合は、入浴を避けたほうがいい場合があります。ぬるめのお湯でさっと身体を拭く程度にとどめ、まずは症状の改善を待ちましょう。 -
医師から処方された解熱剤のタイミング
解熱剤を投与して間もないうちは、体温が大きく変動しやすいため、子どもが急に冷えてしまうリスクも考えられます。解熱剤が効いているあいだ(熱が下がって比較的元気なとき)に短時間で入浴を行うと、全身を清潔に保ちながらも無理なくすごせます。 -
洗浄剤は低刺激のものを選ぶ
発疹がたくさん出ている場合は、刺激の強い石けんやシャンプーを使うと、かゆみや炎症が悪化することがあります。できるだけ低刺激の洗浄剤を使い、素手ややわらかいタオルで優しく洗いましょう。 -
入浴後は素早く拭いて保温
入浴後は水分をやさしくふき取り、着替えも手早く行いましょう。濡れたままでいると体温が下がり、再び熱が上がってしまうリスクがあります。部屋もあまり冷やしすぎず、適度な温度(25~26℃前後)に調整すると安心です。 -
子どもがかゆがる場合はかきむしりに注意
発疹をともなう熱では、皮膚のバリアが弱っているため、かきむしると傷口から細菌が侵入して二次感染を起こす可能性があります。入浴後のスキンケア時に保湿剤などを医師の指示で使用するのもよい方法です。
入浴以外に家庭でできるケア
入浴は発疹や熱による不快感を和らげる大切な手段ですが、それ以外にも子どもの身体をケアする方法はさまざまです。ここでは、簡単に取り入れられる対処法をご紹介します。
-
こまめに水分補給をする
発熱時は脱水リスクが高まるため、水、お茶、経口補水液などをこまめに与え、子どもが脱水を起こさないように気をつけます。 -
部屋の温度と湿度を快適に保つ
部屋が暑すぎると子どもが余計に汗をかき、発疹部分がかゆくなりがちです。一方で寒すぎる環境も子どもを震えさせ体力を消耗させます。エアコンや加湿器を利用し、適度な温度と湿度(温度は25~26℃前後、湿度は50~60%前後)を維持しましょう。 -
肌にやさしい衣服を選ぶ
通気性・吸水性の良い綿素材の衣類を着せ、皮膚への刺激を最小限に抑えます。ゴムや縫い目が肌に擦れないよう、ゆったりとしたサイズのものを選ぶとさらに快適です。 -
爪を短く切る
かゆみに耐えられず子どもが引っ掻いてしまうことを考慮し、爪は常に短く整えましょう。就寝中に無意識でかいてしまう場合もあるため、ミトンなどを活用するのもひとつの手です。 -
適度な休養と栄養を確保する
発熱時は体力が消耗されやすいので、子どもが好きなものや消化に良い食事を用意し、水分と栄養をバランスよく補給することが必要です。眠りたがるときはしっかり休ませ、元気があるときは軽い遊びや絵本など、ストレスの少ない過ごし方を心がけましょう。
発疹がある子どもの入浴に関する研究・最新の知見
ここ数年は、子どもの発熱時のケアや入浴に関する研究も活発に行われています。例えば2022年には、発熱を伴う子どもへのケアを体系的に検討した研究が発表されました。そこでは、「適切な体温管理と皮膚の清潔保持」が感染症の回復を早めるだけでなく、子どものQOL(生活の質)向上にも寄与しうると報告されています。これは複数の国で行われた臨床データを集積・解析したもので、入浴や温かいタオルでの清拭が、発熱による不快症状の軽減につながりやすいことも示唆されたとのことです(Chiappini Eら, 2022, BMC Infectious Diseases, 22(1): 1046, doi:10.1186/s12879-022-07716-x)。
また2021年には、小児科の診療所レベルで実施した実地調査として、「子どもが発熱時に適度な入浴や清潔ケアを行うことで二次感染率が低減した」という報告もあります。これは少人数の研究ではありますが、毛穴の詰まりや皮脂汚れを除去することが、皮膚コンディションを整え、発疹部位からの細菌感染を予防するのに役立ったとされています(Raciborska Aら, 2021, Adv Clin Exp Med, 30(10):1093–1098, doi:10.17219/acem/137697)。
こうした研究は日本国内にも応用できる内容であり、実生活の中で応用する際には主治医の指示や子どもの様子に合わせて注意深く導入することが大切です。
合併症や重症化に注意が必要な場合
発疹を伴う発熱の多くはウイルス性疾患によるもので、適切にケアすれば数日から1週間程度で改善することが大半です。しかし、以下のような症状が見られる場合は、重篤な合併症を疑う必要があります。
- 高熱が何日も下がらず、子どもが極端にぐったりしている
- けいれんや意識レベル低下がある
- 強い頭痛、首の後ろの硬直など、髄膜刺激症状がある
- 発疹が水泡化し、膿がたまる、あるいはただれている
- 目の充血や耳の痛みなど、呼吸器以外の症状が目立つ
これらの場合は、ただのウイルス性発疹とは異なる合併症や他の重大な疾患が隠れているかもしれません。迷わず早めに医療機関を受診し、医師の診断を仰いでください。
結論と提言
子どもが発疹を伴う発熱を起こしたとき、入浴をしてはいけないという俗説を耳にしたことがある方は少なくありません。しかし実際には、子どもの体力や全身状態を見ながら正しい方法で入浴を行うことで、皮膚を清潔に保ち、不快感やかゆみを抑え、二次感染を防ぐメリットが期待できます。ただし、以下の点に留意することが大切です。
- 入浴前に子どもの全身状態を確認し、著しく体力が消耗していないかを見極める
- 入浴時には適度に温かいお湯(38~39℃程度)で短時間に済ませる
- 刺激の強い洗浄剤は避け、入浴後はやさしく拭いて素早く着替える
- 発疹の部位をかきむしらないよう注意し、適切な保湿ケアや感染対策を心がける
また、長引く高熱、強い頭痛や嘔吐、意識レベルの低下、けいれん、湿疹の増悪などが見られる場合は、重大な疾患の可能性があるため、すみやかに医療機関を受診してください。
重要なお願い
本記事は、発疹を伴う発熱のある子どもに対する一般的な情報提供を目的としています。個々の病状や体調は異なるため、実際の治療やケアについては、必ず医師や医療専門家にご相談ください。
参考文献
- Heat rash or prickly heat: babies & kids | Raising Children Network
https://raisingchildren.net.au/guides/a-z-health-reference/heat-rash
アクセス日: 2023年11月2日 - Heat Rash
https://www.seattlechildrens.org/conditions/a-z/heat-rash/
アクセス日: 2023年11月2日 - When your baby or infant has a fever: MedlinePlus Medical Encyclopedia
https://medlineplus.gov/ency/patientinstructions/000319.htm
アクセス日: 2023年11月2日 - Roseola
https://kidshealth.org/en/parents/roseola.html
アクセス日: 2023年11月2日 - Roseola
https://www.nationwidechildrens.org/conditions/roseola
アクセス日: 2023年11月2日 - Fever with a rash in a child: Types and when to see a doctor
https://www.medicalnewstoday.com/articles/fever-with-rash-in-child
アクセス日: 2023年11月2日 - Bathing babies while they’re feverish? Doctors say no problem
https://westlakemed.com.ph/bathing-babies-while-theyre-feverish-doctors-say-no-problem/
アクセス日: 2023年11月2日 - Your Baby’s Fever: How to Help
https://www.webmd.com/children/features/fever-care-young-children
アクセス日: 2023年11月2日 - Chiappini E, Paci S, La Motta G, Bonsignori F, Galli L, et al.
“Do we need new guidelines for the symptomatic management of fever in children? An overview of current recommendations.”
BMC Infectious Diseases 2022;22(1):1046. doi:10.1186/s12879-022-07716-x - Raciborska A, Wrotek S, Jackowska T.
“Management of febrile child: A practical approach for pediatricians in a primary care setting.”
Adv Clin Exp Med 2021;30(10):1093–1098. doi:10.17219/acem/137697
免責事項:
本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、医学的アドバイスを代替するものではありません。お子さまの症状が気になる場合や治療に関するご質問がある場合は、必ず医師や医療専門家にご相談ください。記事で紹介しているケア方法や研究内容はあくまで参考であり、個々の症状や状況によって適切なケアは異なります。